来年のアメリカ大統領選挙、民主党が勝つために必要な条件

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月2日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。2020年のアメリカ大統領選挙の展望について解説した。

民主、急進左派が直接対決 =2019(令和元)年7月30日、米デトロイト(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

宮家邦彦氏に訊く、アメリカ大統領選の展望

来年(2020年)のアメリカ大統領選の民主党候補者を選ぶための第2回テレビ討論会、2日目の議論が、7月31日に中西部ミシガン州デトロイトで行われた。初日の討論会で精彩を欠いたバイデン前副大統領(76)は、他の候補から過去の発言や賛成した法案について繰り返し追及され、防戦を強いられる展開になった。

飯田)時差の関係で、日本では2日の新聞各紙にもこの模様が掲載されています。2日間にわたって行われた、第2回テレビ討論会です。

宮家)日本にはアメリカ大統領選のプロも多くいるので、あまり偉そうなことを言うつもりはないのだけれど、私にとって米大統領選は来年で44年目なのですよね。1976年にアメリカの大学へ留学しているとき、ちょうど大統領選挙がありました。ウォーターゲート事件の後、ジミー・カーターが勝った選挙です。それからずっとハマっているのですよ。大統領選の投票が来年11月ですよね。今は1年以上も前、しかも夏休みの前です。だいたい今頃になると、各党内で討論会が始まるのです。共和党の方はもう決まっているから、民主党だけですが、今回は20数人も出て来て、大混戦状態ですよね。人数は少し多いけれど、これもまあよくあることです。

飯田)こんなものですか。

宮家)私に言わせれば、夏休み前の最初の何回かの討論会はいろいろな人たちが出て来て「わいわいがやがや」するだけで、それ自体大きなインパクトがあるとは思いません。大統領選挙について選挙民が本気になるのは、投票日の数ヵ月前です。来年9月以降にならないとみんな本気にならないです。それまではエンターテインメントだと思っていますから。今はバイデンさんが30数%でダントツの1位で、次が10数%ですから、他の人たちが生き残ろうと思ったら、当然バイデンさんを叩くしかないのですよ。ある意味で泥仕合になっている部分もあるのだけれど、これが徐々に収斂して行く。次回の討論会は夏休み明けの9月にやりますが、支持率や資金集め、それを見て候補者をどんどん絞って行く、そんな流れではないかと思います。

ジョー・バイデン(2013年)(ジョー・バイデン-Wikipediaより)

アメリカ大統領選は「勝つ必要はない、相手が負ければいい」

宮家)ただ、アメリカ大統領選挙は「勝つ」必要は必ずしもない。相手が負ければいいのです。トランプさんは全体の票数では勝てないと思います。前回だって、ヒラリーさんに総得票数では300万票近く負けているのだから。いまの状態では総得票数を上回ることはできないでしょう。でも、勝つことはできる。なぜかと言うと、アメリカ大統領選挙というものは、各州の大統領選挙人の勝者総取りで、その総和を競うわけですから、トランプさんも上手くやれば勝てないわけではない。民主党が割れればよいのです。このまま行けば民主党候補者は数人になるけれど、問題は最後に1人になるかどうかです。1人にならなかったら、トランプさんの不戦勝です。いまはあまり重視して見る必要はないけれど、今年(2019年)の年末までに民主党の候補者がどのくらい絞られるか。もっとも大事なことは、党が一致団結して1本に絞られるかです。民主党では、いまは真の党員とは言えないようなイレギュラーな人と、中道の人、更にはリベラルな人もいますが、候補者選びはまだ収斂していません。中道の人が党をまとめてトランプさんを引きずり下ろす強い力になって行くかどうか……。これを見極める必要があると思います。

飯田)その中道の代表格として、バイデンさんがいます。リベラル側は有力な人が出て来ていて、サンダースさん、カマラ・ハリスさん。

宮家)有力だけれど、それは無理ですよ。そもそもサンダースさんは社会主義者ですから。

飯田)自分でも公言していましたね。

宮家)若者の支持は取れても、民主党全体の支持は取れないと思います。ハリス女史は、僕はよいとは思いますが、まだブレイクしていませんね。

飯田)この人は、上院議員をやられていて。

宮家)確かカリフォルニアだったかな。検察官だったので、しっかりしているのですよ。そういう人は民主党にも探せばいるのです。ただ、トランプさんはあの強烈な個性と、少数ながらも強固な支持基盤があります。それを崩すには民主党が団結するしかありませんが、団結を具現できるかどうか。民主党支持者は今そういう人を探しているけれど、なかなか見つからないのではないですか。

カーマラ・ハリス-Wikipediaより

五大湖周辺を勝てる候補者を民主党が出せるかどうか

飯田)結局、勝者総取りで州ごとにやるということになるので、だいたいの州はどちらになるかが事前に決まっていますね。

宮家)前回で言えば、50州のうち44州は前々回と結果が同じです。つまり、6つの州だけがひっくり返ったということです。それが、アイオワ、ウィスコンシン、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、フロリダなのですよ。フロリダを除いた州は、全部五大湖周辺なのです。

飯田)いわゆるラストベルト。

宮家)そこでトランプさんが次回、1つか2つ取りこぼせば十分形勢はひっくり返るのです。そこで勝てる候補者を民主党が1人に絞り込めるかが問題で、もし民主党が割れたらトランプさんが勝ちます。

飯田)難しいところが、ハリスさんにしたらカリフォルニアだったり、西部のリベラルな土地から出て来た人が、ラストベルトに昔からいる白人に連なる人たちに、「あいつらは綺麗ごとばかり言いやがって」と言われてしまう。

宮家)バイデンさんは白人で、しかも労働者のことをわかっている人ですから、もし彼が10年若かったら確実に候補になっています。

飯田)ジーンズを履いて、「俺たちは一緒だよな」とキャンペーンをやると。

宮家)それならトランプさんに対して有効な対抗馬になりましたが、ちょっと遅れてしまいましたよね。

飯田)その次という人が、いまの民主党のなかには……。

宮家)いないのではないかな。

飯田)世界的にリベラルが、民衆から浮遊してしまうのと同じような流れなのですかね。

宮家)日本も昔はそうでしたから、どこも同じですよ。

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