ミュージカル俳優・岡幸二郎のピンチを救ったひとりのおばあちゃん「主演女優賞をあげたい」

J-WAVEの番組『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』(ナビゲーター:中井智彦)。6月14日(金)のオンエアでは、ミュージカル俳優の岡幸二郎さんが登場。ミュージカル俳優になったきっかけや、ミュージカル『レ・ミゼラブル』オーディションのエピソードを話しました。


■劇団四季『コーラスライン』を観て衝撃

岡さんのミュージカル初体験は高校1年生のときに観た、劇団四季の『コーラスライン』です。女優の前田美波里さんが岡さんの地元の福岡に来ると聞いた岡さんは、「この女優さんを観てみたい」と思い、チケットを買いました。

:でも、観に行った舞台に前田美波里さんは出てなかったという……。
中井:そういうことって、よくありますよね。
:それが初めてミュージカルに触れた瞬間でした。
中井:『コーラスライン』に触れてどう感じましたか。
:大体、「ミュージカルをやろう」と思う人間は、ミュージカルの終演後に「素晴らしかった!」「ああ、これやりたい!」と思うでしょ? でも、自分は『コーラスライン』の開演直後にパッと照明がついた途端に、ブルブルッと身震いして「これやろう」と思った。だから、ミュージカルを観終わったあとじゃなくて、始まった途端に「これやろう」と思ったの。ただ、なぜその瞬間にそう思ったのかは未だにわからない。『コーラスライン』でパッと照明がついた瞬間に役者が並んでいる姿にグッときたんだろうね。

初めて観劇した『コーラスライン』に心を鷲づかみされた岡さんは、高校卒業後はミュージカル俳優を目指します。

:当時、福岡の田舎に住んでいたんですけど、自分の親に「ミュージカルをやりたい」と言っても、親は観たこともないからそれを理解してくれない。どうしようと考えていくうちに、5歳からずっと書道をやっていたので、親に「書道の一番有名な大学に行く」と言えば東京に出してくれるのではないかと思いついて、それを親に伝えて、その大学を受験して受かったわけです。それで東京に出てきました。でも、本当の目的は書道をやるのではなくて、ミュージカルをやりたいから。

大学4年生のときに岡さんは、劇団四季のオーディションを受けました。

:私はカラオケばかりして、ダンスのダの字もやってない人間でした。それで劇団四季のボーカルオーディションを受けに行ったんです。でも、まさか劇団四季のオーディションで、ファンの北島三郎さんの歌を歌うわけにはいかないと思って、1曲だけイタリア歌曲を勉強して、それを劇団四季の主宰者・浅利慶太さんの前で歌いました。浅利さんに「日本語じゃないとわからない」と言われたけど、合格しました。その後、当時の劇団四季の会報にオーディション時の私の全身写真が載っていたんです。私が劇団四季を辞めた何年後かに、先輩に「実はお前がオーディションに来た日に、浅利先生は『俺はこいつをトニーにする』って言ったんだよ」と教えてくれました。
中井:トニーは『ウエスト・サイド物語』の主人公ですね。
:そういう経緯があって会報に写真を載せてくれたんだと思って。
中井:浅利さんは見極める目がすごくある方だから、(岡)幸二郎さんを見てピンときたんだと思います。


■岡さんを救ったひとりのおばあちゃん

続いて、岡さんがミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディション時にまつわる裏話を教えてくれました。

:『レ・ミゼラブル』の最終オーディションと、劇団四季の『クレイジー・フォー・ユー』初演の大事な稽古の日時が重なってしまったんです。まさか劇団四季に「『レ・ミゼラブル』の最終オーディションに行くから稽古を休ませてくれ」とは言えない。どうしようと思って、この『レ・ミゼラブル』のオーディションを教えてくれた、以前に共演した役者のおばあちゃんに事情を相談したんです。そうしたら、そのおばあちゃんは「岡くん、何時から稽古で何時からオーディションなの?」と訊いてきたんですけど、そこで話は終わったんです。

『レ・ミゼラブル』のオーディション当日、岡さんは劇団四季の稽古場にいました。

:稽古をしていたら、劇団四季の音楽部の方が駆け寄ってきて、稽古場を仕切っていた先生と話しているわけですよ。「何かあったのかな」と思っていたら、その先生が「岡、おじいちゃんが危篤らしい」って。それを聞いて「えっ」って思って。実は相談したおばあちゃんが「おじいちゃんが危篤だ」というウソを劇団四季に連絡したみたいで、そうきたかと思って。
中井:すごい。
:自分もそこで「何のことですか?」って言わなかったからまだよかったけど。先生に「岡、どうする?」って言われたから「最後に一目だけ顔を見てきていいですか」って言って、「病院はどこだ?」と聞かれて、帝国劇場に行かなきゃいけないから「と、虎の門病院です!」って答えて。「顔を見たらすぐ稽古場に戻ってきます」と言って、帝国劇場でオーディションを受けて、劇団四季の稽古場に戻ってきました。

後日、『クレイジー・フォー・ユー』の舞台が始まり、その楽屋で『レ・ミゼラブル』のオーディション結果を聞いた岡さん。

:電話越しに「岡さん、『レ・ミゼラブル』合格しました」って言われたけど、その場では喜べないから「わかりました」と電話を切りました。『クレイジー・フォー・ユー』で私が務めたムースという役は、劇中で『レ・ミゼラブル』を比喩している場面があって、「そんなフランス革命のミュージカルやってるわけじゃあるまいし」って言われる役だったんです。その日から、「『レ・ミゼラブル』をやるんだよな」と思いながら、舞台袖にはけていきました。

岡さんが初出演した『レ・ミゼラブル』の初日舞台に、恩人でもあるおばあちゃんも観に来てくれたそう。岡さんはおばあちゃんに「主演女優賞をあげたい」と話し、嘘をついたことに関しては「時効になった話」と語りました。

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【番組情報】
番組名:『STAGE PIA WE/LIVE/MUSICAL』
放送日時:毎週金曜 22時30分−23時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/musical/

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10年間で5兆円投資“国産旅客機”再挑戦 「技術におぼれるな。いいものが売れるのではなく、売れるものがいいものだ」石川和男が指摘

政策アナリストの石川和男が4月20日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。経済産業省が3月27日、次世代の国産旅客機について、今後10年間で官民あわせて約5兆円規模の投資を行うと公表したことについて「いいものが売れるのではなく、売れるものがいいものだ」という認識が必要だと指摘した。

スペースジェットの開発状況を視察した際の赤羽国交大臣(当時)令和2年1月19日  ~国土交通省HPより https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_007313.html

経済産業省は3月27日、大臣の諮問機関である産業構造審議会の会合で航空機産業戦略の改定案を示した。そのなかで、次世代の国産旅客機について、2035年以降の事業化を目指し、今後10年間で官民あわせて約5兆円規模の投資を行うと明らかにした。国産旅客機の開発をめぐっては2023年2月、約15年かけて国産小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ/旧三菱リージョナルジェットMRJ)」の事業化を進めていた三菱重工業が事業からの撤退を表明している。

MSJの事業撤退表明から約1年、一部では「唐突」との声もあがるタイミングで政府が官民あげての国産旅客機事業化を掲げたことについて、ゲスト出演した元桜美大学客員教授で航空経営研究所主席研究員の橋本安男氏は「私は唐突とは思わない。(MSJの開発は)8合目まで行ったと言われているが、開発費を使い過ぎて事業性のめどが立たなくなって、撤退を余儀なくされた。ただ、それまでに獲得したノウハウや技術を無駄にするのはもったいない。放っておくと無くなってしまうので、残っているうちに糧にして次のステップに進むべきだ」と、今回の政府の戦略案を評価。一方で、世界では脱炭素を目指し、水素燃料電池を使った航空機の試験飛行が始まっているとして「日本にはスピード感が足りない。国が支援してでも、早くローンチ(販売や提供の開始)しないといけない」と指摘した。

また、約15年かけて事業化を進めたMSJが撤退を余儀なくされた背景について橋本氏は「市場の見極めに疎かった。ものづくりはすごいが、インテグレーション能力=事業を可能にする能力が足りなかったのだろう」と述べ、原因のひとつとして「最初に作った『M90(旧MRJ90)』が、アメリカのパイロット組合が設ける重さ39トン、座席数76席という“スコープ・クローズ”(航空会社とパイロット組合の契約の一部で、リージョナル航空機の機体重量や座席数などの制限値を定めたもの)の条項を見誤った」と言及。「製造過程で、この問題が解消されたと勘違いしていたことが大きかった。新たにこの条項に適合した『M100』を設計しなおしたが、『M90』の製造にかかった5000~6000億円と同等のコストが再度かかるという負担が重く、頓挫した」と経緯を詳細に述べた。

石川がアメリカの型式証明取得をめぐって、当局に「いじわるされたのでは?」との見方を指摘すると、橋本氏は「それはうがちすぎだし、負け惜しみ。謙虚になるべき」ときっぱり。「ブラジルやカナダのメーカーは、アメリカのボーイング社と競合するような機体でも、ちゃんとアメリカの型式証明を取っている」と指摘した。

石川は、今後の国産旅客機開発の再挑戦について「日本は技術的に素晴らしいものがたくさんある。航空機以外にも、携帯電話やスマートフォンも本当は技術的にはすごいのに、技術におぼれてしまってコストをかけすぎてしまって、“こんな高いもの、高いレベルの機能はいらない”となってしまう。いいものが売れるのではなくて、売れるものがいいものだ」と持論を述べた。

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