受け継いだ財産、若い世代へ

今回は、人が亡くなったあとに残ったお金、その行き先についてです。家族など、受け継ぐ人がいない場合、残されたお金や不動産は、最終的に国のものになることがあります。その額が増えていて、2024年度はおよそ1292億円。10年前のおよそ3倍で、過去最多だそうです。では、どんな場合に国に入るのか。MUFG相続研究所・所長の入江誠さんに聞きました。

相続人がいない財産、どこへ?

MUFG相続研究所・所長 入江誠さん

国庫に帰属するケースは実際にあります。法定相続人がいない。遺言が書いてあれば、法定相続人がいなくても財産を残すことができるので、国庫にはいかない。

それと、法定相続人はいても、法定相続人が相続放棄するってこともできるんですね。相続放棄をした結果、法定相続人にあたる人がいなくなってしまうと、国庫に帰属するっていうこともあります。

ただ、相続する人がいなくても、遺言で「この人に残したい」「ここに寄付したい」と決めておけば、行き先を指定できます。

一方で、法定相続人がいなかったり、相続する権利がある人たちが全員、相続を放棄したりすると、最終的に国庫に入る場合もあります。ちなみに相続放棄は、年間およそ32万件。何も決めていなければ、自分の希望通りに使われるとは限りません。

そこで、自分が元気なうちに、お金の行き先を自分で決める人もいます。しかも、選んだのは、自分のお金で若い人を支えるという、ちょっと珍しい方法でした。80代の女性に、匿名でお話を聞きました。

旅行に使うはずだったお金、若い人へ

女性(80代)

昨年、一応100万ということで、お一人で、ちょっとでもいいから援助できたらいいなと思いました。

理工系の学生で、特に大学院まで進んで勉強を続けたいけど、なかなか財政的に困難で途中で辞めちゃう人がいるんだっていうお話を聞いて、援助ができたらいいなと。

経済的に続けられないと、せっかくそこまで勉強する意欲があって、研究テーマもすごくいいのに、途中で辞めなくちゃいけないっていうのがあって、それは日本のためにももったいないのでね。

いやいや、そんなに資産があるっていうんじゃないんですけど、3年前に夫が亡くなったんですよね。なんか一人でいてもつまんないなと思って。旅行に考えていたお金もね、どなたか若い方に使っていただいたら、その方が有意義だなと思って。

平たく言えば、奨学金という形の寄付です。

ただ、お金を寄付して終わりではなく、「誰を支援するのか」、その条件まで決められるのが特徴です。

奨学金というと普通は、国や大学、財団などがあらかじめ用意した制度に、学生が応募します。

今回は逆で、お金を出す人が「こんな学生を応援したい」と希望を出して、そこから奨学金の条件を決めます。その条件に合う学生を募集して、選考して、奨学金としてお金を届けます。

この女性の場合、去年は300人を超える応募者の中から1人が選ばれ、肝臓がんの研究をする大学院生の女性に資金が渡りました。

では、こういう形で若い人を支える動き、実際どれくらい広がっているのでしょうか。この仕組みを手がける、株式会社ガクシー・取締役の大工原靖宜さんに聞きました。

個人で作る奨学金、広がっています

株式会社ガクシー・取締役 大工原靖宜さん

昨年で我々100制度ぐらい、100奨学金を作ったのが昨年の実績だったので、これは一昨年から比べると4倍ぐらいです。

企業の方もいれば、個人の方もいらっしゃいます。あとは、会社員としてずっと働かれてきて、定年退職されて、その時の退職金をもとに、奨学金を作ってご支援されるようなケースがありますね。

例えば、理系の学生とか、医療関連の勉強をしている方とか、海外を目指している方とか、スポーツ、アート、本当になんでも構わないので、そこにご希望の方々を集めてくるっていうところですね。

ガクシーでは、奨学金を出したい人に代わって、学生を募集して、選考し、実際にお金を届けるところまでを支援しています。「地元の若者に」「女性の研究者に」「海外留学を目指す学生に」など、どんな人を応援したいかも決められて、相続や退職などでまとまったお金を手にしたとき、残すだけではなく、誰かのために使うという選択肢もあるということです。

一方、今回の女性の奨学金には300人を超える応募がありました。こうした形で若い人にお金を届ける方法が広がる一方、支援を必要としている人もまだ多いことがわかりました。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」より抜粋)

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