声優界の重鎮・日本テレビ名アナウンサーによる深夜の朗読番組『わたしの図書室』15年目を迎える。10月は特別企画として瀬戸内寂聴・五木寛之の作品を朗読

今年10月で放送15周年を迎えるラジオ日本『わたしの図書室』。森鴎外、谷崎潤一郎、太宰治といった文豪の名作から浅田次郎、宮部みゆき、帚木蓬生など人気作家の新作、また自然科学を扱ったちょっと変わったエッセーなど様々な本を、声優界の重鎮・羽佐間道夫と日本テレビの名アナウンサー・井田由美の匠の技で朗読し、聴かせる番組だ。

 

放送開始15周年を記念し、10月は現役の大物作家の作品に挑戦する。1日と8日とは、「源氏物語」に題材を得た瀬戸内寂聴の短編『髪』。放浪の僧侶が抱く黒髪にまつわる煩悩の世界を、井田由美が艶やかに朗読する。

 

15日からの3週は、五木寛之の大ロングセラー「大河の一滴」。「人生は苦しみと絶望の連続だとあきらめることから始めよう」と語りかける人生の名著。朗読は羽佐間道夫。読書の秋を耳でお楽しみいただきたい。

 

15年間、リスナーの皆さんの耳に、言葉が奏でる素敵な世界を語り続けてきた出演者二人がコメントを寄せた。

 

◆羽佐間道夫

朗読で、様々な人間を表現する『わたしの図書室』、今、放送15年目です。これからが円熟期、乞うご期待!

◆井田由美

リスナーとときめきを共有できる朗読を目指して、あっという間の15年。音にしたい作品は尽きません…。

 

なお、『わたしの図書室』の音源は、放送終了後、新宿区立戸山図書館で視覚障がい者専用のデジタル録音図書であるDAISY(デイジー)に編集され、サピエ図書館などをとおして全国の視覚障害者に無料で貸し出される。ラジオ番組がそのまま録音図書の一部として音源提供されたのは初めてのケースで、これまでに100タイトル以上の蔵書となり人気を呼んでいる。

わたしの図書室
放送局:ラジオ日本
放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
出演者:羽佐間道夫、井田由美(日本テレビアナウンサー)
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

村上春樹 AIに小説を脅かされるとは思わない……翻訳家・柴田元幸とAIについて語る

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」。11月3日(火・祝)は、特別番組として『村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~』をオンエア。今回は早稲田大学国際文学館の開館5周年を記念し、10月1日に小野記念講堂で開催された公開録音イベントの模様をお届けしました。

盟友である翻訳家の柴田元幸さんを迎え、進行役の坂本美雨さんとともに「音楽で仮定法を学ぶ」をテーマに白熱の翻訳談議を展開。ビーチ・ボーイズやエディット・ピアフなどの名曲に乗せて英語表現のニュアンスを紐解いたほか、方言・スラングの訳し方やAI時代における翻訳の未来、参加者からのQ&Aまで、言葉と文学の魅力が詰まった贅沢な時間となりました。

この記事では、この記事では中盤のトークパートの模様を紹介します。


(写真左から)坂本美雨さん、村上春樹さん、柴田元幸さん



<ステージに司会役の坂本美雨が登壇>

坂本美雨(以下、美雨)皆さんこんにちは、坂本美雨です。音楽で仮定法を学ぶ非常に勉強になりました。私も英語を話すは話すんですけど、子どもの頃に普通に会話の中で覚えていってしまったので、こういうふうに分解してというか、ifってそういうふうに使うんだ、mightってそうなんだっていう……本当に勉強になりましたけれども。さあ、皆さんからたくさん質問をいただいています。

「(ラジオネーム:ポテポテ)出版翻訳の世界の片隅でひっそり生きているものです。訳語に新しめの言葉を使うことをお二人はどう思われますか。使うとすればその範囲をどう決めていますか」

「(ラジオネーム:キノコマッシュルーム)外国語にも方言ってあると思うのですが、訳するときはどうしていらっしゃるのでしょうか。ほにゃららやでとか何々ばいみたいにすると、なんか変だし。」

というちょっと具体的な質問でしたけれどもいかがでしょうか?

村上)新しめの言葉を使うこと……。

柴田)新しめの言葉を知らないですよ。僕の中で今、翻訳者としてもうマイブームなのは、「すごく疲れた」じゃなくて「すごい疲れた」という言い方。これが僕の中ではすごい新鮮だという、それぐらい古いんです。なので、その心配はいらない。

村上)でも、いかにも新しいことを話しているというケースはありますよね。そういうニュアンスはやっぱり少し出さないといけないわけですね。

柴田)まあ、そうですね。ただ、それを単語レベルでやっていくと、その言葉はもしかしたらすぐ古びるかもしれないという心配はありますよね。

村上)例えばdissって言葉ですよね。動詞のdiss。日本語でもディスるって言いますよね。

柴田)今、言いますね。

村上)それはどうやったらいいかとか時々迷いますよね。ディスるって訳しちゃうと、なんかね……。

柴田)ダメですか?

村上)ディスるって訳すと自分が軽くなってる気がして、なんか抵抗があるんですよね。でも原文でも実際にdissって使ってるわけだから、どうしようかなと困るときはありますね。

柴田)だから、新しい言葉に限らず、自分がこの辺の言葉を使えないなと思ったら、まず自分なりに訳して、そういう言葉に詳しい人に見てもらうってことは結構やりますね。

村上)柴田さん、SNSとかやらないでしょ?

柴田)やるんですよ、それが。「MONKEY」という雑誌もやってるので、そこでちょっとやるんですけど、新しい言葉よりも、例えばファッションの言葉とか全然知らないし、車とかそういうのが詳しい人に「好きな人たちはこういうふうに言うんだよ」っていうのを教えてもらうっていうことはやりますね。

村上)僕はね、翻訳していて人にあんまり聞かないですね。

柴田)だからやっぱり村上さんはそれなりに新しい、それなりになんていったら失礼ですけど、新しい言葉とか仕入れてるんじゃないですか、やっぱり小説家として。

村上)入ってきてるのかもしれない……。

柴田)方言はね、原理的に答えるのはとても簡単というか、論理的に答えられるというか、方言を日本語の方言に置き換えるというのをやめたほうがいいと思うので、自分がそういう方言をよほど使いこなせない限り。それをやめるとすれば、なぜそこに方言が使われているかというのを考えて、それが例えばユーモアを意図しているのか、それともその人が社会的に虐げられているということを伝えているのか、それとも音の方言の美しさ、詩情みたいなポエトリーみたいなものが目指されているのか、それを見極めて、その要素を強調して訳すようにする。言うのは簡単なんですけど……(笑)。

村上)僕が一番困ったのは、フィッツジェラルドの短編で、フィッツジェラルドの奥さんのゼルダはアラバマ出身で、もう純粋な南部弁なんですよね。それを訳すときに、南部方言というのは訳しようがないんですよね。

柴田)日本語の方言で何か代用しようと思ってもそんなのないですよね。

村上)結局どうだったっけな、ニュアンスで訳すしかないですね。なんとかだべとか、そういうのはやっぱり日本の東北とアメリカ南部とは違うからね。だからね、ちょっとしたニュアンスで出せると思うんですけどね。

柴田)結局その方言自体の味わいを100%伝えることはできない。じゃあもう翻訳なんかやっても仕方ないというふうには短絡的にならない方がよくて、他に伝えられることはいくつかあるので、そっちで伝えれば大体は伝わるかぐらいに構えるのがいいのかなと思う。

村上)時々、関西弁とかでやってる人いますけどね。やっぱり読みにくいですね。

柴田)そうですね。短編の、いかにもこれは短い文体実験ですという範囲ならいいんですけどね。長くやられると。

美雨)さあ、会場にいらっしゃる方からも質問をいただいています。

「(ラジオネーム:浜島ヒヨドリ)日本語の報告書などをフランス語に翻訳する実務翻訳をしています。しかし悲しいことに近年の目覚ましいAIの進歩により、ほぼお役御免となりつつあり、私は仕事を失いかけています。AIがこのまま進化していったらお二人はいつの日か文芸翻訳もAIが担うようになると思われますか?」

村上)この間ラジオで言ったんですけど、小説を書くというのは、これまでの情報を分析して組み替えればできるものじゃなくて、新しく自分の中で情報を作っていかないと書けないものなんですよね。例えば、ある種の妄想とかね。ある種の矛盾とかね。そういうものから出てくる新しい情報を小説に入れるわけです。AIには多分それはできないと思うんだよね。だから僕は特にAIを脅威だとは感じてないし、むしろAIが僕を脅威に感じてくれるといいなというふうには思ってます。

柴田)それは創作者としての村上さんじゃないですか。

村上)そうです。

柴田)翻訳者はどうですかね?

村上)翻訳もね、僕は無理だと思います。時々AIで試しに何かやってみることはあるけど、今のところはひどい訳しか出てこない。もっとソフィスティケートされるかもしれないけど、やっぱり文芸翻訳というのは実務翻訳とは別ですよね。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~
放送日時:2026年11月3日(火・祝) 14:00~15:55
出演:村上春樹、柴田元幸、坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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