イランを中心に“第2のアラブの春”が起きている理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ウクライナ機撃墜事件について解説した。

752便の残骸(ウクライナ国際航空752便撃墜事件-Wikipediaより)

ウクライナ機撃墜事件

イランは11日、乗員乗客176人が乗ったウクライナ国際航空の旅客機を誤って撃墜したことを認め、人為的なミスから意図せずに攻撃したと釈明した。イラン革命防衛隊の航空宇宙軍司令官が記者会見で認めたもので、ロウハニ大統領も声明で謝罪し、賠償に応じる方針を打ち出している。

飯田)イラン各地では、これまで事実を隠ぺいしていた指導部に抗議するデモも行われています。指導部とはロウハニ大統領ではなく、ハメネイ最高指導者へのデモが続いているということです。

須田)それがハメネイ師に向かっていることがポイントだと思います。いずれにしても、現場からロシア製のミサイルの残骸が見つかっており、これは隠ぺいしておけないということで、一転して謝罪することになりました。

752便の墜落現場(ウクライナ国際航空752便撃墜事件-Wikipediaより)

イラン国民がすべてイスラム教徒ではないという事実

須田)記憶にとどめていただきたいのですが、イランというとイスラム原理主義の国であり、国民を含めて熱心なイスラム教徒で、イスラム指導者に従っているというイメージがあります。しかし現状はそうではなく、特にイランの若い人は、ほとんど信仰心がありません。

イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信

10年前の「アラブの春」と同じ反政府的な動きがアラブ各国で起きている

須田)もう1つは10年前、SNSを中心にアラブの春が起こりましたが、いま同じような動きがアラブ各国で起こり始めています。イラン、アルジェリア、レバノンなどの強権的な政治体制に対し、国民から反政府的な動きが強行に起きていて、その中心に位置しているのがイランです。その理由は経済的な疲弊です。失業率が10%を超え、インフレ率が30%という状況で、さらにガソリン価格の上昇が若い人たちの怒りに火をつけ、反政府デモの動きにつながっています。今回のウクライナ機の撃墜を受けて、さらに激化している状況です。

飯田)イランという国も大統領選挙など、民主的な投票が行われています。ただし別の権力機構として、革命防衛隊を含めて宗教指導者がいることを気にしており、若者中心に「民主的に決めたい」という声が大きい。

須田)自分たちの手が届かないところに、最高権力者がいるのですから。そういう二重権力構造に関する不平不満があります。それも、経済がうまく行っていればさほど表面化しないのですが、そうではなくなったために不満が爆発しています。アメリカはそれを知っているので、さらなる経済制裁に乗り出したり、トランプ大統領が反政府デモに対して応援するツイートをして、揺さぶりをかけているのです。

ソレイマニ司令官の殺害を1面で大きく報じるイラン各紙=2020年1月4日(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカと戦える状況ではないイラン

飯田)先週のいまごろは、イランからイラクにあるアメリカ軍基地にミサイル攻撃が行われて、「世界大戦か」というムードになりました。しかしイランの足元がその状況では、全面的なぶつかり合いには到底耐えられませんよね。

須田)イランの国内情勢を考えると、アメリカとの全面戦争に踏み切れる状況ではありません。ですからアメリカ軍施設にミサイルを発射しましたが、水面下では、イラン側は人がいないところにミサイルを撃って、アメリカ側に「報復は終わった」としました。これはできレースみたいなものです。そのあたりを見ても、アメリカとイランが戦争を行うことは100%ありません。

飯田)イランの国内事情で考えると、このデモがどう推移して行くかがカギを握ることになりますか?

須田)そうですね、第2のアラブの春の注目点はイランの情勢です。それをどう抑えつけられるかです。私のカウントでは、デモで319人が殺されている状況です。力で抑えつけると死亡者が増え、そうするとデモは過激化する。この負のスパイラルに、すでに陥っています。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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16kg以上の“重い軽石”発見「広い視野で自然を学び、感じてほしい」

3月18日付の琉球新報に、こんな記事を見つけました。『国内最大級、軽石なのに“重い!”でっかい! 巨大さに「びっくり」 沖縄の「海中道路」で親子が発見』。

2025年2月18日、丸谷親子が発見した60cmの巨大軽石(撮影:丸谷由さん)

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

この巨大な軽石を発見したのは、沖縄県中城村に住む丸谷由さん(44歳)と、娘の夏瑠沙さん(7歳)。丸谷さんは、沖縄に移り住んで今年で25年になります。もともと東京都の出身ですが、自宅が町田市の郊外にあって、自然豊かな環境の中で育ちました。

幼い頃から自然の中の生き物に興味を持ち、将来は「生物」の研究をしたいと思っていましたが、当時、環境教育が注目され始めていたこともあって、琉球大学の教育学部に進学。大学院では生涯教育を専攻しました。

在学中に、自然環境のサークル「ネーチャー・エデュケーショナル・カフェ」(通称・ネコ)を立ち上げ、野外教育に携わった経験を活かして、現在は「一般社団法人 ネコのわくわく自然教室」を運営しています。

この教室では、沖縄の豊かな自然の中で遊んだり、キャンプをしたり、さまざまな体験が楽しめるプログラムを、年間を通じて開催しています。

そんな丸谷さんの人生を大きく変える出来事が起こります。

左:2021年10月25日 沖縄に漂着した大量の軽石の帯、右:2021年に丸谷親子が発見した大型軽石(43cm、福徳岡の場由来。沖縄県立博物館へ寄贈)(撮影:丸谷由さん)

2021年10月、沖縄の海に大量の軽石が押し寄せ、大ニュースになりました。海面を覆い尽くす軽石……、青い海を灰色に変え、漁船やフェリーが出航できず、テレビのニュースは、軽石を“悪いもの”として報じていました。「本当に軽石は悪いものなのか?」丸谷さんは首をかしげました。

軽石の大量漂着は国内では100年ぶりの現象のため、多くの人が驚きました。この時に流れ着いた灰色の軽石は、福徳岡ノ場という小笠原諸島の海底火山からのものでした。日本では、海底火山は伊豆諸島や小笠原諸島に多くあり、陸上の火山は、日本各地にあります。その火山から噴出するマグマが軽石の素になっています。

軽石が最初に流れ着くのは、沖縄を中心とする南西諸島で、さまざまな海底火山から日常的に少しずつ軽石が流れ着いていることは、あまり知られていません。それに大量の漂着は稀な現象なので、専門的な研究があまり進んでおらず、一般にもほとんど認知されていない自然現象の一つでした。

「海底火山の噴火で生まれ、海の流れに乗って旅をする、そこに軽石の魅力を感じました」と語る丸谷さんは、独自に軽石の研究を始め、地元のラジオやYouTubeなどで情報を発信し、娘の夏瑠沙さんと沖縄周辺の海岸で軽石の調査を行っています。

左:軽石が誕生する仕組みを説明する丸谷さん、右:自作の絵本で軽石の誕生を説明する丸谷さん(撮影:丸谷由さん)

今年2月18日のこと、沖縄県うるま市の海岸で軽石を探していると……

「パパ、あれ!」

海岸に、ひと抱えほどもある大きな黒い石を見つけました。表面に無数の穴が空いていて間違いなく軽石ですが、重くて持ち上がらない。大きさは60cm、重さは16kg以上もありました。やっとのことで車に積んで持ち帰った丸谷さんは、国立科学博物館の知人に連絡し、その巨大軽石を送ることにしました。

調査の結果、「平成以降に漂着した軽石の中では国内最大級」だと判明します。

海底火山の噴火で誕生した軽石は、マグマの成分によって色や模様、形が異なるため、どこで生まれたのか、ある程度、特定することができます。今回の巨大軽石は、2023年10月、小笠原諸島・硫黄島の噴火によって生まれたものと考えられています。

「マグマが噴出した直後の軽石は、乗用車ほどの大きさのものもあるんです。軽石は海を数千km、数ヶ月漂流することがありますが、その過程で細かく砕け、10cm前後の大きさになります。そうした中で、60cmもの大きさを保ったまま、1年半も海を漂ってきた軽石は、学術的にも貴重なサンプルになるので国立科学博物館に寄贈しました」

左:ネコのわくわく自然教室(沖縄県中城村にて子ども達の海の体験)、右:軽石の上で半年以上かけて大きく育ったサンゴ(撮影:丸谷由さん)

丸谷さんが運営する「ネコのわくわく自然教室」では、「軽石から学ぶ体験プログラム」が人気講座となっています。

「沖縄に大量の軽石が押し寄せたとき、軽石は海を汚す悪いもの、といった報道ばかりでしたが、よくよく考えてみると、それは人間の都合なんですね。海に漂う軽石は、貝やカニ、小さな魚などの生き物を遠くに運ぶという役割も果たしています。海岸に流れ着くと、やがて砕けて砂になり、島の一部となります。ペットボトルやビニールとは違い、軽石漂着は地球の営みの一環なんです。子どもたちには、そうした広い視野で自然を学び、感じてほしいと思っています」

1000km以上離れた場所から、海を渡って沖縄にやって来る軽石。そこには、子どもたちが自然環境を学ぶ教材としての可能性が、たくさん詰まっています。

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