左利きの人が抱える「日常のプチストレス」と解消グッズ

世界的に見ても約10%の割合でいるとされる左利き。世の中の道具や設備は右利きを前提に作られていることがほとんどで、左利きの人は日常的にプチストレスを抱えていることが案外あります。

10月1日(木)の「生活情報」では、左利きさんの日常のプチストレスと、それを解消してくれるグッズを特集!実は木曜パートナーの宇賀神メグアナウンサーも左利きなんです(鉛筆やお箸は左、ハサミや習字は右というハイブリッド!)。

左利きを取り巻く環境と歴史

教えていただいたのは「日本左利き協会」発起人で、『左利きの言い分』の著者でもある大路直哉さんです。「日本左利き協会」では、主に左利きの悩み解消の情報発信や、利き手に関するアンケートの実施を行っています。また、左利き用やユニバーサルデザイン製品の普及・提言のほか、近年では中・高生の探究学習などへの協力にも取り組んでいるそうです。

最近は、左利きであることは当たり前のこととして受け入れられています。しかし、昔は「直した方がいい」と言われたり、偏見の対象になっていた時期もあるということです。そのような歴史的な背景について、大路さんは次のように語ります。「日本においては、礼儀、子どもに対して周囲の大人が施すしつけの問題として、左利きの存在がやり玉に挙げられることが多々あったと。代表的な一例としては、左手で箸を持つということが無作法とされていたわけですね」

「右手を使う」作法のルーツ

右手を使うことが礼儀作法であるという根拠について、大路さんは歴史的な文献を挙げて説明します。「右手で使うことが礼儀作法であるという根拠としては、儒教の重要な経典『礼記(らいき)』のなかに、子どもが自分で食べられるようになったら右手を使わせるようにしなさいという一文があるわけです」

この考え方は、時代を超えて日本の文化に根付いてきました。「これが江戸時代の育児書はもとより、終戦後に書かれた女性向けの作法書のなかでも、この一文を引いて右手で食べさせるように諭していたぐらい強い影響があったんです」と大路さんは指摘します。

大路さん自身も、小学校に入学したとき、放課後に左利きの子どもだけ集められて、数回、右手で文字を書く練習をさせられたということがあったそうです。

共感必至!日常のプチストレス

続いて大路さんに、左利きが日常で苦労している点を伺ったところ、多くの人が共感する例を挙げてくれました。

例えば文房具を使う際、横書きで文字を書くと、書いたばかりの文字の上を左手でこすってしまうため、手や袖がインクで汚れてしまいます。また、リングノートを使う際、中央のリングに手が強く当たって痛みを感じたり、手首が浮いて書きにくくなったりします。

刃物を使う際にも不便があります。右利き用のハサミを左手で持つと、切り取り線が上の刃に隠れて見えなくなってしまいます。またハサミの刃の噛み合わせが逆になるため紙が切りにくく、ハンドルの形が非対称なものは余計な力がかかってしまいます。

右利きを基準とした片刃の包丁を使うと、刃が食材に対して斜めに入ってしまい、真っ直ぐに切れません。小学校で使う右片刃の切り出しの彫刻刀を左手で使うと、刃が木に食い込んで思い通りの線が切れず、えぐって怪我をするリスクも高くなります。

日用品や公共の設備でも悩みは尽きません。片側にだけ注ぎ口がついたレードルを左手で使うと、注ぎ口がない方から液体をこぼしてしまいます。駅の自動改札機やATM、自動販売機などは操作部が右側に集約されているため、左手で操作しようとすると体を不自然にねじったり、交差させたりしなければなりません。

無意識の気疲れと構造的ハンデ

さらに、日常の何気ない動作にも左利きならではの苦労があります。ネジやキャップなどを「時計回りで締める」動作は、右利きにとっては力の入りやすい動作ですが、左手だと力の出しづらい動作になり構造的ハンデを負うことになります。

また、隣の人との距離が近い飲食店のカウンター席などで右隣に人がいると、腕や肘がぶつかりやすくなります。そのため、「迷惑をかけていないか」と無意識の気疲れが生じがちになるそうです。

そんな中、最近は日本でも「左利き専用グッズ」や「左右兼用のユニバーサルデザイングッズ」が増えているということで、大路さんに最新のおすすめグッズをご紹介していただきました。

高校生の思いが生んだ左利き筆

一つ目は、株式会社「あかしや」が今年7月に発売した「左きき用筆 書写楽LEFTY」です。この筆は、根元がカクッと曲がっていて、右手で持つのと筆先が同じ角度になるように設計されています。穂先が左上45度に向くので、手や腕をひねったり無理な姿勢をとることなく、自然な動作で筆運びができます。さらに手に視野をふさがれることが軽減され、筆先や書いている字形を確認しながら書き進められます。

この筆の開発背景について、大路さんは次のように語ります。「右手で書くことが前提とされていたメーカーが作ることになったきっかけというのは、1人の高校生のメールによる切実な思いというのがあって。通っている高校で企業家精神教育の取り組みがされていて、その一環として、いまだ存在しない左手用の筆の開発を提案したということなんですね」その熱意にあかしやの水谷豊社長が心を動かされ、社内で開発を指示したということです。

左利き専用品でありながら、通常品とほぼ同価格帯で販売されており、3号と8号のセットで税込み1980円となっています。ちなみに、鉛筆やお箸は左、ハサミや習字は右というハイブリッドな左利きの宇賀神メグアナウンサーも、実際にこの筆を左手で試しました。

誰もが使いやすいパッケージ

二つ目は、朝食でおなじみのシリアル、日清シスコの「シスコーン」(300円前後)のパッケージです。これは左利き専用というわけではないですが、大路さんは「右手と左手を添える位置がわかりやすい持ち手マークというのがありまして、本当に親切で斬新な配慮」と評価しています。

子どもが初めてお皿に注ごうかという時に利き手の左右問わず困らないように、四隅に配置されたイラストのマークが、左利き用は青、右利き用は赤という色分けがされています。指定のマークを持てば利き手を問わず、こぼさず上手に注げるという配慮です。

実際に、右利きのスーさんが赤いマークを、左利きの宇賀神アナウンサーが青いマークを持って注ぎ比べを行いました。いつも通り左手で注いだ宇賀神アナウンサーは「注ぎやすい!」と声を上げました。一方で、あえて左利き用の持ち手を持って注いでみたスーさんは「手首をすごくグッとひねらないといけないから、狙いが定まらない!左利きの人が普段どれだけ大変かよく分かる……」と体感しました。

多様な個性への温かい眼差し

大路さんは、日常の食卓で自然と「左利きへの配慮」に触れることは、何度も接することで親しみを持つ「単純接触効果(ザイオンス効果)」につながるとおっしゃっています。これが左利きの人だけでなく、多様な個性を持つ人々への「温かい眼差し」を育むきっかけになるのではないか、とのことでした。

左利きの人も右利きの人も、お互いの工夫や違いを知ることで、より快適な生活につながりそうです。道具ひとつで生活がもっと快適になるようなグッズ、気になった方はぜひチェックしてみてください。

(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)

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