日本中に元気を届けたい…甲子園が「ミラクル旭実」の勝利に沸いた夏

1995年のミラクル旭実を語る卓田和広アナ(HBC) ©HBC

8月19日(月)から、HBCラジオは「夏の大感謝週間」をスタートさせる。今年の感謝週間のテーマは“この夏、野球愛が止まらない”。そこでファイターズ中継の実況アナウンサー陣が、忘れられない夏の野球の思い出を語った。第3回は、全国高校野球選手権大会(高校野球)をテーマに選んだ「音タクベストテン!」(月 午後6時30分~7時)のパーソナリティも担当する卓田和広アナウンサーのインタビューだ。

19日から夏の大感謝週間を迎えるHBCラジオ『音タクベストテン!』(月18:30-19:00)の卓田和広アナ ©HBC

今年も甲子園では、全国の高校球児が熱戦を繰り広げている。過去に甲子園で活躍した北海道勢として記憶に残るのが、1995年に出場した旭川実業高校の快進撃だ。この年は年明けに阪神・淡路大震災、続いて地下鉄サリン事件が勃発。北海道では函館空港でハイジャック事件が起きるなど、日本全体が不安に覆われた年だった。

19日から夏の大感謝週間を迎えるHBCラジオ『音タクベストテン!』(月18:30-19:00)の卓田和広アナ ©HBC

そんな中、夏の甲子園に爽やかな旋風を巻き起こし、「ミラクル旭実」と呼ばれたのが、旭川実業高校の野球部だった。『音タクベストテン』の卓田和広アナウンサーは、その夏、現地リポーターとして甲子園のアルプススタンドにいた。「倒壊した阪神高速道路はまだ復旧していなくて、中継拠点にしていた球場隣の宿舎も休業中だったのですが、僕ら取材班のために特別に建物を開けてくれて。涙が出るほど嬉しかったです」

1995年、甲子園のアルプススタンドからリポートした卓田和広アナ ©HBC

春夏通じて甲子園初出場の旭実は、1回戦で古豪の松山商業を破り、鹿児島商業との2回戦に臨んでいた。「序盤から劣勢でも必死に食らいつく旭実のプレーを目の当たりにするうちに、徐々に球場全体の人たちが旭実を応援し始めました」と卓田アナ。

19日から夏の大感謝週間を迎えるHBCラジオ『音タクベストテン!』(月18:30-19:00)の卓田和広アナ ©HBC

そして、試合は運命の9回を迎える。1点差の2死走者なしから三塁手の前に転がった平凡なゴロは、グラブの直前でイレギュラーバウンドして外野に抜けた。それを足掛かりに旭実は2点を奪い、奇跡の逆転勝ちを収めたのだった。

アルプススタンドが沸く中、卓田アナは「見えない力が彼らを後押ししたのを感じた」という。当時「ミラクル」と評された快進撃で、旭実はベスト8まで進み、北海道のみならず、日本中の人々を元気づけたのだった。

当時を振り返って、卓田アナは「野球は何が起こるかわからない…私は、あの夏それを目の当たりにした。その経験があって、いまもファイターズの試合中継の時には『予断をもって実況をしない』と肝に銘じています」と語った。あの強烈な記憶は、いまもHBCラジオの野球中継に息づいているようだ。

ミラクル旭実を伝える当日スポーツ紙を手にする卓田和広アナ ©HBC
音タクベストテン!
放送局:HBCラジオ
放送日時:毎週月曜 18時30分~19時00分
出演者:卓田和広
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

亡き夫からバトン受け継ぎ叶えた夢「EVのハーレー」

桜から新緑の季節、ツーリングにはたまらないシーズンがやってきました。なかでも、バイク好きの方にとっての憧れといえば、「ハーレーダビッドソン」! 人生で一度は乗ってみたいと思う方もいることでしょう。

今回は、この「ハーレー」のEV(電動)化に成功した、あるご夫婦のお話です。

上野悠子さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

栃木県宇都宮市の郊外に、「ハイフィールド」というバイクのカスタムショップがあります。代表の上野悠子さんは、1978年生まれの46歳。2018年に結ばれたご主人の誠さんが開いたお店を受け継ぎました。

アメリカンカルチャーが好きだった誠さんは、「ハーレー」を取り扱うお店に勤めた後、20年ほど前に独立して、27歳のときに「ハイフィールド」を開きました。“カッコいいバイク”にこだわって、一時は海外での事業展開も進め、東南アジアと日本を行ったり来たりしながら、こんな夢を語っていました。

「アジアの国々を見ていると、日本のバイクも、今に電気の時代が来る。タバコだって、煙をもくもく上げて吸っていたのが、すっかり電子タバコになっただろう。きっと、同じことがガソリンエンジンでも起こるから、ハーレーをEV化したいんだ!」

しかし、まちの小さなバイク屋さんには、技術もお金もありません。誠さんは、サポートしてくれるパートナーを探して、全国を走り回りました。

そして、横浜の自動車技術会社と繋がり、経済産業省の補助金の存在を知ります。ちょうどお店も移転して、『さあ、これから』という時に誠さんは体の不調を訴えました。

バイクのカスタムショップ「ハイフィールド」

「じつはずっと胃がムカムカするんだ。東南アジアで辛いものばかり食べていたからかな」

大きな病院で告げられた病名は「胃がん」、それもステージ4でした。

「ステージ4だって、3年生きた人もいるというじゃないか。俺の体、あと3年持ってくれ。そうすれば絶対、ハーレーをEVにできる!」

誠さんはそう言って、つらい抗がん剤治療を受けながら、仕事を続けました。2022年8月には、経済産業省に補助金の申請を行って、資金調達に望みをかけます。

でも、その年の11月、誠さんは病状が急変、力尽きました。まだ43歳の若さでした。

誠さんの葬儀が終わると、奥様の悠子さんは、ご縁のあった方々を一人ひとり訪ねました。行く先々で誠さんが愛され、ハーレーのEV化に強い意欲を持っていたことを知ります。

そんな悠子さんのもとへ、経済産業省から「補助金採択」の知らせが届きました。事情を知った事務局の方からは辞退を勧められましたが、悠子さんは迷いませんでした。

上野悠子さん

「彼がずっとやりたかったハーレーのEV化、やれるところまでやってみます!」

思い切って一歩を踏み出した悠子さんですが、実はバイクの免許も持っていなければ、車体の仕組みも知りませんでした。まず『バイクに乗る人の気持ちを知ろう』と教習所へ通って、普通二輪の免許を取ります。バイクの仕組みについても、お店のスタッフの方に1から教えてもらいました。

ただ、肝心のEV化した「ハーレー」の設計図は、誠さんの頭の中にしかありませんでした。悠子さんは、改めて取引のあった人を訪ねて、誠さんとどんなことを話したのか、手掛かりを求めて、少しずつ聞き取り調査を進めて、概要を把握していきます。すると、エンジンをモーターに置き換えることで話が進んでいたことが分かってきました。

とはいえ、単純にエンジンをモーターに置き換えてしまうと、排気管やギア操作など、バイクが好きな皆さんのこだわりの多くが失われてしまいます。デザイン、配置、安全性、操作性、重量など、試作を繰り返すたび、空にいる誠さんに「これでいいの?」と問いかけますが……、もちろん、返事はありません。

『そうか、彼はこの決断、決定を、毎日毎日1人で繰り返していたんだ』

いつしかそう思えるようになった悠子さんは、苦しい気持ちが、次第に誠さんへのより強い尊敬の気持ちに変わっていきました。

EV化したハーレー(画像提供:株式会社チームハイフィールド)

そして数々の苦労を乗り越えて、2024年2月、ついにEV化した「ハーレー」が完成。長年、誠さんと仕事をしてきたスタッフも「これは面白い」と太鼓判を押してくれました。

面白い理由、それはズバリ「音」です。EV化であのエンジンの爆音は無くなり、ほぼベルトとタイヤの音だけが響き渡ります。実際に走らせると、鳥の鳴き声や街の音が耳に入ってきて、とても楽しいという。そんなスタッフの方の言葉に自信を持った悠子さんは、こう話してくれました。

「静かなハーレーなんて……、とおっしゃる方は少なくありません。でも、いつか爆音を鳴らして、排気を撒きながら走ることがカッコ悪くなるかもしれない。その時の選択肢の一つとして、必要とされる日が来ると信じています」

大きな音と共に、自分だけの世界を楽しむツーリングから、風や音を感じて、周りの世界と繋がる楽しさも秘めたツーリングへ。上野誠さん・悠子さんが夫婦でつないで生まれた「EVのハーレー」は、もしかしたら、次の時代の“カッコいいバイク”になるかもしれません。

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