日本はなぜ人の命を粗末に扱うのか?今も残る戦時の精神文化を研究家が指摘

8月15日の大竹まことゴールデンラジオでは、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんをお招きし、集英社新書から刊行した著作「未完の敗戦」について掘り下げた、

大竹まこと「こちらの本にはこう書かれています。コロナ対策、東京五輪強行開催、ハラスメント、長時間労働、低賃金、なぜ日本ではこんなにも人が粗末に扱われるのか。この状況と酷似するのは戦中の日本社会だ。本書では大日本帝国時代の歴史を追いながら、その思考形態を明らかにし、今もなおその精神文化が蔓延っているということを様々な事例を通して検証。敗戦で否定されたはずの当時の精神文化と青春文化と決別しなければ、一人一人の命が尊重される社会は実現しない。とお書きになっています。

山崎雅弘「こういうことは、以前からいろんな方が著作や言説で指摘されてきたんですが、僕はこの10年ぐらいでそれがさらにひどくなってるような気がするんですね。その原因を色々調べた結果、戦後の日本は人を大事にするようになったと表向きには言われているんですが、実はそうではなく戦争中の人の命を軽んじる精神文化が完全に断ち切れず、いろんな社会の分野に根強く残っていて、その影響が今また大きくなってる気がしています。」

大竹まこと「確かに今の社会は人を粗末にしていると感じます。これは日本人の精神的な構造にも影響してるんですか?」

山崎「私はそう思います。特にこの10年ぐらいは国民の意識がすごく受け身になっているような気がします。昭和の後期なら理不尽なことがあれば「みんなで団結しておかしいと声をあげよう」という動きがあったんですけれど、この10年ぐらいはそういう状況に直面しても「これは、こういうものだから仕方ないんだ」という風に、諦めている人が増えてるんじゃないかと。この状況を放置しておくと社会全体が荒むと言いますか、特に若い世代がどんどん不幸になっていくのではないかと思うので、今の段階でなんとかしないといけない。」

大竹「同じ働く人でも、正規と非正規など、社会のあちこちで分断が起こってるような気がします。」

山崎「社会の中で、格差や、自分たちと彼らとは違うんだという意識を植え付けられることによって、立場が下の人たちがひどい目にあっていても、自分とは関係ないんだとか、自分はマシな立場にいるから良かった、と見捨てるような感覚もあるのかなと思います。」

大竹「そんな中で行われたコロナ対策についてはどうご覧になっています?」

山崎「政府のコロナ対策を見ると、社会秩序を維持することが先になっているような感じがします。例えばヨーロッパだと人々の暮らしを守るためにすごいスピードで給付金を出しています。ドイツでは、そこに住む日本人も簡単な申請で生活が最低限維持できるようなお金が素早く振り込まれます。例えば、沈みかけの船でも海に浮かんでる人を見つけたら、とにかく浮き輪を投げるようなことで、これが日本だと海で人を見つけたら、ます「自分が泳げないことを証明してください」と手続きを優先する感じです。生活が保たれているのか、あまり関心を持ってないような気がするんですね。」

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