文豪・菊池寛が、家族の中の人間関係に焦点を当てて描いた 4つの物語「父、母、妻、子」。肉親だからこそ抱き合う、揺らぐ感情を巧みにとらえた名作!
ラジオ日本『わたしの図書室』では12月19日と26日の2週にわたり、菊池寛のオムニバス形式の小説「父、母、妻、子」を紹介。
2週目の最後には、菊池寛自身のどこかぎくしゃくした親子関係を物語る随筆「不孝」も併せて朗読する。朗読は声優界の大物・羽佐間道夫と日本テレビアナウンサー・井田由美。
【文壇の兄貴】
「父帰る」などの戯曲や小説「恩讐の彼方に」「真珠夫人」など、自ら作家として活躍する一方で、若い作家たちのために雑誌「文藝春秋」を創刊し、芥川賞、直木賞を創設した菊池寛は、大正から昭和初期にかけて、日本の文壇に君臨した大人物。
新進作家として早くから脚光を浴びた芥川龍之介とは、第一高等学校時代からの親友で文学仲間でもあった。芥川はその随筆の中で、菊池寛のことを「自分は菊池寛と一しょにいて、気づまりを感じた事は一度もない。何時も兄貴と一しょにいるような心もちがする」と書いている。しかし、そんな菊池寛も、自身の家族には他人にわからないわだかまりを持っていた。
【菊池寛の親子関係】
菊池寛が生まれたのは、代々続く高松藩(香川県)の儒学者の家。しかし、明治以降、家は没落し、生活力も野心もない父は、小学校の庶務係をしながら薄給を得て、やっとの食い扶持を稼いでいた。少年時代の菊池寛は家にお金がないため、修学旅行に行かせてもらえないばかりか、教科書も買えずに友人から借りて書き写していたほどだったという。文壇で名を馳せたのち、どこか両親と距離を置いていたことが、随筆「不孝」の中で語られる。
【作品の内容】
・「父」
まだ天下を取る前の徳川家康と、その嫡男・信康の物語
家康は武田側に通じ裏切り者となった嫡男・信康に切腹を命じる。
本当は息子を死なせたくないという親心を殺して、武士の筋道を立てた家康の苦悩を描く。
・「母」
老母の葬式で、長年の母への疑惑に苦しむ息子の物語
幼いころのある暑い夜、ふと目を覚ますと、蚊帳の中で母の向こうに寝ていたのは、確かに父ではなかった…。
・「妻」
出世する夫に少しでも寄り添おうとするけなげな妻の物語
夫が出世していくにつれて、自分とかけ離れた存在になるさみしさから、妻はあることを思いついた。
・「子」
地位も財産も失った実の父親と、街で偶然、出会った娘の物語
妾の子として生まれ、自分も芸者に出た女が、街で実の父親と再会する。
困ったときに助けてくれる力もなかった父への複雑な思いが交錯する。
・随筆「不孝」より
菊池寛が受け取った郷里の父親からの一通の手紙。そこに、父親に対して冷淡に接してきた自分の姿を見る…。
【放送内容】
★12月19日(木)・26日(木) 23:30~24:00
★作品:菊池寛作「父、母、妻、子」/随筆「不孝」より
★朗読:声優・羽佐間道夫/日本テレビアナウンサー・井田由美
- わたしの図書室
- 放送局:ラジオ日本
- 放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
- 出演者:羽佐間道夫、井田由美(日本テレビアナウンサー)
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※該当回の聴取期間は終了しました。