宇多丸『すずめの戸締まり』を語る!【映画評書き起こし

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』月~金曜日の夜18時から放送中!

「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。

11月25日(金)放送後記

宇多丸:さあ、ここからは私、宇多丸が、ランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する、週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのは、日本では11月11日から劇場公開されているこの作品、『すずめの戸締まり』。

大ヒットアニメーション『君の名は。』『天気の子』の新海誠監督最新作。日本各地を巡り、災いの元となる「扉」を閉める旅をしている青年・草太と出会ったことから、戸締りの旅に出ることになった少女・鈴芽(すずめ)の冒険と成長を描く。主人公・鈴芽の声を演じるのは原菜乃華さん。草太役はこれが声優初挑戦となるSixTONESの松村北斗さんでございます。その他、深津絵里さん、染谷将太さん、伊藤沙莉さん──伊藤沙莉さんも、やっぱりああいう役、ばっちりでしたね──神木隆之介さん、花澤香菜さんなどがご出演。このへん、神木さんとか花澤さんは、新海組引き続き、っていう感じですよね。音楽は、新海監督と三度目のタッグとなるRADWIMPSと、作曲家の陣内一真さんが担当されました。

ということで、この『すずめの戸締まり』をもう観たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、「とても多い」。まあ、それはそうでしょう。賛否の比率は、褒める意見がおよそ6割。主な御意見は、「新海誠監督の新しい傑作。『君の名は。』『天気の子』と比べても格段に良い」とか、「震災を真正面から誠実に扱っている。その姿勢を評価したい」などございました。一方、否定的な意見は、「震災と真摯に向き合った映画とは思えなかった」。まあ、裏返しにね、そういうご意見もある。「死と喪失というテーマを扱ってるのに、ご都合主義的な結末は受け入れづらい」とか、「登場人物たちの行動の動機が不自然」などいろいろいただきました。

代表的なところをちょっとね、省略しながらになってしまいますが、ご紹介しましょう。「サツカネズミ」さんです。「アニメ映画の持つ力をもう一度問い直すような、力強い作品だと思いました。ストーリー的には細かい気になる点はありましたが、安易に手を出せば多くの人から確実に反感を買ってしまう“地震”をテーマに選んだ勇気もさることながら、そのテーマに対して、アニメというフィクションだからこそできる表現で戦いを挑み、必死に希望を見出そうとしているところに感銘を受けました……」。で、ちょっと省略させていただきます。

「……“地震は忘れた頃にやってくる”という言葉の通り、記憶から風化させないことの大切さを問いながらも、つらい現実や運命があったとしても、それでも未来に希望をもって生きていこう、というメッセージは、もしも実写映画だったなら綺麗事にしか捉えられない気がしますが、アニメというフィクションだからこそ人の心に深く届くのではないかと思いました」というようなサツカネズミさん。

あとですね、この方はメールを匿名でいただいてるんですが。「はじめてメールをさせていただきます。クライマックスの舞台となる地で、対人援助職として働いているものです。死に直面した者が己の生に執着を持てなくなる様子や、『日記』を使った心理描写、被災者と訪問者の価値観の相違など、現地の視点からみてもリアルな描写の数々に、『この地』で生きる人たちの気持ちを理解した、誠実な物語であると感じました。特定の災害を扱ったことについては賛否両論あるようですが、私個人としては、『私たち風』の話ではなく、『私たち』の話として明確に描いてくれたことが大変うれしかったです」というようなご意見。

あと「レインウォッチャー」さん。これまたレインウォッチャーさんがね、評が見事でね、ちょっと省略しづらいんだけど、読みますね。「今作は、主人公の鈴芽が、つまりは作り手が、そしてわたしたちが、自身の「喪失」と向き合う旅の物語です。鈴芽が偶然に出会う『閉じ師』を家業とする青年、草太への感情は、単に恋愛…とは言い切れないと感じました。ふたりがはじめに出会う瞬間から、鈴芽にとって草太の存在は、自身の母の思い出と紐づいています」。要するに「会ったことがあるかもしれない」という記憶があるわけですね。

「……その母の存在が、鈴芽の喪失と大きく関わっていて、彼女が目を背け続けてきたものでもあります。その空白地帯に引き寄せられる力が、鈴芽の原動力であったように思えるのです」。要するに彼女の行動原理は、そこの空白地帯だという。「そのような空白を抱えているためか、鈴芽には年齢に似つかわしくなく思える死生観があって、簡単に言えば、自分の命を軽く見ています。いつ『向こう側』に行ってしまっても構わないという意識です。草太と各地の災いを閉じて回る旅を続ける理由が、無意識的に『死に場所』を探しているような心理が見えてくると、違った物語が顔を見せると思いました」。これは面白いし、そうだよね。

「……鈴芽のように、あの災害や、あるいは近年のパンデミック等を経て、どこか自分が借り物のように、不確実な生を生きているように感じている人は決して少なくないでしょう。鈴芽はそのような想いに寄り添い、炙り出す存在ですし、だからこそ彼女の中で、『死に場所』と『生きる理由』が反転し、ただ当たり前の挨拶が当たり前に交わされる日常へと、自らの意思で帰り着こうとする成長が届く射程は、これまでの作品とは比較にならないほど広いのではないかと思います。扱う主題はセンシティブですし、表現がダイレクトすぎるのでは、とわたしも思います。賛否両論あって当然で、たぶんそれが正しい。今作の作り手は、彼らなりのやり方で、わたしたちを全力で『傷つけようと』しているからです。ここで大事なのは、発信側も同じかそれ以上に傷つく覚悟があるか、ということで、それは今作を観れば言うまでもないことだと思います。

扉を閉じる行為は、『拒む』と『守る』の両面を持っています。この作品から受け取ったものを、どうするのか? それはわたしたちに戸を閉める鍵ごと委ねられていて、手に残る確かな重さは、振り返った先へと伸びる道に気づかせてくれます。」というレインウォッチャーさん。もう、「以上です!」っていう感じでね(笑)。以上です! うん、見事な評じゃないですかね。

一方、これね、否定的な意見にも、そういう風に皆さん、説得力ありまして。「江戸っ子中尉と」さん。「賛否でいうと私は『否』です。『脱臭』された、歪みのない『正しい』映画だなあという印象です。さらに、天災、神というもの、物語というものへの向き合い方として、真摯ではない(都合が良い)という感想も抱きました。私には、今作の、『代償を払うことなく、大事な人を彼岸から連れ戻し、天災も防ぎましたとさ、チャンチャン』というのは、『君の名は』『天気の子』の天災に関わる人間表現として後退していると感じたのです」。で、過去作と比較していただいて。「……古来から災害・天災は"どうすることもできない"ものであり、人々はその歴史をヤマタノオロチなどの『物語』として語り継いできました。それにより我々は理解できない超越的なものを、かろうじて受け入れることができたはずです。新海監督は、このことに自覚的であるはずです。だからこそ、彼はそれを捻じ曲げてでも『正しき物語』を描きたかったのだろうと想像します。しかし、今作は代償を支払うことなく彼岸へ『行きて帰りし』を行えます。」という。ちょっとネタバレもあるんで伏せますけれども。「……これが、果たして『向き合う』と言えるのでしょうか? 死と喪失というテーマとご都合主義は、こんなに相性が悪いものかと知れたことは収穫でした。人々の心に寄り添いたいという新海監督の想いは理解できます。しかし、ご都合主義の上に建てられた『正しさ』は砂上の楼閣です。私は歪んでいても、「正しくない」としても、新海誠監督のそういう作品を見ていきたいと願っております」という。

あと、たとえば「紺野まこと」さんは、阪神淡路大震災の被災者だった当事者として、違和感がありました、というような。行動の動機がちょっと不自然じゃないかとか、あとは、結論にちょっと自分は同意しかねる、というようなこととか。皆さん、いろいろいただいております。ありがとうございます。皆さん、賛否それぞれの意見に両方、すごく説得力があって、読みごたえありました。皆さん、ありがとうございました。

『すずめの戸締まり』、私もTOHOシネマズ日比谷、そして109シネマズ二子玉川、それぞれIMAXレーザーで観てきました。どちらも、かなり入っていました。

まずは上映形式の話から。本作のIMAX上映はどうだったのか?

まずすいません、最初、この話から始めることが多くて恐縮ですが。すいませんね、やはり、こういうスペクタクルな劇場体験こそが肝なブロックバスター大作において、この点は重要だと思うので……要は、またまた上映形式の話から始めさせていただきますが。

先週扱った『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』IMAX3Dも結構よかったので、一回目、まずはTOHOシネマズ日比谷のIMAXレーザーで観に行こう、と思ったわけです。と言ってもですね、この『すずめの戸締まり』、アスペクト比は2.35対1。いわゆるシネマスコープサイズです。要は、IMAX画角のシーンとかは、ないわけですね。で、他の日本映画のIMAX上映とされるものも、別にIMAXカメラで撮ってるわけじゃない実写映画とか、別にIMAXで観る意味がそこまであるか?っていうのは、総じてあるわけですけども。

でも、IMAXレーザー、4K上映なら、さぞかし画の美麗さというのは堪能できるであろう、ということで、行ったわけです、TOHOシネマズのIMAXレーザー。すると、本編の上映が始まって、私、愕然といたしまして。なんと、上下左右にスクリーンの余り部分の黒みが見えてしまう、いわゆる「額縁上映」だったんですね。これ、9月9日の『NOPE/ノープ』の回でですね、口を極めて罵ったアレ(笑)ですね。それがなんと、わざわざIMAXのスクリーンを使って……言ってみればより狭く、せせこましく見えてしまう形で、平然と上映されている、という。

これ、シネマスコープなんだから、せめて横の幅だけはいっぱい使えばいいじゃん? でも、狭く使ってるんですね。一応IMAX分、プラスアルファの料金が上乗せされてるんですが、なのに……っていう。もちろん、細部が鮮やかによく見えるとか、そういうレーザー4Kならではのプラスもあるんでしょうけども。正直、僕はただでさえ「IMAXレーザーmini」という風に個人的には呼んでいる、IMAXにしては小さめサイズのこのTOHOシネマズ日比谷のスクリーンを、より小さく使ってしまう……この、言わせてもらえばちょっと不誠実に感じられる上映の仕方が、なんだかな、と思って。

あまりにもムカついて、始まってしばらくは何も頭に入ってこない状態、みたいになって(笑)。で、これってTOHOシネマズ以外のIMAX上映ではどうなのかな?って思って。それをたしかめたくて、それでまた、IMAXレーザー、今度は109シネマズ二子玉川まで足を伸ばしていったんですけど……残念ながら、やっぱりこっちも「額縁」だったんですね。心底がっかり。たぶんだからその、本作のIMAX用デジタルデータ、映像データがもう全て最初からこのサイズになっている、ってことなんでしょうね。なーにが「私たちが大切にしてるのは品質」だよ、この野郎!っていうね(笑)。あの最後のIMAXのクレジットに向かって、内心毒づいてましたけども、私は。

で、ネットで検索してみたら、これまでも日本映画のIMAX上映は、ほとんど額縁だったみたいで。安くないプラス料金を取っておいて、それはちょっと僕は……少なくとも僕は、騙された感を感じてしまいます。なのでね、インターネット・ムービー・データベースとかで、とにかくIMAXのアスペクト比のとこがある、IMAXで撮影された作品はIMAXで観る、それ以外は、特に日本の作品は、そこまでIMAXでやる必要があるのか?っていうことを言わざるを得ない感じですね。

前2作までの足し算思考がシンプルに整理され、エンターテイメントとしての精度が上がってる

と、あくまで作品の外側のネガティブな話から始めてしまいましたが。今回の『すずめの戸締まり』自体はですね、結論から言いますと、僕はか・な・り!楽しみましたし、少なくとも川村元気さんプロデュースの下、「国民的アニメ作家化」が進んだと言える『君の名は。』『天気の子』と連なるこの流れの中では、ダントツで一番評価できるし、好きです! 僕はすごく、そう思ってます。「一番好きな新海誠作品は?」と言われれば、それは『秒速5センチメートル』かな、ってことになりますけど、はい。

新海誠さんというですね、文字通り個性が強いアニメ作家を、ひたすらポップにチューニング……特に今の若い人が「美味しく」感じる要素をとにかく大量にぶち込んで、大成功を収めた2016年の『君の名は。』。そして、その大成功に対する若干の揺り戻しというか、新海誠テイストの中でもアクが強めな部分をあえて振り切って前面に押し出してみせた、そしてやはり興行的には大成功を収めた、2019年の『天気の子』、というこの流れがあって。それぞれ僕の映画時評コーナー、アーカイブされてますんで、参考にしていただきたいですけれども。

で、なおかつ、そういう構造を持ちながら、日本型アニメーションの快楽を詰め込んだような画力、みたいなものがすごくある、というこの二作。つまり、どちらかというと、とにかくいろんな「美味しい」要素盛り盛りの、足し算思考な作りだったと思うんですね、これまでは、お話的にも画的にも。「美味しい」要素。要するにもう、うまみ調味料と、マヨネーズと、ソースと……美味しい! 全部、美味しい! 美味しいの上に美味しいが重なっている!みたいな(笑)。だから、焼きうどんにポテトサラダを加えるみたいな(※宇多丸補足:今回の『すずめの戸締まり』劇中に出てくる、大変美味しそうな料理です)、なんかある意味、そういう感じ。『君の名は。』と『天気の子』は、そうだったわけですけど。

だからこそ、たとえばその『君の名は。』で言うと、普通の娯楽作品が一個だけついてる大ウソ、フィクション的飛躍を、何個も何個も重ねちゃっていて、それを赤い糸的な幻想で強引に束ねてる、という感じだったりするな、とかね。『天気の子』も、特にやっぱりその、拳銃を巡るプロット、いらなくない? みたいなところがあったりとか。要は間違いなく、ごちゃごちゃはしていたわけです。無論、「そこがいいんじゃない!」っていう方がいるのもわかりますけれども。

その点ですね、今回の『すずめの戸締まり』は、設定やストーリー運びは比較的シンプルに整理されてますよね。よりウェルメイド寄りになっているというか……まあ、それが新海誠作品としてはどうなのか?という考え方の角度もあろうかとは思いますが、とにかくエンターテイメント作品としての精度が、アクションやユーモアなど、その「楽しい」要素の豊富さ、うまさなども含めてですね、エンターテイメントとしての精度が、格段に上がったのは間違いないと思うんですね。

また、『君の名は。』も『天気の子』もですね、巨大な災害を──多分に、たとえば神道であるとか、土着的信仰というか、その民俗学的アプローチをまぶしつつ──防ごうとしたり、逆に起こしてしまったり、という話で。それは明らかに、2011年3月11日の東日本大震災の影の表れであるように、我々、特に日本の観客には感じさせるものがあったわけですけれども。

同時にこれが、まさにいわゆるセカイ系の構造として……新海さん、一応ね、そのご自身は、セカイ系なる作品のあり方の代表的作家、と言われてますから。セカイ系的なる構造として、それらはどこか主人公たちの、他の世界からは隔絶・孤立した……それゆえ特別な関係性や存在意義、というものをドラマティックに際立たせるための、一種の装置、道具立て、という風になっているところも、やはりあるように僕には感じられました。まあ、もちろんフィクションなんだから、それはそれであり、っていうのは当然のこととしても。

たとえば『天気の子』の主人公、ミスター一人相撲・帆高くん(笑)。僕の命名です。ミスター一人相撲・帆高くんが、なんか無際限に結局、許されていく。たとえ他の人たちにそのしわ寄せが行こうとも……というその結論は、まさにその2019年夏の大雨で、自宅がちょっぴり浸水に遭ってしまった後だと、より「許せん!」という気持ちになってしまう自分がいたりした、というね(笑)。

カタカナの「セカイ」から漢字の「世界」へ

で、それに対して今回の『すずめの戸締まり』は、劇中ではっきりと明言はされないものの、しかし明らかに主人公は、東日本大震災の被害当事者であると。で、災害などの大きな悲劇、死と隣り合わせの現実というものに、人は、わけてもその若者、あるいは子供は、どう向き合っていったらいいんだろう?というのが、単なる背景や設定ではなく、メインのテーマに据えられている。それゆえに議論が沸く余地が生まれた、というのもありますが、僕はその、正面からですね、自身がずっと抱えてきた問題意識にご自分なりに向き合ってみせたこの姿勢は、はっきり作家としての誠実な成長の証だ、とも思いますし。そしてやはり、日本で今、おそらく最も広く観られるであろうブロックバスター大作でそれをやる、トライする、という勇気と意義というものも、そこは評価されるべき点だという風に思います。

面白いなと思うのは、今回の入場者プレゼントだった小冊子、『新海誠本』というね、もうすごいZINEっぽい小冊子が……ものすごい、どこかで誰かファンが作った雰囲気の(笑)ZINEが配られていて。これがすごい充実した内容で。

この中のインタビューでですね、新海誠さん、主人公すずめとその叔母である環についてですね、親子ではない二人の関係性が物語を駆動する、それ自体はさして珍しくないものだとしつつ、『君の名は。』を作った40代前半の自分には興味が持てなかったモチーフだ……と語ったその後に、逆に『君の名は。』のような「運命の赤い糸のような物語は、今の自分には当時ほどの強度では作ることはできません」という風に言っているわけです。その上で、「『君の名は。』の頃の自分には届かない深度に『すずめの戸締まり』はあると思います」というようなことをおっしゃっていて。

つまり、まさにさっき言ったような、「主人公たちの特別性を際立たせるための装置としてセカイがある」という段階から、今回の『すずめの戸締まり』は明らかに、その「世界」に対するスタンスが変わっている。言ってみればその「世界」が、カタカナの「セカイ」から漢字の「世界」になったような、そういう変化がある、という風に私には感じられました。はい。

最初と最後のタイトルの出方だけで五億点!

何しろまずですね、本作に関して僕が最も推したいポイント。これです。先ほどね、(金曜パートナー)山本(匠晃)さんを制してまで、ここまで取っておきました。『すずめの戸締まり』というタイトル……先ほど言った『新海誠本』によればですね、川村元気プロデューサー案だ、ということです。これはさすが!と思いますが。

とにかくその『すずめの戸締まり』というタイトルがバーンと出る、始まりと終わり。二回出るんですね。二回のそのタイミング、そしてその字の出方……始まりは縦、終わりの時は横、その字の出方。それがもう……最っ高にかっこよくて、気持ちいいです! 久々に言います。この最初と最後のタイトルの出方、もうそれだけで、五億点、出ています! もう最高です、これ。新海誠作品のひとつ、実は大きなポイントとして、これだけ作品規模が大きくなっても、実はね、脚本・監督だけではなくて、編集も相変わらずご自身が手がけられてるんですね。そこが結構大きい。

今回のこのですね、「そもそもそこから逆算して全てを作ったんじゃないか?」っていうくらい……つまり、『すずめの戸締まり』というタイトルが、一番映える始まりと終わり、そこがまず勝負だ!という計算のもとから作られていったんじゃないか?と思えるぐらいに、完璧なこのタイミング、字の出し方。もちろんそこに至るまでの音楽の盛り上げ方など、諸々も含めてですね、監督自身がやっぱり自ら編集をやっていればこその、このもう完璧なタイトルの出方!っていうのはあるかもしれませんね。これを観るだけでも、本当に行く価値がある。(オープニングのほうは)今、各種配信サービスでも無料公開されてます。このタイトルが出るまでの冒頭12分は見れますんで、ぜひ見ていただきたい。そもそも、このタイトルが出るまでの冒頭12分、語りの手際も、めちゃくちゃいいですよね。

まずは、本作の主題ですね。最初に、主人公が抱えている喪失・欠落というものを示す。そして、主人公が今、いる環境を示す。そこから、「封印を取ってしまったらしい」という、お話的推進力ですね。「何とかしなきゃいけない」っていう……で、それを「扉を閉じる」というアクションで解決していく、という本作の基本構造。それを同時に、その扉を閉めたところで、(タイトルの)『すずめの戸締まり』!って……もう、全てをサクサクとテンポよく見せていく、という。非常にその、語り口の手際もいいですし。

あの「閉じ師」、宗像草太というこのキャラクター造型のですね、言ってみれば70年代少女漫画の美青年たち系譜のですね、言っちゃえば浮世離れした感じ……これ、声を当てている松村北斗さんが見事に、このなんというか、70年代少女漫画的二枚目声、というのを表現していてですね。実際僕、最初に観た時に、「なんか70年代の少女漫画……『エースをねらえ!』の宗方コーチみたいだな」って一瞬思ったら、本当に苗字が「宗像(むなかた)」っていうね(笑)。ちょっと字は違いますけども、笑ってしまいましたけれども。あと、本当はこれ、草太役は女性キャラクターで、女性同士のバディ物になっていく、という案もあったそうで。それも見たかったは見たかったですけどね。

ちなみに主人公の岩戸鈴芽というのは、天岩戸を開いた天宇受売命(アメノウズメノミコト) から来てる、というようなことがこの『新海誠本』に書いてありますけれども。また、その草太がですね、呪いをかけられて椅子になってしまう。まあ、グリム童話の『かえるの王さま』とかさ。あと、『美女と野獣』的なことかもしれません。またしても『美女と野獣』、っていうことかもしれませんけどね(※宇多丸補足:『竜とそばかすの姫』が『美女と野獣』オマージュだった、ということを踏まえた発言です)。

まあ、その(椅子化した草太の)動き、アクションの、まさにアニメーションならではのかわいさ楽しさ、というのは言うまでもないですし。そこでSOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビさん、丈青さんが参加した、ジャズが流れ出してね。軽快に……まさに「話が走り出す」瞬間に、ジャズがワーッと流れ出して。はい。というあたりもワクワクさせられましたし。

もうちょっとロジカルに組みたてできないのかな、とは思いつつ

ということで、宮崎から出発して、愛媛、神戸、東京、そして……という風に、元々その新海作品の魅力だった、現実の風景をバックにした、つまり実景ベースの、いわば「観光映画」という面白さも、今回は大全開。特に、神戸での「戸締り」のくだりはですね、遊園地を使ったアクションシークエンスとしても、むちゃくちゃ楽しくてですね。新海誠作品の中で、これほどエンタメに振り切ったシーンっていうのも珍しい、というぐらいじゃないでしょうか。非常に見応えありましたし。個人的には、御茶ノ水駅周辺のあたりを大フィーチャーしてくれたのは、本当にアガりました! 私が本当にね、入り浸っていたあたりなんでね。

そこから東北への……今度はね、すずめの一種「心の旅」、ということですけども。内容的には重苦しくなりかねないところを、神木隆之介さんが声を当てている芹澤というのが、そこでの車での選曲とか込みで、適度のユーモア、息抜きの要素をやっていたりして。非常にバランスも考えられてる。そして、なにしろやっぱりあれですね、原菜乃華さん演じるすずめは、ユーモアとシリアスのバランス……基本的にはそのユーモアを失わない人として、見事にそこも体現されていたんじゃないかと思います。

まあ段々とですね、「ミミズ」とか「後ろ戸」とか「要石」といった、本作におけるその災害と、その制御というか、封印のシステムが説明されていくにつれ、「うん?」ってなるところも、段々増えてくるんですね。

ミミズは、後ろ戸が開くから出てきちゃうのか、要石が抜けたから出てきたのか、どっちなの?とか。あとは、ずっと「場所」に紐づいた話をしてきたはずなのに、結局最後は、要石を刺す場所、「どっちもそこ」でいいんですか?みたいな(笑)。なんか場所があんまり関係なくなっちゃう感じとか、もうちょいこれ、ロジカルに組み立てはできないのかな、とは思いますが……そのへんは日本アニメ特有のですね、クライマックス! ビカーッ! ドーン! 解決!っていう(笑)、その日本アニメ特有のクライマックスイズムとも言えるかもしれませんけど。

個人的にはですね、それよりも、地震って別に日本だけの災害じゃないんだから……それこそ今、インドネシアは大変なことになってるわけで。ちゃんと「世界にも同様の閉じ師的な何かが、それぞれの形でいるんだよ」とかね……これね、要するにですね、神道チックな、民俗学的設定って『君の名は。』にも『天気の子』にも出てきましたけど、それがその、ドメスティックに閉じた視点に終わらない、ちょっとしたバランス取りをしてほしかったですし。

あとは、とはいえ閉じ師にできることは限界もありますよ、と……要するに、起きる時には起きちゃうんです、っていうようなことを、匂わせてはいます。匂わせてはいる。あの草太の師匠の態度で匂わせてはありますが、ちゃんと……要するに、現実の災害被害というのはやっぱり、どうしてもそれは消せないわけで。そんなことを思えば、「全部を防げるわけじゃないんです」ってことはちゃんと言っておくべきだと思いました。

新海誠作品らしさが抑制されていてスマートな作りになっている。満足度、高し!

などなど、思うところは主に後から出てきた……あとは人の意見とかを読んで「ああ、なるほど」って思いましたけど。少なくとも初見ではですね、あんまりそういう細かいことを気にさせない、直線的な面白さっていうのが一貫してある作品なのは間違いないと思います。その上で、二度目以降はやはり、細かい描写の豊かさに、非常に私、圧倒されました。たとえば、すずめと椅子のあのワチャワチャが、本当、楽しいですよね。前半のね。たとえば、草太の部屋ですずめが草太椅子を踏み台代わりにした後のやり取り。あのすずめの、まさにキャッキャッ!とした様子。そういう瞬間瞬間が、愛おしくなる作品。そしてそれはまさに、クライマックスで展開されるメインテーマとも、これは完全に関わることですよね。そういう一瞬一瞬が愛おしいんだと。

そして、最終的にその、「運命的な出会い」とかっていうところではない、まさしくその万人をエンパワーメントする結論も、僕はこれ、素晴らしいと思いました。「とある日本アニメクラシックのオチ」を思わせるあの仕掛け(※宇多丸補足:実はそれは、ある事情から普段と違う服を着た“その人”だった!という……要は映画版『◯◯◯の◯◯◯◯』のラストを思わせる)とかもですね、非常によくできてると思いました。

あと、これだけ言わせて! 注目ポイント。二度目見るなら皆さん、二匹の蝶が出てきます。要所要所で。これがどういう機能を果たしていて、そしてこれが象徴するものは何なのか?……そしてそれを、いちいち説明しないスマートさですね。ここが見事だなと。今回、特にやっぱりあの新海作品として……前だったら説明してた気がするんですよね。二匹の蝶。あるいはね、おなじみのあの、くどくどしいモノローグ(笑)、それはそれで新海作品っぽくていい、くどくどしいモノローグとか、歌がドガジャーン!って出るとか、そういうところも今回は抑制されていて、スマートな作りになってると思います。はい。

とにかく、賛否どちらにも、非常に僕は説得力があるものを感じましたが。個人的にはやはり、タイトルの出方でまず五億点!ですし。特にあの、エンディングの切れ味ですね。エンディングの切れ味、もうちょっと拍手したくなる切れ味がありました。そこからのエンドロールのサービスも、非常に楽しい。私自身は、非常~に満足度の高い作品でした! ぜひぜひ今、劇場でウォッチしてください!

タグ

お金の管理方法、同棲期限を決める…「同棲前にやっておいたほうがいいこと」は? “人生の先輩”がアドバイス

住吉美紀がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイドラジオ番組「Blue Ocean」(毎週月曜~金曜 9:00~11:00)。毎週金曜日に放送している「オトナのなんでも相談室」では、リスナーから届いたお悩みを、Blue Oceanリスナーのみんなで考えていきます。

1月27日(金)の放送は、「同棲前にやって良かったこと」に関する相談を紹介しました。

※写真はイメージです



<リスナーの相談>
「同棲が始まるときにやって良かったこと」はありますか?

周囲に聞くのがいいと思うのですが、私の周りは国際恋愛や国際結婚している人が多いため、同じような状況の友人がいません。ネットにさまざまな情報がありますが、リスナーのみなさまのご意見も伺えればと思います。ちなみに同棲はあと数ヵ月で始まります(神奈川県20代後半 女性 会社員)

ーー今回の相談に対して、番組にはリスナーからたくさんのアドバイスが届きました。この記事では、その一部のメッセージを紹介します。

◆お金の管理
家賃や光熱費、食費はどうやって出し合うか、家具などの大きな買い物をしたときの支払いはどうするかなど、お金のことはしっかり決めておいたほうが揉めずに済みます。私の場合、共有口座と、その口座から引き落としになるクレジットカードを作って、必要な額を毎月口座へ入れる形をとっていました。

このやり方で8年間同棲して一度も揉めたことはありませんでした。家事の分担もしっかり分けたほうがいいです。分担を曖昧にして、ケンカになったことが多々あります……(東京都 20代後半 女性 会社員)

◆ルール変更は臨機応変に、話し合いが重要
今までの関係性から同棲が始まると一変、けっこう現実的な所が見えてきます。お互いが嫌な部分はしっかりと把握した上で、家庭内のルールは決めておいたほうがいいかと思います。例えば、「お金はどうするのか?」「友人との飲み会はどの頻度がOKか?」「家事の分担はどうするか?」など。

あと重要なことは、1回決めたルールで進めて「なんか窮屈だな」とか「このルールはちょっと……」っていうところが出てきたら、ルールの見直しを何度もしていくと、ますます生活しやすくなっていくと思います。やっぱり話し合いが重要ですね(東京都 30代後半 男性 会社員)

◆同棲前の両親への挨拶、お金の管理方法
現在、同棲して1年半が経ちました。同棲前にして良かったことは、両親への挨拶とお金の管理方法について決めることです。彼は「同棲だし、別に挨拶とか必要なくない?」という感じでしたが、妹が結婚するときに(妹の旦那さんが)ちゃんと挨拶しなかったが故に、母が妹の旦那さんをあまりよく思わない感じがあり、その後の関係性を考えると、先に挨拶しておくに越したことはないと思い、半分無理やり(笑)私の両親とのごはん会を企画しました。

結果、いまでも母は「いい青年だよね! 彼氏くんにこれを食べさせてあげて!!」などと言ってくれて、彼のことを気に入っている様子なので良かったなと思います。あと、お金は先に管理方法をきちんと決めておいたので、モヤモヤしたり揉めたりすることもなく、よかったなと思っています(埼玉県 20代後半 女性 会社員)

◆同棲の“期限”を決めておく
というのも私自身、28歳から同棲を始め、ズルズルと同棲を6年間続け、現在まで結婚に至っていません。賃貸で同棲するなら、例えば契約更新までには結婚 or別れるかを決めることを条件にするとか。しっかりやっておけば良かったと後悔しています(東京都 30代 女性 会社員)

----------------------------------------------------
▶▶この日の放送内容を「radikoタイムフリー」でチェック!
聴取期限 2023年2月4日(土)AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です⇒ 詳しくはコチラ
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時:毎週月~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/bo/

Facebook

ページトップへ