「嫌な思いをさせているかも」その気づきが大事―小島慶子とハラスメントをなくす方法を考える

先日、就職活動でOB訪問に来た20代の女子大学生を自宅マンションに連れ込み、わいせつな行為をしたとして、大手ゼネコン・大林組の社員が逮捕されました。就職活動中に起こる就活セクハラをはじめ、さまざまなハラスメントが問題になっています。

ハラスメントは、なぜ起きてしまうのか。ハラスメントのない社会を実現するためには何が必要なのか。先日『さよなら! ハラスメント ――自分と社会を変える11の知恵』を上梓した、タレントでエッセイストの小島慶子さんと考えました。

【2月27日(水)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/水曜日ニュース・スーパーバイザー:安田菜津紀)】 http://radiko.jp/#!/ts/FMJ/20190227201903


■相手が嫌な思いをしないか…考え、気づくことが重要

小島さんの『さよなら! ハラスメント ――自分と社会を変える11の知恵』では、さまざまな識者と対談し、ハラスメントを多角的に捉えています。

小島:ハラスメントは、立場の違いや力の違いがあるところで、力を持っている側が持っていない側に、そして社会のマジョリティに属する人たちがマイノリティの人たちに、尊厳を踏みにじったり、相手に脅威を与えたりするような言動を行うことです。いろいろあるから難しいと感じるかもしれませんが、その原則をわかっていれば、ハラスメントをしてしまっている、されている、見過ごしてしまっていることに気づきやすくなると思います。

家庭内、学校内、職場内、街の中、メディアなどを見てみると、「これはもしかしたらハラスメントなのかもしれない」という気づきがたくさんあるはずです。

小島:ハラスメントには、本当に精神的に追い詰められて人生に深刻な影響を与えるものから、言われて不快だった、傷ついたけど翌日になったら普通に話せるくらいのものまで、いろいろなレベルがあります。でも、「もしかしたら自分が相手に嫌な思いをさせているかもしれない」と気づきを持つのと持たないのでは、違うと思います。「それだと何も言えなくなる」と心配する人もいるけど、それよりお互いがケアしあうことが大切です。「もし嫌だったら、ごめんね」とすぐ謝ったり「次からはやめるね」と言えばいい話なので。

安田は、「何でもかんでもハラスメントなのか」という言葉が出てきてしまうこと自体が、ハラスメントの認識がまだまだ広がっていないことの表れだと述べます。

安田:何がハラスメントになるか、それをみんなで共有することが浸透しきれてないように思います。
小島:最近では「多様性に寛容になろう」というテーマが広がっています。それは人と違っても生きやすい世の中になることだから、よいことだと思う一方、意見の合わない人や自分とは常識の違う人が増える世の中です。自分には悪気はなくても言ったことで相手を傷つけたり、相手に悪気がなくても言われたことで自分がショックを受けたり、怖い目に遭ったりする機会も増えるかもしれない。だから「多様性のある世の中」とハラスメントはセットで、「自分が言ったことが誰かを追い詰めていないかな、誰かを排除していないかな」と今までより敏感になる必要があります。


■メディアのなかのコミュニケーションが、“態度”のモデルになっている

『さよなら! ハラスメント ――自分と社会を変える11の知恵』では、「いじり」も大きなテーマになっています。

小島:「いじり」という言葉でいじめや嫌がらせ、ハラスメントが矮小化されてしまっている部分もあります。いじりがお互いの愛情表現として成立するからといって、全てのいじりを愛情表現だと言ってしまうと、いじりという名のもとにいじめられている人は声があげられなくなってしまう。自分と誰かとのコミュニケーションを、そのまま他の誰かとのコミュニケーションに当てはめることは非常に乱暴だと、多くの人が気がつきはじめて、「全てをいじりと言ってしまうのは、なしじゃない?」という声があがるようになってきました。
安田:グローバーさんはテレビにも出演されていますが、そこでいじりを感じることはありますか?
グローバー:いじりは自分の精神状態にもよるし、相手の関係性で全然変わってきます。だから、自分自身の状態をわかることも必要で、いじられて傷ついた日は「睡眠不足だったからかな」とか考えることもあります。相手に言葉をかけるときも「自分がイライラしているから、こういう言葉遣いになっているのかな」など振り返るようになりました。

本での対談において、テレビなどのメディアのなかのコミュニケーションが、“態度”のモデルになるという会話があったと小島さんは振り返ります。

小島:メディアは「こういうときに、どういう態度をとるのがイケてるのか」というモデルになってしまっている。身内や友だちなど閉じたコミュニケーションとは違って、オーディエンスがいてショーとして成立するコミュニケーションは、態度のモデルになるんです。たとえば、テレビで自虐的な女性に向かって「ブス」と言って、それを言われた女性は「おいしい」と思って返答する。その場面を見て、「これはアリなんだ」と学習してしまい、翌日職場や学校で同じことをしてしまう。ショーは虚構だけど、職場や学校は実生活だから虚構ではないし終わりがない。それはいじりではなく、いじめになってしまいます。

テレビやインターネットでの態度モデルによって、誰かが反論できない立場や泣き寝入りを強いられる立場に追い詰められることもある。それをわかっているのとそうでないのとでは、リアクションの仕方が違ってくると小島さんは付け加えました。


■ハラスメントのない社会へ。半径2メートルから変えていく

この先、ハラスメントのない世の中に向けて、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

小島:教育現場のハラスメントに対しての教育や、包括的にハラスメントを禁止する法律を作るなど、いろいろなアプローチがあると思います。本は「半径2メートルから変えられることがある」ということを知ってほしくて出しました。自分と半径2メートルにいる人とのコミュニケーションを変えていきたい。職場でも家庭でも学校でも友達でも、今までありだった会話、たとえばデブいじりとか、ハゲいじりとか、女性蔑視的なギャグとか、男性同士でも童貞いじりとか、パワハラ的なじゃれ合いとか、それらについて「やめようか」「これって誰も得しないよね」と声をあげる。誰かが泣き寝入りしていたり、声をあげても誰も味方しなかったりする世の中じゃない方がいい、という空気を半径2メートルから作っていきたい。
グローバー:それで助かったと思う人はたくさんいるでしょうね。
小島:それが言える間柄から、変えていけばいいと思うんです。

声をあげた側が冷笑されるような空気感があった社会が、少しずつ変化してきたきっかけについて、小島さんはこう話します。

小島:一昨年の、ハリウッドからはじまった「#MeToo」ムーブメントが日本に来て、昨年はセクハラだけではなくパワハラや働き方や学校現場などで、理不尽な目にあって泣き寝入りする人たちがいて、それはあってはならないというニュースが多発しました。可視化されてきて「私たちのまわりにはそういうことが多くあったんだな」と気が付き、それはよくないと考える人が増えました。それだけではなく、今年に入ってからは、『週刊SPA!』の問題で、アクションを起こした女子大生が出版社に対話を求めています。
安田:これからのモデルケースになるよい例でしたよね。
小島:最初は怒ることが必要。怒る人を見て、みんなが「これはよくないんだ」と気づくことが大事なんです。次の段階として「自分はよくないと思う。あなたはなぜいいと思うの?」と対話をして互いに学び合い、互いに合意を作っていく流れになっています。

ハラスメントに対しての多くのサジェスチョンが詰まっている小島さんの『さよなら! ハラスメント ――自分と社会を変える11の知恵』、ぜひ手に取ってみてください。

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番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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元JUDY AND MARY・TAKUYA、新人のころは異物扱いされたけど…「J-POPのイノベーション」を語る!

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)。2月22日(金)のオンエアでは、元JUDY AND MARYのギタリストで、プロデューサーのTAKUYAさんが登場し、「J-POPのイノベーション」をテーマにトーク。批判を受けた過去やギターのデジタル化、アジアでの活動などを話しました。


■新人のころは異物扱いで、批判ばかり受けた

TAKUYAさんの奏でる音色は、「前例のある音色ではない、独自の音」と川田は言います。TAKUYAさんは、自身の音楽をどう捉えているのでしょうか。

TAKUYA:新人のころは、みんなに異物扱いされて、批判ばかり受けていました。「おまえの音楽は変わりすぎている」と。そんななか、ヒット曲も作りつつ、10年、20年とやっていたら、最近はひとつのジャンルになった感じもあります。
川田:そうですね。
TAKUYA:若い子が僕っぽい音楽を作ろうとしたりしていて、何でもやり続けたら勝ちだねって。
川田:TAKUYAさんは早くから、日本にお手本がないような、いろいろな要素を音楽に入れ込んでいた印象があります。
TAKUYA:そうですね。日本のお手本を誰も信用していないので。
川田:信用してないんですか。
TAKUYA:その意味では、海外も含めてあんまり信用していないかな。


■ギターのデジタル化をどう捉えているのか?

長く音楽業界で活躍してきたTAKUYAさんに、ギターの進化について訊きました。

TAKUYA:ギターまわりは何でも進化していて、エフェクターもたくさんあるし、そもそもギターを弾かなくてもコンピューター上でギターの音はどうにでもなるくらい、めちゃくちゃ進んでいます。
川田:テクノロジーが進んでも、ギターは弾きますよね?
TAKUYA:テクノロジーが進化すればするほど、世の中の人はそっちに頼ってしまうので、僕自身は、勝手に希少生物指定を受けられる、いい時代だなと思います。「敵が追ってくる雰囲気がない」みたいな。

川田は、TAKUYAさんがTwitterに投稿した写真に写っていたレコーディング機材の多さに驚いたと言います。
 

 


TAKUYA:おそらく、僕がアジアでいちばんレコーディング機材を持っていると思います。
川田:シミュレーションできるモノも出ているけど、それらは信用できないんですか。
TAKUYA:シミュレーションとは全然違うかな。そういうものは僕もたくさん試したけど、モノが違うというか。設定が自由に変えられ過ぎるから決められない。ハードのいいところは、正解がひとつしかなくて、答えがすぐ出るっていうか。
川田:いろいろと調整しなくてもいいと。
TAKUYA:「おいしいところってここしかないんですよ」って、だいたい決まっています。だから迷う時間が節約される。簡単に言うと、スーパークラスの現代でも残って使われている機材は、聴いたことがある売れた曲の音がするわけ。そこがいちばんのいいとこかな。「なんかこれ聴いたことある」とか、DNAに刻み込まれている雰囲気や空気感がある。それはデジタルの機材だとないですね。


■アジアの活動が中心

最近は、主に台湾や中国など、アジアでの活動が多いというTAKUYAさん。日本での仕事は、「よほどのことがない限りは断っている」とのこと。

TAKUYA:アジアのアーティストと仕事をしていたり、最近はいいアーティストを見つけたので、その人を育てたり、活動はアジアが中心ですね。5年くらい前からゼロからやっている感じがあって、みんなやる気があるんです。向こうでお金にするには、どうしても“チャイニーズ・バラード”を作らないといけない。けっきょく、ドラマに使われたりして売れるのは、そのジャンルなんです。だけど、1曲のチャイニーズ・バラードを作る裏で、みんな他の10曲をモダンな音楽で作っていたりします。
川田:シングルでチャイニーズ・バラードをやりつつ、実験的なこともやっていると。
TAKUYA:めちゃくちゃやってます。彼らはYouTubeとかで、世界中の流行っている音楽とかを参考にしていて、J-POPはたくさんある音楽のひとつのジャンルとして見られていますね。

最後に、「モチベーションがあがる曲」として、ももいろクローバーZ『行くぜっ!怪盗少女』をオンエア。「ももいろクローバーZは、年に1度くらい僕をギタリストとしてライブに呼んでくれます。みんな『怖い』とか言って、ギタリストとしてはあまり呼んでくれないんですよ(笑)。楽しいそうに弾いているね、と言われる曲です」と教えてくれました。

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番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜日22時−22時55分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/

 

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