夏、それは選手を思う大切な季節

きょう19日から夏の大感謝週間をスタートさせたHBCラジオ『ファイターズ DE ナイト!!』のパ-ソナリティ・斉藤こずゑ ©HBC

きょう19日(月)から、HBCラジオはリスナーに向けての恒例企画「夏の大感謝週間」をスタートさせた。今年の感謝週間のテーマは“この夏、野球愛が止まらない”。それにあわせて、『ファイターズDEナイト』(月―金 午後9時~10時)のパーソナリティで、文春オンラインのコラムニストを務める斉藤こずゑさんが、ファイターズの選手に向けてのエッセイを綴ってくれた。球場から離れたラジオスタジオから、いつも選手を気づかい、愛情を注ぐ。彼女のあふれるばかりの思いが詰まったメッセージだ。

斉藤こずゑの『ファイターズ DE ナイト!!』は月ー金 午後9時~午後10時放送 ©HBC

平日ナイター、私はHBCのスタジオにいます。スタジアムの夏の空気や気温は放送席と中継を結ぶことで感じています。解説者さんと実況さんとの会話の中から受け取るのです。それはドーム球場でも変わりません。夏のトーン、夏にしかない話題がある、そこに私は風を感じています。

 

夏は野球ファンには忙しい季節です。待ちに待った開幕、試合があるというそれだけで嬉しい時期が過ぎて、交流戦あたりから感じてくる今シーズンのチームの傾向。そうなるとファンはじっとしていられなくなって、自分なりの分析を繰り広げ始めます。

 

「まだ気にする時期じゃない」なんて、もう言っている場合じゃなくなる順位表。ゲーム差という名の数字と、ここから先の試合スケジュールを毎晩のように交互に見つめながら、優勝に向けて自分は何をどうすればいいのかと悶えるのです。

 

選手の体も心配な季節。暑さも手伝って疲れが出てくるのが夏。この時期は何かのタイミングで怪我などすれば、シーズン中には帰って来られない可能性もあります。屋外球場で雨が降れば、どうか何事も起きないようにと、場合によっては勝ち負けよりそちらを願うことすらあります。

 

もうここまでで十分に忙しいのに、夏は朝から気持ちはすっかりスカウトです。そう、甲子園では未来のファイターズ戦士になるかもしれない金の卵たちが酷暑の中、一生懸命に野球をしているのです。地方大会から追いかけるとその忙しさはもっと長い期間となります。

 

汗、戸惑い、挫折、笑顔、栄光、涙、、、高校野球には様々なものが詰まっています。そして、毎年思います。いまファイターズにいる選手たちはみんなここを通って来たのだと。このすべてを感じ、「一生懸命」という海を必死で泳いできたんだと。その海原は今もまだまだ広がっているのだと。

 

夏の暑さは改めて選手を尊敬するきっかけをくれます。外国人選手のハイスクール時代を勝手に想像するのも楽しい。もしかすると、ファンが選手ひとりひとりのことを一番たくさん思う季節なのかもしれません。

 

今夜も私はスタジオでスタジアムの放送席と結びながら風を感じます。選手の「一生懸命」を思いながら。

©HBC
ファイターズDEナイト!
放送局:HBCラジオ
放送日時:毎週月曜~金曜 21時00分~22時00分
出演者:斉藤こずゑ
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

亡き夫からバトン受け継ぎ叶えた夢「EVのハーレー」

桜から新緑の季節、ツーリングにはたまらないシーズンがやってきました。なかでも、バイク好きの方にとっての憧れといえば、「ハーレーダビッドソン」! 人生で一度は乗ってみたいと思う方もいることでしょう。

今回は、この「ハーレー」のEV(電動)化に成功した、あるご夫婦のお話です。

上野悠子さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

栃木県宇都宮市の郊外に、「ハイフィールド」というバイクのカスタムショップがあります。代表の上野悠子さんは、1978年生まれの46歳。2018年に結ばれたご主人の誠さんが開いたお店を受け継ぎました。

アメリカンカルチャーが好きだった誠さんは、「ハーレー」を取り扱うお店に勤めた後、20年ほど前に独立して、27歳のときに「ハイフィールド」を開きました。“カッコいいバイク”にこだわって、一時は海外での事業展開も進め、東南アジアと日本を行ったり来たりしながら、こんな夢を語っていました。

「アジアの国々を見ていると、日本のバイクも、今に電気の時代が来る。タバコだって、煙をもくもく上げて吸っていたのが、すっかり電子タバコになっただろう。きっと、同じことがガソリンエンジンでも起こるから、ハーレーをEV化したいんだ!」

しかし、まちの小さなバイク屋さんには、技術もお金もありません。誠さんは、サポートしてくれるパートナーを探して、全国を走り回りました。

そして、横浜の自動車技術会社と繋がり、経済産業省の補助金の存在を知ります。ちょうどお店も移転して、『さあ、これから』という時に誠さんは体の不調を訴えました。

バイクのカスタムショップ「ハイフィールド」

「じつはずっと胃がムカムカするんだ。東南アジアで辛いものばかり食べていたからかな」

大きな病院で告げられた病名は「胃がん」、それもステージ4でした。

「ステージ4だって、3年生きた人もいるというじゃないか。俺の体、あと3年持ってくれ。そうすれば絶対、ハーレーをEVにできる!」

誠さんはそう言って、つらい抗がん剤治療を受けながら、仕事を続けました。2022年8月には、経済産業省に補助金の申請を行って、資金調達に望みをかけます。

でも、その年の11月、誠さんは病状が急変、力尽きました。まだ43歳の若さでした。

誠さんの葬儀が終わると、奥様の悠子さんは、ご縁のあった方々を一人ひとり訪ねました。行く先々で誠さんが愛され、ハーレーのEV化に強い意欲を持っていたことを知ります。

そんな悠子さんのもとへ、経済産業省から「補助金採択」の知らせが届きました。事情を知った事務局の方からは辞退を勧められましたが、悠子さんは迷いませんでした。

上野悠子さん

「彼がずっとやりたかったハーレーのEV化、やれるところまでやってみます!」

思い切って一歩を踏み出した悠子さんですが、実はバイクの免許も持っていなければ、車体の仕組みも知りませんでした。まず『バイクに乗る人の気持ちを知ろう』と教習所へ通って、普通二輪の免許を取ります。バイクの仕組みについても、お店のスタッフの方に1から教えてもらいました。

ただ、肝心のEV化した「ハーレー」の設計図は、誠さんの頭の中にしかありませんでした。悠子さんは、改めて取引のあった人を訪ねて、誠さんとどんなことを話したのか、手掛かりを求めて、少しずつ聞き取り調査を進めて、概要を把握していきます。すると、エンジンをモーターに置き換えることで話が進んでいたことが分かってきました。

とはいえ、単純にエンジンをモーターに置き換えてしまうと、排気管やギア操作など、バイクが好きな皆さんのこだわりの多くが失われてしまいます。デザイン、配置、安全性、操作性、重量など、試作を繰り返すたび、空にいる誠さんに「これでいいの?」と問いかけますが……、もちろん、返事はありません。

『そうか、彼はこの決断、決定を、毎日毎日1人で繰り返していたんだ』

いつしかそう思えるようになった悠子さんは、苦しい気持ちが、次第に誠さんへのより強い尊敬の気持ちに変わっていきました。

EV化したハーレー(画像提供:株式会社チームハイフィールド)

そして数々の苦労を乗り越えて、2024年2月、ついにEV化した「ハーレー」が完成。長年、誠さんと仕事をしてきたスタッフも「これは面白い」と太鼓判を押してくれました。

面白い理由、それはズバリ「音」です。EV化であのエンジンの爆音は無くなり、ほぼベルトとタイヤの音だけが響き渡ります。実際に走らせると、鳥の鳴き声や街の音が耳に入ってきて、とても楽しいという。そんなスタッフの方の言葉に自信を持った悠子さんは、こう話してくれました。

「静かなハーレーなんて……、とおっしゃる方は少なくありません。でも、いつか爆音を鳴らして、排気を撒きながら走ることがカッコ悪くなるかもしれない。その時の選択肢の一つとして、必要とされる日が来ると信じています」

大きな音と共に、自分だけの世界を楽しむツーリングから、風や音を感じて、周りの世界と繋がる楽しさも秘めたツーリングへ。上野誠さん・悠子さんが夫婦でつないで生まれた「EVのハーレー」は、もしかしたら、次の時代の“カッコいいバイク”になるかもしれません。

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