秋の行楽シーズンということでお出かけの方も多いと思いますが、実は、藤の名所として知られる埼玉県本庄市の「長泉寺」では、参拝客の、ある迷惑行為に困っているらしいんです。どういうことなのか。住職の閑野 徳満さんに伺いました。
長泉寺 住職・閑野 徳満さん
錦鯉を飼うようになって、池に投げ銭を入れられて、10円玉とか5円玉とかを飲んじゃうんです。それで2匹とか3匹とか死んじゃうんですね。別に餌のやりすぎでもないのになんでだろうって思っていたんですけれども、死んだ鯉を見たら1匹やっぱりお金を飲んでるんですね。10円玉飲むと青サビが出て、すぐ死んじゃうんですね。これは大変だっていうそれから動き出したんです。
なぜ池にお金を投げるのか。有名なのが、イタリア・ローマの「トレビの泉」。後ろ向きで肩越しにコインを投げると、またローマに戻ってこられる、という言い伝えです。日本でも、神社の池、公園の噴水…。水があると、なぜか小銭が投げ込まれています。
長泉寺の場合は、池の中ほどに「弁天様」がまつられていて、そこへ向かってお賽銭がポーン。そこで住職が考えたのが、弁天様まで「橋」を架けること。歩いて渡って、お賽銭を直接置いてもらう。これで池への投げ銭はぐっと減り、コイが死ぬこともなくなりました。しかもお賽銭は以前の「5倍から6倍」に増えたそうです。
一方、こうした投げ銭の問題は、お寺だけではありません。富士山の麓、山梨県の「忍野八海」でも、池に投げ込まれた大量の硬貨が問題になっています。忍野八海でコインの回収を続ける、潜水ボランティアの坂本 新さんのお話です。
潜水ボランティア・坂本 新さん
この池自体が、すり鉢状になっているので、コインがどんどんすり鉢の下の方に流れていくんですね。コインが積もってると思っていただいた方がいいぐらいな状況になってます。実は、水温が年間通して12度しかないんです。12度から13度。そういう過酷な環境の中で、まず池の中に入るんですけども、作業を始めると、ヘドロとか砂が舞い上がって、視界がゼロになるんですよ。手探りでコインを回収してるんですね。ほとんど作業潜水に近いので、参加している方々はほとんどダイビングのインストラクター以上。なので、そういう意味では過酷なダイビングになるのかなというふうに思います。
村によると、13度の水に20分潜り続けると、命に関わるほど体が冷えてしまう。だから1回に潜るのは15分。そのあと45分休んで、また潜る。その繰り返しです。そうやって拾い上げたコインは、潜り始めた2016年だけで「1万8000枚」あまり。去年はついに「水中掃除機」を導入!1回で「8500枚」以上を吸い上げました。
ところが、それでも投げ銭は止まりません。村は4か国語で「投げないで」の看板を立てましたが、効果はいまひとつ。拾っても拾っても、また投げ込まれる。そこで村が打ち出したのが、ちょっと発想を変えた対策です。忍野村観光案内所の渡辺 喜久一さんに伺いました。
忍野村観光案内所・渡辺 喜久一さん
環境保全協力箱、神社さんにあるような賽銭箱ですね。池の中に投入することによって環境悪化するから、環境を守るためにこの箱に入れてくださいという意味で、環境保全協力箱っていう格好で設置してますね。2~3週間前ぐらいですかね、とりあえず置いてありますけど。どれぐらいの効果が上がるのか、これからの結果待ちですけどね。
「環境保全協力箱」を設置。神社やお寺ではないので、賽銭箱ではありません。この箱に入ったお金は、村の「環境保全協力金」として、地域の自然や景観を守るために使われるそうです。
ちなみに本家の「トレビの泉」。投げ込まれるコインは、2022年の1年間で、およそ「2億円」!すくい上げて、ドライヤーで乾かして、貧しい人たちの食料支援に回されています。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)