川田十夢、TOKYO 2020開会式に感じた歯がゆさを語る「わが国でもARをやるべきだった」

開発ユニット・AR三兄弟の川田十夢が、「もし自分が五輪の開会式を演出するならこうしていた」と勝手に考えていたという、自身のアイデアを形にした現在開催中のイベントへの思いなどについて語った。

川田が登場したのは、J-WAVEで22年2月23日に放送された特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG』(ナビゲーター:稲葉友/藤原麻里菜)。TDKのブランドキャンペーン「尖った大胆さ、くれよ。」と連動してお届けした番組で、尖った偉業を成し遂げ、今なお挑戦し続ける各界を代表するトップランナーたちがゲスト出演。また、事前に募集した「尖った夢」をもつリスナーたちが活動資金10万円を懸けて、自身の実現したいことをプレゼンした。

就活で「未来の履歴書」を書いた理由

かつてミシンメーカーに10年間勤務していた川田は、面接時に「未来の履歴書」と銘打った“尖った”履歴書を提出したという。

川田:まず、入社の仕方からして尖っていました。学生のとき、周りには「君たちは才能がないから就職活動をするんだろ? 僕ぐらいになると向こうからオファーがくるから」と吹聴していたんですよ。そしたら留年して、それどころじゃなくなっちゃった(笑)。でも1年後、ミシン会社の取締役から「ぜひうちの会社に来てください」と連絡をいただいたんです。

稲葉:えぇ!? このときは普通の学生だったんですよね?

川田:普通の学生でしたけど、当時、色々な会社の広告とかを勝手に作り、自分のHP上で公開していたんですよ。それを、たまたま見つけて気に入ってくれたらしく、ヘッドハンティングという形で誘ってくれました。こうした経緯でその会社に就職することになったわけですが、ただ入社するだけでは面白くない。そこで、僕は天才肌で未来が見えているから、本来過去の経歴を書くべき履歴書に、10年先の未来まで書いたんです。そしたら、すごく引いてましたね(笑)。

稲葉:相当、尖ってましたね(笑)。

藤原:尖り過ぎて嫌われてないか心配になります(笑)。

川田:嫌われてました。入社後は食堂とかで無視されてましたから(笑)。でも、最終的に「未来の履歴書」に書いたことは10年かけて全部実現させたんです。

藤原:それはカッコいい! アニメみたいな話ですね。

「わが国の開会式でもARをやるべきだった」

3月2日からは、川田の手がけるオンラインイベント「バーチャル身体の祭典 VIRTUAL NIPPON COLOSSEUM」が配信。イベント開催の背景には、TOKYO 2020オリンピック開会式への歯がゆさが秘められていた。

川田:先日行われた北京冬季五輪の閉会式で、ARを活用していたんですよ。それを見て、わが国の開会式でもARをやるべきだったんじゃないかと改めて思ったんです。もともと、TOKYO 2020のときからそんなことを考えていて、委員会に何人か知り合いがいたので、きっと僕のところにもお声がかかるだろうなと思っていたら、終わっちゃった(笑)。そこで、「僕がもし五輪の開会式を演出するならこうしていた」と勝手に考えていたアイデアを形にしたのが今回のイベントなんです。

同イベントには、TOKYO 2020閉会式でソロパフォーマンスを披露したダンサーのアオイヤマダ、同大会スケートボード女子ストリート金メダリストの西矢 椛、東京パラリンピック走り幅跳び5位入賞の前川 楓、音楽家でアーティストの蓮沼執太、お笑いコンビの男性ブランコ、舞踏集団・大駱駝艦など、多彩な顔触れが出演。川田は「ジャンルや性別など様々なことを取り払って、一つのパフォーマンスをするというARを作った」と自信をのぞかせる。

稲葉:今並んだ名前が、一つのイベントに出演するということがイメージ付かないですね。

川田:オリンピックで「スポーツを取るか、文化を取るか」みたいな話があったでしょ? 僕はナンセンスだと思っていて。あのとき、スポーツも文化も音楽も、すべてのものが開幕するべきだったんです。

藤原:今回のイベントもそうですが、川田さんのすごいところは、身体的なパフォーマンスも含めてテクノロジーの活用法を提示しているところだと思っていて。テクノロジーとカルチャー、パフォーマンスの区切りをなくそうとしていることがめちゃくちゃかっこいいし、未来に革命を起こす何かになるんじゃないかなと注目しているんです。

川田:テクノロジーと聞くと無機質な印象を持つかもしれませんが、僕は温かいものも表現できると考えているんです。技術は冷たいだけではなく、熱かったり、くだらない方向にも振れる。だからこそ、お祭りを喚起するようなことも可能だと思い、このイベントをやることにしたんです。

川田が危惧する「2045年のシンギュラリティ」

“無駄づくり発明家”としての肩書を持つ藤原は、「川田さんはディストピア(暗黒世界)を食い止める人」と称賛する。

藤原:どんどん技術が発達していって、利便性にしか技術が使われなくなると、SFで描かれるようなディストピア的な管理社会になっていく気がします。だからこそ、私たちがその足を引っ張るべきなんです。社会の足を引っ張らないと、平和に楽しくテクノロジーと共存することができなくなると思うんですよね。

藤原の話に共感しつつ、川田は「僕は2045年のシンギュラリティを気にしていている」と切り出した。シンギュラリティとは、AIが人類の知能を上回る「技術的特異点」のこと。2045年にこの転換期が訪れると予測されていることから、「2045年問題」とも呼ばれている。

川田:人工知能へのディープラーニングのために「データを食わせる」という表現があるのですが、そうじゃない。「データを召し上がってもらう」なんです。そういう気持ちでやらないと、いつかAIからしっぺ返しを食らうんじゃないかな。

伝統芸能「能」にフォーカスした新たな試み

独自の視点でテクノロジーと人間の未来を見据える川田。しかし一方で、日本古来の文化にも深い興味を持っているようで、これから手掛ける伝統芸能をフィーチャーした新たな企画の構想についても語った。

川田:今年の5月に、伝統芸能の「能」を現代的に拡張するという試みを行う予定です。能には650年の歴史があり、その長い伝統に根差した格式ある美しい動きがある。でも、その動きをもって現代人の行動・気持ちを表現するということは、まだ行われていません。たとえば、スマホ歩きや、婚活アプリで「好みか好みじゃないか」をスワイプするシーンを、能でやってみるとか面白そうじゃないですか? あと、LINEのスタンプが送られてきたときの音が、能の鼓っぽくも聞こえるので、そういったことを踏まえて能を再構築することを考えています。

稲葉:めちゃくちゃワクワクしますね。僕は普段俳優をしていますが、能と同じ伝統芸能の一つである歌舞伎に従事する歌舞伎役者さんと共演することがあるんです。そういう方がコメディなどで、歌舞伎の下地を利用した演技を本気でやると、もう絶対に勝てない。笑いとしても150点だし、俳優の身体表現としてもめちゃめちゃクオリティが高いんです。こんなふうに、今の笑いを昔からの動きを使って表現すると面白いということを目の当たりにしているので、川田さんの発想を聞き、純粋に見てみたいという気持ちになりました。

川田:格式は大事ですけど、そのままにしておくと古くなり、固くなってしまう。現代の空気に触れる箇所を作って、柔らかくすることも必要だと思うんですよね。

プレゼン企画では、川田も驚愕する「尖った夢」をもつリスナーが登場!

最後には、「尖った夢」をもつ挑戦者が活動資金として最大10万円を懸け、自身の実現したいことをプレゼンする企画「THE FANG PITCH」が行われた。川田は、藤原、TDK株式会社イノベーション推進部部長・佐藤俊弥さんとともに審査員を務めた。

この「THE FANG PITCH」はポッドキャストでも楽しめる。現在はVol.4まで配信中。Vol.5は3月18日(金)、Vol.6は3月22日(火)、Vol.7は3月25日(金)に配信予定。



挑戦者は、ネット番組のディレクター・構成作家を務める小林和明さん。小林さんの尖った夢は、世界中の雑学を詰め込んだ雑学辞書を作ること。活動資金の10万円は、雑学本の購入費用などに使う予定だという。小林さんによると、6年半の期間で書き溜めた雑学は既に1万3000ページ分に及んでいるといい、この中には川田に関する雑学もあった。

その雑学とは、川田がピン芸人・マツモトクラブと小学校の同級生であり、2人が卒業アルバムで目立とうとして、写真撮影のときに示し合わせて休んだというもの。しかし、もう一人休んだ生徒がいたために、単なる休んだ生徒が多いクラスになってしまったというオチの話だった。

これを聞いた川田は「すごい! 本人的にももう忘れてたようなことなのに! ヤバいね」と仰天していた。さらに藤原、稲葉に関するコアな雑学を披露し、スタジオの度肝を抜いた小林さん。そんな挑戦者に、雑学により過去を掘り起こされたことで「温かい気持ちになった」という川田は賛辞を送る。

川田:「雑学辞書」という名前から、トリビア的な「明日使える知識」のようなものだと思ったんですけど、全然違いますね。検索したときに100個目に出てくるような、ストライクゾーンが広すぎる辞書ですね。

結果はもちろん、審査員3人全員一致で「マネー成立」だった。

(構成=小島浩平)
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【西武】豊田清投手コーチインタビュー 「チームが噛み合わない時こそ投手で抑えたい」

4月18日放送のライオンズエクスプレスでは、埼玉西武ライオンズの豊田清投手コーチにインタビューした模様を放送した。今のライオンズ投手陣への手応えについて訊いた。

――投手コーチとしてここまでの(4月17日、対ロッテ4回戦前)投手陣への手応えをどう感じていますか?
豊田「まず開幕に今井達也が圧倒してくれて、100点満点の滑り出しが出来たと思いますし、そのなかで先発投手陣が今井達也に負けないように続いてくれたことが本当に頼もしく思っています」

――今井達也投手は防御率0.43(4月16日時点)と素晴らしい投球内容ですが、やはりシーズン前の準備がうまくいっていたのでしょうか?
豊田「そうですね。一昨年のオフから取り組んでいることを昨年のオフでも継続したので、キャンプもスムーズに入れましたし、やるべきことを明確にして進んできたというところで、開幕投手を務めるに値する行動を取ってくれていたのでよかったなと思います。シーズンを通して調子を維持するのは難しいのかもしれませんが、日本ハムとの1戦目(4月5日、1回戦)では持ち味のスライダーがいまいちでしたが何とか2失点で抑えてくれたので、悪い時は悪いなりの投球が出来るようになっていてすごく頼もしく思います」

――調子が悪い時でも対処ができるというのはやはり成長ですか?
豊田「今井はもともとポテンシャルの高い選手でしたが、もう一段階上がったような気がします」

――髙橋光成投手が開幕を出遅れましたが、先日のソフトバンク戦(4月14日、3回戦)に登板しました。髙橋光成投手、今井達也投手、平良海馬投手はライオンズの3本柱だと思っているのですが、髙橋光成投手に関して豊田投手コーチはどのような手応えを感じていますか?
豊田「キャンプで少し出遅れて最初はどうなるかと思いましたが、予定通り内容も含めて順調に試合をこなしてきてくれて、満を持しての登板で1点もやれない状況から結果的に4失点してしまいましたが、次からしっかり抑えてくれると思いますし、もちろんエースですから今後も楽しみにしていただきたいと思います」

――チーム全体でいい流れに乗っていけるかどうかも大事になりますね。
豊田「チームが噛み合わない時こそ『投手で抑えたい』という気持ちで戦っているのですが、なかなかうまくいっていないのが現状です」

――武内夏暉投手についてはどう思いますか?
豊田「デビュー戦(4月3日、対オリックス2回戦)のブルペンではコントロールがバラバラで、球速も出ていなかったですし、変化球はすべて抜けていたので試合ではもっと浮足立つかなと思っていましたが、マウンドに上がったら堂々としたマウンドさばきで『肝が据わっているな』と思いました」

――武内夏暉投手2度目の登板に豊田コーチが期待していることが、ストライクを先行させること、先頭打者を抑えること、インコースをしっかり投げ切ること、新人投手に期待することではない気がしますが?
豊田「西武はたくさんの先発投手がいるなかで武内(夏暉)は自分の力で開幕のローテーションを勝ち取ったので、新人であろうと高いところでの要求になりますし、要求しても大丈夫な投手だと思っているのでお願いをして、まあその通りにはいきませんでしたが要求したことを頭に置いて投げてくれているところはありがたいなと思っています」

――新戦力の甲斐野央投手ですが、アブレイユ投手の前としてハマってきているかと思います。
豊田「オープン戦を通じて勝ち取った8回というところで、開幕からうまく滑り出してくれましが、ソフトバンク戦(4月12日、1回戦)で打たれてしまったことが残念ではあります。ですが、次のロッテ戦(4月16日、3回戦)で2アウト2、3塁ピンチの場面を乗り切ってくれたことは成長だと思いますし、まだまだポテンシャルが引き出せるのかなと思い今後が楽しみです」

――アブレイユ投手はまだ防御率が0.00です(4月16日時点)。
豊田「もともと速い球が投げられるところと、堂々としたマウンドさばきで抑えてくれていますし、9回を任されたなかでどこまでやってくれるのかすごく楽しみです」

――アブレイユ投手のピッチングスタイルについて、コーチの目にはどう映りましたか?
豊田「どんどんゾーン内で自分の持っている能力すべてで勝負していくなかで、抑えるのもツーシーム、打たれるのもツーシームといったところで、今後はスライダーとツーシームを中心に抑えてくれることを期待しています」

――試合が延長戦に入ると相手に点を取られてしまうことに関して、投手コーチとしてうまくいっていない部分はありますか?
豊田「投手力は全体的に底上げが出来ているなかで、昨年は延長戦での引き分けが1試合しかなかったんですよね。勝ちパターンの投手継投で延長戦に入ったあと、豆田(泰志)だったり糸川(亮太)だったり若い投手が登板していくなかで失点をしてしまうので、もっと延長戦で引き分ける試合を作っていければ、若手の力も出てきて投手力がもう一段階上がるのかなと思います。ですが登板させているのは私ですし、延長戦に入る前に点が取れなかったのはチームですし、そこは責任を負わせないようにして、できるだけ苦しみや悔しさを忘れずにもう一段階上がってもらえれば、これからのシーズンのなかでもうひとつチーム力、投手力が上がるんじゃないかなと思います」

――シーズンを通して接戦になる試合が増えてくるなかで、どう試合を収めていきたいですか?
豊田「試合は生き物で毎日ドキドキしているかと思いますが、この2年でチームが強くなってきたところでもうひと踏ん張り、自分たちの力で試合を制して勝ちたいなと思います」

――増田達至投手に期待したいことは?
豊田「ビジターの場合だと勝ち越したら増田(達至)という形ができれば、アブレイユがいて延長には増田がいるといった形で本当に心強いかなと思いますけどね。増田はビハインドでも同点の場面でも投げて抑えてくれましたし、今年1年も大変なシーズンになると思います。やはり年齢を重ねるとどうしても役割が増えてしまいますが、それでも『自分が抑えるんだ』という思いだけは忘れてほしくないなと思っています」

※インタビュアー:文化放送・長谷川太アナウンサー

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