渋谷の道玄坂で珍しい集まりがありました。その名も「リペアカフェ」。壊れたモノを持ち寄って、直す会です。会場は「FabCafe Tokyo」。店内には「はんだごて」などの工具が置かれていて、コーヒー片手に人々が集まっていました。この会を企画した、ファブカフェ東京のリーダー、金岡 大輝さんに聞きました。
ファブカフェ東京 リーダー・金岡 大輝さん
リペアカフェという活動をしています。修理ですね。で、これはみんなが壊れちゃったものとか、直したいものを持ってきてもらって、直してみる、開けてみる。やっぱりなんか家電みたいなものが多い気がしますけど、なんか掃除機とか、まあとりあえず開けてみて、テスターみたいなものを使って、えっと、回路がどうなっているのか、どこが壊れているのかっていうのを原因を特定していって、そこをつなぎ直したり、部品を交換したりだとかっていう、そういう作業かなと。無料です。だんだん広がってきてるのかなと思います。
修理店に頼むのではなく、「自分の手で直す」イベント。会場には修理の達人たちがボランティアとして付き添い、持ち込まれた家電や革製品を、参加者と一緒に分解して原因を探っていきます。この日は15人から20人ほどが参加していました。
そもそもこの「リペアカフェ」という修理イベント、2009年にオランダのアムステルダムで始まった草の根の活動で、現在は世界40か国以上、およそ3500か所に広がっているそうです。日本ではまだ数えるほどで、ファブカフェ東京でも今回が2回目ですが、少しずつ広がりを見せています。
ではこの日、実際にどんなものが持ち込まれたのか。参加している方に聞きました。
参加者
▼今日は真空管ラジオを持ってきました。音は鳴るんですけど、チューニングするところがうまく動かないのと、あとボリュームを回しても音量がうまく変わらない。メーカーはジェネラルっていうメーカーですね。今ないですよね。
▼サーキュレーターですね。スイッチ入れてもついに何もスイッチが入らなくなって。あ、もう死んじゃったんだと。最初、一番外側のネジを見つけることすらできなくて、ネジのありかすらわからなかったです。まず開けれもしなかったっていう。はい。結構大きいプラスチックの部品が使われてるのでこのままなんか捨てるのも心苦しいなと思って。デザインも好きだったので持ってきました。
▼冷蔵庫と冷温庫。キャンプ用です、車用で。夏だけ使ってたんですけど、いつしか使えなくなって。こういうイベントがあったんで、もしかしたら…。お、付いた…。(拍手)
最後の拍手は冷蔵庫。専門家と一緒に開けてみたら、あっさり復活しました。
一人目の「真空管ラジオ」は、60年ほど前のもので、メーカーは「ゼネラル」。この方も、中身を専門家に見てもらって原因が特定できたとのこと。部品も秋葉原で手に入ると分かったため、これから買いに行きたいと喜んでいました。
ただ、2人目の女性の「サーキュレーター」は、お手上げ状態。最新のものは複雑な電子回路だらけで修理は難しい。でも、見てもらってあきらめがついたとのことでした。
昔のラジオは直せるのに、最新の家電はプロでも手が出ない。こうした「便利になったのに、直せなくなった」という話、実は身の回りの家電だけではないそうです。いま世界で、思わぬモノにまで広がっているとのことで、テクノロジーと社会の関係を研究している、東京大学学際情報学府博士課程の中村 健太郎さんに伺いました。
東京大学学際情報学府博士課程・中村 健太郎さん
今「イーベイ」っていうサイトがアメリカにあって、中古オークションサイト。ある年代より昔のトラクターがめちゃめちゃ高値がつくようになってるらしくて。これはコンピューターが載ってないやつなんです。手で直せるやつ。高い。みんな欲しい。もう動くコンピューターになっていて、いろんな機能がついてるんですよ。例えば夜中のうちにGPSで勝手に動いて収穫する機能とか、そういうのがついてるんで。ただ、「もう明日収穫しないとこのコーンはダメになってしまうんじゃ」みたいな時に、「あ、ちょっと今から飛行機で行くんで一週間待ってください」みたいなのがアメリカでは起きてる。つまり何が起きてるかっていうと、あらゆる製品が電化製品になってきてるわけですよ。なってきた結果、自分が持ってるものを自分がやりたいタイミングで修理できなくなってきてるんですよね。
便利になる一方で、自分のモノなのに自分で直せない。こうした中で海外で広がっているのが、「修理する権利」という考え方だそうです。
アメリカではスマートフォンなどの修理マニュアルや部品の公開を義務づけたり、ヨーロッパでは製品の横に「直しやすさの評価」を表示する国も出てきています。
リペアカフェがやりたいのも、タダで直してあげることではなくて、「壊れたら買い替えるしかない」という今の当たり前に、ちょっと抵抗してみること。壊れたら捨てて買い替えるのが当たり前になっている今だからこそ、考えさせられる取り組みでした。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)