出前館8年赤字、生協宅配黒字 採算は一回止まって、いくら売れるかで決まる

週に1回、決まった曜日に生協の箱が玄関に届く。スマホで頼んだ料理が30分で来る。どちらも「家まで届ける」仕事です。ところが、出前館は8年連続の赤字となる見通しで、生協の宅配は黒字です。同じように家まで来てくれるサービスの明暗を分けているものは何か。移動スーパーから百貨店の外商、訪問診療まで、「動くサービス」の採算の核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。

出前館は8年連続の赤字見通し、生協の宅配は黒字

出前館の決算短信を見ると、2026年8月期の第3四半期までの9か月で、売上高は約283億円。これは加盟店からの手数料や利用者の送料が中心で、料理代の総額ではありません。それに対して売上原価が約282億円。最終損益は、会社の予想を含めると8年連続の赤字となる見通しです。お店と同じ値段や送料無料を打ち出す競争のなかで、1回止まって渡せるのは1食か2食分です。

一方、全国の地域生協の組合員はおよそ2,400万人、宅配の年間供給高は2024年度で2兆1,000億円。日本でいちばん大きな食品の定期宅配です。日本生協連(日本生活協同組合連合会)の資料では、同じ年度の宅配事業の経常剰余率は3.65%。出前館の営業利益率と厳密に同じ指標ではありませんが、黒字です。

背景には、届ける費用そのものの重さがあります。国土交通省によると、日本の宅配便は2024年度で年間50億3,000万個と、2015年度から3割以上増えました。日本物流学会の論文の試算では、人口の少ない地域で荷物1個あたりの人件費と燃料代がおよそ180円から300円。国土交通省の検討会では、トラックで往復1時間かかる配送は1件2,000円を超えるという事業者の声も出ています。「送料無料」と書いてあっても、この費用は消えません。商品の値段か、お店の利益か、会員費のどこかに隠れているだけです。

生協は1回止まって1週間分、料理宅配は1食

では、同じように届ける費用がかかるなかで、なぜ生協は黒字なのか。生協は1回止まって、1週間分の食品を何十品も渡します。料理の宅配は1回止まって1食か2食分。同じ「家まで届ける」仕事でも、1回の停車で動くお金がまるで違います。

この考え方は、生協の料金表にも組み込まれています。コープデリの東京(コープみらい)では、個人で利用する場合の宅配手数料は通常1回198円ですが、3人以上のグループで指定の1か所にまとめて届けてもらうと無料になります(1回の注文額が一定以上でも無料)。1か所に止まって3世帯分を渡せるなら、その分を値引きする。止まる回数をまとめる仕組みです。黒字と赤字を分ける理由はひとつではありませんが、「一回止まって、いくら売れるか」が、大きな分かれ目になっています。

高島屋は店頭売上の4分の1が外商、セブン-イレブンは移動販売車145台

この見方で並べると、動くお店の顔ぶれが見えやすくなります。高島屋の決算説明資料では、国内百貨店の店頭売上高の26%(2025年度)を外商のお客さんが占めています。担当者が家や会社まで商品を持って行く、お得意さま向けのサービスです(店内での購入も含む割合)。衣料品のしまむらは、介護施設や障害者施設への出張販売を、2024年度の127件から2025年度には281件へ2.2倍に増やしました。

セブン-イレブンは2011年から店の商品を積んだ移動販売車を走らせ、2025年2月末で145台です。阪急阪神百貨店の「走るデパ地下」は、和洋菓子を積んだ車でマンションやオフィスの前に出店し、2026年3月時点で出店した場所は約1,000か所。関西では、お客さんが会計時に距離に応じて1人220円から550円の出張料を払います。軽トラックにスーパーの商品を積んで家の前まで来る移動スーパー「とくし丸」は、お店まで遠くて車が使えない高齢者を主なお客さんに全国で1,200台を超えて走り、お客さんは店頭の値段に1品10円か20円を上乗せして払います。

来てもらう費用は、とくし丸の1品10円のように商品の値段に溶け込むか、走るデパ地下のように出張料として別に払うか、会社や主催者がまとめて払うかのどれかです。どの型でも、移動の費用は誰かの財布から確実に出ています。

訪問診療は、同じ建物なら8,900円が2,150円になる

専門家が家に来るサービスでは、この考え方が国の制度になっています。医療の値段を決める診療報酬の点数表では、お医者さんの訪問診療料は、患者さん1人につき890点、つまり8,900円。ところが、同じ医療機関が同じ日に同じ建物に住む別の患者さんも訪ねる場合は215点、2,150円まで下がります。医療費全体ではなく訪問診療料という一項目の話ですが、同じ建物で複数の患者さんを診る場合に点数を低く設定する仕組みです。

厚生労働省の介護事業経営概況調査では、訪問1回あたりの平均収入は訪問看護で8,248円、訪問介護で3,855円、収支差率はそれぞれ10.3%と9.6%です。訪問入浴は1回平均1万5,017円ですが、移動時間が5分から15分の事業所の収支差率が8.3%あるのに対し、45分から60分かかる事業所はマイナス0.8%でした。移動時間だけが差の原因とは言い切れないものの、止まるまでの移動が長いほど利益が薄くなる様子が、訪問入浴の数字には出ています。

誰も数えていない移動

移動の費用は、消えたわけではありません。誰かの財布に移ったか、誰も数えていないところへ移ったかのどちらかです。国土交通省の資料では、大手宅配会社で宅配便の業務にあたる正社員は2019年度の12万4,000人から2023年度には11万6,000人へ7%減り、配達総個数をこの正社員数で割った1人あたりの月間個数は2,049個から2,633個へおよそ3割増えました(委託の配達員は人数に含みません)。東京商工リサーチの調べでは、訪問介護事業者の倒産は2024年の81件から2025年には91件に増え、休廃業・解散は2025年に465件ありました。国土交通省の試算では、再配達のためだけに走るトラックが出す二酸化炭素は、2020年度で年間およそ25万トンです。家から出ない暮らしは、誰かが代わりに動くことで成り立っています。

動くのは、お店か、人か

売り手がお客さんのもとへ通う商いは、新しいものではありません。江戸の棒手振りから戦後の生協の共同購入まで、途切れたことがない商売の形です。むしろ、車で遠くの大きなお店へ買いに行く暮らしのほうが、乗用車の保有台数が1970年の878万台から1990年の3,492万台へ4倍になった、ここ50年ほどの新しい形でした。

いま、お店が人のところへ行く時代が、形を変えて戻ってきています。昔の行商と違うのは、移動そのものが産業になり、その費用が1件あたり、1回あたりの数字で見えるようになったことです。その値段を決めているのは、動く人の専門性でも商品の値段でもなく、「一回止まって、いくら売れるか」なのだと思います。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。

(TBSラジオ『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』より抜粋)

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消費税減税・支援金法案が審議入り。年収350万円上限案の是非は?

10月21日(水)の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、水曜コメンテーター・経済アナリストの森永康平氏と番組パーソナリティの寺島尚正アナウンサーが、消費税減税・支援金法案が昨日、衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りしたというニュースについて意見を交わした。

寺島尚正アナ「高市内閣が今国会の最重要法案に位置づける、消費税減税・支援金法案は昨日、衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りしました。
焦点の一つである支援金の対象者について、高市総理は諸外国の類似の制度を当てはめた場合として、年収350万円を上限とし、およそ2000万人に支給する案に言及、『一つの参考とし、国会での審議も十分踏まえつつ検討する』と述べました。
法案は2027年4月から2年間、食料品の消費税率を8%から1%に引き下げ、29年度に就業者負担軽減支援金を本格導入することが柱となります。
総理は本会議で消費税減税について、市場の信認を確保する観点などから、『2年後には責任を持って確実に税率を元に戻す』と訴えました。
経済への影響を考慮して減税を延長する場合、衆議院の解散に踏み切るかどうかを問われると、『景気を理由に延期することは考えていないため、国民に信を問うことは想定していない』と明言しました。
審議入りした消費減税・支援金法案ですが、森永さん、これは改めてどうご覧になっていますか?」

森永康平「そうですね、これはやっぱり普段必ず出てくる話ではあるんですけども年収の上限みたいなのを決めると、結局それの境目の部分ですよね。1万円違うだけで『どうなんだ?』みたいな話が1個出てくるっていうのと、もう一個はですね、果たして、年収350万円みたいな話が出てますけれども、いわゆるその400万から600万ぐらいみたいな年収の方々を、例えば中間層だと仮定すると、『この辺りって、じゃあ大丈夫なんですか?』って話が、また別で出てくると思うんですよね。それはなぜかっていうと、やっぱり子どもがいて、現役世代で、みたいなところでそこのボリュームが結構あると思うんですけども、これって家族がいると当然その出費も多くなるわけで、税とか社会保険の負担も大きいわけですから、『このあたり、じゃあいいんですか?』っていう話にもなっちゃうわけですね」

寺島「そうですね」

森永「だからその350万円という一つの境界線と、また別に今言った中間層との境界線、この2つの境界線の問題がまず1個問題として出てくるだろうなと。
あとはですね、『結局その年収ベースでやる話なのか?』っていうところは当然あると思うんですよね。いわゆる『資産を大量に持っているけれども、年収自体は低い、あるいは無い』みたいな、例えばですよ?家計調査ベースでいくと、高齢者の方が資産をいっぱい持っていると。これはまあデータ上そうなってるんですよ。でも仕事から引退していたりするともう、『年金ぐらいしか収入がありません』って話になるので、『収入ベースでいったら大したことないですね』って話になります。
ただ、でも『じゃあその人貧困なんですか?』っていうと、『まったくそんなことないです、資産があるから』っていう話も当然あるわけで、そうなってくると『じゃあどうやって所得ベースでやって、資産も加味した形で対象を決めるのか?』みたいな議論になってくるじゃないですか。そうすると、今できないんですよね。
でもこれ『できないんですよね』っていうのは事実としてそうなんですけど、これまたこの話の延長線で問題になってくるのが『2年後には消費税を戻します』と。
でも代わりにそのタイミングで『給付付きの税額控除をやります』となると、それこそまさに『資産とか所得とかを捕捉していないと、ちゃんとはできないですよ』という話になるので、『結局現時点ではできないからって言うけど、じゃあ2年後ってできてるんですか?』っていう、このあたりの整合性も問われてくるのかなと思いますよね」

寺島「そうなんですね」

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