今年のアカデミー賞の行方は? ハリウッド外国人映画記者協会会員・小西未来が大予想

J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。2月23日(土)のオンエアでは、ロサンゼルス在住の映画ライターで映画監督の小西未来さんがゲストに登場。「第91回アカデミー賞授賞式」の受賞予想や、おすすめのドラマなどを訊きました。


■年間300本以上の作品を鑑賞

小西さんは日本人では珍しい、ハリウッド外国人映画記者協会の会員として、アカデミー賞の前哨戦ともいわれるゴールデングローブ賞の選考に関わっています。

この賞は映画部門だけでなくテレビドラマ部門もあるため、選考にあたり年間で映画は200本、ドラマは100本以上を鑑賞。賞レースが盛り上がる時期になると、1日に3、4作品を観る日が続くそうです。

小西:ドラマの全エピソードは観られないので、新作ドラマが出たら1話目だけ観て、気に入らなければ観るのをやめます。映画も合わないと思ったら最初の10分とか15分で観るのをやめます。
市川:それを見越して作品は作られていますよね?
小西:それは考えているでしょうね。こちらは時間を割くだけの価値があるかどうか判断するので。そういう経験をして、自分の中に残っている作品はやっぱりいいものなんです。だから、あえてメモも取らないですし、次の映画を観て忘れてしまうような映画は自分にとって大事な作品ではありません。


■アカデミー賞 作品賞の有力候補は?

そんな小西さんは、日本時間の2月25日(月)に開催される「第91回アカデミー賞授賞式」において、どの作品に注目しているのでしょうか。

小西さんは、これまでの賞レースの流れからNetflixのアルフォンソ・キュアロン監督作品『ROMA/ローマ』が作品賞の本命だと言います。

小西:この映画は全てメキシコで撮影したスペイン語の作品です。中産階級のリアリズムを極めつつ、映像は非常に美しいです。同時に今アメリカで起きているメキシコの移民問題、トランプ大統領が見下すような発言をするメキシコ人たちを美しく描いています。そういったことも含めて有利な気がします。

ただし、『ROMA/ローマ』は作品賞のほかに外国語映画賞にもノミネートされています。審査員に「外国語映画賞に投票するから、作品賞は別の作品に」という心理が働くかもしれない、という懸念があると説明しました。

2番手で作品賞受賞の可能性が高い作品はピーター・ファレリー監督作品『グリーンブック』。

小西:この作品は実話をもとに、人種差別を扱った作品だけど、けっこう笑えるロードムービーです。人種差別や実話をもとにしている作品はアカデミー賞の大好物なので、作品賞の受賞はあり得る一方で、この作品の脚本家が過去に人種差別発言をしていたなど、いろいろなネガティブキャンペーンをされて叩かれています。だから必ずしも『グリーンブック』が強いわけではないので、どれが獲るか分からない状態です。

上記二作のほかに、『ボヘミアン・ラプソディ』『アリー/ スター誕生』『ブラック・クランズマン』『ブラックパンサー』『女王陛下のお気に入り』『バイス』も作品賞にノミネートを果たしています。全8ノミネート作品のなかで作品賞を獲るのは? 授賞式に注目です。


■野心的なコンテンツも多いドラマ作品がオススメ

また、オンエアで小西さんは「最近、面白い映画がない」と思っている人はドラマがオススメだと話します。ハリウッドが大作映画しか制作しないため、クリエイターがドラマを制作するケースが非常に多いのだとか。

小西:ドラマに関して、アメリカはここ20年くらい黄金時代と言われるほどです。さまざまな野心的なコンテンツが許されるので、同じ1時間を費やすのであれば、ドラマを観た方が当たりを引く可能性がはるかに高いと思います。

ドラマのオススメ作品のひとつにNetflixのオリジナルドラマ『ボディガード −守るべきもの−』を挙げました。

小西:イギリス制作のドラマで、やり手の女性政治家を守ることになったロンドンの刑事の物語です。彼自身が戦争のトラウマを持っていて、手に汗握る予想外の展開がたくさんあります。しかも、6話完結と短くコンパクトにまとまった、すごく良質なドラマなので、スリリングなものを求めている人にはすごくオススメです。

また、Amazonプライム・ビデオの『マーベラス・ミセス・メイゼル』シリーズも紹介。

小西:これは女性にオススメの作品です。1950年代のニューヨークを舞台に、よき母であり、よき妻を真面目にやっていたにも関わらず、夫に捨てられた女性の物語です。でも、苦労話ではなく、自分がコメディアンとして成長していくという不思議なストーリーで、すごくテンポがよく、昔の世界観もとても可愛い作品です。
市川:50年代のアメリカの衣装が可愛いんですよね。
小西:主演のレイチェル・ブロズナハンはすごく演技が上手ですし、この作品もオススメです。

番組では小西さんがセレクトした、Electric Light Orchestraの『Mr. Blue Sky』をオンエア。「ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットが出演する大好きな映画『エターナル・サンシャイン』の予告編で使われた曲で、これを聴くと必ずテンションが上がる」と紹介しました。

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【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時−21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/

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peco「ただ“こんな家族もありますよ”という思いがあるだけなんです」“新しい家族のカタチ”について東京レインボープライド共同代表理事・杉山文野と考える

4月28日(日)放送のTOKYO FM特別ラジオ番組「This is me!~ジェンダーレスと新しい家族のカタチ~」。

2023年6月、セクシュアルマイノリティに対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」が国会で成立し、施行されました。LGBTQ+とは「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と自認する性が異なる)、クエスチョニング(自分の性のあり方が分からない、または決めていない立場の人)」の5つの頭文字を取った言葉に、+(プラスアルファ)を付けたセクシュアルマイノリティの総称です。

番組では、ゲストとの対話や学生インタビューを通じてさまざまな性のあり方を知り、その先にある「新しい家族のカタチ」について考えます。ここでは、タレントのpecoさんとNPO 法人東京レインボープライド 共同代表理事・杉山文野さんの対談パートをお届けします。MCは村田睦アナウンサー(TOKYO FM)がつとめました。


(左から)杉山文野さん、村田睦アナウンサー、pecoさん


杉山文野さんは、生まれたときに割り当てられた性別が女性で、現在は男性として生活するトランスジェンダー。日本初の渋谷区同性パートナー制度制定にも関わり、自身のヒストリーや思いを綴った著書「元女子高生、パパになる」(文藝春秋)は大きな話題になりました。そして“新しい家族のカタチ”という点でもユニークな家族のあり方を実践しており、その様子をまとめた本「3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん」(毎日新聞出版)も出版されています。

◆“子育て”のうえで大変なこと

杉山さんのパートナーの女性は、ゲイの友人(ゴンちゃんこと松中権さん)の提供精子による体外受精で2児を出産しました。ここでは、杉山さんに“性の多様性”について、そして、3人親の子育てで大変なことについて伺いました。

杉山:“性”というものは、文化的に作られているものがすごく大きいと思うんですね。“LGBTQは自然の摂理に反している”という言葉を聞きますが、同性愛行為が確認されている動物だけでも1,500種類ほど確認されていて、実は“性”というのは多様なものなんです。なので“実は自然界の性はすごく豊かなんだ”という認識を大人も子どももイメージできるようになるといいですよね。

村田:杉山さんが子育てをなさるうえで、今の社会システム上で困ったことはありますか?

杉山:やっぱり、法的な関係性を持てないことです。ゴンちゃんに精子提供はしてもらったけれど、そのままの状態だと、彼女と僕が“パートナー関係”なのに、子どもに対しては彼女が“親権ありの実母”、認知をしたゴンちゃんが“親権はない(が法律上は)実父”で、私は“赤の他人”となる。3人で話して“それはフェアではない”となり、いろいろ話し合った結果、私が2人の子どもと養子縁組を結びました。

これによって、私が“親権ありの養母(戸籍上は女性のため)”となり、パートナーとゴンちゃんは親権がないけれども、法律上では3人とも親になった形です。

こういう話をすると、一部では“母親に産ませておきながら、親権を奪うなんて何事だ”と言われるんですけども、自分たちなりにどういう形がベストかを考えましたし、彼女の強い希望もあって養子縁組という形を取りました。

ただ、この形は(社会のシステム上)いろいろとややこしくて、まず夫婦別姓であること。また、子どもたちも小さいときに1回苗字が変わり、なんなら、僕がいま長野県と東京都の2拠点生活で、住民票だと子どもたちは彼女と一緒になっているけど、僕は東京の住所で……と、書類が本当に面倒くさいんですよ(苦笑)。

よく「ラーメンの全部乗せ」にたとえるんですけど、婚姻関係っていろんな社会制度の丸々のパッケージなんですよ。異性のカップルであれば「ラーメン全部乗せ」が何回でも無料で手に入るのですが、僕たちの場合は「麺はいくら、ナルトはいくら」みたいな形で買うわけ(費用を支払って公正証書などをつくるなど)です。

お金を払ったらそれと近い状態にはなるんですけど“異性か同性か”の違いだけで、なぜ金額や手続きに差ができるんだろうと感じますし、ここは変えてほしいなと思います。何か新しい権利を求めるというよりも、スタートラインを一緒にしてもらえたらなと思いますよね。

◆すべてを理解できなくても“寄り添いたい”という気持ちが大切

pecoさんは2017年にパートナーのryuchellさんと結婚。2018年に第一子を出産後、ryuchellさんから「夫であることにつらさを感じる」と告白され、2022年2人は夫婦関係を解消しました。

杉山さんの話を受けて、pecoさんは「私とryuchellは“男と女”として交際が始まったので、現実的な部分では大変なことはなかったんですけど、やっぱり“スタートラインだけでも揃えてほしい”と私も思いました」と思いを語ります。

杉山:私がいつも言っているのは、伝統的家族も素晴らしいと思います。ただ“そうじゃない家族も素晴らしいよね!”という選択肢が増えればいいなと思っているんです。LGBTQや同性婚の話をすると“伝統的家族の否定”と言われることもあったりしますが、決してそうではないです。

peco:すごくわかります。私も多様な家族の先頭を走りたいとは1ミリも思っていないし、ただ“こんな家族もありますよ”という思いがあるだけなんです。

杉山:ryuchellさんがカミングアウトをされて、性別移行(自身の性同一性/性自認に近づくためにおこなう社会的・身体的なプロセス)をされるなかで、家族の関係性について多くの取材や注目が集まりましたよね。だけど、言ってしまえば“家族のことだから放っておいてよ”という感じもあったと思うんですよ。

本(pecoさんのエッセイ「My life」)を読ませていただくと、これだけ明るいpecoちゃんにも、すごい葛藤があったのだと気付かされましたし、“家族っていろいろあるよね”と改めて感じました。

peco:ryuchellにも言っていたんですけど、“男と女”とか関係なく、人間が2人以上同じ屋根の下で過ごすんだから「そりゃあいろんなことがあるよ」「どこの家族も一緒だ」って(笑)。それは、すごく思っていました。

杉山:私は「家族とは“一番大切な他人”」だと思っているんですね。なので「家族だから言わなくてもわかるでしょ?」ではなくて、「言っても分からないことはたくさんあるから、せめて言ってね」と(笑)。

peco:私はryuchellに、「どれだけ“わかってあげたい”と思っていても100パーセントわかることはきっとないけど、“わかりたい”“寄り添いたい”と思っている気持ちだけはわかってほしい」ということは、すごく伝えていました。

ryuchellがいたときって、私が息子のことをガミガミと言うから(ryuchellが)“いい逃げ道”になってくれるだろうなと思っていたんです。とはいえ今、ryuchellの代わりになろうとは思ってはいないんですけど、何かあったときに“ママに言えば大丈夫だ”と思ってくれるような家族でありたいなとすごく思います。

杉山:それこそ、うちに逃げてきてもらっても構わないですよ(笑)。ぜひ遊びにきてください!

peco:ぜひ、お願いします(笑)!

<番組概要>
番組名:This is me!~ジェンダーレスと新しい家族のカタチ~
放送日時:2024年4月28日(日)26:00-27:00
MC:村田睦
ゲスト:peco、今西千尋、今西博子、杉山文野、阿部裕太朗、保井啓志

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