シンガーソングライターで"選曲家"の松崎真人が、'70~'90年代の日本の曲・日本語の曲を中心に"厳選かけ流し"(イントロからアウトロまでノーカット)でお届けするSTVラジオ『MUSIC☆J』。この回で「土曜日の夜」の放送は最後と言うことで、最後の曲として松崎真人が選んだのは、この曲です。佐野元春のアルバム「The Circle」(1993年11月発売)の中から…。(文中敬称略)
M10「君を連れてゆく/佐野元春」
松崎:当時、「Sweet16」とか「フルーツ」とか割とポップなロッックンロールアルバムを続けて出した佐野元春が、もう一つのルーツであるR&Bの方向に舵を切って作ったレコード(アルバム)で、どちらかと言うと、明るくご機嫌なロックンロールの連続と言うより、こういう少し落ち着いた曲調が(「The Circle」には)多いんです。
松崎:(「君を連れて行く」の)最初の「♪パッパ・パッパ・パー」と入ってくるオルガンの音は、イギリスの、自分もR&Bシンガーであり、オルガン・プレイヤーとしても一流のジョージ・フェイムが弾いています。そのジョージ・フェイムの「♪パッパ・パッパ・パー」というオルガンの音が録りたくてロンドンまで行ったという、当時から佐野元春は、こだわりの人ですね。
松崎:「The Circle」が発売された年も、決して世の中の景気が良かったわけではなく、むしろこれから世相がちょと荒れていくのかなという予感を、みんなが何となく漠然とした不安を持っていた時期の曲だったんです。そういう人たちに、ただ無責任に「大丈夫だよ」と言ったり、励ましの言葉をぶつけると言うよりも、もう少し静かに現状を語りつつ、最後に「君を連れて行く」と。
松崎:しかも「無くしてしまった、無くしてしまった、無くしてしまった」と、幾つも「無くしてしまった」と繰り返した後で「君を連れて行く」と、最後にポジティブな言葉をひとつ使うという、非常に成熟したシンガーソングライターとしての佐野元春の側面が出ている気がします。地味なアルバムですが、僕は「The Circle」は佐野元春の中でも好きなアルバムです。
松崎:いま、なかなか困難な状況にある人も多いと思いますが、きょうはこの曲で締めとさせて頂きます。ともに、頑張りましょう。
最後は、リスナーへのメッセージで締めくくった土曜の夜の『MUSIC☆J』。恐らく、土曜の夜じゃないとなかなか聴けないというリスナーへ「来週からは平日の夜に、君を連れて行く」という松崎自身の思いも込められているかも知れません。
<10月23日のプレイリスト>
M01「今夜だけきっと/スターダスト・レビュー」
M02「女優/岩崎宏美」
M03「針葉樹/野口五郎」
M04「雨の物語/イルカ」
M05「にんげんっていいな/中島義実、ヤング・フレッシュ」
M06「ダンシング・ロンリー・ナイト/ザ・ジャガーズ」
M07「You’ve got a friend(君の友だち)/James Taylor」
M08「たぶんオーライ/SMAP」
M09「遠くへ行きたい/ジェリー藤尾」
M10「君を連れてゆく/佐野元春」
<松崎真人の編集後記>
「雨の物語/イルカ」 当時、森山良子、山本潤子など女性のフォークシンガーは米国マーチン社のニューヨーカースタイル=小さめサイズのギターを抱えてステージに立つことが多かった。そんな中、イルカはドレッドノートと呼ばれるマーチン社のラインナップで最も大きなサイズのギターを使っていた。モデル名はD-35。バックの板がスリーピースになっていて、このサイズ定番のD-28よりも中音域がちょっと控えめ。結果、人の声の周波数を邪魔しないことになり、弾き語りにはうってつけ。大きなギターを抱えてステージに立つイルカは、今も変わらずとってもキュート。一度でいいから彼女所有のD-35を試し弾きしてみたい。(松崎真人)