リニア中央新幹線「失敗すれば国民負担の可能性も……あらためて必要性の国民的議論を」石川和男が指摘

政策アナリストの石川和男が5月5日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。静岡県内の工区着工をめぐり暗礁に乗り上げたリニア中央新幹線の必要性について議論した。

山梨リニア実験線

最高時速505kmで、東京-名古屋間を40分、東京-大阪間を1時間7分で結ぶ計画のリニア中央新幹線。当初の計画では、2027年に東京-名古屋間、2037年に東京-大阪間の開業を目指していた。ただ、難工事や事故、静岡工区の着工をめぐる中断などで、開業時期が先送りされている。

番組冒頭「名古屋出張が多い」という石川に、ゲスト出演した作家・ジャーナリストの金田信一郎氏は「今の東海道新幹線、困っていますか?」と問いかけ、「遅くて使い物にならないとか、料金が高すぎるとか、本数が少なすぎるとか、そういう不満があって新しくして欲しいという人がそれだけいるのか?」と疑問を投げかけた。金田氏の父親が住む実家は長野県飯田市にあり、同市内にリニアの新駅ができることが決まっているが「必要ないんじゃない?と思っている」ときっぱり。続けて「東京-大阪間67分で行けると言っているが、飛行機だって1時間。みんな勝手に鉄道の方が簡単に乗れるしいいじゃんと思っているが、大間違い。駅は地下深く、ずっとトンネルの中を超高速で走るので、何かあっては危険。テロ防止もあって、おそらく手荷物検査が導入される。今の新幹線のように、ピッとICカードを改札にかざして、すぐに乗るようなことにはおそらくならない」と指摘した。さらに「大阪まで全面開業するまでは、名古屋でまた地下深くから地上まで行って、東海道新幹線に乗り換えて大阪まで行くことになる。そんな面倒くさいことをするなら、最初から『のぞみ』に乗った方がいいじゃんとなる」と持論を述べた。
金田氏は、リニアが開業したとしても「86%は地下。地上部分も騒音対策でシールド(防音壁)をかける。つまり、車窓は何も見えない。超高速地下鉄だと思っていい。なので、出張でものすごく急いでいる人は、もしかしたらいいかもしれないが、富士山も見えないような路線で観光需要はおそらくないだろう」と明かした。

そのうえで、今後のリニアの進捗について金田氏は「私はリニアが大阪まで行くことはないと思う。名古屋まで行けるかも微妙、五分五分くらい」と言及。その理由として、人口減などによる需要の減少、インバウンドニーズもオーバーツーリズムの問題からこれ以上は見込めないと指摘。「富士山は見えないし、京都に寄らない。出張需要も、今後はますますリモート対応が増える」と予測した。
また、国やJR東海が開業後の需要予測に用いている価格設定が、東海道新幹線並みの料金であると明かし、「同じ料金で、東京・名古屋・大阪という大需要地を東海道新幹線と並行して走るので、新幹線の需要は半分になる。そのため、年間4000億円ほどのコストがかかるリニアは、まずペイしないと社長が一度言ってしまったことがある。リニアがペイしないということは、東海道新幹線もペイしなくなり、共倒れになる。かといって、高くすると飛行機に流れる」と述べた。
ほかにも、山岳地帯の地下深くを掘削することによって排出される「残土」の行き場がないと指摘。金田氏によると「東京ドーム50個分が出る。すでに完成している山梨実験線で出た東京ドーム5個分の残土は、山梨県内の谷を埋めてしまって、災害時に土砂災害を引き起こさないか、地域住民が恐れる事態を招いている。熱海の土砂災害のような災害や、各地の地形を変えてしまうほどの影響がある」と警鐘を鳴らした。

石川は「リニアの報道は大阪・関西万博と逆で“ポジティブ報道”ばかり。いずれ国策的な扱いとなり、万が一、JRが事業に失敗した際には国の資金を入れるという可能性もある。今回の静岡県知事辞職に至ったのを機に、メリット・デメリットを並べて国民的議論をするべき」と提案した。

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