コロナでアルコール依存が深刻化

新型コロナでは様々な影響が出ていますが、中でも「アルコール依存症」が深刻化していて問題になっています。5月12日(水)TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。

コロナで深刻化する「アルコール依存症」。詳しいお話しをアルコールなど依存問題の予防に取り組むNPO法人「ASK」の代表、今成知美さんに伺いました。

★アルコール依存が深刻化

「ASK」代表 今成知美さん
やっぱりコロナでステイホームとか、それからリモートワークになったっていうような形で歯止めが利きにくい。例えば終電だから飲むのを切り上げて帰らなくちゃとか、翌朝仕事だから、このあたりでやめとこうとか、そういうのがないので、歯止めが利かずにずっと飲んじゃう。深酒になって翌日二日酔いで仕事してるんだけれども、自分1人だからいいやみたいな。もともと結構お酒飲めた人たちが飲酒量が増えてしまった。あとは、アルコール依存症になっていた方、そして一生懸命断酒して回復してた人たちが、孤立してしまうことによって、また飲み始めてしまった、そういう話は良く聞きます。

こちらの団体の電話相談では、依存傾向のある方の状況が「深刻化」がみえるそうです。

例えば「リモートワークをきっかけに、家で10日連続で深酒してしまい、自分でも異常だと感じる、病院に行くべきでしょうか?」という相談があったり、「3週間仕事がなく、不安で朝から飲んでしまう」また「依存から抜け出すためお酒を断っていた人が、仕事がなくなり、またお酒に手を出してしまった」そんな相談が寄せられているそうです。

アルコール依存症というと「意志が弱いダメな人」と見られがちですが、依存症になってしまったら、これは「自分の意思では抜け出せない病気」です。適切な治療や、孤立を避け、人と繋がる自助グループへの参加が必要ですが、実は、そうした対応も、コロナで難しくなっているという状況があるそうです。再び今成さんのお話です。

★自助グループもオンライン化

「ASK」代表 今成知美さんさん
依存症って「孤立する」っていうのが一番まずいんですね。その中で、このステイホームの状況、それからコロナでソーシャルディスタンスとかね、そういうのって本当に孤立を招くような状況っていうのはすごくいっぱいありますよね。その中で命綱というふうにも言える、同じようにアルコール依存症に苦しんだ人たちが回復していくために繋がって、週に何度か会っていろんな話をする相手の話を聞く形の「自助グループ」というのがあるんですね。そのミーティングが開けないっていう状況がかなりずっと続いていますね。これがアルコール依存症の人たちの再発にすごく影響してると思います。

これまでの依存症回復へのアプローチである「自助グループ」=同じ環境の人が話し合い、助けあうミーティングも開けない。結局、依存症になりやすく、回復しにくい、コロナによって、そんな状況になっていました。

対策としてASKでは、オンラインミーティングの環境を作り、それによって繋がりを回復し始めている人たちも出ています。これによって、今まで遠方で参加できなかったひとや、高齢で足を運べなかった人たちも参加できるなどのメリットも見つかっていますが、ただ、対面のミーティングで生まれる参加者同士の対話や共感に勝るものではなく、課題も残っているそうです。

コロナで深刻化するアルコール依存ですが、一方で、今のお酒のトレンドも影響しているという指摘もありました。国立精神神経医療研究センター松本俊彦先生のお話です。

★ストロング問題

国立精神神経医療研究センター松本俊彦先生さん
ストロング系のアルコール飲料、比較的アルコール度数の高い飲み物、しかも飲みやすくて甘い味付けのものですかね。それをかなり早いペースで飲んでしまう。気づいたときには結構な量を飲んでいて、足腰が立たなくなってしまう、自分を傷つける行動をしてしまう人がいたり、粗暴な行為をしてしまったりする。精神科の診察室の中ではそのようなことが非常に多発しております。何よりも安いんですよね。特に350mlの缶だったりすると、変な話、同じ分量の水よりも安くスーパーなんかで売られてる場合も見かけることもございました。そうすると多分たくさん買い込んで速いピッチで飲む。安くて手っ取り早く酔うというか。インターネットなんかで調べてみると「飲む福祉」とか「貧民の麻薬」なんていうふうなキーワードが、ネット上でこのストロング系のアルコール飲料に関して出てきてるほどですね。

安い、そして甘くて飲みやすい、でもアルコールはビールの倍くらい「強い」という「ストロング系」のお酒が流行したことで、あっという間に深酒、依存症にまでなってしまう。海外ではアルコール度数が高いものには高い税金をかける所もあり、松本さんは「国の対策も必要」だと指摘。一方で飲む側も、こうした「ストロング系」は合法だけど危険なものだという認識を持つべきだと指摘していました。

この記事を読む