全盲で車いすの山下純一、コロナ禍での障がい者の生活語る「車いす、立っている人からの飛沫を浴びやすい…」

山下純一とアルミカンの今夜もバリアフリーFUNK

全盲で車いすのミュージシャンと松竹芸能美人漫才コンビがバリアフリーを考える

ラジオ大阪 毎週土曜日27:30~27:45にお送りしている『山下純一のバリアフリーFUNK』のパーソナリティ、山下純一さんは全盲で車いす。山下さんの障害は、関節が動きにくく変形を伴う肢体不自由と、その合併症による視覚障害です。20才で全盲となった山下さん。どちらも障害の等級は1級の判定ですが、1級が最も重い障害の状態であり、1級が2つでも等級に変わりはありません。等級に応じた福祉サービスが生活を支える重要な要素である山下さんは「1級ふたつあったら2段とかならへんのかと思う。」と笑いを交えて話します。

そんな山下さんのもう一つの顔はミュージシャン。ハーモニカ、ボーカル、パーカッション、ドラムなど、様々なパートをこなします。中でもハーモニカは、F.I.H.Japan(世界ハーモニカ連盟日本支部)が主催する「F.I.H. ハーモニカ・コンテスト2018」という、健常者・障がい者の区分がないコンテストで「第38回 ブルースハープ・コンテスト(ブルース部門)」の第1位を獲得しました。「握力もないし、手に変形もある。ハーモニカを持つだけでも普通にはできない。だから、我流の吹き方をするしかない。それが(コンテストで)認められるか不安があったが、認めてもらって嬉しい」と振り返りました。

そして、そんな山下さんとバリアフリーや障がい者の方々のコロナ禍での生活について考えるのは、健常者である松竹芸能の美人漫才コンビ「アルミカン」の赤阪さんと高橋さん。アルミカンは、ラジオ大阪 毎週火曜日22:00~23:00『アルミカンの今夜も勝負パンツ』に出演中です。

山下さんとアルミカンが一緒に番組をするのが今回で3回目。すっかり息の合った様子で番組スタートです。

アルミカンの赤阪さんと高橋さん

障がい者が抱えるコロナのリスク。わかっていても避けられないことも。

コロナウイルスは基礎疾患がある人が感染した場合、重症化しやすいといわれます。発熱や全身の痛みを抱え、免疫を抑える薬を服用しながら生活する山下さんは、まさにその当事者です。この日も、感染リスクを避けるため、自宅からリモートで出演しました。

そんな山下さんのコロナに対する気がかりは、生活を支えるヘルパーと自身との間での感染リスクと、万が一の場合の生活への影響。「ヘルパーさんにうつさないか、(ヘルパーさんから)もらわないか。そして(自分たちは大丈夫でも)、もしもヘルパーさんの所属先で感染があるだけで(家に)来てもらえなくなる。(ヘルパーさんに支えられている自分の)生活が止まってしまう。(代わりのヘルパーさんになったとしても、)顔なじみの人に来てもらえなくなるのは不安。」と話します。

それでは、視覚障がい者の方々は現在の生活にどんな不安や不便があるのでしょうか。アルミカンのお2人と「視覚障がい者が仕事に行くと仮定してどんなリスクがあるか?」を考えます。視力が弱く常に眼鏡が手放せないという赤阪さんは「眼鏡なしで生活をすると思ったら、めっちゃ怖いです」とつぶやきました。

・感染を防ぐために手袋をするとスマホの操作がしにくい(多くの視覚障がい者にとって生活を支える重要なツールである)
・ソーシャルディスタンスというけれど、2mの距離を測ることは視覚障がい者には難しい。どうしようもない。
・困ったら人の手を借りなければいけないが、触れること自体、今はお願いしにくい。触れないで言葉で指示してもらうのも難しい。
・点字はそもそも触って読む。その点字の位置も手探りで探す。感染リスクがあるとしても、そうするしかない。

少し考えるだけでもリスクとバリアは次々と挙げられます。

それでは、車いすの方には、どんな不便や不自由が?

山下さんは、

・ソーシャルディスタンスと言っても、車いすの場所が決められており距離が取れないこと
・車いすに座った際の高さが、立っている人からのせきの飛沫が飛びやすい位置になること

などを挙げ「コロナの前から、咳エチケットはしてほしいと思っていた。だれでもできることだから。」と話しました。

そして、不要不急の外出を控えることが求められる中でも、多くのリスクを抱える障がい者も、健常者と同じく通院や仕事など、どうしても出かけなければならない事情があることに理解を求めました。

こうした多くのバリアの中で「人とのつながりが絶たれてさみしく感じる。」と山下さんは語ります。また、コロナ禍以前からある、福祉サービスの意外に不便な点や、健常者が障がい者へ抱きがちな思い込みについてユーモアを交えて話しました。

高橋さんが「リスクがあるから、(健常者は障がい者の方へ)声をかけないほうがいいのかな?」と唸ると、山下さんは「声はかけてほしい。そこは信頼関係(で成り立つこと)。お互いが消毒している、マナーを守っていると信頼の上(で交流ができる)。目が見えなかったら、マスクしているかもわからないから。」と言うと、「こういう時だからこそ、むしろ声をかけたほうがいいのかもしれない。」と納得したようでした。

障がい者の社会参加

マッサージの仕事を、やむなく自粛しているというある視覚障がい者の方は、患者さんから「体が痛いから、早く再開してほしい」と言葉をかけられ「本当に嬉しかった。自分の仕事が役に立っていることや、人とのつながりを再確認できた」と山下さんに話されたといいます。

障がい者も健常者と同じく、社会とのつながりが重要であることを、山下さんは語りました。

インタビュー①視覚障がいを抱えながらの子育てとは

続いて、視覚障害を持ちながら子育てをする、長谷部さんに電話でお話を聴きます。

お子さんはもうすぐ3才になる女の子。

長谷部さんは、現在はほぼ視力がないという視覚障がい者。同じく視覚障がい者である、弱視の夫と協力しながら子育てをされています。

妊娠中から、つわりがひどい時も見えないためにトイレに駆け込めず、袋が手放せなかったことや、視覚障害者が出産できる病院が限られること、病院での行動が制限されることなどを明かしました。

子育てにおいての難しさについては、計量の目盛りが見えずミルクが自分では作れないこと、離乳食を口に運ぶことができないこと、子どもが食べる様子が確認できないこと、沐浴させることができないことなどを挙げました。

子どもがことばを話すようになり、子育てが楽になったと言いますが、2歳7カ月のある日、夫が「ママと遊び(なさい)」と促したとき、子どもが「目の見えないママとは遊ばない」と言うのを聞いて、その場で号泣したと辛い出来事を語ります。しかし「ママの涙を見てからは言わなくなった。」と言う長谷部さんに、アルミカンの2人は「きっと思いやりのある子になると思います!」と力強く言いました。

「子育てをして嬉しかったことは?」と問われると、いつも寝るときに読み聞かせる絵本を、子どもが自分で読むようになったことや、自分(母親)が落としたものを「はいはい、はいどうぞ」と言って拾ってくれることなどを挙げ、「私の目の代わりをしてくれるようになって、成長を感じる。自分は絵本を読んであげることもできないけど、うれしい。」と声を弾ませました。

また「健常者に向けて、何かしてほしいことはないですか」と聞かれると「 最近はみなさん声をかけてくれるのがありがたい。声をかけてもらうと嬉しいです。困っている時もだけど、困ってないときも声かけてほしい。」と話しました。

電話の向こうに真剣に耳を傾けるアルミカンとディレクター

インタビュー②障がい者を介護する家族の想い

2人目の電話ゲストは、医療的ケア児である重症心身障害児の娘さんを持つ、健常者の林さん。娘さんは中学校2年生ですが、首が座らず、自力で動くことができない、とても重い障害の状態だといいます。

もともと障害がなかったという娘さんがこれほどの状態になったきっかけが「軽い風邪」だと聞き、アルミカンの2人は驚きます。風邪が、生まれ持っていた病気を悪化させ心肺停止となり、それにより脳に障害が残り今の状態になったといいます。

軽い風邪とはいえ、感染症が健康体の人よりも悪化しやすいということを経験された林さんは「コロナがとても怖い」と話します。しかし、意外にも、その対策はコロナ以前と変わっていないと話します。常に掃除と消毒を心がけ、痰の吸引などのケアを行う際には、手指の消毒を徹底するそうです。

そんな生活にコロナがもたらした大きな変化の一つは、養護学校が休みとなったこと。「人に助けてもらって維持できたことができなくなっている。」と不安を語ります。また、娘さんの介護において日常的な必需品である、アルコール、マスク、滅菌ガーぜ、手袋、そして夜装着する人工呼吸器の加湿に使う精製水などの医療物品の不足が大きな問題となっているそうです。「個人レベルでも、病院でも(不足している)。皆が不安だから、仕方ないと思っているけれど...。」と、ウイルス対策の必要性を実感しているからこそ複雑な思いを語りました。

そして、山下さんと同じく「コロナになって、咳エチケットが(徹底されていることが)、ありがたい。マスクも皆がしていてありがたい。」と話します。山下さんも繰り返して「そう、ありがたい。マスク、皆ストックを持っといてほしい。咳出たら着けられるように。」と訴えました。

林さんはブログなどでも介護の日常を発信されているそうです。ぜひ生の言葉をお読みください

林めぐみさんのブログ「ぼくらはみんな生きていく」

真剣な表情の3人

コロナ禍で収穫も。続いてほしいことと戻ってきてほしいこと

山下さんは、このコロナ禍を振り返り「リスクはもちろん不安だけど、例えば、リモートでの収録や配信できると分かったのは収穫だ」と話します。「(仮に)コロナじゃないときに(リモートを)お願いしても『前例がないから』と断られるだろうけど、やってみたらできるって(分かった)。これが残っていってほしい。」とエンターテインメント業界のこれからについて期待しました。

「今一番何がしたいか」という問いには「目が見えないから握手を大切にしてきた。今、やっぱり握手できないのが(辛い)。皆と握手ができるようになってほしい。」と答えました。

アルミカンの2人は「コロナの中で障がい者さんがどんな暮らしをしているか知るきっかけになった。自分が大変やから、自分のことしか考えらえないけど、こんな時やからこそ相手のことを考えることが自分にも返ってくるのかもしれない。」と放送を振り返ると、山下さんは「だって優しいほうがかっこええやん。優しい人ってほんまかっこええ。そして、優しくあるには強くないと。」と力強く言いました。その言葉は、赤阪さん、高橋さんの心に深く響いたようでした。

山下純一とアルミカンの今夜もバリアフリーFUNK
放送局:OBCラジオ大阪
放送日時:毎週土曜 25時00分~26時00分
出演者:山下純一、アルミカン

※この番組は終了しました。

sumika新曲「Poker Joker」をFM802『ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-』にてフル尺初オンエア!

FM802で毎週月曜~木曜日 21:00-23:48 放送中の『ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-』(DJ=落合健太郎)。

5月1日(水)の放送で、sumikaのニューシングル「Unmei e.p」(5月15日(水)リリース)に収録される新曲「Poker Joker」の、初オンエアが決定しました!さらにこの日は、sumikaからのコメントもお届けします。お楽しみに!

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