「息子を冷蔵庫から解放して埋葬したい」 パレスチナとイスラエル、人々の思いは─堀 潤が現地を取材

ジャーナリストの堀 潤が、パレスチナおよびイスラエルで取材を行い、現地で暮らす人々の悲痛な叫びをレポートした。

この内容をお届けしたのは、堀が水曜日と木曜日のナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『JAM THE PLANET』。世界のニュースを日々、お届けしている。

ここでは6月26日(水)、27日(木)にオンエアした、いま注目すべきニュース&トピックスを掘り下げる特集コーナー「TODAY’S SPECIAL」の内容をテキストで紹介する。
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取材中の堀 潤。写真提供:8bitnews

大規模なデモが開催。参加者の思いは

先日、堀はパレスチナおよびイスラエルに渡り、現地の取材を行った。

日本を離れ、イスラエル・テルアビブの空港に着くと、イミグレーションまでの通路にはひしめきあうように写真が掲げられていた。それは、2023年10月7日にイスラム組織ハマスによって拉致され、今も行方がわからず救助を待っている人たちの顔写真だった。

堀:テルアビブからパレスチナ自治区に目をやると、ガザには大きな検問所が設けられ、イスラエル側によって設けられた壁やフェンスなどによって入域することが困難だといいます。その中で行き場のない人たちが今、非常に深刻な状況に陥っている。一方でパレスチナには、ガザだけではなく、ヨルダン川西岸の地域があります。また東エルサレムはパレスチナのみなさんの約束された地域にもかかわらず、イスラエル人によるいわゆる入植が進み、実行支配を受けている。歩いて西エルサレム側に入ることもできます。西エルサレムはまさにトランプ政権下でイスラエルの首都を置こうという運動もあった場所で、イスラエル人が住んでいる地域で、街の状況も一変していました。

そうした中、イスラエル人は今のネタニヤフ政権を支持する人たちばかりなのだろうか──連日のように、西エルサレムやテルアビブで大規模な抗議集会やデモが行われているという。どんな人たちが、どんな思いで参加しているのか?

パレスチナヨルダン川西岸ジェニンルポ、イスラエル西エルサレム市民のデモ取材

堀は、西エルサレムでデモに参加していた男性に取材した。彼の息子は260日間人質になっているという。父親は「捕虜になる前に腕を吹き飛ばされました。彼は多くの人質と同じ罪のない一般市民です。いち早く全員を帰国させたい。もう十分。日本のみなさんの助けが必要です。イスラエル政府は260日もの間、人質を取り戻すことができていない。でもそれは世界中どこの国も同じです。私たちは24カ国の罪のない人々の解放を求めています」と語った。

このデモに参加した人たちの多くは胸に「260」と記したステッカーを貼って参加していた。この数字こそハマスによって誘拐されて人質が解放されずに留め置かれている期間だ。多くの人がプラカードを掲げ、そこには「こんなバカげたことはやめるべきだ。戦争を止めるべきだ。人質を解放してほしい」と訴える。今も救助を待っている市民の顔写真と共に。
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写真提供:8bitnews

戦争には賛同できない。人質の帰国を望んでいる

デモに参加する理由は本当にさまざまだと堀は言う。なぜ息子が帰ってこないのか。なぜ家族の安否さえわからないのか。なぜ政府は動かないのか。国際社会は何をしているのか。なぜこんな非人道的行為が続くのか。どうして戦争をやめられないのか。なぜネタニヤフ政権はこの状況を変えないのか。

デモには、若者たちに混ざり、両手で杖をつきながらゆっくりとした足取りで参加する女性の姿もあった。女性は厳しい口調で「私は政府が倒れ地獄に落ちるのを見たい。だって私たちの家族全員を地獄に突き落そうとしたんだから。デモに参加するのは私がどれだけ政府を憎んでいるか表現するためです。ここにいるのは私の義務だ」と語った。

また、別のデモ参加者の男性は「私たちは戦争には賛同できません。人質の帰国を望んでいます。彼らは220日間以上も人質に取られたままです。政府はひどく腐敗して国を破壊している。自分たちの権力を維持しようとしているだけで、市民のために何もしていない。この戦争は今の政府がいかに恐ろしい政府であるかを示しているんだ」と心境を吐露した。

堀:これほどまで自分たちのネタニヤフ政権に対してNOを突きつけるイスラエルの若者たち、人々がいることは、現地を訪ねるまでそれほど実感がありませんでした。決してマジョリティではありません。西エルサレムのデモは、そのマジョリティではない中でも、さらにマイノリティだと言う方もいました。ただ、現場を訪ねてみると非常に多くの方々が次々と集まってきて広い道路を占有して声を上げるほどの数でした。

堀は、デモに参加していた17歳の女性にもマイクを向けた。西エルサレム出身の彼女は「私がデモに参加する理由は、大切なことだから。ガザに誘拐された人たちがいる状況を放置しておくわけにはいきません。今の政府はひどい。やるべきことをやらないから。みんなを帰国させて戦争をやめさせるべきなんです。今の政府ではやるべきことをできないから新しい政府が必要だと思います」。続けて堀が「平和とは?」と投げかけると「私の考える平和は、パレスチナの人々と共に生きる世界。もし私たちがガザの人たちと平和に暮らせるようになれば、もしかしたらもっといい世界ができるかもしれない」と思いを語った。

息子をイスラエルの冷蔵庫から解放して埋葬したい

別の日、堀はエルサレムの中心街から車で片道3時間半かけて移動したヨルダン側西岸のパレスチナ自治区・ジェニンを取材した。

堀:ジェニンまでの道のりには時々チェックポイントがあり、イスラエル軍の兵士が銃を構えていました。イスラエル側にしてみたら統治・治安維持ということでしょうが、本来そこはパレスチナ人の約束された地域です。しかし実際には入植が進み、実効支配されています。

ジェニンの中心街にはレストランや売店、洋服店など街の営みがあるが、現地でマイクを向けるとそれぞれから「私はあのときに家族を殺されたんだ」、「僕は子どもが殺されてしまった」など、一見日常が滞りなく進んでいるように見えて、実際は複雑な圧力の中で暮らしていることが見受けられた。
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写真提供:8bitnews

中心部から車で20分ほど走るとジェニン難民キャンプがある。ここは絶えずイスラエル軍による攻撃の対象になり、砂埃が舞っていた。病院に繋がる一本道はブルドーザーでアスファルトを根こそぎ剥がされていた。建物は崩れ、焼け落ちているものもあれば、空爆で破壊されているものもある。つぶれてしまった車もあった。それらはドローンによって破壊されたという。
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写真提供:8bitnews

堀:建物の高いところには窓の下に小さな穴があって、「あれは何ですか?」とガイドに訊くと「スナイパーだよ」と。イスラエル兵士がスナイパーとしてあそこから市民を狙い撃ちするんだと。

堀は自宅にいながらイスラエル軍のスナイパーによって殺害された男性の母親に話を聞いた。この男性は暑さをしのぐために夜、窓を開けようとしたところをスナイパーに狙撃されたという。その日は2023年11月、暑い夜だったと母親は振り返る。

堀:その現場を見させていただきました。窓ガラスに2発の穴が空いていました。球が貫通したところを同じ目線でのぞき込むと、数百メートル離れたところにマンションがあり、その一角からおそらく撃ち込まれたのかと思われる跡がありました。みなさん想像してみてください。普段暮らしている日常の中で窓を開けたら誰かに殺されてしまう。そういう方はテロリスト(の仕業)だと公には発表されている。果たして本当なのでしょうか。
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写真提供:8bitnews

母親など家族が駆けつけたときは、息子は瀕死の重傷だったもののまだ意識はあったという。すぐに救急車を走らせたかったが、病院までの道路はブルドーザーによって引き剥がされていたため、なかなか辿り着くことができなかった。病院の入り口などはイスラエルの軍用車両が停まり、救急車両が行き来できなくなることもある。さまざまな理由から病院に辿り着くのが随分と遅れてしまい、医師からは「あと10分早かったら助かったのに」と言われたという。

また、母親は「ある母親は、捕らえられたり冷蔵庫に入れられたりした息子の遺体を盗んで、(自宅の)冷蔵庫に入れ今に至っている。同じ境遇の人は何百人もいる。私たちの夢は息子をイスラエルの冷蔵庫から解放して埋葬することだ。想像してください。これから私たちの子どもを埋葬するんです」と語った。

堀:こんなことを母親に言わせていいのか。世界中の母親が息子たちの帰りを待っているんだと世界の人たちには伝えたいんだと、その母親は言っていました。

兵士たちはただただ殺し続けた。慈悲はない。

また、堀は2023年の暮れに銃撃戦に巻き込まれ14歳の息子を亡くした父親にも話を聞いた。その現場はいわゆる中心市街地。そこで雑貨店を営む父親の息子は当時自転車で街を走っていたという。そのときにイスラエル軍の兵士が現れ銃撃戦が始まり、息子は亡くなってしまった。

堀:実は息子さんが殺される瞬間の映像を見せてもらいました。周辺の住民がスマートフォンで撮影していたんです。息子さんは至近距離でためらうことなく撃ち殺されていました。

テロリストへの対処のためだと言いながら、子どもたちさえ攻撃の対象になっている現実。その悲痛な思いを父親が語る。

「当時、この市場には歩いている人でいっぱいだった。兵士たちはただただ殺し続けた。慈悲はない。彼らはどんな老人も子どもも殺した。彼らは区別しない。国際社会はこれらの犯罪に行動を起こし、調査をしなくてはならない。私たちは息子が天国にいることを望んでいるが、無実の人がこのようなかたちで殺されたことに深く心を痛めているんだ」と。

堀はジェニンで唯一の病院の医師にも話を聞いた。この医師は、監視カメラが捉えていた映像を堀に見せる。そこには一斉に人々が逃げ惑う姿があった。「銃声が響いたからだ」と医師は言う。病院に逃げ込もうとする人はうしろから撃たれたんだ、と。映像には病院にいた人たちが撃たれ、倒れ、大量の血を流して命を落とす様子が記録として残されていた。

堀:病院への攻撃は国際法違反です。しかしジェニンの様子がなかなか外に伝わらないから、そうした暴力行為を止めることがままならない状況です。断片的にしか伝わっていないことだから、みなさんが誤解してハマスがやったんだからしょうがないと言い捨てるという言説も目にします。しかし1958年のナクバ以降、こうした状況の中、日常生活の中で圧力が加えられている市民のSOSを、私たちは無視していいのでしょうか。

堀の現地取材レポートをお届けした『JAM THE PLANET』は、J-WAVEで月曜~木曜の19:00-21:45にオンエア(堀は水曜、木曜の担当)。また、堀は自身がメディアに出演するほかにも、市民記者が最新情報を投稿するニュース 報道サイト『8bitnews』も運営し、さまざまな角度から社会の情報を伝えている。

また、『JAM THE PLANET』内のコーナー「NEWS TO THE TABLE」は、ポッドキャストでも配信中だ。堀潤と、月曜と火曜のナビゲーター・吉田まゆが、「いま、知るべきニュース」を多角的に、簡潔に読み解いていく。

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同じ積極財政でも「狙いが違う」。サナエノミクスとアベノミクス

ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時~17時、火~金曜日15時~17時35分)、10月15日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演。高市早苗首相の掲げる経済政策「サナエノミクス」に現在について、城内実大臣へのインタビュー経験も踏まえて解説した。

常井健一「リフレ政策のリフレはリレーションの略で。簡単に言うとデフレから脱却するために金融緩和などによって需要を刺激して物価を適度に上げよう、という政策です。いわゆるリフレ派が主導した安倍晋三政権のアベノミクスでは、日銀による異次元の金融緩和が大きな柱でした。ところが現在、物価高が国民の生活を圧迫しています。日銀も金融政策を変えて金利は上がっている。そんな中、これまで安倍政権の継承を訴えてきた高市早苗政権の閣僚が、相次いでリフレ政策を否定していると」

長野智子「うん」

常井「特に城内実大臣は生前の安倍さんが高市陣営に送り込んだ参謀で。いまや自民党内に150人以上いる積極財政派のラスボスと目されています。実際、安倍さんに近かったリフレ派のブレーンたちを継承して7月の骨太の方針や成長戦略を策定してきた。当然、発言の真意に注目されているわけです」

長野「アメリカのベッセント財務長官が、リフレ生活はもう限界だ、やめるべきだ、と言いました。それに反応しているんですか?」

常井「まさにそれを(東洋経済オンラインの取材で)城内大臣に直撃して。『政権のスタンスはまったく変わっていない』と否定されました。強調していたのがサナエノミクスとアベノミクスの違いです。大きな違いは経済環境にあると。デフレ脱却のために大規模な金融緩和を続けたアベノミクスとは違って、いまは物価も金利も上がっています。政府としては『いつまでも異次元緩和を前提に経済政策を考える時代ではない』と言ってきたんです」

長野「なるほどね。だけどアベノミクスと同じ『積極財政』という言葉を掲げている」

常井「そうなんです。城内さん、『リフレ政策の局面は終わったが責任ある積極財政は続ける』と。アベノミクスは金融緩和によって需要を刺激することが柱でした。だけど今度のサナエノミクスは供給力だ、国内でモノやサービスをつくる力を強化するために官民で投資するんだ、と。同じ積極財政でもサナエノミクスとアベノミクスでは狙いが違う、ということですね。もう1つ、『米中の対立やパンデミックも経済環境を大きく変えた』と言っていて。東洋経済オンラインに掲載した発言を一部、ご紹介します」

長野「はい」

常井「『かつての小泉(純一郎)・竹中(平蔵)時代に象徴されるような新自由主義的な市場原理だけにゆだねる発想では、今日(こんにち)の経済安全保障や巨額の先行投資を必要とする分野に充分は対応できない、という現実がある』と。日本企業はひと昔前にコスト重視で、海外に製造拠点を移しましたね。あれが現在は地政学的に大きなリスクになっている、と指摘した。城内さんは『市場原理だけに任せる時代は終わった』と言い切っていて」

長野「ほう」

常井「こうした考え方は反・小泉という、大臣自身の独特な政治人生や色濃く反映されているな、という印象を持ちましたね。いまから21年前です。2005年の郵政選挙で当時、城内さんは1年生議員でした。郵政民営化に反対して、自民党の公認を得られず。無所属で戦った。そのとき小泉首相が送り込んだ刺客が、当時、財務官僚だった片山さつきさんですね」

長野「そうだったか」

常井「城内さん、片山さんに748票差で負ける。それから4年間、リュックサック1つで天竜川を上流から下流にくだるように選挙区をくまなく歩いた。今度は片山さんに7万票差で勝った。片山さんは静岡から追い出されて、参議院の全国比例に鞍替えしたんです」

放送では城内大臣と片山大臣の因縁、サナエノミクスのさらなる詳細などについても常井が語った。

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