今どきは寒い時期も食中毒に注意!
TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!
12月4日(月)放送後記
先月、都内で焼き菓子のマフィンで、多くの人が食中毒の症状を訴えるということがありました。11月に、しかも、火を通した焼き菓子で食中毒?とちょっとびっくりしました。
暑い時期は細菌、寒い時期はウイルスが原因で食中毒
そこで、「食中毒は暑い時期というイメージだったのですが、違うんですか?」と、専門家に聞いてみました。食品衛生学がご専門の、女子栄養大学短期大学部の教授、平井昭彦さんのお話です。
女子栄養大学短期大学部 平井昭彦教授
「実はですね、食中毒というのは、暑い時期だけでなくて寒い時期にも発生していると。夏の時期には細菌が原因による食中毒、それから冬の時期にはウイルスによる食中毒が多いと、一年を通してある程度の数が発生しているということになりますので、冬場で細菌があまり活動しないという時期にも発生する食中毒ありますので、注意をして頂きたいなと思います。
ただ、近頃の住宅、非常に気密性が高いとか、二重窓、三重窓になって冬でも室内の温度があまり下がらないという状況もありますので、室温にそのまま、調理した食品を置きっぱなしにする、ということをやりますと、昔のすきま風がいっぱい入って来るような寒い住宅ですと、室内の気温かなり下がってますので、菌は増えないんですが、室内の温度が下がり切らないということで、冬場でも細菌の食中毒にも注意する必要があるということにはなります。」
食中毒を引き起こす原因は、暑い時期は細菌が多く、寒い時期はウイルスによるものが多い、と原因は異なりますが、食中毒は一年中あるんです。
冬場で有名なのは、ノロウイルスによる食中毒。インフルエンザウイルスもですが、ウイルスは寒い時期に活発なんです。寒い時期には寒い時期の食中毒があります。
さらに、近頃の住宅は性能がよくなり室内が暖かいので、常温保存には注意!昔よりも、暑い時期と同じ、細菌による食中毒も発生しやすくなっている。つまり、ウイルスと細菌、両方の食中毒に気を付けなければいけないのが寒い時期、ということなのです。
100℃で煮ても死なない食中毒細菌!
でも、先月の食中毒は生ものではなく「火を通してある焼き菓子」でした。熱を加えて調理するのは、食中毒対策には大事、と聞きますが、火を通すだけではダメなこともあるようです。平井先生のお話です。
女子栄養大学短期大学部 平井昭彦教授
「食中毒細菌はいくつか種類があるんですけれども、その中で、芽胞というものを作る種類があります。ウエルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌といったものになるんですが、ここら辺の特徴というのは、その芽胞というのが非常に環境耐性が強い、簡単に言いますと、ぐつぐつ100℃で煮てあげても芽胞は死なないよ、というような、そういった食中毒細菌がいるんですね。
ぐつぐつ煮たものについてですね、他の細菌は死んでしまいます。それに対してこの芽胞というのは生き残るんですね。で、ちょうどいい温度、50℃以下くらいに食品の温度が下がってきますと、この芽胞は芽を出しまして、元の菌に戻るわけですね。で、他の対抗する菌がいませんので、自分の天国ですね。どんどんどんどん増えてしまいます。ということで、食中毒になってしまう。ですので、そこら辺に注意する必要があります。」
芽胞というのは、熱に強い殻のようなもので、この芽胞を作るタイプの細菌がくせ者。
100℃で、ぐつぐつ煮ても死なないとは!しかも他の菌が熱は死滅するので、自分だけの天国となり、どんどん増えてしまう。
食中毒を防ぐ3原則は「つけない」「やっつける」「増やさない」というのがありますが、ウエルシュ菌は人間や動物の大腸の中の常在菌で下水や川、海、耕地などに広くいるものだし、セレウス菌は土壌細菌で土や水中など自然環境中に広くいるもの。
こうなると、「つけない」は難しい。そして、「やっつける」は熱でも退治できないのでダメ。
というわけで、とにかく「増やさない」という対策しか無いのです。そのためには、冷蔵保存。芽胞から元の細菌に戻る隙を与えずに冷やす。これらの菌は、ある程度の数まで菌が増殖しないと食中毒は発生しないので、とにかく「増やさない」ことが大事。
一晩おいたカレーは美味しいと言いますが、冬場も室内が暖かくなっている今は、常温保存はダメ!とにかく、「なるべく早く冷蔵庫に入れる」を徹底してほしい、ということです。
今どき、おせちは保存食ではない!?
そして、さらにもう一つ、これからの時期に注意して欲しいことがある、と平井先生は言います。
女子栄養大学短期大学部 平井昭彦教授
「特におせち料理は、日本古来の保存食ということで、非常に保存性は高いんですが、あの微生物を抑制して保存するために、塩分が高いとか、糖分が高いといったことで保存性が良くなるんですが、近頃、減塩とか甘さ控えめといったことで、そういったものも、ちょっと細菌の抑制にはよろしくないということにはなっています。確かに、味としてはそちらの方が美味しいかもしれないんですが、衛生という面では注意していただきたいなと。
ですので、これから、正月で作り置き、おせち料理等食べられる時期にはなると思いますが、一応、食べ終わったら冷蔵庫の中に入れていただくということがよろしいかなと思います。」
塩分や糖分がしっかり入ったおせちは、保存食としての昔の人の知恵だったんですね。
しかし、そういった塩分も糖分も高めの昔ながらのおせちばかりではなくなっていますので、今どきは、「おせちイコール保存食だから冷蔵庫に入れなくても、家の中の涼しいところに置いておけば大丈夫」という考えは、今日を機会に上書きして、食中毒のないこの冬、そして年末年始をお過ごしください。
