ポプコン出身のシンガーソングライター・松崎真人が、'70~'90年代の日本のポップスを中心に厳選してノーカットでお届けするSTVラジオ『MUSIC☆J』。20時台の冒頭で掛けた曲について、シンガーソングライターとして作詞もする松崎の深い洞察と思いが開花します。(文中敬称略)
M10「情けねえ/とんねるず」
松崎:1991年の曲で、年間20位まで上がっている曲です。僕は、秋元康の書いた詩の中で、全部を知ってるわけではないですけど、本気で書いたうちの1曲じゃないかなと思ってます。秋元康ほどの才能があれば本気じゃなくても、自動的に歌詞が書けてしまうシステムを(頭の中に)持っていると思うんですが、何かたまに、意図せず気持ちが入っちゃうと言う現象が起こりまして。
松崎:特に、この当時のとんねるずに「♪この世のすべてはパロディなのか」と歌わせるということは"ネタバレ"ですよね。とんねるずのお笑いは、あの時期は「仮面ノリダー」とかパロディによって成立していたわけです。それを、「♪この世のすべてはパロディなのか」と冷笑的にシニカルに歌わせるというのは、ひとりのシンガーソングライターとしては、非常に斬新だなと思ったのと、勝負に出ているのか。何かの弾みでこの本音が出ちゃったのか…。
松崎:どちらにしても、秋元康という今では業界の神みたいに輝いている人に、血が流れているひとりの人間としての”一行”を見た気がしたのが「♪この世のすべてはパロディなのか」なんです。とんねるずの一連の楽曲の中でも、僕は割と好きな曲です。
そして、写真で松崎が手にしているアナログレコードにまつわるトークは…。
M17「サバの女王/グラシェラ・スサーナ」
松崎:アルゼンチンから、その才能を発掘して菅原洋一が連れてきた女性歌手です。私は小学生でしたが、子供ごころに「素敵な歌声だな」と、LPレコードに浸っていた記憶があります。何か、海の向こうから来たアーティストに憧れる気持ちって、今のグローバル化した日本と、1970年頃とは、また少し違うような気がするんです。私がグラシェラ・スサーナやオリビア・ニュートンジョンとかが大好きだった時の気持ちって、何となく今のグローバルな歌手を応援する気持ちと、ちょこっと違うのかも。憧れの形が、とか思いますけど。
松崎:では、そのグラシェラ・スサーナを日本に連れてきた菅原洋一の曲をかけます。有名な曲はいっぱいありますが、今回はなかなか普段はかけづらい音源です。つまり、1980年リリースで、10年後の気持ちを歌った曲なんです。タイトルが「1990年」なんです。時間軸がごちゃごちゃになりますが、この曲も競作がたくさん出ている名曲です。1980年に、10年後の娘を思う親の気持ちを歌った曲です。アレンジは前田憲男です。
M18「1990年/菅原洋一」
松崎:発表されたのが1980年で、1990年の未来を思って歌われた歌で、バック・トゥ・ザ・フューチャー3みたいになってますが、歌われてる心情は変わらないんじゃないかと思います。こういう曲を発掘して、お掛けできるのも『MUSIC☆J』をみなさんが聴いて下さっているお陰かなと思います。
松崎:そんなことを思いながら懐かしい曲を引っ張り出して来ました。アナログ・シングル盤レコード、非常にいい音でした。STVラジオのレコード室、恐るべしと言うことで…。