葉加瀬太郎、人生が180度変わった経験「クラシック以外は音楽に聴こえてこなかった」けど…

J-WAVEの番組『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』(ナビゲーター:志村季世恵/板井麻衣子)。この番組は、暗闇のソーシャルエンターテイメント『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』を主催するバースセラピストの志村季世恵が、暗闇のバーに毎回ゲストを迎え、一切、光のない空間で語り合う。

10月13日(日)のオンエアでは、バイオリニストの葉加瀬太郎をゲストに迎え、暗闇の空間で感じたことやポピュラー音楽との意外な出会い、夢中になることの大切さなどを語った。

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■音楽家は目を閉じている時間が長い?

暗闇のバーに迎え入れられた葉加瀬は、その感覚をこう表現する。

葉加瀬:目を閉じたり開けたりしているんだけど、その違いが面白いなと思って。目を開けると、目の前の5メートルくらい先に、すごく素敵な黒いジョーゼットがかかっているように見えます。ベルベットのような。
志村:ちょっと厚みのあるような。
葉加瀬:そうね。でも目を閉じるとそれがなくなる。音楽をやっていると目を閉じて集中したいと思うときが多いので、わりと音楽家は人生の中で目を閉じている時間が長いと思いますよ。本番中とか演奏が始まったらほとんど目を閉じます。そのほうが集中できるので。


■音楽家の使命は、音楽を自分でチョイスして紹介すること

幼い頃からバイオリンを弾き続け、音楽漬けの日々を過ごしていた葉加瀬だが、大学で上京してからポピュラー音楽に目覚め、そこから人生が180度変わったと振り返る。

志村:どう変わったんですか?
葉加瀬:それまではクラシック以外は音楽に聴こえてなかったんです。小学校のときからクラシック音楽が好きで、レコードを買い漁り、コンサートに行っては自分でバイオリンを弾いている子だったので。でも、東京の大学でパンクロックに心惹かれて、ちゃんとザ・ビートルズも聴いたことがなかった18歳の僕が、ポピュラー音楽を勉強しました。そこからは音楽が広がりました。

それまでは、たとえテレビで松田聖子が歌っていたとしても、それは音楽として聴こえていなかったという。

葉加瀬:同じようにザ・ビートルズのレコードがどこかで流れたとしても、音楽っぽく思わなかったんですよ。自分としてはチャイコフスキー、ベートーベン、ブラームスが好きだったので、歌謡曲とかポピュラー音楽はわからなかった。

その音楽遍歴があったからこそ、葉加瀬の音楽は、あまりクラシックに馴染みのない人とクラシックの架け橋になっていると志村は言う。

葉加瀬:クラシックと言ってもいろんな音楽があるから、その全てが好きってわけでもないんです。でも僕が好きな、200年前に書かれたとても上質な音楽のよさを伝えてあげたいと思っても(なかなか難しい)。「ブラームスのシンフォニーを聴いてみて」と言っても、40分もの曲を聴くのは疲れますよね。しかも、この曲はとっても暗いし重い。その分、彼の手紙の内容がたくさんこもっているからね。そういう曲を聴く機会を与えてあげたいと思ったら、僕が1度咀嚼して「こんなものなんですよ」って説明するのもいいし、「こういうふうな曲なんだよ」って簡単にわかるように演奏してあげるというのも、ひとつの方法かなと思います。

歌舞伎やオペラなど、伝統芸能的に残っているものは、すぐに理解しようとしても難しく、いろいろな情報が入ることで、初めてそれが面白いと感じることができると葉加瀬は続ける。

葉加瀬:たまたま僕は小さいときからそういうものばかり聴いてきたから、そういうものの楽しみ方は、ちょっと知っているはずだから、それは紹介したいなと思う。音楽家の使命のひとつは、いい音楽を自分でチョイスして、音楽をやっていない人にちゃんと紹介してあげることだと思っているんです。芸術は、キュレートすることがすごく大切ですよね。


■誰にも負けないぐらいの「好き」があると人生は楽しい

葉加瀬は「何でもいいから、ひとつでも夢中になれるものがあることが、人生にとってものすごく大切」と語る。

葉加瀬:僕の場合はバイオリンを弾いてることだったり曲を書くことだったりしただけで、これは人によって違うわけ。その人によって違うことが、この世の中の素晴らしさなんだよね。
志村:ほんとですね。
葉加瀬:「誰にも負けない」のではなくて「誰にも負けないぐらいこれが好き」というものがあると、人生って楽しいですよ。だって、何もいらないんだもん。僕は音楽を始めたらなにもいらないから、別にご飯も食べなくていい。本当にお腹が空いたら食べるよ。でも、それまでは極力いま夢中になってることを続けたいんですよね。そういうものがあると人生はとてもいいんです。
志村:夢中になると時間が進むのが早いですからね。
葉加瀬:それはこの暗闇の空間と似ています。集中できる。その世界に入ったときが面白いです。

葉加瀬は暗闇のバーに入る前に一瞬不安になったと明かし、その感覚がスキューバダイビングに似ていると感じていた。

葉加瀬:僕はスキューバダイビングが好きで何度もやっています。ところが毎回エントリーするたびに怖いんですよ。海に潜ってから心がすっと落ち着いたあと、夢が始まるんですよ。海の中は宇宙だからとても美しいんです。いつもと違う空間に入っていくので、その前に人は緊張して不安を感じるんですね。だから今日この部屋に入った瞬間にそれがあったんです。でも、すっと心が解き放たれる瞬間があるわけ。

この感覚はステージに立つ前の心境とも似ているという。

葉加瀬:僕は30年くらい年間100本ほどのコンサートをやっているけど、いまだにステージに上るときは不安で怖くて帰りたくなるんですよ。それは、それまでにいたところと全く違うところだから。何千人の目が僕を見る、耳が僕の音を聞く。それは普段とは違うんですね。そこに1歩入るときっていうのは、この暗闇の部屋に入るときと一緒、海の中に入るときと一緒で、怖いんですよ。ところが入ったあとは心地いいですね。

志村との対話をとおして、暗闇の心地よさを感じる葉加瀬だった。みなさんも、光のない空間で過ごすことで、新たな感覚が見つかるかもしれない。

葉加瀬が影響を受けてきたクラシックや愛してきた楽曲のカバーを全12曲新録した最新作『Dal Segno 〜Story of My Life』も、ぜひ手に取ってほしい。また、葉加瀬がナビゲーターを務める番組『ANA WORLD AIR CURRENT』(毎週土曜日19:00-19:54)も要チェック!

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【番組情報】
番組名:『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』
放送日時:毎月第2日曜日25時-26時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/dialogue/

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「企業の『生理休暇』を考える」

今回は「企業の『生理休暇』」について考えます。

去年8月に行った民間の調査によると、社会人の女性で生理休暇を取得したことのある人の割合は12.8%にとどまるとのことです。

実際に「取りづらい」とはどういう状況なのかというと、これは私の実体験も含めてですが
女性であっても男性と変わらない重責を担う仕事に従事していて、業務では常に緊張を感じている状態なのにも関わらず、一か月の三分の一近くを腹痛や貧血の症状で働くのは本当に辛いことなのですが、生理休暇を取るために男性の上司にそれを伝えるのは生理周期が知られるようで嫌な思いをしたり、上司によっては「あの人は平気なのに、あなたはダメなの?」と思われるのではないかという不安があります。生理休暇は、労働基準法で定められているにも関わらず、生理休暇があったとしても会社によっては勤務上は無給の扱いになっていたりもします。

そこで、会社の課題を考える議論の中で生理休暇が議題に上がり、すぐさま導入した会社が都内にあることを知って話をお聞きました。
ITの広告会社の、株式会社アドフレックス・コミュニケーションズです。生理休暇を導入したいきさつを、代表取締役の桑畑治彦さんはこう話します。

桑畑さん

改革プロジェクトみたいな、男女を交えて今の会社の課題って何みたいな事を議論する場がありまして。その中で男女の違いって何なんだろうねっていう議論があって、ある社員が「子宮があるかないかだ」という話があって。そうすると、それが半月ぐらいとか一週間、二週間とか女性は苦しい中で働いているからちょっとフェアじゃないねというような話があって。そういう意味だと生理休暇って世の中にあるなかでも、無給の会社が多い中では、そこを有給にして月に一回取れるようにしていこうという話でまず始めて。

男女間をフェアにするために「有給」として生理休暇を取れるようにしたということです。

さらにこのアドフレックスでは、生理休暇を始めたことで、女性の生理痛を疑似体験できる「生理痛体験研修」を実施しようという話になったそうです。
これはお腹の部分に特殊な装置を付けて痛みを疑似的に体感するものなんですが、研修を受けた男性社員の西村大輔さんに感想を聞きました。

西村さん

私これまで4社くらい経験しているんですけれども、どの会社でもそこまで生理休暇や生理痛にフォーカスしたような会社はなかったので、どんな感じなんだろうというのが率直な感想でした。実際に研修をしてみて、生理痛の疑似体験ということで、まぁかなりやっぱり痛くてですね。この痛みに耐えながら仕事するっていうのはとてもじゃないけれど無理だなと思いました。

こうした研修も経て、アドフレックスの生理休暇がさらに充実したものになっていったそうです。再び、桑畑さんです。

桑畑さん

生理痛も一日っていう単位ではなくて「時間有休っていう形で1時間単位で取れるような形にしていこうよ」みたいな、割と柔軟さを持てるようになりましたし、男性もそれに対しても理解できるようになってきたっていうところはやっぱりありましたね。

時間単位で有給の生理休暇を取れるようにしたことで、しんどさを感じた時に例えばほんの一時間だけでも横になり休むこともできます。これは仕事のパフォーマンスの向上につながりますよね。アドフレックスは80人規模の会社ならではのスピード感と柔軟性で、こうして生理休暇の制度が整いました。

一方、当事者の女性にもいい効果が現れているようです。「生理痛体験研修」にも参加した瀧口はるかさんは、こうした研修や職場の風土のおかげで、社内で生理についてオープンに話しやすくなったと言います。

瀧口さん

やっぱり役職が違ったりとかする、部署が違う人とかと話すのって、なかなかプライベートな部分かなと思ってたんですけれども、研修があってから、年齢が違う、役職が違う女性の方ともフランクに話すことができるようになったなっていうのは、同じ女性のでも色々個人差があって自分だけの感覚になっちゃいけないなというのは改めて思った実感であったと思います。

加えて、代表の桑畑さんに教えてもらったのですが、生理休暇を充実させたアドフレックスでは、女性の離職率が減ったというのがデータとして明らかに出ているそうです。併せて、産休・育休から戻る社員も増えているとのことでした。

きょうは、アドフレックスの実例をご紹介しましたが、例えば他にも衛生用品メーカーのユニ・チャームが企業向けに行う「生理研修」などもあり、講義方式で生理の基礎知識を学んだり、職種に合った生理ケアの知識などをこれまで数百の企業に広めてきたそうです。すべての企業において、女性が生理休暇を取っても違和感のない社会になる事を願います。

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