クリス松村×島村幸男 スペシャル対談・前編「bayfm『9の音粋』は大人買いの賜物!?」
自由に音楽を聴けなかった少年時代
島村 僕がクリスさんにはじめて会ったのは、2019年9月16日にOAした『Song of Japan』の特番『bayfm 30th Anniversary Special Song of Japan~和心をあなたに~』です。この番組にクリスさんがゲストとして参加してくれたんですが、本当に音楽が好きで、アーティストへのリスペクトが伝わってきました。
クリス ありがとうございます。ただ、私はあくまでリスナーなので、楽譜は読めないし、楽器だって扱えない。ミュージシャンの島村さんとは、音楽の知識では雲泥の差があるんです。だから、選曲では“感覚”を大事にしています。
島村 クリスさんの著書『「誰にも書けない」アイドル論』(小学館新書)を読んで思ったんですが、僕とクリスさんの音楽遍歴って真逆なんですよね。僕は子供の頃からロックでもフォークでも、音楽は何でも自由に聴くことができた。音楽に関しては、何不自由なかったんです。
クリス 厳格な親に育てられた私はクラシックやオペラが中心で、それ以外のジャンルは不良が聴くものとして、自由に聴くことができなかったんです。そんな中、ラジオだけは自由に聴くことができたので、私にとってラジオは本当に貴重でした。
島村 よく子供の頃に買えなかったものを大人になってから買い集める人がいますが、クリスさんはあらゆる音楽を“大人買い”してきた感じがしますね。
クリス それはありますね。「いつか自由に音楽を聴きたい」という子供の頃の思いが、大人になってから爆発したのかも。今、bayfmで「9の音粋」のような音楽番組を担当させてもらっているのは、その成果だと思っています。こういう番組こそ、私が本当にやりたかったことなんです。
DJクリス松村による『9の音粋』
音の“粋”を味わえる真剣選曲ショー。1970年代から今にかけての邦楽の名曲を、DJ自らセレクトしている。いつ、どこから聴いても楽しめるが、番組の最初から最後まで“通し”で聴くことをおすすめしたい。ラジオの醍醐味である“心地よい音”と“未知の音”との出会いを、存分に満喫できるはず。
DJ島村幸男と田中美和子でおなじみ『Song of Japan』
島村幸男と田中美和子の通称“しまみわ”コンビがお届けしている、深夜の昭和歌謡エンタテインメ
ント。週替わりのテーマのもと、昭和の名曲の数々を紹介している。夫婦漫才のような、しまみわコンビのトークも絶品。寝る前のおともに、ベイエリアはもちろん、全国のリスナーから愛されている。
フォークの世界観が理解できない
島村 クリスさんはどういうラジオ番組を聴いてきましたか?
クリス 洋楽はラジオ関東(現ラジオ日本)の『全米トップ40』です。当時はまだ電リク※で、私はこの番組のオペレーターだったんです。邦楽はベストテン番組が大好きで、週末は大体聴いていましたね。
島村 大石吾朗さんの『コッキーポップ』は聴きましたか? 僕はあの番組で流れていた柴田まゆみさんの「白いページの中に」が好きで、今も心に刻まれています。
クリス 聴いていましたよ。ただ、子供の頃はヒット曲やアイドルに夢中で、コッキーポップ系のアーティストのことをそこまでわかっていませんでした。1970年代後半になって原田真二さんや世良公則&ツイストがデビューしたあたりから、徐々に関心を抱くようになったんです。日本に新しい音楽が次々に誕生した、本当におもしろかった頃ですね。
島村 僕はフォークにドはまりしたんですが、クリスさんはどうですか?
クリス 苦手でした。というのも、私は海外育ちなので、フォークが歌う世界観を理解できないんですよ。はじめての一人暮らしで四畳半のアパートに引っ越すことになるんですが、幸せそのもの。最高に楽しくて、フォークが歌う寂しさや悲しさとは無縁だったんです。
島村 なるほどね(笑)。僕も四畳半の世界を経験したわけではないんですが、暮らしの中にフォークが自然と溶け込んでいました。僕にとってフォークはソウルのようなものだったんです。
※電リク=電話リクエストの略。E-Mailがなかった頃、ラジオ局への楽曲リクエストは電話が主流だった。
外国人アーティストはクリス松村がお好き!?
クリス 先ほどフォークのような暗い感じの曲は苦手と言いましたが、浅川マキさんは大ファンでした。ちょっとやさぐれた感じがする、彼女の声の力に圧倒されてしまって。コンサートに行ったとき「私、これまでアンコールやったことがないんだけど、今日はいい男がいるから、特別にもう一曲歌います」って言ったんです。彼女、私のこと好きだったのかも。本人に確認とったわけではないんですけど、私のことをハッキリ見て言うから。他にいい男なんていなかったし(笑)
島村 それ、よくコンサートに行ったファンが「ずっと私のことを見て歌ってくれてる!」って思いこんじゃうやつじゃないの(笑)。
クリス ううん、私のこと見てた(笑)。あと、ダイアナ・ロスのステージでも2回躍ったことがあるんですよ。
島村 ホントに? まわりにいた男全員立ち上がったんじゃなくて?
クリス (同じコンサートに行った)小倉智昭さんは「ダイアナ・ロスがクリスさんの目の前に来て、とても集中できなかった」って言っていました。マイケル・ブーブレが来日して、日本武道館で公演したときなんて、わざわざステージから降りてきて、私の目の前で歌ってくれたんですよ。しかも、最後に私に向かってハンドタオルを投げてくれたんです。今も大切に保管しています。
島村 笑い。
クリス 南佳孝さんと会場にいたオーディエンスが証人ですから。どうやら私、外国人アーティストに愛されるみたいです。
島村&クリスも登場!『bayfm year end‐new year special 2020‐2021 音個知新 ‐ 明日を照らす音‐』12月31日(木)~1月1日(月)年越し放送!
音楽はどんなときでも未来を明るく照らす道しるべであり、そうであると信じたい――。年末年始のbayfmは、温故知新ならぬ“音個知新”をテーマに、人気番組「9の音粋」「よのなかばかなのよ」「Song of Japan」のDJがタッグを組んで、新旧問わず邦楽の名曲の数々を紹介。新年に希望を抱きたくなる、8時間の生放送です。
【第1部】2020年12月31日(木)21:00~2021年1月1日深夜1:00頃
DJ:クリス松村、中村 中
【第2部】2021年1月1日(金)深夜1:00頃~4:53
DJ:島村幸男、田中美和子
クリス松村×島村幸男 スペシャル対談・後編「粋な選曲の極意は“流れ”にあり」はこちら
撮影:熊谷仁男
構成:柴山高宏(スリーライト)
- bayfm year end‐new year special 2020‐2021 音個知新 ‐ 明日を照らす音‐
- 放送局:BAYFM78
- 放送日時:2020年12月31日 木曜日 21時00分~28時53分
- 出演者:クリス松村、中村 中、島村幸男、田中美和子
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番組ホームページ
※該当回の聴取期間は終了しました。