宇多丸『アントマン&ワスプ:クアントマニア』を語る!

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』月~金曜日の夜18時から放送中!

2月24日(金)放送後記

「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。

宇多丸:さあ、ここからは私、宇多丸が、ランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する、週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのは、日本では2月17日から劇場公開されているこの作品、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。

アメリカ本国でもほぼ同時公開で、今(ボックスオフィス)1位ですよね? マーベルコミックスのキャラクターがクロスオーバーするマーベル・シネマティック・ユニバースの、劇場版31作目。アベンジャーズとともにサノスの脅威から世界を救ったアントマンことスコット・ラングと、ワスプことホープ・ヴァン・ダインは、家族と平和な日々を過ごしていた。しかし、スコットの娘キャシーの実験のミスにより、量子世界に引きずり込まれてしまう。そこは、「征服者カーン」が支配する世界だった……。

ポール・ラッド、エバンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス、ミシェル・ファイファーら前作主要キャストに加え、キャスリン・ニュートン、ジョナサン・メジャースが出演しております。監督は過去2作に引き続き、ペイトン・リードが務めました。

ということで、この『アントマン&ワスプ:クアントマニア』をもう観たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、「普通」。MCU新作にしては、ちょっと少ないのかな……? 賛否の比率は、褒める意見、ダメだったという意見、悪くもないがよくもない、という意見が、それぞれ「1:1:1」。割れています。ああ、そうなんですね。珍しいかもね。

主な褒める意見は、「MCUフェイズ5の始まりでありつつ、ちゃんとアントマンらしさもあり、楽しかった」「主人公スコットがきちんとヒーローとして成長していてグッと来た」など。一方、否定的な意見は、「良くも悪くも普通のヒーロー映画。アントマンらしさや目新しさがない」「長いドラマの途中を見せられてるようで、ストーリーにのめり込めなかった」などございました。とにかく、褒めている人もけなしている人も、そんなに熱が高くないっていうか。わかりますよ、それはね。そういうのもわかりますよ。

「フェイズ5、並びにMCUの今後に期待できる、大満足の作品」

ということで、代表的なところをご紹介しましょう。ラジオネーム「すゆ」さんです。「初めてメールさせていただきます。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』、面白かったです! 正直、予告編の時点ではちょっと不安でした。アントマンという、いわゆる一般人に近い人がヒーローとして頑張る、というのがシリーズの特徴であると思っているので、そこから逸脱しすぎてしまわないかな?と不安だったのです。

が、観てみればちゃんとアントマンらしさがあり、それでいて量子世界のことも魅力的に描かれていて非常に楽しめました。ストーリーの面で特に良かったのはアントマン=小さく取るに足らないものの象徴として描かれていたことです。カーンに虐げられた人々。その先頭に立ち、暴れまわるアントマン一家とアリ軍団は、まさに『小さき者たちからの逆襲』といった感じで、見ていてとても痛快でした。また、アントマンことスコット・ラングが『あり得たかもしれない自身の姿』と対面するシーンで、初めは自分のその姿に反発こそしますが、最終的には『どんな人生を歩もうとも娘を救い出す』という一点で奮起し、そういう小さな現実をこそ守り抜こうと頑張るスコットの姿は、彼のヒーロー像として納得のいくものになっていたと思います。

それと同時に、『こんな世界は嫌だ』と言わんばかりに量子世界から逃れ、破壊しようとするカーンと、どんな世界であっても揺るがずに自分の大切なものを守り抜こうとするアントマンとの対比にもなっていて、彼が最初にカーンと対峙する意味もしっかり込められていたのではないでしょうか。最近MCU作品がちょっと追いきれなくなっていたのですが、それでも改めてフェイズ5並びにMCUの今後に期待できる、個人的に大満足の作品でした」というすゆさん。

一方、「ヘクター」さんはダメだったという方です。「しっかりしたストーリー、驚きのVFX。あのキャラがここで!?だけでなく魅力的な新キャラ達。そしてラストのあの感じ。及第点以上だと思います」。概ね褒めてるんですね。めちゃめちゃ褒めてるのに近いけど。「しかし、ストーリーにのめり込むことはできませんでした。原因はやはり今後、フェイズ6まで続くことを知っているからだと思います。何が起こっても『これは次に回収するためのネタでしょ』と変な見方をしてしまい、後半になればなるほどそれは加速していきました。ドラマの途中を見に行っているようです。

フェイズ4ではヒーローの終わりの話か始まりの話、再出発の話が多かったためあまり気になりませんでしたが、今はフェイズの大きなストーリーに奉仕している『小ストーリー』を見る感がはっきりとしてきて、大切なクライマックスですら、悪く言うと、『だってこのあと3~4年かけてこの行動が○だった、×だったとかあって、結局それで勝つんでしょう。よくわからないし、どうでもいいです』っていう気持ちになってしまいました」。それを言い出したら結構、元も子もない気もするが……(笑)。「フェイズ制の公表のタイミングや内容については、作品へののめり込みを下げてしまうなぁと感じました」。

まあ、でもたしかに。後ほどもちょっと、いろいろフェイズ制みたいなことを説明しますけど、たしかにフェイズ3までの、要するに対サノス戦と違うのは、あの時はやっぱり、とはいえたとえば『アベンジャーズ』でさえやれるかどうかわかんなかったし……うまくいくかどうか。で、サノスまで本当に行くかどうかもわかんない中でやっていって……一回、ちゃんとワンターン終わってるから。(それに比べて今は)「どうせこうなるんでしょ」感がより強い、っていうのは事実ではあるよね。たしかにね。なおかつ、その結構先のタイトルまで発表されちゃってるから。わかります。

ということで『アントマン&ワスプ:クアントマニア』、皆さんメール、ありがとうございます。私も、TOHOシネマズ日比谷のIMAXレーザー3D、そして丸の内ピカデリーのドルビーシネマ3Dで、2回、見てまいりました。

ドルビーシネマでの3D、初めてだったんですが、3D眼鏡、これはいわゆるシャッター方式、いわゆる「(上映が終わったら)返すやつ」ですよね。ちょっと重く、視界も狭いが、さすがにとてもクリアな画。そこはすごく良かった。ただ、私のようなメガネ・オン・メガネ派としては、やっぱり鼻が痛くなってちょっとつらい、っていうのはありましたが。

入りは正直、まあまあというか、MCU新作にしてはちょっと……もうちょっと(いてもよかった)。僕、休日に見たんで、もうちょっといても……っていう気もしましたけどね。

MCUシリーズ。ここから観始めるので問題ないし、改めて観始めるならここからでいい

ともあれ、ポール・ラッド主演、ペイトン・リード監督による『アントマン』シリーズ3作目にして、さっきから言ってるMCU31作目……ドラマシリーズも入れると、もっとありますけども。MCU全体の中でも、「フェイズ5」の始まり、という風に位置付けられる、非常に重要な一作ということになっております。

と、こういうことを言うとですね、MCUをそれほど熱心に追いかけていない人、ほとんど観てない人は、事前の知識のハードルが高い感じ、どうしてもすると思うんですよね。はい。で、今日は主に、ここらへんの人にアピールしたいと思います。まあMCUをずっと観てる人は、そりゃあもう俺が何を言わなくたって観てんでしょうから。そうじゃなくて、MCUはそんなに詳しくないとか、あんまり観たことないっていう人に言いたいんだけど、私、個人的にはですね、むしろ本作、ここから観始めるので全く問題ない、MCUシリーズ、改めて観始めるならここからでいい、というような一作になっていると思います。

もちろん過去作を観ていれば、よりわかる部分っていうのもあるけど……いつも言ってますけど、こういうものは、知らなくても大体わかるようにはなっています! ですし、なんならここから観始めていいですよ、っていうのは、おそらく実際、送り手たちの意図の内でもあろうかと思うんですよね、今回はね。要はですね、一種の「仕切り直し」タイミングなので、ということです。

「多元宇宙、こういう感じなんで! 慣れておいてくださいね!」=フェイズ4

何の仕切り直しかといえばですね、改めて説明しておきますけど、「MCU全体を通しての共通目標たる、ラスボスの再設定」、ということですね。MCUフェイズ3までは、サノスというのが全体の絶対的ラスボスとしていて、それを何とか、スーパーヒーローたちみんなが力を合わせて、最後にはやっとこさ倒した。それがフェイズ3。で、それを受けたフェイズ4は、言ってみればアフターサノスの余波と、次のフェイズ5以降の、後ほど言う新たなラスボスの設定と大きく関わる「マルチバース(多元宇宙)」概念を、なんというか、後から急に小難しいことを言い出したがためにみんながついてこれなくなったりしないように(笑)、事前に観客たちに「まあ多元宇宙、こういう感じなんで! 慣れておいてくださいね!」って……要するに観客たちにマルチバースを慣れさせておく、ちょいちょいその話を出しておく、というようなことを、全体としてはそれぞれ散発的に見える感じでやっていた。これがフェイズ4。

で、僕自身は、フェイズ4ですね、前に『ワカンダ・フォーエバー』評の時に言いましたけど、これまでのヒーロー物のような力勝負、運勝負ではない……要するに敵をぶっ殺すとか、敵が死んで終わりとか、「敵を倒す」っていうことがゴールっていうわけじゃなくて。「ヒーローが勝つ」とはどういうことなのか? つまり、正しい者だから、ヒーローだからこうなったんだ、というような、より本質的なヒーローの在り方を問うような模索、みたいなことをずっと続けていた、という風に私は考えていて。そこがフェイズ4の、面白かったな、さすがMCUだな、っていうところだと思ってるんですが。

まあとにかく、フェイズ3の大団円と、フェイズ5からの再スタートを、「繋ぐ」役割だったのは間違いないフェイズ4。で、さあ、ここから再出発、ここからが再び本番! というのが今回の『クアントマニア』なわけですけど。なので、一応『アントマン』3作目、っていう位置づけにはなってますけど、『アントマン』の前の2本とは割とはっきり一線を引いた、なんなら前の2作が二部作で、ここからはやはりまた別の新しい章が始まっている、というような、そんな塩梅の作りになっているわけですね。

『アントマン』シリーズらしからぬ? 舞台の大半は「異世界・非日常」。前2作は見直さなくてもいいかも

まあ監督こそ同じペイトン・リードですけれども……ちなみにこのペイトン・リードが、最初の1作目、エドガー・ライトの降板を受けて、いかに頑張って独自の作品世界を作り上げていったか? 2015年10月17日、私は映画時評をしましたので……これ、ただ、書き起こしが残ってないんでね。なんですけども、いろいろ言ってますんで。

とにかくその1作目と、続く2作目『アントマン&ワスプ』、2018年の作品。これはガチャが当たらなかったんですけど、(その2作目では)より拡大された、オフビートな、即興感のある会話コメディ感。そういう部分がですね、今回の『クアントマニア』だと、かろうじて「読心術」と「七つの穴」っていうくだり(笑)、あの会話のくだりに色濃いぐらいで、全体としてはかなり後退している。あの「七つの穴」のところは、完全に今までの『アントマン』テイストだと思います。お互いに「うん? なに?」「うん? うん?」みたいな……やたらと話が前に進まない会話が続く感じ(笑)、っていうか。

で、そういうたとえばオフビートな、即興感のある会話コメディ感みたいな面を大きく担っていた、マイケル・ペーニャもデヴィッド・ダストマルチャンもT.I.も……あのズッコケ3人組、今回はいないことになってますし。

そもそも、MCUの中でも一際小さく狭い、日常的な、身近な話……だからこそ、それが実は、最も大きなスケールのSF的展開にむしろ接続していく、というのがまた面白かった前の『アントマン』二部作に対してですね、今回の『クアントマニア』は、対照的に、大半が異世界、非日常が舞台なんですね。日常の普通のシーンは、もう頭とケツのちょろっとしかない。

また、その舞台となる──一応カッコ付きで言いますね──「量子世界」。これ、要するに、科学的にどうこうの量子世界じゃないんで。1作目で、その量子世界を一瞬見せる……幾何学的で無機質な、『2001年宇宙の旅』感あふれる描写、あれとも違う。とにかく1作目のあの感じが、僕はいまだに一番キテたな!っていうか、あれが一番ワンダーだったな、って気がするんですけど。

あるいは2作目の、いかにも量子世界っぽい「不安定感」、こう全てがブレている、みたいな……ともまた全く違った、要は今回の量子世界はですね、単に「また別の宇宙が広がってます」ぐらいの、はっきり言えば単純に『スター・ウォーズ』とか『フラッシュ・ゴードン』のような、スペースオペラ的なそれなんですね。単に「もう1個、宇宙があります」ぐらいの。別にあれが宇宙でも何の問題もない、ぐらいの感じなんですよね。

なので、下手に前2作と見比べても、ノイズを増やすばっかりなので。なんなら僕は、その2作を見直すとか見比べるとかしない方がいいぐらい、別物だと思ってます。

娘のキャシー役はエマ・ファーマンさんからキャスリン・ニュートンさんへ。いろいろと仕切り直し感、強し

違うと言えばですね、娘のキャシー役。『エンドゲーム』で成長した姿を演じていたエマ・ファーマンさんという方は、なんと役柄交代を、ディズニーの作品詳細発表で知った、という。ちょっとかわいそうなんだけど。

で、とにかく本作からはキャスリン・ニュートンさんが演じていると。もちろん彼女、キャスリン・ニュートンさんが持つやんちゃなムード、華こそが、本作にはふさわしいのもこれ、明らかです。エマ・ファーマンさんは、しんみりした大人感、というところで『エンドゲーム』に起用されていたと思うんで。まあ合っているは合っているんですけども。

ということで、キャシー役も変わっているし。脚本も今回、初めてポール・ラッド自身が共同脚本にクレジットされておらず……だから、今回はほぼ全編がVFX入りショット、なんかしら特撮が入ってるようなショットばかりの映画なんで、そういう即興的なギャグなどを入れる余地が、今回はほとんどなかっただろうし、ということで。

脚本は、ジェフ・ラブネスさんという方が、単独で手がけていらっしゃいます。このジェフ・ラブネスさんはですね、DCとかマーベルコミックでライターとかをしていた方なので、基本その流れで来てるんですけど、映像作品だと、SFコメディアニメの『リック・アンド・モーティ』とか……あとですね、テレビトークショーの『ジミー・キンメル・ライブ!』の作家とかをやってきた、という方であって。だから、『アントマン』らしいそのSF+コメディテイスト、みたいなものは、もちろん得意な方ではあるんでしょうけど。とはいえ、大抜擢でありますよね。ジェフ・ラブネスさん。

ということで、いろいろ仕切り直し、再スタート感の強い今回の『アントマン&ワスプ:クアントマニア』、ということなんですね。

本作の一番の美点は『スター・ウォーズ』っぽい様々なクリーチャーたち!

で、大きく言って二つの要素からできています、今回の『クアントマニア』は。まずひとつ目は、さっきもちょっと言いましたが、スペースオペラ要素ですね。特に前半、『スター・ウォーズ』っぽいな、という風に感じられた方も非常に多いんじゃないかと思います。

「『スター・ウォーズ』っぽさ」を醸すファクター、っていうのはいろいろあるんですけども、本作の場合は、とにかく「辺境の地でイキイキと生活する様々なクリーチャーたち」! このアイディアとデザインが、まずめちゃくちゃ楽しいわけです。はっきり言って、本作の一番の美点はそこだと思います。あのね、それこそアップになったりもしない、ピントすら合っていないような、その座席の奥に座ってる……いろんな場所に座ってる、いろんなクリーチャーたち、「量子世界人」たち。そのディテールがまあ、本当にいちいち凝りまくってて、すごい面白いんですよね。奥の方になんか、体全体が無重力なの?みたいな、なんか(体の表面に衛星のようなものが)浮いてるような変なやつがいたりとか……とにかくね、全部ははっきり見えないんだけど、いちいち面白い!っていう感じなのね。

あとあの、乗り物もね、普通のスペースシップ風に見えて、実は生き物ベースになっている!とか。なんなら建物も生き物であり、兵器であり、っていう。あの建物のフィギュア、ほしいんですけど! ぐらいの感じで、まずはそこが面白い。要は『スター・ウォーズ』でいうと、カンティーナの、酒場のシーンがありますが、あそこを最新技術で大幅グレードアップしてみせた版、みたいな。そういうのがまず、前半は展開されて。

他にもですね、「『スター・ウォーズ』的」な設定や展開、細部などは、本当にいちいち挙げているとキリがないんですけども。そもそもプロダクションデザイナーのウィル・テイさんという方、近年の『スター・ウォーズ』シリーズのコンセプトアートなどを数々手がけてきた方なので、それもまあ当然でもあるし。あとはですね、ペイトン・リード監督自身は、さっき言った『フラッシュ・ゴードン』とか、あと『バーバレラ』とか、あとは60年代~80年代のパルプSFの表紙アートとかですね、要は「『スター・ウォーズ』以前」の、もっと毒々しい、カラフルなスペースオペラ、みたいなものも参考にしたとおっしゃっていて。

で、それは言うまでもなく、MCUにおいては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以降の、スペースオペラ的ラインというのがありますよね? たとえば3作目以降の『ソー』もそうですけど、そういうものともスムースにフィットするものでもある、と。あとその、大物俳優のギャグ的カメオ出演。これもやっぱりMCUの、主にスペースオペララインに顕著なものでもある、みたいな感じだと思います。

本作から強く連想したのは「劇場用長編ドラえもん」シリーズ。そう思って見ると、前半のアレって……

ちなみにですね、本作は、「普段は日常レベルのSF的ドタバタを繰り広げている(広い意味での)“ファミリー”が、ふとしたことから異世界に行き、最初は「なんだ、お前ら?」みたいにヨソ者扱いされるんだけど、なんだかんだでその世界を救う英雄的活躍をして、最後はお礼なんかを言われて帰っていく……」というこの構造。つまり、主人公たちと観客が、同じプロセスで異世界の仕組みを知ってゆく、というこの作り。

私、個人的にはとても、『大長編ドラえもん』シリーズを強く連想しました。すなわち、劇場用長編ドラえもんシリーズを強く連想しました……と思って見てるとですね、ご覧なった方はおわかりの通り、前半に出てくるアレとか、完全に「◯◯◯◯●●●●●」じゃん!とかね(笑)(※宇多丸補足:ドラえもんひみつ道具の中でもかなりのビッグネームです!)。そもそもあの、小さくなったり大きくなったりっていう、このギミックがそもそも、「ドラえもんっぽい」んですけど。

で、そんな、言ってみればですね、「『スター・ウォーズ』など、スペースオペラをモチーフにした時の『大長編ドラえもん』」的な要素が、まずひとつ、大きくある。

そしてもうひとつ、この『クアントマニア』を構成する大きな要素が、最初の方でも言った通り、「MCU全体の今後の共通目標としての新たなラスボス」の、「紹介」ですね。まあ、言っちゃいます。征服者カーン……発音は「ケーン」でもいいですけども、中盤ほぼ、その征服者カーンの紹介編、となっております。

圧倒的カリスマを持つラスボス。パーフェクトに演じたのは若き名優ジョナサン・メジャース

ここでですね、MCUの強さというか、うまさというか……なのはですね、言ってみれば荒唐無稽、下手すりゃ単にガキっぽい、バカっぽいとなりかねないこういう世界観に、しかしきっちり、本当にうまい、重みのある役者をキャストすることで、バカバカしく見せない……どころか、ドスンと来る感動すらもたらしてみせる、という。そのクオリティコントロールだけは本当に、一貫してやってますね。そこがやっぱり偉い。

今回のその、征服者カーン。何が征服者か?っていうと、その時空……多元宇宙も、そしてタイムトラベル的な、時間をも超える。本人そのものは普通の人間なんだけど、そのテクノロジーをもって、圧倒的にその全てを征服している、という征服者カーン。

演じているのは、ジョナサン・メジャースさん。『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』、あれですごく注目されて。それ以降、ドラマ『ラヴクラフトカントリー』とかね。あとは日本ではNetflix公開になっちゃいましたけども、『ディヴォーション』っていうあの戦闘機映画だとか。そして、来たる『クリードⅢ』ですよね! とにかくアフリカ系アメリカ人男性俳優として、完全に次世代スターっていうか、もうスターになってますけどね、っていう感じのジョナサン・メジャースさん。

たとえば今回の作品では、どちらかといえばサノス的な、「大局を見て、良かれと思って」型ヴィラン(笑)、それゆえの真摯さ、ゆえの止められなさ。怖さ。これをばっちり体現されていますし。しかも、それと対峙するのが主に、ミシェル・ファイファーなんですよね。だからその、うまい人同士、名優同士ということで、まるでシェイクスピア劇を見ているような重厚感が、やっぱりちゃんと出てたりする、ということです。

しかもですね、カーンというキャラクターの設定上……さっき「今回は」って言いました。今回は、「大局を見て、良かれと思って」型ヴィラン。僕、最初観てて、「ああ、またサノスみたいな動機か」って思ったんですよ、一瞬。でもそれは、「今回は」なんですよね。やっぱりカーンというキャラクターの特性上、既にTVシリーズ『ロキ』の最終回でも見せていたように、また全く違う人格・キャラ、しかし同一人物でもある何者か、というのを、延々このジョナサン・メジャースさんは、演じ分け続けることになってるわけですよ。

だから、これはよっぽど見込まれないとできない役ですよね。よっぽどの力量がないとできないし。ちなみにあの『ロキ』の最終回に出てくるカーンは、見ると逆に混乱するので(笑)、先には見ない方がいい気がします。まあ、先にみんな見たんだけどさ! あの時点で訳わかんなかったのは、当たり前ですよね。ちょっとイレギュラーなカーンすぎるのよ!(笑)

そしてもちろん、説明不要で見てわかる圧倒的なカリスマ、っていうのも当然、必要なわけ。もう見て、ラスボス!ってわかる、っていう。あとは、そうですね。ジョナサン・メジャースさんはまもなく『クリードⅢ』で敵役を演じるぐらいですから、生身のファイトの強さ。SFXじゃない、本当の生身の……最後は本当にむき出しのボディで戦うわけですけど。生身のファイトの強さも含めて、とにかくトータルでこの役に求められるものを、ジョナサン・メジャースさん、まずはパーフェクトに、初手としてはクリアしてみせている。

なおかつ、そんな、要するに人間的に見るからにデカい男がですね、「お前なんか小物だ」「アリンコと話してろ」と見下げ続けている、このアントマン。MCUの中でも、限りなく普通の人、スコット・ラング。先ほどのメールにあった通り、彼や、その彼と同様の立場の彼らたちがですね、「小さき者」ならではの意地とチームワークで、一矢報いる。あくまでやっぱり小さき者たちは、チームワークで一矢報いるわけです。その様が痛快だし、グッとも来る、という作りになっている。

なので、先ほどメールにもあった通り、カーン第一戦がアントマンで、なおかつ戦いの結果がこう、というのは、やはりMCU全体の流れとしても、よく考えられた絶妙なラインだなと思いますね。これ、やっぱりそのなんか、たとえばもうちょっとアントマンより素で強いやつが戦ってある結末を迎えると、ますます段取りっぽくなっちゃうんだけど。やっぱり初手はアントマン、これはすごくいいなっていうか。

やっぱりアントマンが毎回、一番大きい話の最初のフリをする役なのは、理由があるな、っていう感じがしますよね。

ここから観始めてもいい一本。そしてMCUを今後観続けるなら間違いなくマストな一本!

あとはですね、クライマックスの量子世界大合戦。これまでのMCUの大合戦シーンとの差別化、そしておそらくは観客にとって見やすさ、わかりやすさのために、大合戦なんだけど、あえて橋の上とか、実は狭い道というか、限定的な空間設定にしているところも、ナイスプロの気遣い!といった感じじゃないでしょうか。『エンドゲーム』と逆で、今回は画的に、全体に「左から右」に攻めている画の流れになっているのも興味深い。未来に向けて可能性を開こうとするカーンを抑え込む、っていう今回の構図だからか?……みたいなことを考えて見るのも興味深いですね。

まあ、この世界の中で何がありなしなのか、要するにこの世界の中の物理的ルールがいまいち明白でないがゆえの、よく考え出すとどういうこと?な部分は多々ありますが(笑)。まあ、そこは『大長編ドラえもん』ですから、「まあ、そういうもんか」でいいと思います。

あと、モードック! ついに出た、モードック。映画オリジナル設定で出てきて、非常にいい役になってるんです。最終的には、美味しい役なんだけど。ただですね、あいつがかつてやった悪行……皆さん覚えてます? あいつの悪行、かなりMCUの中でも、結構不愉快度が高めなんで。「おめえ、死に際にそんぐらいしたぐらいで、なんかいい感じ、出してんじゃねえぞ?」って俺はちょっと思いましたけど(笑)。はい。

ということでですね、まとめますけど、前の『アントマン』とはちょっとテイストが違う、どっちかっていうとファミリームービーとして仕上がっている感じはありますが、でもこれはこれでもちろん、十二分に楽しいですし。あとあの、キャスリン・ニュートンのキャシー。要するにアントマンを継いでいく感じだとは思うけど、いずれ……最近多い、MCUのヤング女性チーム。あそこに合流してやいのやいのやる絵面っていうのも、きっとすごく華のある方だから、それも楽しみだな、と思ったりします。

ということで、ここから観始めてもいい一方、MCUを今後観続けるなら間違いなくマストな一本。特にカーン紹介編として、エンドクレジット途中のあのボーナスシーンを含めて、マストなのは間違いない。年々その、MCUハードル高まってるな、という風に感じるあなたにこそ、この一作からもう一回やり直して、ってのを勧めたいし。皆さん、思い出してください。『エンドゲーム』の時に、リアルタイムで毎作毎作観てきた、積み重ねてきた人こそが、『エンドゲーム』で最大感動を得たんですよ! だから、それをもう一回やる、今なら乗っかるチャンス!っていうことは間違いないので。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

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