日本で感染爆発していないのは「PCR検査を実施していないから」ではない~感染症専門医が解説 新型コロナウイルス

ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!激論 Rock & Go!」(4月16日放送)に日本感染症学会の専門医で東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授が出演。新型コロナウイルス感染症の特徴について解説した。

集団感染が発生したソウルのオフィスビルで新型コロナウイルスの検査(PCR検査)を行う医療従事者=2020(令和2)年3月10日、韓国・ソウル NNA/共同通信イメージズ ©共同通信社

普通の肺炎との違いとは?

辛坊)日本では年間100万人以上のお年寄りが亡くなっていて、そのうちの1割くらいは肺炎です。ということは毎年10万人くらいとすると、1日当たりでは300人くらいの人が新型コロナに関係のない肺炎で亡くなっているということですよね。日本でいうとこの新型コロナウイルスが蔓延する前は「細菌感染による肺炎球菌の肺炎にお年寄りは気をつけてください、ワクチンを打ってくださいね」というキャンペーンが行われていました。そういうお年寄りのかかる典型的な肺炎球菌による肺炎と、今回のコロナの肺炎とでは違うのでしょうか?

寺嶋)どちらも肺炎ですが、肺炎球菌による肺炎も重症化すると命に係わりますし、ご高齢の方が亡くなる死因としては高齢になるほど肺炎が多くの割合を占めます。感覚としてはウイルスによる肺炎、風邪を起こす多くの要因はウイルスですが、いままでのコロナウイルス、従来のものは単に“風邪症状”に収まっていました。ですが、(今回の)ウイルスが肺炎を起こす、重症の肺炎で命に係わるというのは感覚が違う気がします。

辛坊)ものすごく初歩的な質問なのですが、肺炎は肺がどのような状態になるのですか?

寺嶋)肺というのは吸った空気が入って来て、酸素を取り入れてできた二酸化炭素を吐き出します。気管というのは木の幹のようなもので、気管支が枝、肺胞が葉のような形で、そこで酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出す空気の入った小さな袋なのです。肺炎になるとその肺胞が水浸しになるような状態なので、そこで酸素のやり取りができなくなります。

辛坊)水浸しというのは文字通り体液が肺胞のなかに出てきてしまうということですか?

寺嶋)そうです。

辛坊)ということは、水で溺れたような状態になる?

寺嶋)そうです。ですから、重症化すると陸にいても溺れたような感じになりますね。

辛坊)それはレントゲンを取ったらわかりますか?

寺嶋)わかります。レントゲンでは空気が黒く写って、骨や水分は白く写りますから、もともと黒かったところが白くなるのでわかります。

辛坊)今回の新型コロナウイルスの肺炎、肺炎球菌とそれ以外の肺炎ではレントゲンで見て違いがわかりますか?

寺嶋)わかります。というのは、肺炎球菌や従来見慣れた肺炎というのはどちらかと言うとべったりしたというか、雪で言うと牡丹雪のような感じで白黒はっきりわかりやすいのですが、今回のウイルス性肺炎が薄っすらとしていて、よく我々は曇りガラス様と表現します。CTスキャンという専門の精密検査では違いがわかりやすくて、一般の健康診断でやるようなレントゲンだと本当に肺炎があるのか見つけにくいところはあります。

辛坊)寺嶋さんくらいの専門家中の専門家であれば別ですが、町医者でレントゲンを撮って普通の内科医が見てわかるものですか?

寺嶋)難しいです。町の先生が見ても難しいですし、我々が見ても難しいです。

辛坊)CTスキャンまでいくとだいたいわかる感じですね。

寺嶋)CTスキャンまでいくとわかります。

隠れた陽性の人がいれば一定の割合で出るはずの重症者が出ていない

辛坊)ヨーロッパのように実は爆発的に感染が広がっているのだけれど、PCR検査をしていないから見つかっていないだけという説が一部にあります。実際、お医者さんの感覚からするとどうですか?

寺嶋)爆発的ではないと思いますが、いま日本では1万人が診断されていますが、もしかするとその数倍か10倍くらいは合計するといるのかもしれません。

辛坊)私の知り合いに愛知県の大きな病院へ勤めている人がいるのですが、その人に「最近若い人が「味がおかしい」「味覚、嗅覚障害だ」と言って続々いらっしゃって、PCR検査をしてくれと言うから検査するけれど、実はあまり陽性とは出てこないのですよ」という話を聞いたのですが、どうなのでしょうか。

寺嶋)もちろん芸能人の方もそういう症状で陽性だった人がいますが、もともとアレルギー性鼻炎などでも味覚や嗅覚が落ちることはあります。隠れた陽性の人がもっと爆発的にいるとすると、そのなかでは一定の割合で重症者がいますし、一定の割合で集団に体調の悪い人が出てきてもいいと思いますが、あまりそういう現象もないので爆発的に水面下でいるのに検査しないからわからないだけだということは、いまの日本ではないと思います。

 

亡き夫からバトン受け継ぎ叶えた夢「EVのハーレー」

桜から新緑の季節、ツーリングにはたまらないシーズンがやってきました。なかでも、バイク好きの方にとっての憧れといえば、「ハーレーダビッドソン」! 人生で一度は乗ってみたいと思う方もいることでしょう。

今回は、この「ハーレー」のEV(電動)化に成功した、あるご夫婦のお話です。

上野悠子さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

栃木県宇都宮市の郊外に、「ハイフィールド」というバイクのカスタムショップがあります。代表の上野悠子さんは、1978年生まれの46歳。2018年に結ばれたご主人の誠さんが開いたお店を受け継ぎました。

アメリカンカルチャーが好きだった誠さんは、「ハーレー」を取り扱うお店に勤めた後、20年ほど前に独立して、27歳のときに「ハイフィールド」を開きました。“カッコいいバイク”にこだわって、一時は海外での事業展開も進め、東南アジアと日本を行ったり来たりしながら、こんな夢を語っていました。

「アジアの国々を見ていると、日本のバイクも、今に電気の時代が来る。タバコだって、煙をもくもく上げて吸っていたのが、すっかり電子タバコになっただろう。きっと、同じことがガソリンエンジンでも起こるから、ハーレーをEV化したいんだ!」

しかし、まちの小さなバイク屋さんには、技術もお金もありません。誠さんは、サポートしてくれるパートナーを探して、全国を走り回りました。

そして、横浜の自動車技術会社と繋がり、経済産業省の補助金の存在を知ります。ちょうどお店も移転して、『さあ、これから』という時に誠さんは体の不調を訴えました。

バイクのカスタムショップ「ハイフィールド」

「じつはずっと胃がムカムカするんだ。東南アジアで辛いものばかり食べていたからかな」

大きな病院で告げられた病名は「胃がん」、それもステージ4でした。

「ステージ4だって、3年生きた人もいるというじゃないか。俺の体、あと3年持ってくれ。そうすれば絶対、ハーレーをEVにできる!」

誠さんはそう言って、つらい抗がん剤治療を受けながら、仕事を続けました。2022年8月には、経済産業省に補助金の申請を行って、資金調達に望みをかけます。

でも、その年の11月、誠さんは病状が急変、力尽きました。まだ43歳の若さでした。

誠さんの葬儀が終わると、奥様の悠子さんは、ご縁のあった方々を一人ひとり訪ねました。行く先々で誠さんが愛され、ハーレーのEV化に強い意欲を持っていたことを知ります。

そんな悠子さんのもとへ、経済産業省から「補助金採択」の知らせが届きました。事情を知った事務局の方からは辞退を勧められましたが、悠子さんは迷いませんでした。

上野悠子さん

「彼がずっとやりたかったハーレーのEV化、やれるところまでやってみます!」

思い切って一歩を踏み出した悠子さんですが、実はバイクの免許も持っていなければ、車体の仕組みも知りませんでした。まず『バイクに乗る人の気持ちを知ろう』と教習所へ通って、普通二輪の免許を取ります。バイクの仕組みについても、お店のスタッフの方に1から教えてもらいました。

ただ、肝心のEV化した「ハーレー」の設計図は、誠さんの頭の中にしかありませんでした。悠子さんは、改めて取引のあった人を訪ねて、誠さんとどんなことを話したのか、手掛かりを求めて、少しずつ聞き取り調査を進めて、概要を把握していきます。すると、エンジンをモーターに置き換えることで話が進んでいたことが分かってきました。

とはいえ、単純にエンジンをモーターに置き換えてしまうと、排気管やギア操作など、バイクが好きな皆さんのこだわりの多くが失われてしまいます。デザイン、配置、安全性、操作性、重量など、試作を繰り返すたび、空にいる誠さんに「これでいいの?」と問いかけますが……、もちろん、返事はありません。

『そうか、彼はこの決断、決定を、毎日毎日1人で繰り返していたんだ』

いつしかそう思えるようになった悠子さんは、苦しい気持ちが、次第に誠さんへのより強い尊敬の気持ちに変わっていきました。

EV化したハーレー(画像提供:株式会社チームハイフィールド)

そして数々の苦労を乗り越えて、2024年2月、ついにEV化した「ハーレー」が完成。長年、誠さんと仕事をしてきたスタッフも「これは面白い」と太鼓判を押してくれました。

面白い理由、それはズバリ「音」です。EV化であのエンジンの爆音は無くなり、ほぼベルトとタイヤの音だけが響き渡ります。実際に走らせると、鳥の鳴き声や街の音が耳に入ってきて、とても楽しいという。そんなスタッフの方の言葉に自信を持った悠子さんは、こう話してくれました。

「静かなハーレーなんて……、とおっしゃる方は少なくありません。でも、いつか爆音を鳴らして、排気を撒きながら走ることがカッコ悪くなるかもしれない。その時の選択肢の一つとして、必要とされる日が来ると信じています」

大きな音と共に、自分だけの世界を楽しむツーリングから、風や音を感じて、周りの世界と繋がる楽しさも秘めたツーリングへ。上野誠さん・悠子さんが夫婦でつないで生まれた「EVのハーレー」は、もしかしたら、次の時代の“カッコいいバイク”になるかもしれません。

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