雨のニュースが多い昨今、耳にするのが「内水氾濫」という言葉。これは、雨がたくさん降って、下水の処理が間に合わず道路などに溢れてしまうこと。
こうした、都市型洪水の内水氾濫を食い止めるために、30年も前から取組みを始めていたのが墨田区。墨田区は、海抜が0mとか、マイナスの場所も多く、以前はよく冠水の被害にあっていた地域。
区は下水道の整備に力を入れる、としましたが、急に全部は出来ませんよね。そこで、同時に、市民側も自分たちの出来ることをすることにしたのです。
では、どんな対策をしているのか。雨水市民の会、理事の笹川みちるさんに伺いました。
雨水市民の会理事 笹川みちるさん
「墨田区は関東大震災でもほぼ丸焼けになり、東京大空襲でも丸焼けになりっていう地域で、火災への、防火っていう視点はすごく昔から強くて、初期消火のための防火用水を備えておこうと、そういった備えは住民の中でもすごく意識高くやっているので、そこに内水氾濫、都市型洪水の原因が、あふれてしまう雨だっていうことも分かったので、じゃあ、街中の色んな所で雨を蓄えるようにしようと。
街の中に雨水の小さな行き先をたくさん作るっていうところから活動が始まったっていう感じですね。
普通、雨が屋根に降ると、雨どい、縦の雨どいを通ってそのまま下水道に流れて行くんですけど、そこをちょっと分岐して、タンクに一旦入れるっていう、だいたい200リットルくらい、ドラム缶のようなサイズの貯留タンクを付けるっていうのが、具体的にまず出来ることになりますね。そうですね、下水道に行く前の一時避難先をたくさん作ってあげるっていう考え方ですね。」
区役所やスカイツリータウン、新しいマンションなどは、地下などに大きな貯水槽を作っていますが、もとからある住宅では、雨どいから分岐させてドラム缶サイズの貯水タンクを付けて、下水に流れ込む雨の量を減らそう、と考えました。
このタンク「天水尊」と名付けられ、ウチにも設置しますという人には区が補助金を出してくれるようになっています。
他にも、集会所や街中の共有エリアなどには「路地尊」という、手動のポンプ付きの貯水タンクもあり、3トン~20トンの雨水を貯められるようになっています。
実際に、笹川さんの案内で、雨水市民の会の事務所から、街中を歩いてみました。
「★(笹川さん)ちょっとここを通る間にも、何か所か雨水タンクが見られると思います。~☆(近堂)あ、ありましたね!ホントだ、雨どいから分岐してますね。
~☆これもですね。★四角いタイプです。☆あそこの雨どいから分岐ですね。~☆あ、ありましたありました。これはもう色がずいぶん薄くなってますね。★これはもうホントに古い。☆字が消えちゃいましたね。
~★今、ここは雨水タンク、取っちゃったのかな?ここに雨水タンクがあったんだけど、見当たらなくなっちゃった・・・。
~★つきあたりに路地尊があるので。☆あれがそうですね。ここにもポンプが。これはお家がある場所じゃないですけど、どこから雨が?★この駐車場の屋根、トタンの屋根からもらって、あのグレーのパイプを通ってここに入るようになっています。」
小一時間くらいで、二つの町内をぐるりと回りましたが、結構見つけました。新しいもの、古いもの、ドラム缶の他に10トンの貯水タンクを室内に置いて、家の壁に蛇口が付いているお宅もありました。不思議な光景!(笑)。
現在のところ、区内には、ポンプの付いた路地尊は21か所、雨水タンクは825か所設置されています。
ただ、途中で笹川さんもおっしゃっていましたが、ここにあったのに、という場所も。30年前から取組んでいるが故に、建物の持ち主が変わったりビルが更地になっていたりで、無くなってしまったところも何か所かありました。改めて、今後も普及活動をやっていかないと、とおっしゃっていました。
とはいえ、最近の頻繁な豪雨でも冠水被害が出ていないので、少しずつ効果は出ている、この雨水タンクは、今、更なる活躍に向けて、こんな実験をしています。
雨水市民の会理事 笹川みちるさん
「リスクマっていう民間の企業でやってる川の情報とかを監視して掲載するような仕組みと連携をして、今、実際にそのタンクの中にどのくらい雨が入ってるかっていうのを地図上で見られるようにという取組みをやっています。
墨田区に850か所くらいタンクがあるんですけど、今は7か所に水位計を付けて、10分ごと、1時間ごと、24時間ごとの水位の動きが見られるようになっているのと、実はこのシステムで、降雨予測の情報や、雨の降り方を計測している降雨量のデータも一緒に見ることができるので、雨雲が近づいてるなっていう時に、タンクを空にしてもらう、というような、今後に向けて少し洪水対策に、このタンクの容量をカウントできるような運用の仕方に繋がっていけるんじゃないかなと思っているところです。」
街のみなさんは、雨水タンクの水を、庭の草木の水やり、洗車、掃除などに普段からお使いです。しかし、防火のことも考えると、あまり減らしておくのも心配、とおっしゃる方もいるそうです。(その気持ちも分かります。)
しかし、内水氾濫、洪水を防ぐためには、大雨が降る前にはできるだけタンクを開けて、雨水の避難先を用意しておかないとならないので、内容量が分かるようにしようとしています。
以前は、タンクの外にストローのような筒状の水位計を付けたら、藻が発生して見えなくなったり、電波で水位を計測しようとしたらタンクの中は電波が悪かったり、色々難しいのですが、現在試行錯誤しながら実験中です。
東京都では【どこまでの雨なら街が安全か】という治水対策の降雨基準を、75ミリから85ミリに引き上げましたが、この増えた10ミリは河川や下水道などの大規模工事だけではなく、市民や事業者で分担しましょう、という方針を出しています。
墨田区の雨水タンクが全部空なら、その10ミリの内の2ミリ分の雨を引き受けられます。空き具合がしっかり分かるようになれば、なかなか大きな洪水対策になりますよね。
墨田区もポンプ場を新しくしたり、修繕工事を行っており、がんばっています。
しかし、市民のちょっとずつの協力も大事。まさに、流せば洪水、溜めれば資源!ですね!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)