ゲストは、newmo(ニューモ)株式会社 自動運転開発室 室長の円谷雄人(つむらや・ゆうじん)さん。タクシー事業を自ら運営しながら、自動運転の開発を進めるnewmo。日本の街を走るからこそ見えてきた、自動運転タクシーならではの難しさと可能性を伺います。
西田: 最近、タクシーがなかなか捕まらないんです。銀座でも15分くらい待つことがあって。人手不足もあると思いますが、そんな移動の課題を解決しようとしているのがnewmoです。まず、どんな会社なんでしょう?
円谷: newmoは2024年1月に創業した会社です。「移動で地域をカラフルに」をミッションに掲げ、目指しているのは地域交通の未来をつくること。全国のタクシー会社を事業承継でグループに迎えながら、AIやITの技術を組み合わせて、新しいタクシー会社をつくっています。
西田: 8月時点で、車両は1700台、従業員は2500人以上。かなりの規模になっていますね。
円谷: 大阪や東京、神奈川、沖縄、名古屋、札幌などで事業を展開しています。特徴のひとつが、自分たちでタクシーを運行していること。その現場で得た経験も生かしながら、自動運転の実証実験を進めています。
西田: そもそも、新しいタクシー会社をつくろうと思った理由は?
円谷: いちばんは、移動の課題です。都心だけでなく地域でも、労働人口の減少や高齢化によって、タクシーのドライバーやバスが少しずつ減っている。そうした課題を解決したい、というところから始まりました。
西田: 円谷さんは「自動運転開発室」の室長です。普段はどんな仕事をしているんでしょう?
円谷: 自動運転タクシーを実際の街で走らせるための開発や実証実験を担当しています。ソフトウェアをつくるだけではなく、安全性の検証や、実際に街のなかをどう走らせるのかまで考える仕事ですね。
西田: 実際に日本で自動運転を走らせてみて、わかってきたことはありますか?
円谷: やはり、街によって道路の特徴が違います。たとえば大阪と東京でも、道路のつくられ方がかなり違うんです。
西田: どう違うんでしょう?
円谷: 大阪は、もともと川や堀を使って物を運んでいた街です。その後、鉄道ができて南北の移動も増え、碁盤の目のような道路になっていった。一方、東京は江戸城を中心とした城下町で、道が放射状に広がっていたり、T字にぶつかったり、曲がっていたりします。
西田: 街の歴史が、今の道路にも残っているわけですね。
円谷: そうなんです。自動運転でも、それぞれの街の特徴を理解して走る必要があります。
西田: でも、道路の形ならナビでもわかりそうです。
円谷: 走る方向や車線はナビでもわかります。ただ、タクシーになると、それだけでは足りません。1日に何度もお客さまを乗せたり降ろしたりするので、「どこで安全に乗り降りしてもらうか」まで考える必要があるんです。
西田: ああ、道路を走れればいいわけじゃない。
円谷: そうですね。私たちは「乗降ポイント」と呼んでいますが、ここはかなり重要です。普通の乗用車を走らせるだけでは、なかなか集まらないデータでもあります。
西田: たしかに、ナビを見ただけでは「ここでひとを降ろして大丈夫か」まではわからないですよね。
西田: 自動運転というと、海外のIT企業が先行しているイメージがあります。newmoならではの強みは、どこにあるんでしょう?
円谷: タクシーは年間で6万キロほど走ります。それだけ走っていると、普通の乗用車ではなかなか出会わないような複雑な状況にも何度も遭遇するんです。駅前や空港、交差点など、さまざまな場面のデータを集めることができます。
西田: 走る距離が長いぶん、経験値も増えていく。
円谷: そうですね。実際のタクシーを使いながら、少しずつデータ収集を進めています。
西田: 一方で、タクシー業界はドライバー不足も深刻ですよね。
円谷: 高齢化も含めて、かなり大きな課題だと思っています。このままでは、移動手段そのものを維持するのが難しい地域も出てくる。ただ、自動運転を単に「ひとに代わるもの」と考えているわけではありません。新しい交通の手段として、自動運転タクシーを提供できたらと思っています。
西田: 日本では、これからどんなふうに広がっていきそうですか?
円谷: 今後数年かけて、少しずつ社会に広がっていくと考えています。newmoとしては、2028年の商用化が目標です。技術を普及させること自体が目的ではなく、移動が便利になることで、地域の暮らしを豊かにしていきたいですね。
西田: 誰もが自由に移動できるようにするための技術、ということですね。今日は、newmo株式会社の円谷雄人さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
(TBSラジオ『見事なお仕事』より抜粋)