知られていない~ゴーン被告と関空運営会社ヴァンシ・エアポートの親密な関係
ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(1月6日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ゴーン被告がレバノンに逃亡したニュースについて解説した。

公判前整理手続きのため、東京地裁に入るカルロス・ゴーン被告=2019年06月24日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社
ゴーン被告逃亡~関空が荷物のX線検査せず
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡した事件で、被告が出国に使ったと見られるプライベートジェット機に持ち込まれた荷物が、関西空港でX線検査を受けていないことが5日、わかった。
飯田)スーツケースと、高さ1メートルを超える大型ケース数点ずつがあったということです。大型ケースのなかの1つにゴーン被告が入っていたという報道がありますが、出入国管理の問題は当然問われますよね?
出入国の管理がずさんであったのが今回の最大の問題点
須田)裁判所の保釈が問題である、また弁護士の管理に問題があったなどと指摘されますが、すべて的外れだと思います。問題を指摘するならば、イミグレーションです。出入国管理庁という役所がこれをチェックするのですが、ここに問題があったということは間違いありません。出国や入国に関しても、きちんとチェックするという法律があって、これをすり抜けてしまえば法律違反、刑事罰に当たる。明らかにゴーン被告の場合は法律違反に当たって、刑事訴追を受ける可能性が極めて高いという状況です。今回のような逃亡や犯罪行為が行われる可能性があるために、出入国の管理が行われているわけです。そこがずさんだったということが、今回の最大の問題点だと思います。

日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示手続きが行われる東京地裁の法廷=2019年1月8日午前(代表撮影) 写真提供:共同通信社
プライベートジェット機を使用したことによる影響
須田)もう1つのポイントは、プライベートジェット機が使われたということです。空港を運営する会社にとって、プライベートジェット機は、積極的に誘致をする対象なのです。羽田や成田のように、離着陸枠が常に埋まっているような空港は別として、余裕のある空港は多いのです。そういう空港は、離着陸料が確実に取れるプライベートジェット機や、LCCを積極的に誘致しています。そのために専用ターミナルを作るなど、さまざまな便宜を図っています。プライベートジェット機を使う人は富裕層が多いですから、富裕層に対して気持ちよく空港を利用できるような環境を整備するということを、どの空港も懸命に取り組んでいます。セキュリティに関しても、一般の利用客でも、例えば航空会社にとって頻繁に利用するお得意様になると、別レーンを使うではないですか。
飯田)ビジネスクラスとか、会員カードの上の方の位の人は「こちらに」と。
須田)別のセキュリティゾーンを通りますよね。同様にプライベートジェット機を使っている人たちは、まったく別のゾーンを通ります。時間待ちもなく通って行きます。亡くなったスティーブ・ジョブズさんが関西空港を使ったときには、日本の戦国時代の忍者が大好きな人でしたので、京都に親子で立ち寄った際に、手裏剣をもらったそうです。それを手荷物に入れて、そのまま一般客と同じようなセキュリティを通そうとしたときに、刃物なので預け入れ手荷物にしてくださいということになった。それにスティーブさんは、「君たちは自分が飛行機をハイジャックするとか、テロを起こすと思っているのか?」と激怒した。また奥さんも化粧品を、液体なので100ml以上はダメですと言われて激怒したそうです。これが関西空港だったのですが、こんなことをやっていたら富裕層の人たちが利用してくれなくなるということで、別レーンをつくり、特別扱いを始めたのだそうです。
関空を運営しているヴァンシ・エアポートとゴーン氏の関係
須田)加えて、ヴァンシ・エアポートというフランスの空港運営会社が、関空のオペレーションをやっています。民営化後にヴァンシ・エアポートとオリックスの連合が、この民営化権を45年間買い取りました。
飯田)空港民営化第1号でしたよね。
須田)オリックスは空港を運営するノウハウを持っていないものですから、全部ヴァンシ・エアポートがやるようになった。この親会社というのが、フランスの大手建設ゼネコングループのヴァンシなのです。実はこのヴァンシの経営陣とゴーンさんは、ものすごく親しいのです。
飯田)そうですか。そのネットワークも…。
須田)いろいろ取材をして行くと、このネットワークが使われた可能性があるとも言われています。私はこのネットワークが使われた可能性が高いと思います。だから関空だった。
飯田)つまり、関空以外にはあり得なかった。
須田)ええ。ゴーン被告が入っていたという大型ケースですが、あれだけ大きなものはX線検査に通らないから、そこに入っていた可能性もありますけれども。その特別扱いの動線を使い、大手を振って航空機に乗り込んだ可能性もあるのではないかと、私は思います。
飯田)拘置所から出て来るときも偽装したことを考えると、どんな手を使ってでも、ということは考えられないことではないですよね?
須田)日本の司法は世界標準からすると、遥かに異常で異様な人質司法です。奥さんともようやく会えたのは、クリスマス・イブの日、テレビ電話での1時間だけだった。これは人権という点からすると、相当な批判が出ます。

東京拘置所を出る日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後、東京都葛飾区 写真提供:産経新聞社
ICチップを付けなかった裁判所の問題
飯田)ただ一方で、逃亡の恐れがないから保釈したということになっていますけれど、逃亡してしまった。そういうところも考えると、ファーウェイの副社長がいまカナダで拘束されていますけれども、あのような形でICチップなりGPSなりを付けておくべきではなかったのか。人権に悖るのではないかという批判は多いけれども、そういうことも考えないと、みすみす逃げられてしまいますよね。
須田)その点に関してのみ、裁判所の落ち度があると思います。それを当人が受け入れたわけだから、なぜ付けなかったのか。この問題もあると思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00