坂口健太郎×スクエニ吉田直樹×宇多丸で桃鉄談義
TBSラジオ『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』毎週木曜日21:00~21:30放送!
■桃鉄のデバッグをして抜け殻のようになった
『劇場版 ファイナルファンタジー14 光のお父さん』が現在絶賛公開中!ということで、「マイゲーム・マイライフ」のゲストに、主人公・岩本アキオを演じる坂口健太郎さんと、映画のチーフプロデューサーをつとめるスクエアエニックスの取締執行役員・吉田直樹さんがやってきました。吉田さんはFF14のプロデューサー兼ディレクターでもあります。
今回は坂口さんのちょっと独特な桃鉄の遊び方についてで盛り上がりました。
坂口「この歳になっても絶対毎年この時期はやるっていうのは、桃鉄ですね」
宇多丸「ほう。この時期というと?」
坂口「年末は僕、実家に帰るんですけど、年末は桃鉄大会を必ず」
宇多丸「これはご家族で?いいですねぇ~!桃鉄ってでも……険悪になりません?」
坂口「そうなんですよ(笑)。本当に。だからうちの、険悪にならないための楽しみ方は、桃鉄の趣旨を間違えているんですけど、あれって一番最初の年にゴールするとボンビーが出てくるじゃないですか。そこからボンビーが出続けちゃうから、誰もゴールをせずに(笑)」
宇多丸「ははあ~。やり続ける」
坂口「やり続ける」
宇多丸「勝つ、じゃなくて、やり続けることが目的なんだ、みたいな」
坂口「そうです(笑)。ゴール入ってボンビー出て、みんな手に入れた物件とか売られちゃうと、誰かがキレるんで」
宇多丸「ははは。紙一重なんだね。仲良くていいね、と紙一重(笑)」
坂口「だからもう、喧嘩になるんだったら、ボンビー出さなきゃいいって話になって、ゴールしなかったら誰も悲しい思いをしないんだ、と」
吉田「画期的な遊び方ですよね(笑)」
坂口「趣旨を間違えてるとは思うんですけど(笑)」
宇多丸「いやー、クリエイティブな遊び方してる」
ちなみに、吉田さんは昔、桃鉄のデバッグの仕事をしていたのだそうで、それはそれは地獄のような仕事だったのだとか。
吉田「僕、一番最初に入社した会社がハドソンだったんですけど、仕事が開発じゃなくてデバッグだったんですね。何十時間とバグを取るためのプレイをしろ、と。もう、丸二週間、朝から晩までずーっと桃鉄のデバッグをやって」
宇多丸「デバッグの仕事って、僕らからすると、ゲームいっぱいやれて楽しそうじゃんってなるけど……(吉田さんが)黙って首を振ってますけど(笑)。やっぱり?」
吉田「いやいやいやいや……。ゲームをいじめる遊び方をしなきゃいけないので」
宇多丸「ああ、要するに、あり得ないことをやってみるとか?」
吉田「あとは、最後はだいぶバグもなくなってきて、“ローラー”って言って、普通にとにかく遊ぶことを繰り返せって言われるんですけど、同期と4人で99年をひたすらやり続けたんですよ(笑)。途中から圧倒的1位が決まってくるじゃないですか。誰がどうやってももう勝てないんですよ。その状況で続けなきゃいけないっていうのが……。最後はもう抜け殻のようにみんな……」
坂口「とりあえずサイコロを振って……」
吉田「そう。で、家に帰って寝ようとすると、デケデーデッデッデーってずっと(頭の中で)音が鳴るんですよ(笑)」
宇多丸「桃鉄のデバッグは……愚問でしたね、一番キツいかもしれないですね。同じところ回るわけですしね」
吉田「キツいっす。1位のやつは、ずっと俺がボンビー連れて歩くからって、それでも破産しないから、バランス変えません?みたいな(笑)。でも、その遊び方(坂口家流の『ゴールせずにボンビーを出さないプレイ』)を知っていたら、当時それをやっていたほうが幸せだったな……」
宇多丸「それデバッグになってない(笑)」
「ゴールをせず、ボンビーを出さないプレイ」は画期的な方法だ!……と盛り上がっているところ大変言いにくいのですが、実は桃鉄シリーズの中には「貧乏神がいない!」というモードがついているものもあるのです。誰かがゴールしても貧乏神が出てこないという、普通に桃鉄をプレイしながらにして優しい世界を実現できる大変素晴らしい機能でございます。ああ、坂口家に伝えたい。坂口さん、ぜひとも今年の年末はこのモードのある桃鉄の購入の検討を!
■今回のピックアップ・フレーズ
吉田「ゲーム会社なので、いいパソコンといいネットワーク環境があるから、みんな帰らないんですよ。仕事もしないし(笑)。朝出勤したらひたすらゲームを会社で」
坂口「ゲームをプレイして、色々な状況を知ることが仕事みたいな感じもあるんですか?」
吉田「それをみんな言い訳にして……」
宇多丸「これ、研究なんで、って」
吉田「僕はそれでプログラマーに、『どうしてこういう仕様なの?』とか質問していたんですけど、大部分の人は単に遊んでただけです(笑)」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)