なぜ露・ラブロフ外相の“日米同盟強化への懸念”が重要な論点なのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月27日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。茂木外務大臣が明らかにしたラブロフ外相の発言から、北方領土返還について解説した。

日露外相会談 発言するロシアのラブロフ外相(中央)=2019年5月31日午前、東京都港区の外務省飯倉公館 写真提供:産経新聞社

日露平和条約締結交渉、ロシア側が日米同盟の強化を懸念

茂木外務大臣は昨日(26日)、ラブロフ外相が22日に行われたロシアとの外相会談のなかで、日米同盟の強化が日本とロシアの平和条約の交渉に与える影響について「懸念している」と伝えて来たことを明らかにした。茂木大臣は重要な論点だという考えを示している。

飯田)ロシア側は、前々から言っていたことではありましたが。

北海道と南クリルの衛星写真(北方地域)(北方領土問題-Wikipediaより)

オホーツク海を死守したいロシア~重要な位置にある国後島と択捉島

高橋)ロシアがどうして気にするかを言わないとわからないと思いますが、オホーツク海を誰が持つかということです。オホーツク海は内海になっていますし、あそこに原子力潜水艦を潜らせておいて核ミサイルを発射できるということが、核戦争においてロシアのいちばんのカードなのです。アメリカも近いし、オホーツク海をどのように自分の海にしておくかということです。そうすると国後島、択捉島はいいラインになります。国後島と択捉島の間の海峡と、択捉島と千島の間の海峡は深くて、外海にも出られるし、逆に言うとオホーツク海にも入れます。そこを封鎖したいというのが、ロシアの以前からの構想です。そのため、国後島と択捉島は絶対に手放さないでしょう。だから歯舞群島、色丹島がまだ交渉の余地があるということなのです。ロシアとしては択捉と国後は死守ラインだし、オホーツク海の海峡を許せば、外から入って来て荒らされてしまうかもしれません。逆に、封鎖されたら出られなくなってしまいます。

会談前、握手するロシアのプーチン大統領(右)と安倍首相=2019年9月5日、ロシア・ウラジオストク(共同) 写真提供:共同通信社

歯舞群島・色丹島の2島返還の可能性がある理由

高橋)だから国後島と択捉島を切り離して、歯舞群島、色丹島の2島返還の可能性が出て来るのです。歯舞群島と色丹島はその外だから、それほど影響はないわけです。ただ、色丹島にもロシアの大きな基地があるので、ロシアとしては安全保障上で重要な地域です。それがわからないと交渉できません。逆に言うと、この話が出るということは、交渉しているということです。

飯田)かなり現実論として考えて来ているということですね。

日ロ外務・防衛閣僚協議を前に記念撮影する、左からロシアのショイグ国防相、ラブロフ外相、河野外相、岩屋防衛相=2019年5月30日、東京都港区の飯倉公館(代表撮影) 写真提供:共同通信社

日本は共同経済活動として既成事実をつくって行くしかない

高橋)具体的に交渉のなかで出て来たということは、水面下でいろいろなことをやっているのでしょう。日本はその話を議論すると交渉上あまりよくないから、そのために共同経済活動として、既成事実をつくって行くという戦略なのです。だからこの話をあまりしないで、「経済活動でいいのでは?」などと言って、いまの話題だと北方四島でごみがたくさん出るから、「このごみをどうするのか」という話をするのが、日本の戦略だと思います。

飯田)温泉があるからツアーもいいではないかとか、墓参とか。

高橋)人口が増えて汚くなっているとかね。海洋の話は国際的にまずいから、そのごみ処理は日本がするという方向に持って行くのだと思います。安全保障の話になると、スタックしてしまう可能性があります。

飯田)これが表に出てしまうと。

高橋)譲れない話が両方から出て来るでしょう。

飯田)それぞれの国益が、真正面からぶつかることに。

高橋)ロシアは「施政権がない」と言われたら、実効支配しかできなくなってしまう。実効支配というロシアの事実しか残らないし、それは日本の外交上よくない。さまざまなハードルをいかにかいくぐって、実利で話を進めて行けるかどうかが、日本の外交の腕の見せどころでしょう。北方四島の話は難しいです。

飯田)これは漢方薬みたいなもので、すぐにクリアカットというわけではなく、じわじわやって行くしかない。

高橋)ないですね。70年間何もなかったのだから、これからの70年間でひっくり返せるのかという議論だと思います。

飯田)孫の世代かな。

高橋)我々は生きていないですね。

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アリババグループが香港で上場する2つの理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月27日放送)に数量政策学者高橋洋一が出演。アリババグループが香港で上場したニュースについて解説した。

26日、香港証券取引所で行われた上場式典の会場。中国電子商取引(EC)大手のアリババグループが26日、香港証券取引所に株式を上場し、米国と香港に重複上場した初の中国インターネット企業となった。(香港=新華社記者/朱祥)=2019(令和元)年11月26日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

アリババグループが香港で上場

中国のネット通販最大手アリババグループは26日、香港証券取引所に株式を上場した。アリババの上場はニューヨーク証券取引所に続いて2ヵ所目で、今回の資金調達額は日本円で1兆2000億円あまり。中国本土からも投資しやすい香港に上場することで、資金の調達先の多様化をする狙いがあると見られている。

飯田)巨大IT企業が香港上場というか、アメリカから逃れるみたいなことでもあるのでしょうか。

高橋)多様化と言いますが、アメリカで制裁を受けたら資金調達ができないかもしれないという、恐れもあると思います。あとは香港が最近ガタガタしていますから、香港のプレイアップも狙っているのかなという気がします。

飯田)これで潤わせて。

高橋)香港というとニューヨーク、ロンドンに次ぐ金融センターです。しかし、いまの香港の状況では、普通の金融機関はビジネスしづらいですよね。いままでは一国二制度という建前で、自由な市場の象徴でした。でも実は一国二制度ではないということになると、中国のなかでやることになります。そうすると、金融センターとしてはどうなのだろうかと思いますよね。いまは世界3位ですが、だんだん地位が下がっています。金融センターとしての香港の地位が揺らいで来るかもしれないと思うから、こういうことをやるのでしょう。アリババは中国傘下の企業ではないですか。だからやりやすいということかもしれません。

飯田)純国有企業。創業者のジャック・マーは中国共産党員の人です。

香港の金融街セントラルで抗議活動する市民ら。香港区議会選挙では民主派が圧勝した=2019年11月25日(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカで制裁を受ける可能性と金融センターとしての香港の危うさ

高橋)いろいろな思惑があって、いまのタイミングなのだと思います。

飯田)先ほど罪刑法定主義の話がありましたが、それがあるから安心して企業活動できるというのが、香港の利点としてありました。しかし、もはや罪刑人定主義のようになっている。

高橋)そうですよね。罪刑法定主義というのは、西側諸国で共通の制度です。中国では裁量で決まってしまいます。

飯田)それもすべて中国共産党主導の下。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

中国からの資金調達もできる

高橋)それでは金融はできないですよね。そういうことがわかったら香港は金融セクターとしての地位は保てないし、お金がある人はもう香港から出ていますから、だんだん衰退して行くのではないかと見られています。だからアリババくらいなら上場してもいいし、アリババもニューヨークだけで上場していたらどうなるかわからないと中国共産党の人に言われてしまったら、「では香港もやるか」ということになるでしょう。香港はイギリスの統治下だったので、イギリスは金融市場に対して自由だったのですが、それが変わって来たのではないでしょうか。香港で上場すると、中国からの資金の調達もできるから、アリババにとっても渡りに船かも知れません。

飯田)香港は上海や深圳からも、資金が流れ込むスキームがありますよね。

高橋)上海も深圳も証券取引所がありますが、日本や政府の証券取引所とは違います。要するに自由ではなくて、誰かが管理しているところだから。

飯田)かつて不可解に上場が廃止になったり、取引が停止したりしましたよね。

高橋)それは日本やニューヨーク、ロンドンではあり得ないことです。価格が操作される可能性もあるし、証券会社だって本当の自由な市場であるかわかりません。日本の自由な市場で資金調達できることとは違っています。管理されたなかでの資金調達だと思います。

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