訪問介護報酬引き下げ 介護現場の受け止めと引き下げの理由は

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。10月10日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、訪問介護の介護報酬引き下げについて解説しました。

松田:テーマは「訪問介護」で、今日と来月の2回に分けてお話しします。訪問介護報酬が今年4月から2%引き下げられた経緯と影響と課題について、9月27日付の山梨新報1面で報じた記事の解説です。今日は介護現場の仕事の過酷さと、報酬引き下げの経緯をお話します。

麻耶:物価高騰下で多くの産業で賃上げがされている中での「報酬引き下げ」は驚きです。まず、介護サービスの全体像と、どのくらいの引き下げになったのか、から伺えますか。

松田:介護サービスは、大きく分けて3つです。老人ホームなどの「介護施設」がひとつ。二つ目が、介護ヘルパーが利用者宅へ行く「訪問介護」、利用者が介護施設に通う「デイサービス」、短期入所の「ショートステイ」――これらは「居宅系」です。三つめが、認知症の人が共同生活するグループホームなどの「地域密着型」です。

さて、今回の厚生労働省による介護報酬の改定(3年に1度)では、介護報酬全体は1.59%引き上げた代わりに、利益率が高いという理由で、「訪問介護」など一部が2%引き下げられました。では、なぜ、「引き上げと引き下げがセットなのか」というと、年間約12兆円の介護保険の財源は、半分が保険料収入、半分が国と自治体の公費負担で、全体がひっ迫しているからです。「あっちを上げる代わりにこっちを下げる」ことで財政肥大化を抑制した。それはそれで分かるのですが、しかし、そもそも、介護サービス全体として、「低賃金で激務」という課題がこれまであって、その中での引き下げですから、訪問介護事業所には“激震”が走っています。

麻耶:賃金水準と介護サービスの仕事は具体的にどのようなものですか。

松田:介護関係者を取材すると、介護ヘルパーの月給は全産業平均に比べ7万円程度低い。取材した甲府市内の訪問介護ステーションの所長によると、介護職30数年の所長の月給は、驚くことに大卒初任給並み――22万~23万円でした。これは、税金や社会保険料込みの「総額ベース」で、手取りだと10万円台後半と推定されます。だから、所長は「介護報酬引き下げのニュース」を知った時、「耳を疑った。報酬は元に戻すか、むしろ上げてほしい」と思われたそうで、当然ですね。

麻耶:そうですよね。この給与に対し、「激務」と言われる介護の仕事とは、どのようなものですか。

松田:訪問介護に絞ると、炊事・掃除・洗濯・日用品の買い物など家事全般を行う「生活援助」と、入浴・食事・排泄の介助などの「身体介護」があります。所長によると、土日・祝祭日の出勤は珍しくなく、盆も正月もなく(平日に代休)、1日の訪問件数は最大6軒とのことでした。私生活を犠牲されているようです。さらに、深刻な状況がありました。訪問介護は利用者の自宅という「密室」でのサービスで、介護ヘルパーと利用者が1対1です。よろしくない利用者の場合、介護ヘルパーがセクハラ、パワハラ、カスハラを受けることがあり、それで追い詰められ、離職していく人もいるそうです。

麻耶:ホームなどの施設介護ならそうなりませんよね。

松田:はい、介護ヘルパーは大勢いて交代で対応できるし、人目があってハラスメントはしにくいでしょう。関係者によると、介護職を目指す人は、「施設介護がいい。訪問介護はやりたくない」という人は圧倒的に多いそうです。これを裏付ける数字があります。介護職の有効求人倍率です。求人数に対し求職者がどれくらいいるかの割合ですが、たとえば、県内の全産業平均の直近の数字は、1.28倍。128件の求人に対し100人の応募ということです。厚労省によると、これが介護職全般(全国)だと3.8倍、訪問介護だと15.5倍で、「人材確保の難しさが経営リスクになっている」と認めています。155件の求人にたった10人の求職者しかいないのだから人材不足は深刻です。

麻耶:それなのに、改めてですが、なぜ、訪問介護は報酬引き下げなのでしょうか。

松田:厚労省は取材に対し、「訪問介護は利益率が7.8%と高いから」と、理由を説明しました。しかし、この利益率の算出に疑問があります。厚労省は全国のデータを取っていると言うのですが、大都市圏は利用者の居宅が徒歩や車で数分と近い所も多く、訪問効率が良いから当然、利益率は高い。しかし、地方は、移動に車で1時間近くかかることもあるから利益率は低い。この利益率の試算に、どれぐらい地方の実情が反映されているのか分からない。「訪問介護事業所の約4割が赤字」という厚労省調査に基づく民間の分析もあるほどですから。ということで、来月14日の2回目は、「報酬引き下げ撤回を求める動き」「国や県の対応と今後の課題」についてお話しします。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
番組ホームページ
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Xハッシュタグは「#ダイピー」(月)、「#ばんぴーのとも」(火)、「#てるぴー」(水)、「#ばんまや」(木)

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当時のレギュラー番組の音源も放送  『中山美穂 P.S. I LOVE YOU FOREVER』

ニッポン放送で特別番組『中山美穂 P.S. I LOVE YOU FOREVER』が4月26日(土)に放送される。

中山美穂

1985年にデビューし、日本レコード大賞最優秀新人賞を獲得、ティーンを中心に熱狂を生み、瞬く間に国民的歌手へと駆け上がった中山美穂。彼女の存在は、流行や音楽スタイルが変化を遂げている中でもひときわ輝き続けた。

そして、デビューと同時にスタートしたニッポン放送のラジオ番組『中山美穂 ちょっとだけええかっこC』、1990年からは『中山美穂 P.S. I LOVE YOU』の番組タイトルで、自身の思いや本音をリスナーに打ち明けながら、合計10年にわたりパーソナリティを務めた。そんな縁の深いニッポン放送で、当時のラジオでの肉声や、多くの人の心を踊らせてきた数々の楽曲を紹介していく特別番組の放送が決定した。

進行は、「中山美穂は時代の道標だった」と称し、中山美穂本人とも交流のあったミッツ・マングローブと、ニッポン放送パーソナリティでフリーアナウンサーの垣花正が務める。

番組では、当時の中山美穂の番組音源を振り返りながら、生放送でリスナーからの思いやリクエストも受け付け、2時間にわたり中山美穂の魅力をたっぷり伝えていく。

特別番組『中山美穂 P.S. I LOVE YOU FOREVER』は4月26日(土)18時~20時に生放送。

【番組概要】
■『中山美穂 P.S. I LOVE YOU FOREVER』
■放送日時:2025年4月26日(土) 18時~20時 生放送
■進行役:ミッツ・マングローブ、垣花 正
■メールアドレス:miho@1242.com

 

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