村上春樹「そんなものでジャズが演奏できるのか?」バグパイプ、二胡、意外な楽器で聴くジャズの愉しみ

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月30日(日)の放送は「村上RADIO~ひと味違う楽器でほっこりとジャズを~」をオンエア。
今回の放送では、普段のジャズシーンではあまり使われることのない珍しい楽器や、クラシック、民族音楽でおなじみの楽器を取り入れたユニークなジャズミュージックをお届けしました。ブズーキやバグパイプ、二胡(にこ)といった珍しい楽器から、ウクレレ、チューバ、オーボエ、チェロまで、多彩な楽器が奏でる味わい深いジャズの魅力をお届けしました。鍵盤付きヴァイブラフォンとも言うべき珍品楽器「ヴァイボリーズ」をフィーチャーした幻の音源や、名手ジョン・コルトレーンと16歳のチューバ奏者による熱いセッションなど、村上さんこだわりのアナログ盤音源も多数オンエア。

この記事では、前半3曲について語ったパートを紹介します。


「村上RADIO」



◆Rufus Harley「Eight Miles High」

次はバグパイプです。スコットランドの兵隊がキルトをはいて吹いている、例のやつです。そんなものでジャズが演奏できるのか? と首をひねられるかもしれませんが、ちゃんとできちゃうんです。演奏しているルーファス・ハーレイさんは黒人のバグパイプ・プレイヤーで、何枚かアルバムを出しています。

彼はフィラデルフィアの貧しい地区で育ったのですが、1963年にジョン・F・ケネディの葬儀の行列で、バグパイプが演奏されるのを聴いて、その音に取りつかれました。そして苦労して楽器を手に入れ、周りのみんなに迷惑がられながらも練習を重ねて、ジャズ・バグパイプという新しい分野を開拓しました。

聴いてください。「霧の8マイル(Eight Miles High)」、バーズのヒット曲ですね。バックはエリック・ゲイル、リチャード・ティー、チャック・レイニーといった豪華な顔ぶれです。

ハーレイさんがアパートの部屋で練習していると、近所から「うるさい!」と苦情が出て、警官が来たので、ハーレイさんは楽器を隠して「黒人がバグパイプなんか吹きますか?」と言ったそう。そうしたら警察も「そうだよな……」と言って帰っていった、という逸話が書いてありました(笑)。

◆Wei Wei Wuu「Do You Know The Way To San Jose?」

次は二胡(にこ)です。二胡、ご存じですか? 中国の伝統的な楽器で、2本の弦を弓で弾きます。胴の部分が六角形になっています。独特の音色を持つ楽器ですね。悠久の時の流れを思わせるような趣(おもむ)きがあります。名手、ウェイウェイ・ウーさんがバート・バカラックの「サン・ホセへの道」を演奏します。

Do You Know The Way To San Jose?

バカラックと二胡、これが不思議に合っちゃうんです。

◆Leonard Feather's West Coast Jazzmen 「Bluesology」

次なる楽器はヴァイボリーズです。といっても、ヴァイボリーズというのがどんな楽器なのかご存じの方はほとんどおられないと思います。簡単に言ってしまえば、ヴァイブラフォンを鍵盤で弾けるように改造したのがヴァイボリーズです。ヴァイブとピアノのアイボリー(象牙の鍵盤)を組み合わせた造語ですね。

作った本人は「これは画期的な新楽器だ!」と思ったのでしょうが、残念ながら一般的にはまったく普及しませんでした。しかし、ただ1枚、このヴァイボリーズを全面的にフィーチャーしたアルバムが作られました。珍品といえば珍品なんですが、演奏者の顔ぶれが素晴らしいんです。

今日おかけする「ブルーソロジー」では、なんとケニー・ドリューがヴァイボリーズを演奏し、そのバックでソニー・クラークがピアノを弾くという超豪華な組み合わせが実現しています。アナログ盤で聴いてください。これ、CD化はされていないと思います。曲はミルト・ジャクソンが作曲したブルーズの名曲、「ブルーソロジー」です。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ひと味違う楽器でほっこりとジャズを~
放送日時:8月30日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
村上RADIO
放送局:TOKYO FM
放送日時:2026年8月30日 日曜日 19時00分~19時55分
公式X

※該当回の聴取期間は終了しました。

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「『ノルウェイの森』にも登場させました」村上春樹が愛する『アカデミー賞』落選曲とは?

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。9月27日(日)の放送は「村上RADIO~くたばれ、アカデミー賞~」をオンエア。今回の放送では、「アカデミー主題歌賞にノミネートされながら、惜しくも受賞を逃した名曲」を特集。受賞作の影に隠れながらも今なお世界中で愛され続ける1960年代の名曲を中心に、村上さんこだわりのアナログ盤音源でお届けしました。ヘンリー・マンシーニやバート・バカラックといった巨匠たちの楽曲をはじめ、賞の裏側にあるドラマや村上さん自身の思い出、さらには昨今話題の「AIと創作活動」についての貴重なトークまで、時代を超えて愛される音楽の魅力にあふれたひとときとなりました。
この記事では、中盤4曲について語ったパートを紹介します。


「村上RADIO」



◆Chris Connor「Dear Heart」

1964年もまたもや、ヘンリー・マンシーニさんが涙を呑(の)みます。彼の『ディア・ハート』が、『メリー・ポピンズ』の主題歌「チム・チム・チェリー」に負けちゃったんです。ディズニー映画『メリー・ポピンズ』は映画として大ヒットしたので、好意的な票が集まったのでしょうが、僕の推しは『ディア・ハート』の方だったので、ちょっとがっかりしました。
『ディア・ハート』という映画自体は大したものじゃなくて、本国でもあまり評判にもならなかったし、日本では公開もされませんでした。そのせいで損をしたかもしれませんね。でも良い曲です。『ノルウェイの森』という僕の小説の中にも、この曲をちょこっと登場させたと記憶しています。
マンシーニの作るメロディーって、チャーミングで美しいんだけど、そこにはいつも仄(ほの)かな悲しみのようなものが含まれています。クリス・コナーがボサノヴァのリズムで落選曲『ディア・ハート』を歌います。

◆Astrud Gilberto「Love Theme From "The Sandpiper" (The Shadow Of Your Smile)」
◆Chris Montez「I Will Wait For You」


さて、1965年にはジョニー・マンデルが作った『いそしぎ』が受賞しました。まずは『いそしぎ』の主題曲「The Shadow of Your Smile」を聴いてください。歌うのはアストラッド・ジルベルトです。
「The Shadow of Your Smile」、これは文句ない名曲です。ケチの付けようはありません。しかしミシェル・ルグランが『シェルブールの雨傘』の主題歌「I Will Wait For You(あなたを待っている)」で落選したのは、やはり気の毒でした。とても素敵な曲なんですけどね。そしてまた映画としては、エリザベス・テイラーとリチャード・バートンのカップルが共演した大甘のラブ・ロマンス『いそしぎ』よりは、『シェルブールの雨傘』の方がずっと上だとぼくは個人的に思いますが。
クリス・モンテスが歌います。ミシェル・ルグラン作曲の落選曲「I Will Wait For You」。

◆Rita Reys「Alfie」

1966年のアカデミー主題歌賞はジョン・バリーの作曲した『野生のエルザ』がとりました。「Born Free」、美しいメロディーですね。
でも賢い雌(めす)ライオンがこの受賞を背後からそっと支えているような気がしてなりません。エルザ、素敵でしたものね。
この年、エルザのおかげで受賞を逃したのは、バート・バカラックの名曲『アルフィー』でした。僕はこの『アルフィー』という映画が好きでした。小ぶりだけど味があってね。若き日のマイケル・ケインが調子のいい遊び人、アルフィーをとても魅力的に演じていました。オランダ人のジャズ歌手、リタ・ライスが落選曲「アルフィー」を歌います。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~くたばれ、アカデミー賞~
放送日時:9月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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