Mr.Childrenの「読むベストアルバム」を道標に30年の軌跡を振り返る

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく、FM COCOLO『J-POP LEGEND FORUM』。

2月はコロナ禍によって家で過ごす時間が増えた昨今、音楽を聴くだけではなく「音楽について書かれた書籍に触れることも有意義ではないか?」と「最新音楽本」にフォーカス当ててお送りしています。

Part3は、2020年末に発売になった小貫信昭著「Mr.Children 道標の歌」。結成から現在に至るまでのMr.Childrenをジャーナリストとしてすぐ側で接してきた著者が、これまで門外不出だったエピソードを交え、ミスチル・ヒストリーをつづったこの音楽本、”読むベストアルバム”とも称されるその内容を田家秀樹がご紹介、解説いたしました。

■前TM(皮膚呼吸 / Mr. Children)

この本では、1988年から去年までの30年間を11章に分けて書いてます。それぞれの時代の代表曲の曲名が小見出しにもなっています。

なぜ今日はこの「皮膚呼吸」から始めたのかというと、本の冒頭がこんな始まりなんです。「バンドを作るとは言わない、バンドは組むものだ」、「Mr.Childrenは4人の化合物である」。良い一行でしょう? この「皮膚呼吸」の中に、「歪むことない僕の淡く 蒼い 願い」という歌詞があるんですが、この一行はギターの田原さんのことを歌っているんだと書かれてます。

■M1. 君がいた夏

小林武史さんと初めて出会ったときのこと、田原さんと小林さんがどんな席に座って、どんな視線を交わしたのか、という話まで出てきます。

この「君がいた夏」はFM802のヘビーローテーションになっていたんですけど、この曲が初めてラジオから流れてきたとき、ドラムの鈴木英哉さんは焼きとうもろこしをかじっていたそうです。この曲が流れてきて思わずとうもろこしを膝に落とした、とてもアツい体験だった、という彼のコメントも紹介されています。

■M2. innocent world

「innocent world」は新宿のヒルトンホテルで書かれた、伝説のヒルトンレコーディングだった。部屋の中に機材を持ち込んでいた、という話が克明に書いてあります。「innocent world」の歌詞はどこで書かれたのか? 桜井さんが帰宅中に、制作中のカセットを車で聴いていて、環七と早稲田道路の交差点あたりで車を止めて、思いついたことをメモした。それが歌詞になっていると書いてあります。

■M3. 名もなき詩

「Tomorrow never knows」でセールス的な意味でも頂点を極めてしまって、彼らが何を悩んでいたか?

章の冒頭には見出しの曲の詞が掲載されているんですが、「名もなき詩」の歌詞をずっと読んでから本文に入っていくと、この言葉がリアルに伝わってきますね。“この喉を切ってやる”という歌詞がどうやって生まれたのか? “もがいているなら誰だってそう 僕だってそうなんだ”という部分がどういう意味なのか? 途中のラップパートが誰に影響されたのかという話も出てきます。

■M4. 終わりなき旅

彼らはドームツアーを開催して活動を休止します。そのお休みを経て、4人のウェーブが再び一致した曲がこの「終わりなき旅」だった。曲中の「扉」はどういう意味だったのか? “誰の真似もすんな”というメッセージに何を込めているのか? 「終わりなき旅」にはたくさん転調がありますが、何故こんなに転調するのか?

■M5. 口笛

■M6. HERO

2001年の流れの中で、避けられない話題が桜井さんの話題ですね。7月17日の渋谷公会堂から予定されていた10周年ツアーが、桜井さんの小脳梗塞で3、4ヶ月充分な休養が必要なために無くなってしまった。

「HERO」に対しての桜井さんの言葉は、この章の一つの重要なポイントです。

「確かにヒーローは存在するんだろうけど、無理して誰かを祭り上げたりすると、そのことで見えなくなる大切なこともあるんだと思う」、という言葉も引用されていました。良いことも悪いことも全部バンドのものにしたのが、この『IT'S A WONDERFUL WORLD』だったという章でした。

■M7. 足音 ~Be Strong

2015年の『REFLECTION』の時期に、なぜ小林武史さんから離れたのか? などが書いてあります。でも、なぜだったのかという断定的な答えは書いてない。そこは聞き手に委ねられている。本のタイトルでもあるように一つの道標ですね。Mr.Childrenはどういうバンドで、その頃に何を考えていて、それをどうやって作品に反映させていったのか? ということの道標になる本です。

こんなに色々なことを考えながら、自分たちを見失わずに活動している内省的なバンド、ということがよく分かります。Mr.Childrenは自分たちのことを語る人たちではないので、こういう音楽本があるべきだなと思いました。

今回、著者の小貫さんにゲストに来てくれと招待したのですが、喋るのが苦手なんで好きにやってください、全部任せますから、ということでこういう内容をお送りしました。いくつかメールでのやりとりの中で 「”写真がない本” であるということは必ず触れてほしい」と言われました。

これは文章の本。読んでバンドを理解する。読むベストアルバムで、音楽の道標なんだ。だから写真は使わないようにしよう、というところから始まった本です、と言われました。それは僕も大賛成。文章、エピソード、言葉。それで音楽を語るというのは、こういうことだ、という本です。本を道標に音楽を聴く、そんな楽しみを経験してみてください。


■『Mr. Children 道標の歌』小貫信昭著

※2/8放送「RADWINPSの音楽読む」お聴き逃しの方は
渡辺雅敏著「あんときのRADWIMPS・人生出会い編」 ⇒ 【”読む” J-POP LEGEND FORUM】Rolling Stone Japan

※2/15放送 Mr.Childrenの「読むベストアルバム」を道標に30年の軌跡を振り返る お聴き逃しの方は
小貫信昭著『Mr. Children 道標の歌』渡辺雅敏著 ⇒ 【”読む” J-POP LEGEND FORUM】Rolling Stone Japan

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