開校25年の若い大学が、都市を活かす!?
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今日は、この春、開校25年を迎える非常に若い大学のお話。
学生のほぼ半数が留学生!
大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)という、大分県と別府市が誘致をして、立命館大学が作った大学なのですが、どんな特徴のある大学なのか。立命館アジア太平洋大学の学長、米山裕さんに伺いました。
立命館アジア太平洋大学 米山裕学長
「学生数、約6000人、ほぼ半数が留学生。今、日本も含めると112か国から来ていて、圧倒的な多様性っていうのが特徴ですね。初期は、そんな留学生入って来て大丈夫か?みたいな声もあったみたいですが、慣れるとものすごく可愛がってもらって、第二の故郷として卒業しても、バイト先でお世話になったおじさんおばさんに、子ども連れて挨拶に行くとか、そういう留学生たくさんいるんですよ。
町と大学ってお互いに助け合うっていうか、別府の町にとっては学生の労働力は大変大きい。その分やっぱり町も大学を支援するという意味ではものすごく頑張ってくださって、コロナの時には、学生のバイト先が無くなったということで、アルバイトを市役所や県庁が作り出して下さったりとか、ホントに大事にして頂いてるなと思いますので、その分やっぱり大学としては、市や県に貢献したいという気持ちはものすごくあります。」
学生の半分が留学生、ここまで留学生の割合が高いのはとても珍しいそうで、文科省にもそんなに?とビックリされたとか。立命館大学100周年のプロジェクトで、更なる大学の国際化を考えて開校されました。
別府の高台の広大な土地を無料で提供、大学までの道も新しく作って大学を誘致した大分県と別府市。無料で、とはずいぶん太っ腹なことだ、と思いましたが、学生と教職員合わせて7000人の生む経済効果は大きいですし、学生の労働力が確保できる、アパートなどの空き部屋が減る、など、市にとって良い影響がたくさん。あっという間に採算はとれてしまった。
経済効果だけじゃない、若者のチカラ!!
さらに、もっと大きな効果があったと別府市の阿部万寿夫副市長はおっしゃいます。
大分県別府市 阿部万寿夫副市長
「3000人の留学生が別府の街中に住んで、市民と一緒にもう溶け込んでるんですよね。しかもそれが25年経ってると。で、今どういうことが起こってるかというと、いわゆる少子高齢化、日本中どこでも人口右肩下がりじゃないですか。まあ別府も右肩下がりではあるんですが、APUを中心とした【社会増】があるんで、別府の人口の減り方っていうのは、非常に緩やかなんですよ。
若い方っていうのは、そこにいるだけで活気が、地域としてはつきますので、市としてはもうありがたい限り。もうよくぞ25年前にAPUを誘致した、と。あの自治会活動とかあるじゃないですか、昔ながらの。あんなとこにも『ぜひ自治会活動してみたい』とAPU生が入って来て、一緒に自治会の行事に参加したり、協議に加わったりということも良く聞いてます。
ずっと地元に住み続けたいと言ってくれる学生も結構いましてね、そういう意味でもおじいちゃんおばあちゃん、地元の人もAPU生を頼りにしてるというか、APUの方々が市民と溶け合って一緒に色んな活動する、それ自体を別府市民も喜んでますよね。」
地域の活動にも活気が生まれているんです。自治会活動のほかにも、地域のお祭りにボランティアで参加したり、街づくりを学んでいる学生が、商店街や駅前広場、デパートなどのイベントや企画に参加したり。
また、海外からの観光客が増えている今、飲食店やホテルなどで働くAPUの学生アルバイトたちが、英語や母語を使って観光客を助けています。
そして、2016年の熊本地震の際、別府もかなりの揺れで学生たちは避難所生活をしたのですが、その避難所での多言語対応などでも活躍。
その後、災害時の多言語対応に関して、実体験で得られたノウハウを活かして、学生と一緒に別府市が作りましたが、そういた対策は、他市よりも整っていると思うと阿部副市長は話していました。
もっと多様性を突き詰めて大学の魅力をアップ!
まさに、お互いに助け合って良い効果が生まれていますが、大学は生き残りが厳しくなるといわれます。今後の大学作りについて、米山学長に伺いました。
立命館アジア太平洋大学 米山裕学長
「今後は、留学生の出身国の多様性だけじゃなくて、年齢とか社会的経験とか様々な身体的能力とか、もっと多様な人たちが学ぶ大学にしたいなと考えています。
多様化をもっと突き詰めていかないと、やっぱり留学生の獲得競争も世界的にはすごく厳しくなってきていますし、日本の大学全体で、もっと留学生が日本に留学することを当たり前のように選んでくれるような、そういう努力をすることが必要だという風に思いますし、APUは国際化という意味では一番先陣切って走ってるかもしれませんけれども、安住することなく、どんどん新しいことをしていきたいなと思います。
国内の18歳人口だけを相手にしていたら、絶対レッドオーシャンなんですよね。ですので、それに竦むことなく色んなことを考えるということは、ホントにどこの大学でも必要だという風に思います。」
たしかに、少子化は確実に進んでいますから、先細りなのは見えています。それを踏まえて、より多様化を突き詰めていきたい、ということなのです。
一方、別府市は今年度、市政100周年。その四分の一をたくさんの留学生と共に来たことになります。【山は富士、海は瀬戸内、湯は別府】と言った別府観光の父(油屋熊八さん)は伊予から来た人だそうで、昔から別府は色々なところから来た人が集まって育ってきた町。
これからも、大学は学生を集める工夫をし、市は学生を大事に、そして頼りにもする。お互い助け合っていきたい、とお二方とも話していました。
特色ある大学とそれを積極的に助ける自治体の関係は、人口減少や労働力不足など、これからの日本が抱える様々な課題の、解決のヒントにもなりそうですね。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)