初対面の医者による“安楽死”などありえない合法国オランダの厳格な制度~ALS嘱託殺人医師2人逮捕

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月24日放送)に国際政治アナリスト・NPO法人海外安全危機管理の会 代表理事の菅原出が出演。ALS女性患者嘱託殺人事件について解説した。

京都・ALS女性患者嘱託殺人事件 医師2人を逮捕 容疑者京都府警に移送 JR京都駅の改札を出た容疑者=2020年7月23日午後2時24分、京都市のJR京都駅 ©産経新聞社

難病の患者に頼まれて殺害か、医師2人が逮捕

全身の筋肉が衰える難病、A L S筋萎縮性側索硬化症の女性患者から依頼を受け、京都市内の自宅で薬物を投与し殺害したとして、京都府警は昨日23日、宮城県名取市でクリニックを開業する大久保愉一容疑者と東京都港区の山本直樹容疑者の医師2人を嘱託殺人の容疑で逮捕した。2人は女性の主治医ではなくSNSを通じて知り合ったと見られている。

飯田)山本容疑者側の口座に女性の側から150万円前後が振り込まれていたことも確認されているということで。今日24日、2紙が1面トップで報じています。ここから安楽死の議論まで展開している新聞もありますが。菅原さんどうご覧になります?

菅原)第1報で亡くなられた方が京都在住なのに、医師が仙台と東京で、しかも面識がなくS N Sで知り合ったらしいということだけでていたと思っていたのですよね。そして、今朝24日の朝になってみたらけっこう詳しい情報がわかってきていて、この2人の方はいままで安楽死を肯定するような議論を展開した電子書籍を出版していたということもわかっていまして。しかもその電子書籍のタイトルが、『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術』というこんなタイトルの本を出していたということがわかっていまして、報道で一部内容が紹介されていますけれども、証拠を残さず老人を消すことができる方法があるとか、違和感のない病死を演出できれば警察の出る幕はないし、犯罪かどうか見抜けないこともある、荼毘に付されれば完全犯罪だ、などと記されていたと書いてありますので、本当に医師という立場でありながら生き死に対する姿勢に疑問を感じざるを得ないような方々だと思ってしまいますよね。

飯田)そういうところが一人歩きするような行動になって、これをベースにする安楽死の議論とかとなると、まったく別のものになってしましますよね。

菅原)そうですね。本来この患者の方は非常に長いことこの病気で苦しまれていて、死にたいとずっと言っていたということも、知り合いの方のコメントからわかってきています。安楽死が認められているスイスへの渡航も計画したことがあるということでしたので。

飯田)産経新聞の関西版でかなり詳しく報じられていて、よくここまで取材したと思ったのですが、友人の方がそう仰っているのですね。

菅原)ええ。ということなので、ご本人は非常に苦しまれていたということなのですけれども、本来安楽死とは真剣に議論されるべき話なのですが、こういう事件のなかで取り上げられると、安楽死というもの自体がネガティブなものという印象だけになってしまいますので、それも非常に問題だと思っています。

ニッポン放送 NEWS ONLINE

安楽死合法のオランダでの厳しい手続き

菅原)私は安楽死という意味では先進国と言われているオランダに留学していたということもありまして、現地でいろいろな話を聞いたことがあります。オランダの事情などもお伝えしたいと思うのですが、オランダの場合は70年代からずっと議論しているのです。

飯田)もう50年以上にわたって、ということですね。

菅原)ええ。実際に安楽死を認める法律が2001年にできましたので、法律ができてからも20年くらい経っているわけですけれども、たくさんの裁判での判例や、法律を作ってからもいろいろな運用や改正をしながら、進めているという現状で、それくらい真剣に生と死に向き合いながらこの制度をつくってきていると考えると、まったくレベルの違う話だと思いますね。

飯田)今回の事件でこの医師2人はほぼ初対面だということでしたが、オランダで初対面の医者が安楽死をさせるなんてことはないですよね。

菅原)あり得ないですね。オランダの場合はホームドクター、かかりつけ医と言いますが、ホームドクター制というのが発展していますので、本当にドクターとの関係はすごく親密で、信頼関係ができています。

飯田)その上で、そのお医者さんの判断だけではないのですよね。

菅原)はい。(ホームドクター)だけではなくて、さらに中立的な立場のお医者さんの意見も聞いて、その人からの診断も得て、セカンドオピニオンもきちんとやらなくてはいけない、とかいろいろな手続きがあるのですよね。

飯田)行政も含めて、きちんと自分の意思で判断したかというのもすべてオーソライズした上で、という。そこら辺の仕組みもまったく違うわけですよね。

菅原)まったく違いますね。

radikoのタイムフリーを聴く

16kg以上の“重い軽石”発見「広い視野で自然を学び、感じてほしい」

3月18日付の琉球新報に、こんな記事を見つけました。『国内最大級、軽石なのに“重い!”でっかい! 巨大さに「びっくり」 沖縄の「海中道路」で親子が発見』。

2025年2月18日、丸谷親子が発見した60cmの巨大軽石(撮影:丸谷由さん)

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

この巨大な軽石を発見したのは、沖縄県中城村に住む丸谷由さん(44歳)と、娘の夏瑠沙さん(7歳)。丸谷さんは、沖縄に移り住んで今年で25年になります。もともと東京都の出身ですが、自宅が町田市の郊外にあって、自然豊かな環境の中で育ちました。

幼い頃から自然の中の生き物に興味を持ち、将来は「生物」の研究をしたいと思っていましたが、当時、環境教育が注目され始めていたこともあって、琉球大学の教育学部に進学。大学院では生涯教育を専攻しました。

在学中に、自然環境のサークル「ネーチャー・エデュケーショナル・カフェ」(通称・ネコ)を立ち上げ、野外教育に携わった経験を活かして、現在は「一般社団法人 ネコのわくわく自然教室」を運営しています。

この教室では、沖縄の豊かな自然の中で遊んだり、キャンプをしたり、さまざまな体験が楽しめるプログラムを、年間を通じて開催しています。

そんな丸谷さんの人生を大きく変える出来事が起こります。

左:2021年10月25日 沖縄に漂着した大量の軽石の帯、右:2021年に丸谷親子が発見した大型軽石(43cm、福徳岡の場由来。沖縄県立博物館へ寄贈)(撮影:丸谷由さん)

2021年10月、沖縄の海に大量の軽石が押し寄せ、大ニュースになりました。海面を覆い尽くす軽石……、青い海を灰色に変え、漁船やフェリーが出航できず、テレビのニュースは、軽石を“悪いもの”として報じていました。「本当に軽石は悪いものなのか?」丸谷さんは首をかしげました。

軽石の大量漂着は国内では100年ぶりの現象のため、多くの人が驚きました。この時に流れ着いた灰色の軽石は、福徳岡ノ場という小笠原諸島の海底火山からのものでした。日本では、海底火山は伊豆諸島や小笠原諸島に多くあり、陸上の火山は、日本各地にあります。その火山から噴出するマグマが軽石の素になっています。

軽石が最初に流れ着くのは、沖縄を中心とする南西諸島で、さまざまな海底火山から日常的に少しずつ軽石が流れ着いていることは、あまり知られていません。それに大量の漂着は稀な現象なので、専門的な研究があまり進んでおらず、一般にもほとんど認知されていない自然現象の一つでした。

「海底火山の噴火で生まれ、海の流れに乗って旅をする、そこに軽石の魅力を感じました」と語る丸谷さんは、独自に軽石の研究を始め、地元のラジオやYouTubeなどで情報を発信し、娘の夏瑠沙さんと沖縄周辺の海岸で軽石の調査を行っています。

左:軽石が誕生する仕組みを説明する丸谷さん、右:自作の絵本で軽石の誕生を説明する丸谷さん(撮影:丸谷由さん)

今年2月18日のこと、沖縄県うるま市の海岸で軽石を探していると……

「パパ、あれ!」

海岸に、ひと抱えほどもある大きな黒い石を見つけました。表面に無数の穴が空いていて間違いなく軽石ですが、重くて持ち上がらない。大きさは60cm、重さは16kg以上もありました。やっとのことで車に積んで持ち帰った丸谷さんは、国立科学博物館の知人に連絡し、その巨大軽石を送ることにしました。

調査の結果、「平成以降に漂着した軽石の中では国内最大級」だと判明します。

海底火山の噴火で誕生した軽石は、マグマの成分によって色や模様、形が異なるため、どこで生まれたのか、ある程度、特定することができます。今回の巨大軽石は、2023年10月、小笠原諸島・硫黄島の噴火によって生まれたものと考えられています。

「マグマが噴出した直後の軽石は、乗用車ほどの大きさのものもあるんです。軽石は海を数千km、数ヶ月漂流することがありますが、その過程で細かく砕け、10cm前後の大きさになります。そうした中で、60cmもの大きさを保ったまま、1年半も海を漂ってきた軽石は、学術的にも貴重なサンプルになるので国立科学博物館に寄贈しました」

左:ネコのわくわく自然教室(沖縄県中城村にて子ども達の海の体験)、右:軽石の上で半年以上かけて大きく育ったサンゴ(撮影:丸谷由さん)

丸谷さんが運営する「ネコのわくわく自然教室」では、「軽石から学ぶ体験プログラム」が人気講座となっています。

「沖縄に大量の軽石が押し寄せたとき、軽石は海を汚す悪いもの、といった報道ばかりでしたが、よくよく考えてみると、それは人間の都合なんですね。海に漂う軽石は、貝やカニ、小さな魚などの生き物を遠くに運ぶという役割も果たしています。海岸に流れ着くと、やがて砕けて砂になり、島の一部となります。ペットボトルやビニールとは違い、軽石漂着は地球の営みの一環なんです。子どもたちには、そうした広い視野で自然を学び、感じてほしいと思っています」

1000km以上離れた場所から、海を渡って沖縄にやって来る軽石。そこには、子どもたちが自然環境を学ぶ教材としての可能性が、たくさん詰まっています。

radikoのタイムフリーを聴く

Facebook

ページトップへ