山梨県庁若手職員の退職、高い水準で続く 現状と対策は

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。9月12日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、山梨県庁の若手職員の退職にについて解説しました。
麻耶:今回はどんな話題でしょうか?
松田:今日は山梨県庁の若手職員(40歳未満)の退職が高水準で続いているというお話です。UTYグループの週刊新聞「山梨新報」の7月26日付で報じた記事を解説します。
麻耶:県民にとっては、行政サービスへの影響にもつながりかねない話で、気になる方も多いと思われます。若手退職の現状から伺えますか。
松田:まず、県職員の総数は約1万2800人(2022年度)で、そのうち、「一般行政職」と呼ばれる職員は約3000人いて、ここで40歳未満の退職が目立っています。一般行政職とは、政策の企画・立案・実施、公共サービスの提供、予算・人事管理など「県の中枢業務」に携わる職員です。教員や警察、消防ももちろん大変、重要な部門ですが、この分野は除かれます。一方、早期退職が課題となっているのは、定年退職者や勧奨退職、懲戒免職などを除き、多くは「転職」など「自己都合」による「普通退職者」で、その多くが40歳未満の若手というわけです。
麻耶:毎年の退職者の数は、どのように推移しているのですか。
松田:総務省の「地方公務員の退職状況等調査」へ県が毎年、提供している数値を基に、「退職者総数」に占める普通退職者の数(過去5年分=2018~22年度)を年代別に見ると、2021、22年度はともに、40歳未満が約8割を占め、全国平均を(11~22ポイント)も上回っていました。法政大学大学院兼任講師の宇佐美淳さんに評価・分析してもらったところ、「若手の流出は、入庁10年までの10年間(25~35歳未満)の退職が多く、さらに5歳刻みでは、25~30歳未満は、過去5年のすべてで、全国平均を上回った。要因は、県の平均給与は民間より高いが、若年層では逆に、かなり低いことが影響しているのではないか」とのことでした。
麻耶:給与の低さへの不満が大きいのですね。30~35歳はどうなのでしょうか。
松田:この年代は、就職して10年目の区切りを目前に、中間管理職的な役割に限界を感じ始める中、「将来へのキャリア形成を再考する傾向が強まるのではないか」と指摘されました。一方、宇佐美氏が提示した別の調査ですが、メンタルヘルス(心の健康)に関する一般財団法人の全国調査(22年度)では、「精神および行動の障害による長期病休者は、15年前の約2倍で、20~30代が多い」。さらに、総務省の調査(22年度)では、自治体職員の採用試験の競争率が全国平均で5.2倍と“過去最低”を記録し、地方公務員の仕事の魅力低下が伺われます。
麻耶:若手退職者が多いのには、様々な要因があるのですね。県はどう対応しているのでしょうか。
松田:県の関口龍海総務部長も「山梨県も全国と同じ傾向で非常に深刻」という認識を示されました。そこで県は対策を加速しているのですが、たとえば、入庁から10年はあまり昇任できていないので、早期昇任・管理職への登用を数年早める検討をするほか、MBA(経営学修士)の「資格研修プログラム」を創設し、学費や滞在費、生活費全額を県が負担します。
また、介護離職の低減へ、最長6カ月の介護休暇の取得率を、介護と子育ての両立という「ダブルケア」への対応も含め引き上げていきたい、としています。さらに、県職員に地域貢献にかかわってもらう制度を創設し、副業・兼業も認めていく――。このほか、県職員の増員が難しい中で、人口減少や災害対応など行政需要の多様化に対応するため、非正規職員の正規雇用化を数名程度ですが今年度から開始。子育てで離職した元職員の「再雇用」も昨年度からスタートしています。
麻耶:職員の退職抑制の難しさがよく分かりました。松田さんは、取材を通じてどうお感じですか。
松田:この問題は、「社会的課題の縮図」といった印象を受けました。早期昇任という人事の一部、見直しから、キャリアアップの後押し、介護休暇の取得促進、正規雇用や再雇用の拡大…。どれも社会全体が直面している難しい問題ですが、県が気の毒なのは、民間企業のような自由度がないことです。たとえば、地方公務員の定員は、10年以上前に国から職員数削減を求められて策定した計画の縛りがあったり、給与水準についても、国が定めた目安との均衡が求められるなど、県が自由に決めるという訳にはいきません。その制約の中で、対策を打たねばならないという“ジレンマ”を抱えているわけです。個人的な見解ですが、最近は、地方分権はあまり注目されなくなりましたが、自治体職員の採用や定着のための政策ぐらいは、もう少し自治体個々の裁量に任せる“柔軟性”があってもいいのではないか、と思いました。
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