新型コロナ~経済を救うには「現金支給」と「軽減税率」しかない

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月25日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。新型コロナウイルスの影響で3月のデパート売上が前年同期比で4割減少したニュースについて解説した。

新型コロナ特措法施行などについて会見で記者団の質問に答える安倍晋三首相=2020年3月14日午後、首相官邸 ©産経新聞社

3月のデパート売上が4割減少

日本百貨店協会は24日、3月1日~17日までの売上が前年同時期と比べて4割減少したことを明らかにした。新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、訪日外国人に加えて日本人の来店客も減少したのが主な要因となっている。

飯田)経済への影響が数字に表れ、オリンピックも延期となると深刻ですね。

高橋)消費増税で消費が悪くなって、コロナの影響で悪くなって、東京五輪延期でさらに悪くなる。

飯田)消費税、コロナ、オリンピックと。

高橋) 3連発ですね。いちばん悪いシナリオになってしまいましたが、こういうときに経済対策をきちんとやらなければなりません。マクロの経済対策で需給ギャップがどのくらい発生するかを予測して、それに見合う財政出動をすることが基本です。財政出動の効果を上げるために、金融緩和をするということです。議論としてGDPの5%以上をやらないといけませんが、なかで細かい話をしているでしょう。そうすると、真水ベースでGDP5%は行かないと思います。

飯田)だいたい520兆くらいですか。

高橋)GDP5%ですから、25兆~30兆円が真水ベースで必要です。政府でいろいろな対策を聞いていると、膨らませて融資額などが入っているのです。それではいけません。

飯田)いわゆる事業規模と呼ばれるものですね。

高橋)事業規模はダメです。真水ベースでやるのならば、有効需要をつくることです。有効需要をつくりやすいのは消費です。いまいちばん消費が落ちているので、消費の有効需要をつくることが大切です。そのためには、可処分所得を高めるということが簡単なのです。減税、給付金で即座に有効需要をつくることができます。それなのに、麻生大臣がなぜ減税や現金給与に反対しているのかが理解できません。

参院予算委員会で答弁する西村康稔経済再生担当相=2020年3月23日、国会内 ©時事通信

給付するのならばスピードが大事~商品券などは事務手続きで時間がかかってしまう

飯田)給付の部分でメールをいただいています。「現金給与は貯蓄になると言われていますが、いま生活がきつくて貯蓄などできない家庭も多いと思います。現金給付の方が助かります。どう思いますか?」とのことです。

高橋)貯蓄があると言われても、せいぜい3割ですから。あとで消費に回るため大した話ではありません。こういうときはスピード感が重要です。商品券だとか言って、もたもたして所得制限などを考えていると、誰にあげるのかという事務手続きが大変です。結果的に支給するのが5月~6月になってしまうとタイミングを失って、さらに不況になってしまいます。

飯田)経済再生担当の西村大臣は、現金給付をするとしても5月末ということを言っています。

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相=2020年3月10日午後、首相官邸 ©産経新聞社

いちばん簡単な現金給付は「政府振出小切手」

高橋)現金給付でいちばん簡単なのは、政府振出小切手です。選挙の投票権と同じなので、住民票登録しているところに送るのです。振出人が政府になっていて、本人がサインして銀行に持って行けば現金に換えられるというものです。これがいちばん簡単です。

飯田)額面を替えることで、いくらでもできるのですか?

高橋)もちろんです。例えばリーマンショックのとき、アメリカ政府はこれで1人当たり1500ドル、15万円分配りました。即効性が重要だから、所得で誰に配るのかという議論ではありません。多く出したほうが効果があります。

飯田)住所は選挙の度に把握されています。商品券となるとどうですか?

高橋)商品券は複雑な手順になって、地方自治体にやらせるとなると2~3ヵ月かかってしまいます。

飯田)期限をつけないと使わない人が出て来ると言いますが。

高橋)そういう議論をすると、もっと遅くなります。いちばん簡単なのは「政府振出小切手を1週間後に出します」と言うことです。

飯田)これは政令でできるのですか?

高橋)政令でなくても、予算措置さえあればできます。1人10万円を配ると、10兆円が必要になります。これは補正予算を待たないで、予算修正でできます。いま審議しているでしょう、そこで変えてしまう。政府の方で変えればいいのですよ。そうすると3月中にできます。「予算修正はしない、現金給付はダメだ、所得制限でいろいろな制度をつくりたい」などということは理解できません。

日経平均株価 新型肺炎感染拡大で世界経済への影響懸念で一時1,000を越える大幅下落~ 取引開始直後、1,000円以上急落した日経平均株価を示す株価ボード=2020年2月25日午前、東京都中央区 ©産経新聞社

現金支給と軽減税率をなぜ日本政府は避けるのか

飯田)与野党で提案されている、消費税の減税について。

高橋)これもやらないでしょう。軽減税率はいまのシステムでできるので、やることは簡単です。3月に予算修正で現金給付を行い、4月に入って消費税を変えて、軽減税率を6月から実施と思っていましたが、やるつもりはないみたいですね。

飯田)各国はGDPの5%くらい、アメリカは10%ぐらい。

高橋)国によって違っていますが、5%はやらないとリーマンショック級は乗り切れません。有効需要をつくるための減税と給付金を、他国では行っています。大きくやらなければいけないので、このパターンになります。短期で有効需要を救うにはこれしかありません。

飯田)人口があるので、個人消費で1000円でも1万円でも使ってくれれば、大きな需要になりますよね。

高橋)波及効果は大きいです。こういうときは現金給付や減税が適切な手段ですが、日本政府はそれを避ける理由ばかり探しています。

飯田)こういう議論をすると、財源の話になりますが。

高橋)一瞬、金融緩和をするから、国債を日本銀行が買ってくれるので利払い負担はありません。財務省が気にするのであれば、2年間の時限措置でこれをやればいいのです。

飯田)日銀は国債の保有している額を、10~12月期と減らしていますよね。

高橋)80兆ペースに増やして、年間60兆を引き受けて2年間で120兆円です。そのなかの50兆円だけ買えばいいのですから、おつりが来るような話です。

飯田)アメリカのGDPの1割の比率だとしたところで、十分に行けますよね。

高橋)簡単ですよ。なぜこんなに簡単な話ができないのか不思議です。

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亡き夫からバトン受け継ぎ叶えた夢「EVのハーレー」

桜から新緑の季節、ツーリングにはたまらないシーズンがやってきました。なかでも、バイク好きの方にとっての憧れといえば、「ハーレーダビッドソン」! 人生で一度は乗ってみたいと思う方もいることでしょう。

今回は、この「ハーレー」のEV(電動)化に成功した、あるご夫婦のお話です。

上野悠子さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

栃木県宇都宮市の郊外に、「ハイフィールド」というバイクのカスタムショップがあります。代表の上野悠子さんは、1978年生まれの46歳。2018年に結ばれたご主人の誠さんが開いたお店を受け継ぎました。

アメリカンカルチャーが好きだった誠さんは、「ハーレー」を取り扱うお店に勤めた後、20年ほど前に独立して、27歳のときに「ハイフィールド」を開きました。“カッコいいバイク”にこだわって、一時は海外での事業展開も進め、東南アジアと日本を行ったり来たりしながら、こんな夢を語っていました。

「アジアの国々を見ていると、日本のバイクも、今に電気の時代が来る。タバコだって、煙をもくもく上げて吸っていたのが、すっかり電子タバコになっただろう。きっと、同じことがガソリンエンジンでも起こるから、ハーレーをEV化したいんだ!」

しかし、まちの小さなバイク屋さんには、技術もお金もありません。誠さんは、サポートしてくれるパートナーを探して、全国を走り回りました。

そして、横浜の自動車技術会社と繋がり、経済産業省の補助金の存在を知ります。ちょうどお店も移転して、『さあ、これから』という時に誠さんは体の不調を訴えました。

バイクのカスタムショップ「ハイフィールド」

「じつはずっと胃がムカムカするんだ。東南アジアで辛いものばかり食べていたからかな」

大きな病院で告げられた病名は「胃がん」、それもステージ4でした。

「ステージ4だって、3年生きた人もいるというじゃないか。俺の体、あと3年持ってくれ。そうすれば絶対、ハーレーをEVにできる!」

誠さんはそう言って、つらい抗がん剤治療を受けながら、仕事を続けました。2022年8月には、経済産業省に補助金の申請を行って、資金調達に望みをかけます。

でも、その年の11月、誠さんは病状が急変、力尽きました。まだ43歳の若さでした。

誠さんの葬儀が終わると、奥様の悠子さんは、ご縁のあった方々を一人ひとり訪ねました。行く先々で誠さんが愛され、ハーレーのEV化に強い意欲を持っていたことを知ります。

そんな悠子さんのもとへ、経済産業省から「補助金採択」の知らせが届きました。事情を知った事務局の方からは辞退を勧められましたが、悠子さんは迷いませんでした。

上野悠子さん

「彼がずっとやりたかったハーレーのEV化、やれるところまでやってみます!」

思い切って一歩を踏み出した悠子さんですが、実はバイクの免許も持っていなければ、車体の仕組みも知りませんでした。まず『バイクに乗る人の気持ちを知ろう』と教習所へ通って、普通二輪の免許を取ります。バイクの仕組みについても、お店のスタッフの方に1から教えてもらいました。

ただ、肝心のEV化した「ハーレー」の設計図は、誠さんの頭の中にしかありませんでした。悠子さんは、改めて取引のあった人を訪ねて、誠さんとどんなことを話したのか、手掛かりを求めて、少しずつ聞き取り調査を進めて、概要を把握していきます。すると、エンジンをモーターに置き換えることで話が進んでいたことが分かってきました。

とはいえ、単純にエンジンをモーターに置き換えてしまうと、排気管やギア操作など、バイクが好きな皆さんのこだわりの多くが失われてしまいます。デザイン、配置、安全性、操作性、重量など、試作を繰り返すたび、空にいる誠さんに「これでいいの?」と問いかけますが……、もちろん、返事はありません。

『そうか、彼はこの決断、決定を、毎日毎日1人で繰り返していたんだ』

いつしかそう思えるようになった悠子さんは、苦しい気持ちが、次第に誠さんへのより強い尊敬の気持ちに変わっていきました。

EV化したハーレー(画像提供:株式会社チームハイフィールド)

そして数々の苦労を乗り越えて、2024年2月、ついにEV化した「ハーレー」が完成。長年、誠さんと仕事をしてきたスタッフも「これは面白い」と太鼓判を押してくれました。

面白い理由、それはズバリ「音」です。EV化であのエンジンの爆音は無くなり、ほぼベルトとタイヤの音だけが響き渡ります。実際に走らせると、鳥の鳴き声や街の音が耳に入ってきて、とても楽しいという。そんなスタッフの方の言葉に自信を持った悠子さんは、こう話してくれました。

「静かなハーレーなんて……、とおっしゃる方は少なくありません。でも、いつか爆音を鳴らして、排気を撒きながら走ることがカッコ悪くなるかもしれない。その時の選択肢の一つとして、必要とされる日が来ると信じています」

大きな音と共に、自分だけの世界を楽しむツーリングから、風や音を感じて、周りの世界と繋がる楽しさも秘めたツーリングへ。上野誠さん・悠子さんが夫婦でつないで生まれた「EVのハーレー」は、もしかしたら、次の時代の“カッコいいバイク”になるかもしれません。

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