「凌風丸」4代目に! 日本の海洋気象観測を担う

「報道部畑中デスクの独り言」(第369回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、4代目となった気象庁の新たな海洋気象観測船「凌風丸」について—

4代目凌風丸

気象庁の気象観測船「凌風丸」が4代目となり、内部が報道陣に公開されました。

4代目凌風丸(右) 左は啓風丸

4月24日、東京・台場の海岸に凌風丸はもう一隻の観測船「啓風丸」とともに停泊していました。新調されたばかりということもあり、白い壁面は鮮やか、内部のフローリング調の廊下は“新築マンション”のようなにおいがしました。

甲板から見たレーダーマスト

甲板に出ると、そのシンボルともいえるレーダーマストが見えます。レーダーが設置されたマスト……白い金属パイプの構造物ですが、その頂上部の端に直径約20cmの円盤が2枚設置されていました。これ、GNSSアンテナと呼ばれるものです。

マスト上端にある2枚のGNSSアンテナ

GNSSアンテナは本来、カーナビなどの測位システムに使われます。GPSなどの測位衛星から送信される電波を受信しますが、その電波は大気中の水蒸気によって遅れる性質を持っています(時差にして1億分の1の単位)。その差を利用し、大気中の水蒸気量を観測しようというものです。

昨今、出水期に顕在化することが多い線状降水帯、この予測に必要なのが、海上から流入する水蒸気量の把握です。このアンテナが線状降水帯の予測に大きく寄与するというわけです。

「これからの出水期、6月から10月は啓風丸と協力し、主に九州西方において、線状降水帯の発生に目を光らせる。線状降水帯の正確な予測につながり、わが国の大雨災害の減少、その下支えの仕事につながればと思う」(気象庁大気海洋部・矢野俊彦主任技術専門官)

女性区画に設けられた専用の浴室

凌風丸には時代に即した設計もいくつかみられます。今回、船内には女性専用の区画も設けられました。トイレ、浴室、洗濯機、そして、女性観測員室2部屋……この区画は「男子禁制」です。

女性の船員が増え、いまは6人乗船することもあるそうです。これまでトイレと風呂が小さいものが1つずつだったところ、今回複数できたことで、快適度がぐっと上がりました。

「非常に快適で楽。いろいろ考えなくていいので。風呂の時間がバッティングすることもない。洗濯もいつでもできる」

航海士の女性職員、長谷川紬さんはこのように話します。

ランドリーも女性専用スペースができた

実は7年前にもう一隻の観測船「啓風丸」に体験乗船する機会があり、小欄でも詳しく取り上げました。7年前の小欄を引用すると……観測船の女性参加が始まったのはごく最近で2016年のことです。かつて男性だけだったころは、入浴後、船員がタオル1枚で廊下を歩いていたこともあったとか。一方で女性船員は男性の個室前の廊下を何も考えず通り過ぎていたそうで、そんな“配慮”からも解放されそうです。いろいろ考えなくていいので……まさに実感だと思います。

「女性もたくさん乗ってもらっていろんな観測ができたらと思う」(長谷川さん)

操舵室

操舵室は当然、最新の機器が採用されていますが、ひときわ目を引いたのは海図です。これまでの紙海図から電子海図になりました。タッチパネルディスプレイで拡大や地図のスクロールも自由自在。運航業務の効率化や安全性の向上が期待されます。

操舵室には電子海図が導入された

紙は更新の際は赤を入れるなど煩雑な作業が必要で、書いたら書いた分汚れます。また、何といってもかさばります。電子海図は海上保安庁からの情報をインストールすれば更新されます。また、2地点の距離と時間の関係も、2点をプロットすれば自動的にわかります。一方、「使いきれていないところもあり、慣れていない」と話す担当者。電子化については慣れが必要であることはどんな仕事も同じのようです。

CTDの採水部 説明する矢野敏彦主任技術専門官

水質分析のために海水をくみ上げるCTD(Conductivity Temperature Depth Profiler=電気伝導度水温水深計)も公開されました。7年前の体験乗船のことを思い出しました。この装置の操作にはまさに職人芸が求められます。観測範囲は最大水深6000m、海水の流れを見ながらクレーンとワイヤーを使って装置を海中に沈めていきますが、この採水作業だけで約6時間かかるそうです。海底にこすって壊れたら一巻の終わり。採水後、分析用の瓶に海水を移し替える作業は極寒の環境で行うこともありますが、手袋をはめるとすべりやすいため素手で行います。肌が荒れても、ハンドクリームはご法度。分析の際にクリームの成分を混入させないためだということです。

水質を分析する観測エリア 理科の実験室の雰囲気

四代目となった凌風丸は報道公開から2日後の4月26日、すでに東京を出港し、本州の南方海域に向かいました。日本で観測船による海上気象観測が始まったのは1921年(大正10年)のこと、100年以上の歴史を持ち、今後も啓風丸とともにその重責を担うことになります。
(了)

大沢伸一、音楽は「非日常的な検索」でみつける─その方法とは?

音楽家、作曲家、DJ、プロデューサーの大沢伸一が、最近の音楽の聴き方や、例外的に尊敬するアーティスト、出演するクリス・ペプラープロデュースのイベントについて語った。

大沢が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。オンエアは4月27日(土)。

この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。大沢は成城石井の「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」を持参し、ビールとともに楽しんだ。

音楽の見つけ方は「非日常的な検索」

サブスクリプションなどの影響で音楽の聴き方が多様化する中、大沢自身もこの5、6年で音楽の聴き方が変わってきたと明かす。

大沢:1つのアーティストやジャンル、曲にいくっていうよりも、プレイリストの考え方が柔軟になってきたじゃないですか。その中で、誰かも言っていますけど、出会った日が新譜みたいなところってあるじゃないですか。その考え方で言うと、昔の曲だけど人生で出会わなかったような曲をプレイリスト単位で探すことが増えましたね。

クリス:ネットの進歩と共に新譜・旧譜っていう概念がないですよね。その中で大沢さんはどう選曲していきます?

大沢:例えば新しい音楽を積極的に探すということはなくて。それはこの10年、20年の中でストリーミングがスタンダードになったあとに生まれてきた音楽は多少なりともアルゴリズムの影響を受けているので、その影響の下で作られたものって良いか悪いかは別にして、昔の音楽に比べてレンジが狭くなっていると思っているんですよ。その狭いレンジの中で何かを探すというよりは、その枠からもれて今まで出会っていなかったものを探すことに特化しているというか。

クリス:アルゴリズムだとかなり大まかなものになってしまう。

大沢:似たようなものばかりになっちゃいますよね。だからおすすめを拾うというよりは自分でとんでもな文言をタイプして、そこで引っかかって面白いなと思ったらそこからまた旅をしていくとか。

クリス:例えば?

大沢:「非日常的な検索」というか、「Indian Hardcore」や「Spooky Tiki」、そういう文言を入れたときにヒットするもの。それが曲名であれプレイリストであれ、1曲面白いものが見つかったら、この人は他にどんな曲をやっているの、その人のことを好きな人は何を聴いているのっていう旅の仕方をしますね。

大沢は「おすすめは、そこから階層を深く旅をしてほしい」と口にする。

大沢:1つのレイヤーで止まってしまうとその人のプレイリストで止まっちゃうじゃないですか。そうじゃなくてその1曲からまた違う、深さや横のレイヤーにいって、違うプレイリストや違うアーティストにたどり着いたりっていうのがインターネットの面白い使い方だと思いますね。

坂本龍一への特別な思い

大沢は1993年にMONDO GROSSOのメンバーとしてメジャーデビュー。そこから30年近くキャリアを重ねてきたが、“1人を除いて”音楽人生であまりアイドル的な存在はいなかったと話す。

大沢:1人だけ例外的な方がいて、それが坂本龍一さんなんですね。当然、坂本さんの作品が全て好きかと言われるとそうじゃないものも当然あるんですけど、彼は僕にとって特別な感じがあって。彼の音楽に出会ってなかったら自分の音楽をここまで全うできてなかったんだろうなっていう思いがあるんですよね。その理由があって、彼だけは例外的に好きですね。ずっと尊敬していますね。

大沢は坂本さんが亡くなる1年前の2022年に、MONDO GROSSOの『IN THIS WORLD feat. 坂本龍一[Vocal:満島ひかり]』で共演している。



クリス:この時期だと坂本さんのご病気が進んでいるときですよね。

大沢:そうですね。セッションも一緒にはできなかったので、データでやり取りをするしかできなかったでね。

クリス:それ以前から教授(坂本さん)とは接点があったんですか?

大沢:最初は90年代にフォーライフ・レコードで一緒だったんですよ。レーベルメートではあったし実際にお会いする機会もあったんですけど、なんとなく触れてはいけないような気がしていて。教授が主催の小さいところでやる集まりがあって、ピアノを披露されると。「MONDO GROSSOでデビューした大沢くんもこの集まりに入っていいよ」って言われたんですけど、入るまで30分くらい表で立っていたんですよ。自分が入っていいものなのかわからなくて。最終的に入ったんですけど。当然紹介してくれる人もいたけど、坂本さんのところにはいけなかったんです。だからお会いしたことも言葉を交わしたこともないんです。

クリス:なるほど。

大沢:謙虚とかではなくて、しかも恐れっていうわけでもないんですけど、なんとなくアプローチを僕がするわけではなく、自然にそのタイミングが来るまで何もしてはいけない気がしていて、そういう影響の受け方を勝手にしていたというか。それで結果的によかったと思います。

坂本さんとの曲作りの話題になり、大沢は敬意の大きさゆえに「正直に言うと、この曲をやりたくなかった」と驚きの発言をした。

クリス:なぜやりたくなかったんですか?

大沢:だって、僕が曲を書くんですよ。僕が書いたメロディーを坂本龍一に弾かせるんですよ。それはやっちゃダメでしょ。

クリス:でも教授はやりたくないことは絶対にやらない人だったから。

大沢:もちろん。でもそれは僕にとっては最後の誰かに対しての優しさとか、いろんな関係性の中で実現したことだと思っているので、本当に僕の人となりがわかって「じゃあやろうよ」って言ってくれたこととはちょっと違う気がしていて。だから本当にやりたかったことは、「今、実際に坂本さんは何がやりたいですか? 僕ができるのはこれです」「じゃあ大沢くんこれをやろうよ」ってことが本当はいちばんやりたかったし、その曲が例え一般的に多くの人が称賛されなくても、僕にはそれがベストだったんですよ。でもこの曲もベスト。なぜかと言うと、結果的にそういう何かの批評や批判の対象にもなりませんでしたし、変な負の遺産にもならなかったし、僕が一緒にした理由があると思うんですよね。

DJでMONDO GROSSOの音楽をあまりかけない理由

大沢は、クリスがプロデュースする5月10日(金)にザ・ガーデンホールで行われる「Celebrate 30th Anniversary of YEBISU GARDEN PLACE with SHINICHI OSAWA -MONDO GROSSO DJ SET- Produced by クリス・ペプラー」に出演する。当日は、大沢率いるMONDO GROSSOのDJセットに加え、ゲストのDONGURIZU、RHYME、オープニングアクトにNao Kawamuraが登場する。

クリス:どういうセットを考えていますか?

大沢:基本的にDJでオファーされるときにMONDO GROSSOの音楽はほとんどかけないんです。DJとしての自分とMONDO GROSSOの音楽って分けて考えているところがあるんですけど、すごく特別な状況に限り、MONDO GROSSOの曲をメインにしてDJをすることがあって、「MONDO GROSSO DJ SET」や「MG SET」と呼んでいます。今回はご依頼の内容から考えてこれをやらせてもらえるんじゃないかってことで、このセットでいこうと思っています。

クリス:なんでDJだとMONDO GROSSOはあんまりやらないんですか?

大沢:MONDO GROSSOってバンドのイメージがあるじゃないですか。だからDJであまり安請け合いしたくないなっていうところと、やるんだとしたら本当に映像とシンクロしてMONDO GROSSOがきちんとDJとして成立しているよっていうことがやりたかったので、ちゃんと機会を見分けてやらせていただきたいと思っています。こうやってDONGURIZUが入ったりRHYMEが入ったりすることで、今回は非常に楽しみです。

MONDO GROSSOは2月にニューアルバム『BIG WORLD』をリリースした。その他の情報は、MONDO GROSSOの公式サイトまで。

番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。

・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html

『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。

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