化学物質過敏症の基礎知識 患者数は100万人を超える?

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。10月19日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、化学物質過敏症について解説しました。

松田:今日から連続3回、年末まで、日常に潜む病気「化学物質過敏症」を取り上げます。20年来、私が断続的に報道してきたテーマです。最大の問題は花粉症のように、個人差があるけれども、だれしもがある日突然、なりうる病気であること。リスナーは、「家族や知り合いが過敏症」、「よく知らない。自分はなっていない」など様々でしょう。しかし、いったん発症してからでは手遅れですし、周囲に患者がいたら配慮が必要なので、普段から知識を持っておくと良いと思います。

化学物質過敏症は、農薬や殺虫剤を始めとする多くの化学物質に反応し慢性化、時に重症化する病気です。一方、新築・リフォーム建材・資材に使われる化学物質で体調不良を起こすのが「シックハウス症候群」。いずれも1990年代から問題になり、2010年代からは「柔軟剤」、「合成洗剤」、「香水」、「除菌・消臭剤」などから化学物質過敏症になり得る健康被害「香害(こうがい)」が問題となっています。

大元にあるのが「化学物質過敏症」です。農薬・除草剤・殺虫剤を浴びれば、過敏症になりえます。一方、「シックハウス」、「香害」はその過敏症につながる「入口」です。

麻耶:言葉は聞いたことがありますが、それぞれどんなものでしょうか。

松田:化学物質過敏症は、一度に大量に、または微量でも長期間、接すると、体調不良が慢性化する病気。「一度に大量」は、約30年前のオウム真理教の「地下鉄サリン事件」が典型ですが、一般には農地やゴルフ場の農薬散布があり、近くにある自宅や通勤・通学路で吸ったとか、近隣の家が庭や畑に除草剤を撒き、それが漂って発症するケースです。

「微量でも長期間」とは、新築・リフォームで、壁紙や合板などに使われる接着剤や塗装から室内に揮発する空気を吸いこむケース。厚生労働省はシックハウス症候群を2004年に、化学物質過敏症を2009年に保険医療の対象とし、その後、障害者年金の給付対象にもなりました。国は多数の患者の存在を認めたわけです。専門家によると患者数は100万人を超えるともいわれ、近年は新たに「香害」という健康被害とその報道も増えています。

麻耶:「化学物質過敏症」と「シックハウス症候群」、「香害」の関係を改めて伺えますか。

松田:繰り返しますが、シックハウスや香害は「化学物質過敏症」へ発展する「入口」です。違いは化学物質過敏症もシックハウスも「病気」ですが、香害は「健康被害」であること。

共通の原因物質は、種類の多いVOC(揮発性有機化合物)という化学物質で、揮発成分を呼吸で吸うことで、化学物質が運動を司る中枢神経系などに悪影響を及ぼします。注意が要るのは、化学物質への感受性には個人差があり、同じ環境でも、家族でも発症する人としない人がいて、「気のせい」などと一蹴され、理解されないことがあることです。

麻耶:原因物質や製品は具体的にどのようなものなのですか。

松田:シックハウスの原因物質は、接着剤・防腐剤成分のホルムアルデヒドや、塗料・溶剤に含まれるVOCで約20年前に国土交通省が13物質に室内濃度指針値を設け規制。これで患者数はかなり減りましたが、未設定物質が多く完全に解決はしていません。

一方、化学物質過敏症の発生源は、除草剤、防虫・殺虫剤、農薬、塩素系漂白剤、消毒薬、インキ、スプレー製品、タバコ、自動車・工場排ガスと実に広範です。大気汚染対策としての規制はありますが、日用品から発生するVOCは野放し。そもそも製品中の配合成分自体、メーカーの自主規制で、国すら全成分を把握しておらず、実態がよく分かりません。

香害は「香害をなくす連絡会」が2019年に健康被害者約7000人にアンケート(複数回答)し、「何から影響を受けたか」尋ねたら、「柔軟剤」(約6100人)、「香りつき合成洗剤」(約5200人)、「香水」(約4700人)、「除菌・抗菌剤」(約4000人)の順でした。受動喫煙にも似て、大勢の人がいる教室、店舗、混んだ電車などで健康被害者は居場所を失うのです。

麻耶:化学物質過敏症の症状や体調不良は具体的にどのようなものですか。

松田:化学物質が身の回りにあり続けると、頭痛、めまい、せき、粘膜の炎症、関節痛、筋肉痛、倦怠感、疲労感、不眠などが常態化し、自律神経、中枢神経機能障害と診断されます。重症化すると、呼吸困難やアナフィラキシーショックに陥ることもあります。

麻耶:そうなると、より医療体制が気になりますね。どうなっているのでしょうか。

松田:これが大問題なのです。私が知る限り、全国に専門医療機関は、東京圏と地方に数えるほどしかない。なぜかといえば、「治療法が確立されていない」などの理由に加え、医師の利益の源泉である「検査」と「薬の処方」があまりできないからです。儲からないのです。その少ない専門医も高齢化し、閉院に追い込まれるなど事態は深刻。だから、東京の専門医に全国から患者が殺到しています。この下りは、東京の専門医の証言です。

麻耶:とすると、山梨県で受診したい場合、どうすればいいのでしょうか。

松田:県の健康増進課は、過敏症の症状を訴える人から相談を受けた場合、「県内の複数の医療機関で対応し、各保健所でも医療機関への受診を促している」としています。そこで、ためしに保健所に問い合わせたら、「対応できる医療機関は分かりません」。本県医療機関トップの山梨大学医学部附属病院、さらに県立中央病院も「対応できません」でした。一体、どういうことなのでしょうか? 次回の取材でこの点を県に質しお伝えします。

最大の問題は、化学物質過敏症の原因となるVOCなどの化学物質がほとんど規制されず野放図に氾濫している一方で、その事実が社会には認知、周知されず、しかし、患者や健康被害は増えている。けれども、治療できる医療機関は山梨県にはなく、全国にも少なく、患者は行き場を失っていることです。次回11月の放送は、県内情勢を深掘りします。

多言語音声翻訳ツール「リングイイネ!」使用 『防災ポッドキャスト 南海トラフ地震に備える』英語版 配信スタート

ポッドキャスト番組『ニッポン放送 防災ポッドキャスト 南海トラフ地震に備える』が多言語音声翻訳ツール「リングイイネ!」で英語化された。

“What is the Nankai Trough Earthquake?”

『ニッポン放送 防災ポッドキャスト 南海トラフ地震に備える』 は、南海トラフ地震についての理解を深め、日々の防災意識を高めることを目的として制作されたポッドキャスト番組。2024年8月に気象庁から「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたことが契機となり、防災の日である9月1日(日)に日本語版が配信された。

今回、番組のパート①『南海トラフ地震とは何か』が、ニッポン放送が現在開発中の多言語音声翻訳ツール「リングイイネ!」によって英語化され、“What is the Nankai Trough Earthquake?”として配信されることとなった。今後順次、パート2~4の英語版も配信していく。

「リングイイネ!」は日本語で話した内容を、話者の声そのままに他の言語へ翻訳できるAIツール。本番組では、出演者の福山由朗氏、箱崎みどりアナウンサーの声がそのままに英語版へ翻訳されている。「リングイイネ!」による英語化で、日本にいる英語を母国語とする方々にも日本の防災情報を届けられる。

ニッポン放送は今後も「リングイイネ!」を使って、外国語のコンテンツを制作していく予定。番組はニッポン放送 PODCAST STATIONほか、各種ポッドキャストアプリで聴くことができる。

■多言語音声翻訳ツール「リングイイネ!」とは (https://news.1242.com/article/483968

日本語の音声コンテンツを複数の海外言語に変換するツール。人工知能を活用した本サービスによって、話者(しゃべり手)の言語や声の特徴を活かしながら、他の言語に翻訳、音声変換させることが可能となる。サービス名は、イタリア語のLingu(言語、舌)に由来。

特徴は
・話者の声色を活かしたまま他の言語に音声変換できる
・現在、英語や中国語、スペイン語など、28の言語に対応している
・他の言語から日本語への音声変換も可能であるなど。

“What is the Nankai Trough Earthquake?”

【番組概要】
■番組名:『防災ポッドキャスト 南海トラフ地震に備える』
■エピソードタイトル:“What is the Nankai Trough Earthquake?”
■配信先:ニッポン放送PODCAST STATION(https://podcast.1242.com)、ANNJAMほか、Apple、Spotify、AmazonMusic、radiko等各種Podcastアプリ
■パーソナリティ:福山由朗(内閣府参事官補佐・政策統括官・防災担当)箱崎みどり(ニッポン放送アナウンサー/気象予報士・防災士)

 

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