火曜『シン・ラジオ』 映画評論家・松崎健夫がバレンタインに観るべき映画を紹介!
火曜日の『シン・ラジオ』は文系CLUBラジオ、2月14日(火)は映画の日です。
週替りパートナーに映画評論家の松崎健夫さんを迎え、バレンタインに観たい映画をご紹介します!
鈴木おさむ(以下、鈴木) 今日はバレンタインですね、晴れて気持ちいいですね~
松崎健夫(以下、松崎) ハッピーバレンタイン!
鈴木 今週はスペシャルウィークということで、番組からプレゼントがあります。松崎さんがチョイスした3月3日に公開する2本の映画『フェイブルマンズ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のムビチケです。大変話題なこの映画の解説は後ほど。いや、どちらも素晴らしい映画ですよね。
松崎 はい、アカデミー賞にノミネートされている2本を選びました。
※応募は締め切りました
愛に満ち溢れた『エゴイスト』
鈴木 今日はバレンタインということで、愛とか恋とかの映画かと思っていたところ、どうしても紹介したい公開中の映画がありまして。
松崎 はい。
鈴木 『エゴイスト』という映画で、鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんが出演しています。LGBTQに触れるところで、センシティブな話でもあるので、もしかして僕の発言で傷ついてしまった場合はご容赦頂きたいんですが……
松崎 鈴木亮平さんがファッション雑誌の編集マンなんですよね。
鈴木 簡単に言うと宮沢氷魚さんとの男の恋物語です。お2人が裸でキスをしているのがショッキングで、よくこれをビジュアルにしたなと思っていたんです。そんなときに別のラジオ番組で松永大司監督をお招きすることになったのでこの作品を観たところ、素晴らしかった。
松崎 で、僕も試写を逃していたんですけど、おさむさんがそこまで言うなら見なきゃと、昨日映画館で観ました。
鈴木 で、2人とも同じ意見なんですが、間違いなく今年のベストテンに入るだろうと。
松崎 僕も「松崎早いよ」といわれそうですが、今年度の上位に入ってくる映画だろうと思います。
鈴木 これ原作がありまして。エッセイストの高山真さんによるものなんですが、もう亡くなられていているんですね。高山さんの自伝ともいえる小説です。
松崎 もう文庫化もされていて、たまらず僕は観た後に買って帰りました(笑)
鈴木 映画見て、良すぎて原作と見比べたくなったんですね?
松崎 セリフとか、どこまでオリジナルのものなのか確かめたくなりました。
鈴木 いかがでしたか、映画を観た感想は。
松崎 ポスターのビジュアルを見た時、ゲイのことを描いた作品なんだろうなとは思いました。確かにそうなんですが、そこに疑似家族的なものを描いていたところに惹かれました。この何年か自分がよかったと思う映画を振り返ると、疑似家族を描いたものが多く、影響されているところがあるんだとわかりました。
鈴木 『ベイビー・ブローカー』とか、近年そうした作品が多いですよね。
松崎 LGBTQに限らず、血縁関係でない家族もあっていいのではという考え方が、欧米ではあったんだけど日本でも広がっている感じがしました。この作品でも家族の描き方に感動しました。
鈴木 鈴木亮平さんの演技がすごくて、所作とか喋り方とか。監督と話した時に聞いたんですが、ゲイの人たちだけで話をするシーンがあって、鈴木亮平さん以外は役者じゃなくて一般の方だったみたいで、撮影前に2時間以上話したそうです。リアリティを追求していたようですね。
松崎 とくにこの作品は東京テアトルが配給で、通常は単館でやるような映画だったんですけど、シネコンにより全国津々浦々で上映されていて、珍しいと思います。
鈴木 はじめはタイトルから勝手にいろいろ方向性を想像するけど、映画の最後にタイトルが出たときに、その解釈が変わるんですよね。
松崎 はい。僕は本の存在は知っていて、『エゴイスト』というタイトルとゲイの話というのは知っていたのである程度想像していたんですが、終わってみたら単純に『エゴイスト』という言葉だけで受け止めていいのかと、その素晴らしさに考えさせられました。
鈴木 また阿川佐和子さんが助演女優賞ですよね(笑)
松崎 いやーもう2023年の映画賞候補に絶対上がってくると思います。
鈴木 有名な人はほぼ3人で、鈴木亮平さんと阿川佐和子さんの物語になっていくのが意外な展開で。僕も数年前に父が亡くなりましたが、でも結婚して大島さんの親を家族と思うようになったりと、50代以上にあると親とお別れしたり、今までなかった感情を抱くことになりますよね?
松崎 うんうん。
鈴木 そういう人にこそ絶対見てほしい。普通の50代はたぶん、今の予告だけじゃなかなか見ないような気がするけど、見てほしいと思います。
お2人ともこの映画を見た後、涙で立てなかったそう。素晴らしい映画でぜひ観たくなりますね!
スピルバーグの自伝的作品『フェイブルマンズ』
鈴木 さて番組最初に紹介した松崎さんおすすめの2作品のうちで、まず『フェイブルマンズ』。。アカデミー作品賞ほか7部門ノミネートされています。
松崎 監督はスティーブン・スピルバーグ。
鈴木 久しぶりですよね。
松崎 そうですね、ここ数年撮ってなかったような気がしますね。
鈴木 スピルバーグの自伝的な話ですよね。映画が好きな少年の話なんですか?
松崎 なぜスピルバーグ少年が映画を好きになり、映画を作るようになったのか、大学生くらいまでの話が描かれています。
鈴木 僕はスピルバーグ好きですけど、「昔の思い出見せられても」といわれそうですが面白いですね。
松崎 映画についての映画というのは、名監督は1本は撮りたくなるみたいです。スピルバーグはそういうのなかったんですけど、初めて自身のことを描いた映画になってます。
鈴木 年齢的なところもありますか?
松崎 明言されてはいないんですが、両親が亡くなったのでそれを考えたかったんじゃないかと。だから少年時代の話でもあるんですが、家族というか、自分の父と母の話でもあるところがポイントです。
鈴木 なるほど!
松崎 スピルバーグの映画は父性のない話が多いんです。これは評論家の間ではずっと言われてきたことなのですが、数年前にドキュメントでお父さんはどういう存在なのか? という点に初めて触れていて、詳しくは言えないんですがスピルバーグ自身も「新たな発見があった」と気付く場面がありました。そのことが今回の『フェイブルマンズ』に影響されていると感じています。
鈴木 親との映画になるんですか?
松崎 そうなんです。スピルバーグにとって母親はそもそも重要な存在ですが、母親は映画を作るときに、母親は「いいよいいよ、お金は出してあげるよ」という一方で、お父さんは「現実的に考えろ、映画なんか作れるわけないだろ」と。
鈴木 う~ん。聞いててお父さんの印象悪いですが……
松崎 単純に見れば映画に理解があるのは母で、ないのは父になるんですが、本当にそうだったのかと今一度見直す内容になっています。『エゴイスト』の話にもつながる気もしますが、家族の形、相手を理解するのはどういうことか。「いいよ」というだけなのかなという問いかけもあり、スピルバーグ自身のことをここまで描いたのが驚きでした。
鈴木 僕なんかは『E.T.』をはじめ、スピルバーグにたくさんの感動を貰ってきたんですよ。その一人の監督のエピソードゼロがここにあるかと思うと、そこもポイントですね。
おすすめ作品紹介の間にも、リスナーからの映画質問がたくさん来ています。アカデミー賞にノミネートされた、いい意味での“クソ映画”についても、松崎さんが詳しく紹介しています!
変な期待ができる『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
鈴木 さてもう一つの松崎さんおすすめ作品が『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ですね。
松崎 これは10部門で11ノミネートされ、最多候補になってます。
鈴木 ミシェル・ヨーはアメリカ映画の中でカンフー女優として知られていますが……
松崎 まさにそんな感じはあるんですが、実はSF映画でもあり、カンフー映画、家族の映画でもあります。ジャンルがわけにくくて、あまりこういう作品はアカデミー賞に入ってこなかったので賞の方向性も変わった気もします。
鈴木 はい。
松崎 ストーリーはミシェル・ヨーがコインランドリーを経営していて、確定申告で税金払えないからどうしようって税務署に行くっていう話なんです。
鈴木 最初の場面はね?
松崎 最初というか、最後まで税金払いに行きますっていう話なんですよ(笑)、簡単にいうと。だけど税金払いに行ったら突如旦那さんが「お前には実は宇宙を救う使命がある」と話しはじめて。
鈴木 どういうこと(笑)?
松崎 ミシェル・ヨーも何のことかわからず、お金払えないから頭がおかしくなったんじゃないかと思うんですけど、その確定申告の場でマルチバースが起こるっていう話。
鈴木 マルチバースね。マーベルの映画ではおなじみになりましたけど、多次元で自分の知らない自分がいるような“マルチバースムービー”になるんですね?
松崎 “バースジャンプ”という言葉を映画で使っているんですけど、例えば急に前の人が鼻くそほじったりするとジャンプするんです(笑)
鈴木 それに理論はあるんですか(笑)
松崎 その理論を考えたのが、ある次元に住んでいるお前なんだと旦那が言うんです。
鈴木 別次元のですね?
松崎 そうです。ミシェル・ヨーがある次元では歌手だったり、またはシェフとか。一番変なのは指がソーセージになっているという……
鈴木 よくわからない!
松崎 わからないんです、よくこんなこと考えるなと。いろんな並行世界があり、その中で彼女の存在が宇宙を助けるカギになっているから、助けてほしいというような展開に。
鈴木 アクションなんですね?
松崎 ある次元でカンフーの達人であれば、その次元の自分との意思疎通ができると、カンフーが使えるようになる。
鈴木 え~面白い! 原作があるんですか?
松崎 ないんです。
鈴木 オリジナル!! すごいこと考えている人がいるもんです。
松崎 それでもう一つ言っていいですか? ……この展開でラストは感動するんです。
鈴木 ええ~??
ここで「名画の見方」のコーナーです。バレンタインの2月14日(火)は『タイタニック』をご紹介!定番すぎるラブストーリーの本作について、鈴木さんと松崎さんの見方をお楽しみください。
鈴木 さて「名画の見方」で取り上げるのは「タイタニック」です。これを恋愛映画というかパニック映画というか、まあ恋愛映画なんでしょうね。ジェームズ・キャメロン監督25周年の3Dリマスターで公開中。
松崎 そちらも結構ヒットしてますね。
鈴木 まずディカプリオが『ロミオとジュリエット』で大ヒットして、超人気者になろうとしていたころです。ジェームズ・キャメロン監督は『ターミネーター』『エイリアン2』とかで来ている中で、相当予算オーバーしてました。
松崎 予算オーバーどころか、破産するといわれてました。今でこそ名作だ、大作だといわれてますが、わずか数カ月前はこの映画は罵詈雑言を浴びせられてました。
鈴木 ああ覚えてる! 予算のかかるディカプリオを使ってとか……男子はみんなイケメンに嫉妬しますから(笑)。
松崎 または「今更タイタニック?」とか。これまで沢山タイタニック映画は作られてきてますから。あと予算以外に、そもそも海を舞台としたもの当たらないジンクスがあり、天候変わるから撮影できなくて予算超過したりして、海での撮影が鬼門だといわれてたんです。
鈴木 海で撮影しているんですか?
松崎 この映画は確かメキシコのタンクをくりぬいてスタジオを作ったようです。
鈴木 タンクをくりぬいて!?
松崎 巨大なタンクをくりぬいて、海の近くにスタジオを作ってタイタニック号を再現したんです。船は半分だけ作って、CGで重ねて1つの船に見せていました。予算がないのでそうしたのですが、ほぼ実物大の船を作ったんです。
鈴木 でも全然わからなかった。CG技術も全然追いついていたんですね。
松崎 そうして工夫はしていたんですけど、やっぱり船を丸々作るのは狂気の沙汰だと。それでさらに中の調度品も当時のレプリカを作っているんです。
鈴木 ええっ!?
松崎 映らないんですけど本物に近いものがあれば演技が良くなると信じて、ものすごい予算がかかりました。240億円の製作費とかいわれており、今なら『アバター』とか200億円越えてるものもありますが、当時はそんな予算掛けて回収できるのかと。
鈴木 そうですよね。
松崎 それに上映時間も3時間あるじゃないですか。この長時間も興行上、いろんな危険がはらんでいて、1日の上映時間が稼げないんです。
鈴木 まあそうですよね。
松崎 1997年の12月に日本で公開されたものがもうひとつありまして、それが『メン・イン・ブラック』で90分だったんです。『タイタニック』を1回上映するうちに『メン・イン・ブラック』を2回上映できるくらい、3時間の映画って不利なんです。
鈴木 うんうん。
松崎 その中で年間ナンバーワンになるというのが、『タイタニック』のすごさ。
この後もCGと実際の映像を組み合わせたシーンや、大量の水を使う撮影の大変さなど、タイタニックの制作秘話が盛りだくさん。また主役のレオナルド・ディカプリオ以外の候補俳優の話や、高額になる俳優のギャランティーの話まで、広く深い話にタイタニックも沈みそうです。
鈴木 僕は俳優のカッコよさがちゃんと出る、特に恋愛にちなんだもので当たったことのある俳優さんがスターになれると思っているんです。医療ものや刑事ものなどありますが、やっぱり恋愛ものかなと。ディカプリオはこの作品があって、本当のスターになったじゃないですか?
松崎 はい。
鈴木 例えば木村拓哉が『ロングバケーション』に出たり、織田裕二がカンチになったり。
松崎 懐かしい(笑)
鈴木 だから恋愛ものでキラキラに見えないとダメですよね。僕にとってはディカプリオがこの作品の後で演じる役に、「これこれ!」というものがない。ジョニー・デップとかは、何年に1回か、「これこれ!」というものを見せてくれるんだけど(笑)。
松崎 アカデミー賞授賞式でTwitterに載せる写真を撮るとき、ブラッド・ピットとかは「ヘーイ!」って仲間に入ってくるんだけど、ディカプリオは座ったままとか、会場にピザが来たときに、それこそブラピはお皿を配ったりするんですけど「僕はちょっといいよ」みたいな。
鈴木 シャレが利かないんですね?
松崎 一方でプリウスで会場入りして、自分は環境問題に関心あることをPRしたり……
鈴木 ちょっとめんどくさい奴ですね(笑)
松崎 まじめな人なんですよ(笑)。だから自分が“レオ様”といわれるのも、良しとしなかったんじゃないですかね。
この後もタイタニックの話は止まりません。あの名シーンで幻のカットがあったことや、ほかに鈴木さんが最も好きだったシーンについて熱く語っています。また、タイタニックに乗っていた唯一の日本人の孫が細野晴臣だったことなど、聞き逃せない話は続きます。
もちろん、バレンタインで観ておきたい映画情報も満載。
全部聞くなら、radikoが便利ですよ!!
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※該当回の聴取期間は終了しました。