SAKAKI MANGOの親指ピアノ生演奏に、ピーター・バラカン感嘆
国によって名前が違う「親指ピアノ」
ピーター:「ビンテ・クライ・ベイべー」というアルバムを出していますが、これはどういう意味で?
SAKAKI:鹿児島弁で「頭きたぜ、ベイベー!」と言う意味ですね。「ビンタ」は頭という意味ですけど「頭に」で、「ビンテ」。 「きた!」で、「ビンテ・クライー!」。「ものすごく頭きたー!」って時は、「ガッチャ、ビンテきたー!」って言うんですけど、これは鹿児島の方なら若い方でもわかる人が多いです。今も一般的に鹿児島で使われることが多い。
ピーター:鹿児島は、怒ることが多いですか?
SAKAKI:そんな怒ることは・・・。人によりけり以上のことはないと思うんですけど、普通に喋っている状態が「怒っているみたい」と言われますね。せっかちというか、できるだけ唾液の消費量を少なくしているっていうか。例えば学校に行くを「がってい」って言ったり、これいくら?を「そしこでどしこ」って言ったり。
ピーター:ロシア語みたいだったね、今の。
SAKAKI:色々音がつながってくるんですよね。その辺りは面白いなと思ってるんですけど。あと音の上がり下がり。
ピーター:アルバム作っているときにも、怒っていました?
SAKAKI:怒ってはいなかったですけど、プライベートで忙しくて、何かいろんなことにイケイケみたいになっていましたね。僕自身の中ではかなり、短時間に作ったアルバムです。
ピーター:これまでのジャケットとは、ちょっと雰囲気が変わっていて、半ばサイボーグのように自分の身体にピンク色の機械的なものが付いていますけど。最初YouTubeでアルバムダイジェストを聞いたんですけど、1曲が20秒くらいだったから、なんか妙な感じだな〜と思って、でもちゃんとアルバム聴いたら、とっても気に入った!
国によって名前が違う「親指ピアノ」
――元々SAKAKI MANGOさんは、ムビラというジンバブエの親指ピアノや、タンザニアのリンバを演奏していらっしゃいました。この楽器は国によって名前も違うけれど、楽器そのものの仕様も全く違うそう。
SAKAKI:全然違いますね。リンバだと箱型だったり。ジンバブエのムビラになると、板状になっていたり、弾く棒がもっと幅広かったり。それを親指で弾くことが多いから「親指ピアノって呼んどくか!」っていう感じで、総称として言っているんだと思うんですけど。
ピーター:今回はプログラミングなんかも入っていますね?特にこれをやってみたいっていうのがあったんですか?
SAKAKI:やっていく中で、前はバンドサウンドの中に混ぜていたんですが、ライブ主体で音を作っていくと、親指ピアノの音を抜いて聞かせるっていうのが、ちょっと親指ピアノの本来の音ではなくて。少し硬い音にしないと抜けが悪くなったりっていう、若干ちょっとジレンマを抱えていた部分があったのかなって思います。今やってみると、打ち込みのプログラムでやるとか、ソロで何もない状態でルーパーだけ使って、コンサートするときに、とてもストレスフリーの状態で。出したい音色がそのまま届けることができるっていう思いがあったんで、バンドでやっていた時とはだいぶ心境が違います。
ピーター:では、今ひとりで?
SAKAKI:ソロがだいぶ多いです。
親指ピアノ、修行はタンザニア?
――その後、アルバムの中からスタジオ生演奏を披露。半分以上が今、この場で録音して生でループしているそう。サンプラーとして使っていたのは、鈴の音、打ち込みのビート、あとは生で足していく演奏スタイル。「芸達者だな」とピーター。
SAKAKI MANGOさんのソロライブは小さな食堂やホール、お寺や教会など、その都度音の響きを考えて、イコライザーやリバーブの長さを調整し、一番現場の長さがよくなるようにやっているそう。サウンドチェックに比較的、時間がかかるとか。
ピーター:修行はタンザニアでしたね?リンバとかカリンバとか、ムビラ・・・。それぞれの国に行って現地で学んでますか?
SAKAKI:親指ピアノと言う総称で呼んでいるこの楽器にとても魅了されてしまって。学生の時からあちこち出向いて行って。最初は卒業論文のレポートをまとめるために、タンザニアに行ったんですけど、弾き方を覚えて、演奏方法をレポートするんですが、そうなると大学の教室で「お前弾けるんだから、弾いてみろ!」って言われて、拍手をもらって、味を占めちゃって(笑)これは研究者じゃなくて、弾く方に行った方がいいんじゃないかと思って、そのまま道を踏み外して今に至ります。
ピーター:(笑)。ゴッタンは昔から弾いているんですか?
SAKAKI:2013年から少しづつ。2013年に鹿児島でゴッタンについて調べるテレビの企画があって、そこでいろいろなところに出向いて行って、ゴッタンについて調べていっているうちに、こういういうやり方だったら僕も弾けるんじゃないかなと思ってやり出したら、すっかりもう・・・。ずーーっと、ハマっていきました。
ピーター:全部木でできていて、しかも余った木材を使っていて割と安い楽器ですか?
SAKAKI:物産館のようなところで、トマト、ピーマン、茄子、オクラ、ゴッタンって普通に並んでいます(笑)値段も13,000円で、僕が使っている楽器も13,000円なんですけど、ケースがなかったので三味線屋さんにハードケースを買いに行ったんですけど、それ、25,000円したんですよ。
ピーター:ふふふふふ(笑)
SAKAKI:形は普通の三味線に近いですが、箱の部分が本当に直角になっているものが多いです。そこは電化するためにピックアップつけたり。それが皮ではなくて板だったから色々やりやすかったんですね。しかもバチではなくて、板を人差し指の爪で弾くので、音程感が割とはっきり出るんです。三味線みたいにアタックが一番強くて、そのあと音程がちょっと聞こえてくるんじゃなくて。弾き方によっては中近東系の楽器にも寄せていける楽器です。
ピーター:DEREK TRUCKS BANDにも、その楽器紹介したいな!
――その後も、ピーター・バラカンが深く愛する古今東西の音楽談義は続き、リクエストもたっぷりと紹介。「リクエストがかかるまでメールを送り続ける!」というリスナーに苦笑いしながらも、真摯(しんし)に向き合い、音楽知識の高まる「Barakan Beat」となった。
メール:barakan@interfm.jp
ハッシュタグ: #barakanbeat
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