本屋大賞・町田そのこ「全国の書店で平積み」信じられない

櫻井浩二インサイト ©RKBラジオ

「全国書店員が選んだ、いちばん売りたい本」を選ぶ「2021年本屋大賞」が4月14日に発表され、福岡県京都郡在住の作家・町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)が大賞作品に決まりました。

受賞翌日、町田さんの地元・RKBラジオの朝の情報ワイド番組『櫻井浩二インサイト』で、さっそく喜びの声を聞きました。


櫻井浩二(以下、櫻井):本屋⼤賞を受賞して、1⽇経ってどんなお気持ちですか。

町田そのこ(以下、町田):本屋⼤賞というのは、書店員さんの熱い想いみたいなのがたくさん詰まった賞で、それを受賞式でひしひしと感じてしまって、プレッシャーがなおのこと。「この賞に恥じてはいけない、泥を塗ってはいけない」と思って。

櫻井:けさの⻄⽇本新聞に「学⽣時代から、北九州市の大型書店によく通っていた」と。「ここに⾃分の本が平積みされるのが夢だった」っていうふうに書いてあるんですけど。この書店どころか、全国の書店にきょうから平積みされますよ(笑)

町田:ちょっと信じられないですよね、本当に。

櫻井:「52ヘルツのクジラたち」ってこのタイトルがね、すごくネーミングいいなと思うんですけど。これ、どういうところから付けたんですか。

町田:デビュー作を本にまとめるときに、海洋⽣物を主題に据えて書こうと思って、いろいろ調べていたときに…

田中みずき:海洋⽣物を主題にって思われたんですか。

町田:「カメルーンの青い魚」っていう、カメルーンにいるメダカが出てくる小説で賞を獲ったんですけど、短編連作集を書くときに、全部テーマに海洋生物を据えて統⼀させようっていう。それでいろいろ調べてるうちに「52ヘルツのクジラ」っていう存在を知って「こんなすごいものが実在しているのか」って、衝撃だったんですよね。

櫻井:そこには今回の作品も含めて、どういう思いが込められているんですか。

町田:“孤独”って何だろうっていうことを考えたんですね。「助けて」という叫びが聞こえないっていうのは孤独じゃないか、というふうに考えて、それがきっかけで、何年も練っていたんですけど。今回⻑編のお話をいただいたときに「書くタイミングがとうとう来たな」と。

櫻井:主人公は大分の海辺に住んでいる⼥性で、⺟親から虐待を受けていて、その後ある少年に出会うんだけど、その少年もやっぱり孤独で、そこでいろんな関係が⽣まれていくっていう話みたいですね。そこでやっぱり孤独ってのをテーマにしようということだったんですね。

町田:そうですね。「助けて」とか「自分のことを救ってほしい」とかっていう声を出せない⼈って、多分世の中にたくさんいらっしゃると思うんですね。なので、そういうことを⾃分なりに考えて物語にしたっていうことです。

櫻井:あともう⼀つ聞きたいのが、町⽥さんがずっと東京とか、⼤阪とかにも⾏かずに、福岡県の京都郡の⾃宅でずっと執筆活動を続けているっていうのはなぜなんですか。

町田:若い頃はやっぱり東京に⾏きたい、⼤阪に⾏きたい、都会に対する憧れってものがすごくあったんですけど、なかなか⾏くタイミングに恵まれなくて、そのうちに⻑くこの⼟地に住んでいると、だんだん居⼼地が良くなっちゃって(笑)

櫻井:最後に、この『インサイト』を聴いているリスナーの皆さんに、何かメッセージはありますか。

町田:中には応援してくださっている方も聴いていただいていると思うんですが、本当にありがとうございました。私はこれからも地元福岡で、コツコツと書き続けていくと思いますので、どうぞ応援してください。

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