実質賃金 国際基準の算出方法を提案 「持ち家の帰属家賃を除く」
3月25日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、実質賃金の算出方法について意見を交わした。
政策的な不都合から“実質賃金の統計を見直そう”という議論になっているところが嫌だ
経済財政諮問会議の民間議員は国際基準にあわせて実質賃金を計算するように提案した。実質賃金を公表する厚生労働省は「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)を使って算出している。
「持ち家の帰属家賃」は実際に家賃支払いのない持ち家も借家と同様に支出すると仮定したもの。足元でインフレ率が高まる中、帰属家賃の伸びは鈍い。そのため、帰属家賃を除いた物価指標は高めに出る。
民間議員は「総合」で計算するように求めた。現時点で総合を使うと、実質賃金は上げ方向の補正となる。
(寺島アナ)「国際基準に合わせて実質賃金を計算することについて、田中さんいかがでしょうか?」
(田中氏)「帰属家賃っていうのは、持ち家に住んでいる人って家賃払ってないですよね? でも、市場を通して“家賃を払っている”とみなして経済統計の中に入れるんですよ。それっておかしいですよね? 実際には払ってないわけだから。だからそれを抜いて消費者物価を算出して賃金を見ようということです。“国際基準”という名目はいいんですけど、それで以前からの統計とズレる議論が起こらないことを祈ります」
2025年1月の実質賃金は前年同月比1.8%減だった。
民間議員が国際基準にあわせて実質賃金を計算するように提案した背景には、算出方法を巡る経済団体や経済学者の議論がある。経団連は2025年の経営労働政策特別委員会(経労委)報告で、実質賃金のマイナスが続く理由の一つとして「帰属家賃を除く総合」を使っていることを挙げた。国際的には「総合」でみるケースが多い。米国、ドイツ、英国では「帰属家賃を含む総合」で算出している。
一方、厚労省は労働者の実質的な賃金の伸び率を測るには実際には払っていない「持ち家の帰属家賃」を除いたほうがより生活実感に近いと主張している。
(寺島アナ)「とにもかくにも、今の“実質賃金の伸び”ですよね?」
(田中氏)「そうですね。例えば“実質賃金がマイナスである”と。だから賃金の恩恵を受けていないんじゃないか、という議論で与党が批判されるケースもあるでしょう。そういったものを背景にして“統計を見直そう”という議論はなんかおかしいですよね? たしかに“帰属家賃を除外する”というのは、どうなのかと。国際的にはそういったものを含めているんだけど、帰属家賃を払ってないから、それを抜いた方が筋も通っていいじゃないかと思いますけどね。政策的な不都合があるから、つまり与党が批判されるから“実質賃金の統計を見直そう”という議論になっているところが嫌だ。おかしい」
(寺島アナ)「嫌ですよね」
〈出典〉
「実質賃金算出、国際基準で」諮問会議で提案 上げ方向へ補正 | 日本経済新聞