槇原敬之「J-POPと呼ばれるのが嫌だった時期があった」

J-WAVEで放送中の番組『GROOVE LINE』(ナビゲーター:ピストン西沢)。1月30日(水)のオンエアでは、槇原敬之さんをゲストにお迎えし、2月13日(水)にリリースされる最新アルバム『Design & Reason』についてお話を伺いました。


■作詞は翻訳に近い作業

槇原さんが登場するやいなや、「いつも明るい!」と絶賛する西沢。

西沢:天才アーティストという肩書にふさわしくない内容ですよね、フリートークが(笑)。
槇原:ピストンさんのところだと素直になれますね。「おとなになったんだから、そういうこと言わないの」とか言われるけど、言いたくてしかたがない(笑)。


槇原さんの代表曲のひとつである『もう恋なんてしない』には、恋人と別れてひとりになり、さびしさを感じながらも、自分で朝食が作れた……と強がる歌詞があります。西沢は、気になっていることがあるようです。

西沢:あれ、何作ったんですか? どうせたいしたもん作ってないと思うな(笑)。
槇原:まずかったんですもんね(笑)。恋人がいなくなって紅茶のありかもわからない、という歌詞があるので、みなさん「洋風かな」と想像されるんですけど、和風で想像すると急に楽しい歌になりますよね。

そんな想像力は楽曲制作の源ですが、もうひとつ重要なことがあるそうです。

槇原:詞を書くときの源は想像もあるんですけど、どっちかというと人と話しているときに、自分がすごくいい話をしているのに、気がづかない人たちがいるんですよ。「それめちゃくちゃいい話だよ。ください」と言って書いたりします。どちらかというと翻訳業に近いというか。
西沢:インスピレーションのスイッチが入るまで待ってて、入ったらバーッと制作がはじまる感じですか?
槇原:そうです。はじまらないときのはじまらない加減ったら(笑)。もう自信なくしちゃうくらいポカーンとなるんですけど、向こうからザーッと波が来るみたいな感じがあります。

これまで槇原さんは、多くの人の心を励ます楽曲を数多く作り出してきました。「自分が聴いてきたポップスがそういう曲が多かったから『そういう風になりたい』という気持ちがあった」と話します。

西沢:商品として充実させよう、ということではなく、人が喜ぶものを聴いてきたから、それがベースになっている?
槇原:友だちと「この曲いいよね」と話題にならなくても、自分にとってフツフツと元気がもらえる曲とか……こういう言い方をするとあれですけど、音楽って「行為のないセックス」みたいなもんじゃないですか。
西沢:言ったぞ! これJ-WAVE NEWSで拡散して!
槇原:うそー! でもこれ美しい言葉ですよ、言葉をかなり選んだから(笑)。そういうのを受け継いで、僕たちは演っているところもあるかなと。



■自分が作りたいものしか作らなかった新アルバム

槇原さんは、2月13日(水)に発売されるニューアルバム『Design & Reason』をリリースします。

西沢:いろりおな目的で音楽を作っている人がいますけど、槇原敬之の今回のアルバムを含めてトータルで考えて「人が喜ぶ」というのがキーワードのような見え方をしています。
槇原:今回は「絶対自分が作りたいものしか作りたくない」と思っていました。今までもそうだったんですけど、今回はとくに、心に来る弱気なところとかを一切寄せ付けないで、「こういう曲を書きたいな」と思った気持ちとか匂いとか、それを閉じ込めていくような曲しか作りたくないと。
西沢:今回は周期的に(気持ちが)上がっていく時期にぶつかったんですか?
槇原:ミラクルなくらい期間がなかったんですよ。『記憶』と『どーもありがとう』は前もって作っていたんですけど。去年のツアーが8月の半ばくらいまでやっていて、あとの曲はどう考えても9、10、11月で作らないといけなくて。すごい集中させてもらえました。
西沢:あまり仕事は早くないですよね?
槇原:遅いですね。でも今回は早かったです。ブレてなくて最初から「こういうアルバムを作りたい」みたいなのがあったのと、90年代がいろいろファッションとかも流行っているじゃないですか? 90年代の音楽も流行っていて、めちゃくちゃ真ん中でやってたわけじゃないですか。
西沢:キャリアの中で平成とともに動いてきた男ですからね。最初のピークが91、2年くらいですもんね?
槇原:そこで、言葉は悪いけど、90年代の自分をパロディするというか……楽しかったりしますね。J-POPが生まれたときだし。
西沢:なんの衒いもなくやるには、「平成最後」とか区切りとして必要でしたよね? まだやってるの、って言われちゃうのも癪だし。
槇原:ちょっとね。そこをあえてやって楽しんじゃったところはあります。
西沢:そこが裸の自分に近いところなんでしょ?
槇原:うん。
西沢:シンセの音を入れたり、テンポをいじったりといった仕かけはもちろん時代感のなかで必要だけど、そういうのに乗っ取りつつ、曲だけ出すと素材がいいみたいな。
槇原:そうですね。今年は、J-POPを作りたかったです。


■かつては「J-POP」という言葉に抵抗があった

そう語る槇原さんですが、かつては「J-POP」 と呼ばれるのが嫌だった時期もあったそうです。

槇原:「J-POPじゃなくてPOPを作ってるんだよ」みたいな。洋邦問わずポップスが好きだったし。今は「J-POP」って言葉を作った方に感謝しています。こんなに情報量が入っているポップスは世界的にもあまりないですよ。
西沢:「J-POPベスト」というアルバムが売ってたら『どんなときも。』とKANの『愛は勝つ』は絶対入ってるもん。
槇原:あはは(笑)! そうなんですよ、ありがたいですよ。手法は変わっていくんだけど、僕たちがやってきたことを示していかないとね、みたいな話になったりもして。若い人と同じことをやっても、それは若い人のほうがうまいから。僕たちは僕たちでJ-POPを作ってきたので、それを出そうと。
西沢:手練の職人感がすごい(笑)。

『Design & Reason』が22枚目のアルバムということで、「こんなにたくさん出すのは大変だったでしょうね」と西沢。さらに「音楽以外にできることはあるんですか?」と西沢は質問し、槇原さんは「これがないんですね。社会人失格ですよ。朝通勤とかされている人を見ると脱帽です」と笑いました。

3月からアルバムを引っさげてのツアー「Makihara Noriyuki Concert Tour 2019 “Design & Reason”」も決定しています。東京公演は3月16日(土)府中の森芸術劇場・どりーむホール、4月27日(土)NHKホール、30日(火・休)東京国際フォーラム・ホールA、7月27日(土)、28日(日)NHKホールです。ぜひチェックしてみてください。
 

 


来週2月4日(月)からの『GROOVE LINE』では、4日間にわたりメールが読まれた方に、GROOVE LINE新作オリジナルタンブラーをプレゼントする企画も実施します。お楽しみに!

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【番組情報】
番組名:『GROOVE LINE』
放送日時:月・火・水・木曜 16時30分−19時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/grooveline/

 

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