フリースタイルピアニスト・けいちゃんは、“不正解のない音楽”で日本の音楽シーンを引っ張っていく

街に置かれたピアノで披露する、超絶技巧の演奏──ストリートピアノ動画で一躍注目を集めた、けいちゃん。YouTubeチャンネルは登録者数100 万人を突破。自身を「フリースタイルピアニスト」と形容する彼は、今年6月に初のオリジナルアルバム『殻落箱』をリリースし、アーティストとしての今後がますます期待される。

今回はそんなけいちゃんに、音楽ルーツやアルバム制作の裏側、ファンへの想いをインタビュー。10月10日(日)に出演する「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI(通称イノフェス)」への意気込みも聞いた。

洗練されたピアノサウンド。音楽ルーツはクラシックだけじゃなく…

――まずは、けいちゃんの最近の活動ついて伺います。6月30日に初のオリジナルアルバム『殻落箱』をリリースされましたね。このアルバムには多種多様な楽曲が収録され、けいちゃんの音楽的な奥行きの広さに驚きました。楽曲の制作はどのように行われているんですか?

けいちゃん:基本的には、歌ものもインストの曲も僕が最初、ピアノで作曲をします。それからある程度のベースやドラムを打ち込んで、アレンジャーさんにお渡しして、一緒にブラッシュアップする形で今回は制作を進めました。

――けいちゃんの楽曲はギターやベース、ドラムなどピアノ以外の楽器もしっかりと鳴っている印象でした。クラシックだけでなくポップスやジャズなどいろいろな音楽のエッセンスを感じます。これまでどんな音楽を聴かれてきたんですか?

けいちゃん:幼少期、特に小学生の頃はほとんどクラシック。9割クラシック、残りの1割でSMAPやKAT-TUNといった、いわゆるポップスを聴いていました。中学生になってからボカロやバンドサウンドに出会うんです。RADWIMPSやUVERworldをよく聴いてましたね。そして高校でジャズを聴くようになる流れですかね。

――納得しました。洗練されたピアノサウンドが中心にありながらも、しっかりとポピュラリティーを意識しているなと思ったんですよね。

けいちゃん:そうですね。今回のアルバムはクラシックやポップス、ジャズなどの音楽エッセンスが混ざり合ったサウンドになっているのかもしれません。

作詞にも挑戦!「不自然な日本語をあえて使ってみたら…」

――今回のアルバムでは、作詞にも挑戦されましたね。

けいちゃん:そうなんです。作詞は初めてで、最初はどうやって書いたらいいのか全然わからなくて……。いろんな歌の歌詞を見たりしながら、パッと思いついた言葉を連想ゲームのように出していきました。不自然な日本語をあえて使ってみたら少しオシャレになるかなと、言葉を出していくと意外と楽しくて(笑)。楽しいと感じてからは、意外とすんなりと言葉が出てくるようになりましたね。

――詞を書くときは、メロディーをもとに言葉を想像していく?

けいちゃん:基本的にはそうですね。言葉先行ではなくて、あるメロディーに突然、言葉がふと出てくることがあって、それをキッカケにバーって言葉を広げていく感じです。

――リリースして少し時間が経ちましたが、けいちゃんが特に気に入ってる曲を教えてください。

けいちゃん:気に入っているのは、「パスピエ」と「√Future」ですかね。「√Future」は、”THEフリースタイルピアノ“って感じがしていて。ピアニストなんだけど歌も歌うという自分の活動の根源にあるものが表現できたというか、今の僕のすべてが詰まっているような感じがしています。「パスピエ」は単純にメロディーが好きなのと、制作にいちばん時間が掛かったので愛着が湧いていますね。

「パスピエ」けいちゃん MV

「√Future」けいちゃん MV

フリースタイルピアノには正解がない

――活動当初から表現の場でYouTubeを選択するなど、常に先を見据えて行動されているという印象があるんですが、なぜYouTubeだったのでしょう。

けいちゃん:ピアニストになるのが小さい頃からの夢で、今の時代はネットを使うのがいちばん有名になる近道だろうなと常々思っていたんです。そんなときにYouTubeを観ていたら、ストリートでピアノを弾いている動画見つけて、「これだ!」って。僕もやってみようと思って、演奏した動画をアップしたのが、スタートなんです。

――クラシックというフィールドからストリートという自由なフィールドに惹かれた理由はありますか?

けいちゃん:“フリースタイルピアノ”って自称し始めたのは、YouTubeを始めて3ヶ月くらいだったと思うんですけど、クラシックって再現の芸術なんですよね。例えば、楽譜に忠実に演奏しなければならないとか。でも“フリースタイルピアノ”には正解がない。気楽に自分の気持ちを解放できるのが楽しいなって思ったんです。もちろんクラシックも大好きだし、洗練された音楽も好きなんですけど、そういう不正解がない音楽が自分にいちばん合ってるかなって。

【ストリートピアノ】駅で「紅蓮華」を弾いたらこども達が合唱して奇跡的な演奏になった!?

――なるほど。最近はけいちゃんをはじめ、いろんなピアニストの方がYouTubeやバラエティ番組などに出演し、世に出てきています。個人的にはピアノという楽器がより身近な存在になったと思っているんですが、この状況についてはどう考えていますか?

けいちゃん:ピアノという楽器をこんなにも好きでいてくれる人がいるんだという事実はすごくうれしいですね。ここ最近、急激に人気が出ていて「ピアノをはじめましたと」いう声も多くいただいていて、本当にうれしいなって思います。

――ピアノがより身近になった今、未来について見据えているものはありますか?

けいちゃん:ネットと寄り添っていくことがこれからの時代の在り方だと思うので、ネットを通じて皆さんと一緒に成長していくスタイルというのが良いのかなと思っていますね。この規模感をどんどん大きくしていくために、“YouTuberとしてのけいちゃん”と“アーティストとしてのけいちゃん”をうまく両立しながら日本の音楽シーンを引っ張っていける存在になりたいなとは思っています。

自分の音楽で人を救うことができる―ファンとの繋がりで得た気づき

――「ネットを通じて皆さんと一緒に成長していく」とおっしゃいましたが、これまでの活動を経て、ファンの方へどんな想いを抱かれていますか?

けいちゃん:ファンの人の力は本当にすごくて。本当は一人ひとりに感謝の気持ちを届けたいんですけど、なかなか難しいし、うまく伝わらないこととかもあると思うんです。ファンの方たちがいないと今の僕はいないし、ファンの人たちの支えがあるからこそ喜ばせたいと思えるし、活動を頑張れるというのがすごくあって。これからもずっと恩返ししていきたいので、一緒に歩んでくれたらうれしいなって思っていますね。

――ちなみに、YouTubeのコメントを読んだりはしますか?

けいちゃん:読みますよ!

――それは、ファンの方もうれしいですね! これまでで印象に残ったコメントはありますか?

けいちゃん:センシティブな内容になっちゃうけど、以前生きるのがつらいと言っていた方が「けいちゃんのピアノを聴いて、ちょっと心を改めました」というコメントを残してくれていて。そのコメントを見たときは、僕が音楽をやることで人の命を救えるのかって。自分に対して言われたことなんですけど、すごいなって思いました。

――それはすごいな。それだけ、けいちゃんの音楽が心に響いたってことですもんね。

けいちゃん:本当に、すごいことですよね!

テクノロジーと音楽の組み合わせで広がる可能性

――そして、今回「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI(通称イノフェス)」に出演されますね。このフェスでは最新テクノロジーを駆使したライブパフォーマンスやスタートアップによるテクノロジー体験エリアなどを楽しむことができます。ちなみに、けいちゃんが最近気になっているテクノロジー、イノベーティブなことってあったりしますか?

けいちゃん:ARとかVRとかですかね。僕自身、日常で使っているわけじゃないですけど、とても興味があって。今、コロナ禍でライブが無観客になったりしている中で、仮想空間でライブができたら面白いなって思うんですよね。

――なるほど。仮想空間にライブ会場を作ってしまうと。けいちゃんと仮想空間って親和性が高い気がしますね。例えば、ボカロ曲で初音ミクが登場してもいいわけだし。

けいちゃん:仮想空間でのライブならコロナの感染とかも気にならないと思うんですよ。確かに、初音ミクが登場しても面白そう!

――あとは、当日けいちゃんが演奏するローランドのピアノはかなりテクノロジーなモデルですよね?

けいちゃん:そうですよね。正直こんなスタイリッシュなピアノは見たことがないです。カッコいい見た目なのでさぞかしカッコよく僕を写してくれるだろうって思って、楽しみで仕方ないですね(笑)。



――10月10日(日)には、けいちゃんの他にも多くのアーティストが出演します。気になっているアーティストは?

けいちゃん:本当に多種多様な方が出演されるので、ご一緒するのがすごく楽しみですし、パフォーマンスを観ることで勉強にもなるから早く観たいなって思っています。特に楽しみなのは、新しい学校のリーダーズさん、Novel CoreさんやSKY-HIさんも。SKY-HIさんの早口ラップ、すごく好きなんです。

――それでは最後に、当日はどんなライブにしたいと考えていますか?

けいちゃん:ピアノの魅力を最大限に活かせるライブにはしようと思っていて。こういうフェスだから僕のことを知らないお客さんもたくさんいると思うので、そういう方にひとりでも多く、「ピアノという楽器ひとつでこんなにたくさんの音楽が表現できるんだよ」ということを伝えられたらいいなと思っています。

「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI」は、10月9日(土)、10日(日)に開催。現在オンラインチケット(2日視聴可/¥1,980税込)が好評発売中。けいちゃんは、10日(日)に出演する。10日(日)はほかにも、小室哲哉、SKY-HI 、BE:FIRST、Novel Core、新しい学校のリーダーズなどが出演。詳細は公式サイト(https://www.j-wave.co.jp/iwf2021/)まで。

(取材・文=笹谷淳介)
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Coldplay×BTSの初タッグ曲が2位!制作ドキュメンタリーも公開中【最新チャート】

J-WAVEで放送中の番組『SAISON CARD TOKIO HOT 100』で、Oslo Ibrahimの『Baby Don’t Let Me Go』が1位を獲得した。

このチャートは、J-WAVE全番組のオンエア、番組サイトのVOTEボタンから寄せられたリスナーズポイント、都内主要CDショップのセールデータ、各音楽配信サブスクリプションサービスのストリーミング回数に基づくランキングデータ、以上4つのデータをもとにポイント計算。番組では世界の音楽シーンからJ-WAVEが厳選した100曲をカウントダウン。ここでは10月3日(日)付のチャートを紹介!

10位:桑田佳祐『Soulコブラツイスト~魂の悶絶』

桑田は10月6日(水)にソロデビュー34周年の節目を迎える。サザンオールスターズとしては1978年の『勝手にシンドバッド』でデビューしたため、デビュー43周年となる。まだまだエネルギッシュな桑田は現在ニューEPを引っ提げ全国ツアー中で、大みそかの横浜アリーナ公演まで続く。

9位:TENDRE feat. SIRUP『ENDLESS』

9月29日にメジャーファーストアルバム『IMAGINE』をリリースしたTENDREは、同日リリースを記念してYouTubeで生配信ライブを開催。TENDREの歌声とグランドピアノのみという構成で、アルバムの収録曲を中心におよそ1時間30分にわたっておこなわれたライブ。TENDREのオフィシャルYouTubeチャンネルにアーカイブされているので、見逃した人はぜひチェックしてみては。

8位:LISA from BLACKPINK『LALISA』

BLACKPINK唯一のタイ出身のメンバーLISA。世界はもちろん、地元タイでは絶大な人気を誇っている。国民だけでなく、タイ政府もLISAの活躍を「世界にタイのいいイメージを広めてくれてありがとう」と称賛。この曲のミュージックビデオでは、タイのきらびやかな民族衣装に身を包んだシーンも入っている。さらにLISAは現在、タイでK-POPダンスアカデミーを設立することを計画しているのだとか。実現したらタイから第2、第3のLISAが誕生するかも。

7位:aiko『食べた愛』

『食べた愛』はaikoの41枚目のシングル。aikoはオフィシャルサイトでこの曲について「片想いの曲ではあるんですけど、せつなくて苦しい感情ではなく、相手のことを考えている時間を楽しむ気持ちを書きたかったんですよね。夜中に相手のことを思うと、心の中にいろいろな色が浮かんできてすごく楽しいし、そういうときってだいたいポテチを食べてるなと思って(笑)」とコメント。歌詞は冒頭の部分から一気に書きあげていったのだとか。

6位:butaji『free me』

butajiはシンガーソングライター藤原 幹によるソロユニット。この曲のアレンジはtofubeatsが手がけている。小さい頃からバイオリンを習っていて、クラシックに慣れ親しんでいたbutaji。小学生のころに初めて買ったCDは辛島美登里の『愛すること』だったそう。butajiは10月10日(日)の『TOKIO HOT 100』にゲスト出演する。

5位:Anderson .Paak『Fire In The Sky』

『Fire In The Sky』はただいま大ヒット中のマーベル・スタジオ映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のEDソング。マーベル・スタジオ初のアジア系ヒーローが活躍する作品で、中国系カナダ人のシム・リウが主演を務め、マーシャルアーツ全開のアクションシーンが見どころ。アメリカ国内での興行収入は2億ドルを突破して今年1番のヒットとなったものの、シムが2017年のインタビューで中国を批判したことによって上映が認められず、同映画は現在に至るまで中国で公開されていないため、世界での興行は伸び悩んでいる。

4位:Ed Sheeran『Shivers』

Edは11月に待望のニューアルバム『=』をリリース。アルバムを引っ提げたツアーが2022年4月からスタートする。アイルランドのダブリンからスタートし、Edの地元イギリスを周ってからヨーロッパ各国へ。もちろん会場はすべてスタジアムクラス。まだ発表されていないが恐らく北米も周ると思われ、今後状況が許せばアジアを訪れる可能性もあるとのこと。2017年から2019年のツアーでは、史上最高となるおよそ850億円の興行収入をたたき出しただけに、今回も期待は高そうだ。

3位:藤井 風『燃えよ』

藤井は10月2日に開催した横浜アリーナ公演を皮切りに「Fujii Kaze “HELP EVER ARENA TOUR”」がスタート。『燃えよ』にVOTEした人たちからは「風くん、もうすぐツアーが始まるね。頑張ってね、神戸で会えるのを楽しみにしています」「代々木体育館のライブ待ちきれません!」「藤井 風さん大好きです! アリーナツアーで、初めて生で聴けるのをとっても楽しみにしています」といったコメントが寄せられた。

2位:Coldplay × BTS『My Universe』

イギリスが世界に誇るビッグバンドColdplayとBTSが初めてタッグを組んだコラボソングで、作詞作曲をColdplayが手掛け、韓国語の歌詞をBTS、プロデューサーは世界的ヒットメーカーMax Martinが務めている。ColdplayのフロントマンChris Martinは、コロナ禍で国境間の移動に制約が多いにもかかわらず、この曲の制作のために韓国を訪れ、BTSに実際に会ってレコーディングを実施。BTSの公式YouTubeチャンネルにはこの曲の制作ドキュメンタリー映像がアップされているので、気になる人は要チェックだ。

1位:Oslo Ibrahim『Baby Don’t Let Me Go』

インドネシアにいるOslo Ibrahimはこの日の『TOKIO HOT 100』にリモートでゲスト出演。クリスは「インドネシア、マレーシア辺りはいいミュージシャンがたくさんいる。最近アジア勢が頑張っているので、また東南アジアのほうからもいいミュージシャンがどんどん出てくるのかな」と期待を寄せた。

1位:Oslo Ibrahim『Baby Don’t Let Me Go』
2位:Coldplay × BTS『My Universe』
3位:藤井 風『燃えよ』
4位:Ed Sheeran『Shivers』
5位:Anderson .Paak『Fire In The Sky』
6位:butaji『free me』
7位:aiko『食べた愛』
8位:LISA from BLACKPINK『LALISA』
9位:TENDRE feat. SIRUP『ENDLESS』
10位:桑田佳祐『Soulコブラツイスト~魂の悶絶』


『SAISON CARD TOKIO HOT 100』ではさまざまなデータをもとに、世界の音楽シーンからJ-WAVEが厳選した100曲をカウントダウン。放送は毎週日曜の13時から。

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