里中満智子「朝、生きて目が覚めるのが一番のマサカ」

TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!

6月5日(日)放送後記

里中満智子さん(Part 2)

大阪府出身の漫画家。16歳で第1回講談社新人漫画賞を受賞し、プロデビュー。以来50 年以上にわたり500タイトル以上の作品を手がけ、現在も漫画界の第一線で活躍しています。大阪芸術大学キャラクター造形学科学科長、日本漫画家協会理事長。

出水:里中さんは大阪市のお生まれですね? どんな少女だったんですか?

里中:変な言い方ですけど、すごくまじめだったと思います。いわゆるイタズラもしないし(^^)本ばっかり読んでいたかったんです。だから雨が降ると「外に行け」って言われないから嬉しかった。親からすると、子供は外で遊ぶもんだと思ってるから。

JK:もっとやんちゃっていうか、外にでてわーっというのはないわけね? スポーツには興味なかった?

里中:全然興味ないです。見るのは楽しいんですけど、自分で動こうって思ったことがないんです。一生閉じこもってても平気(笑)

JK:でもすごい大病をされてますよね?

里中:病気はその時々に。合唱団もご一緒してたのに途中でやめちゃったのは、1回手術で入院してお休みしてたら、歌う気力もなくなっちゃって。ひとつタイミングを外すとなかなか・・・。でもあれも人生3回目の手術でした。でもありがたいことに、曲がりなりにも元気でやっています。だけど50過ぎたらどこも悪くない人はいないと思ってるので(^^)

JK:子供の頃はいくつぐらいから本を読むようになったんですか? 何がきっかけ?

里中:きっかけはわからないです。ただひたすら、字が読めるようになったら本が読めるのがうれしくて、その辺にあるものを片っ端から読んで。父親が料亭の息子だったんです。父親の本棚にも料理の本がいっぱいあって、しょうがないからそれも一生懸命読んで(笑)面白かったですよ、江戸時代の流行りの料理本とかあってね。

JK:へぇ! そういう漫画もいいんじゃないですか?

里中:そうですね、お料理漫画もひとつのジャンルとして定着してますからね。小学校に入ってからも、親が「何が欲しい?」っていうと「本買って」って言ってましたね。

出水:でもいつから絵をつけた漫画に興味を持ったんですか?

里中:文字の物語も漫画も、私にとっては一緒だったんですよ。そこにどんなドラマが描かれているかを知りたかった。漫画を読んでると大人たちが「ダメな子」って言って、活字の本を読んでると中身がどんなものでも「偉いね」って言われるんですよ。それが変だなと思い始めたのが小学校4年生ぐらいでした。

出水:小さいころから絵は上手だったんですか?

里中:一応そうみたいで、休み時間になるとクラスメートが「こういう絵を描いて」ってノートを持ってくるんですよ。だいたい女の子はきれいなドレスのお姫様とか、かっこいいファッション。やっぱりオリジナルのデザインでスを描かなきゃいけないだろうと思って、ドレスのデザインを考えるのは楽しかったですね。男の子たちのリクエストは恐竜が多かったですね。でも、リクエストに応えるためには描けなきゃいけないので、家で図鑑を見て恐竜を叩きこんで。

JK:恐竜ってアートですよね!

出水:1964年、高校性のときに第1回講談社新人漫画賞を受賞しましたが、当時受賞が決まった時はどんな気持ちでしたか?

里中:それこそマサカって感じです。「最終選考に残ったら嬉しいな」と思ってせっせと描いて応募して、それで1等賞もらってデビューになったので・・・ペンネームを考える暇もなくデビューが決まっちゃって。でもそれでよかったと思うのは、全国の漫画家志望の少年少女が、私と同い年とかちょっと年上も含めて、「この歳で描いてもいいんだ」と思った、と後から言われました。「漫画家になろうなんてこれっぽっちも思っていなかったけど、あれがきっかけで、職業として考えていいんだ。それから真剣にやり始めた」と言うことを錚々たる人たちから言われました。

出水:デビュー以来ずっとお忙しいと思いますが、多い時で月に何本ぐらい連載して、何ページぐらい描いていたんですか?

里中:私は異常なぐらい仕事量が多くて。デビューした時に編集の人から「女性は結婚したら仕事辞めちゃうんだよね」って言われたんですよ。あとは何かにつけ「女の子だからどうせたくさんは描けないでしょ」って。

JK:そういうのってものすごく悔しいですよね。

里中:ものすごく悔しいから、そんな風に言われないようにまずは頑張りたい。それとデビューしてもとんとん拍子に行ったわけじゃなくて、仕事が途切れてどうやって食べていこうってこともあったので、仕事が来るとうれしくて! あと女の子って世代ごとに見る夢が違うんですよ。だから世代ごとに雑誌があるんです。

JK:見る夢が違う!

里中:女の子ってものすごく現実的で、自分が今おかれている年齢ならではの状況が一番気になる。小学生だと親子関係やお友だち。中学生だと初恋とか。高校生になると恋愛モード。大人の女性になると結婚、それ以上になると不倫とか(笑)いろいろあるんですけど、男の子って一生一つの夢をみて生きていけるんですよ。これ不思議!

出水:戦いとかですね(^^)

里中:だから少年マガジンやビックコミックとかで編集者にどういうのが受けるかきくと、みんな同じなんですよ。いくつになっても! だから男の子はロマンチストなんだ、って。それに対して女の子は現実的。でも全世代に読んでもらいたいと思ったら、たくさん描く。となると、どんどん仕事が増えちゃって。一番多い時で連載8本ぐらいやってました。

JK:へぇ~! ごっちゃにならないんですか??

里中:ならないんですよ。仕事を渡しました、ハイ次の作品、って切り替えなきゃいけないから、前の作品の後悔をグズグズ引きずってる暇がない(笑)最大で月700ページぐらい描いてたかな。

出水:ええええ~(゚Д゚;)

JK:もう手がおかしくなるんじゃない?! 腱鞘炎とか。アシスタントとかはいないの?

里中:いました。でも私の場合、最大で6人ですね。でも私自身がものすごく描くのが速いんですよ。「そんなに仕事するなんて正気じゃない」ってよく言われましたけど、倒れないと限界ってわからないので、倒れるたんびに仕事を減らしていって(^^;)ある時期にようやくまともな仕事量になりました(笑)

JK:一番思い出のマサカは?

里中:私はしょっちゅうマサカと思っているのは、マサカこんなに長く生きてるとは思わなかったんですよ。平均年齢でいくとまだなんですけど、物心ついたころから物語にどっぷり漬かったせいで、「人はいつ死ぬかわからない」っていうのがいつもあるんです。夜寝る前に「私は明日生きて目が覚めるだろうか」って考えちゃうと、暗くなっちゃって。

JK:自分が漫画の世界に入っちゃってるじゃないですか(^^)

里中:物語の中では人がいっぱい死ぬでしょ? それが自分じゃないとは言い切れない。ドキュメンタリーを見ててもそうです。数で表されちゃってるけど、そのうちの1人が自分じゃないとは限らない。いつも何が起こるかわからない、いつ死ぬかわからないって本当に思ってたんです。学校が終わって友達とバイバイする時に「さよなら」って言われるのが怖くて、「また明日ね」って言って必ず打ち消して。

JK:子供の頃からそういう運命的なことを感じてた?

里中:いつ死ぬかわからないと思ってたから。朝生きて目覚めると、本当にマサカなんですよ。なんてありがたい。考えようでは、暗いって言われますけど、一番暗いことを考えると現実って想像よりも良くなるんですよ。病気は何度もして手術も何度もしてるけど、この病気だとわかったことはラッキーだと。手だてがあるのもラッキー。その結果不都合があっても、こうやって生きてるのはなんてラッキーだと思うと、生きてることって奇跡だなって思うんです。

JK:漫画で自分の作ったストーリーを通じて、自分のポジションっていうのがありますよね。

里中:そうですね、本性が出ちゃうので怖いなと思うんですけれども(笑)でも、誰かどこかで読んでる人が元気になればいいなと。生きてることは捨てたもんじゃない、と思ってくれたら嬉しいなと思います。

出水:2018年から日本漫画協会の理事長でもいらっしゃいますが、理事長としてはどんな活動をしているんでしょう?

里中:一応漫画家同士が集まって、一緒だからできることってあると思うんです。とくにチャリティとか、権利保護の運動とか。1人でやると疲れるばかりなので、仲間がいてこそなので、そういうのをまとめたり。これもみんなの総意でやっていることなので、後から入ってきた人がなるべく楽に仕事ができるようにしています。

JK:すごくいいチームですね。漫画協会っていう日本ならではの集まりを作ってるって言うのは見事です。

里中:日本ってどんな組織でもそうですけど、平等にやるのをよしとしますよね。全員の意見を聞くとか。だから海外からは「まとまるのが遅い」って言われるんですけど(^^)

JK:いま漫画ブームは世界から尊敬されてるでしょう? いい時代を作ったんですよ。

里中:本当に不思議ですが、日本人ってオリジナリティがないって言われるんですが、ものすごくオリジナリティを尊重します。伝統にどっぷり浸からない。伝統にいる方でも新しいものを求めますでしょ? それが身体で分かっている。

JK:新しい漫画協会にしていきたい?

里中:というか、新しい人にもチャレンジしてほしい。どうしても契約とかで悩んじゃって、仕事以外のことで疲れちゃって辞めちゃう人も過去にいたんですよね。もったいないなと思うので、何の苦労もせずに創作だけに集中できる環境を作りたい。それが先輩の役目だと思ってます。若い人たちは変な思い込みを捨てて、チャレンジしてほしい。漫画の世界って読者に対してすごく公平なので、去年デビューした人が今年はベストセラーで受けたりとか。ベテランだからといって受けることも関係ない。男女の差もないし。だから安心して入って来てほしいですね。読者は自分の好みで選んでますから、昨日はこっちのファンだったけど、今日はこっちのファンっていうのも自由ですから!

=OA曲=
#375
M. 勝手にしやがれ / 沢田研二

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