夢のスぺシャル対談が実現!角川春樹×谷川俊太郎

(写真左から角川春樹、井田由美、谷川俊太郎)

ラジオ日本は4月14日、21日(木)の2週にわたり、23時30分から『わたしの図書室スペシャル・にほんの詩集』を放送する。

放送開始から15年を経て文学作品等の朗読番組として定評のある『わたしの図書室』。このたび角川春樹事務所創立30周年を記念して発売される『シリーズ にほんの詩集』から、谷川俊太郎、長田弘、吉野弘、中島みゆき、金子みすゞ、宮沢賢治ら日本を代表する作家・詩人たちの詩を抜粋し朗読する。

スペシャル企画は出版界の怪物・角川春樹と国民的詩人・谷川俊太郎の特別対談。半世紀を超える二人の交流・エピソードが語られる。二人が出会ったのは50年以上前。「スヌーピー」の原作者シュルツに会いにアメリカまでいっしょに行ったこともある。80歳と90歳の二人の才人の口からは、交互に“人生の宝物”のような言葉が飛び出す。「90歳の自分の中に3歳の自分が棲んでいる」と語る谷川は歳を取ってだんだん詩作が楽しくなってきたと語る。一方、今年80歳になった角川は「谷川さんの詩には“詩品”がある」と言う。

全12冊の『シリーズ  にほんの詩集』にはシンガーソングライターの中島みゆきの詩集もある。角川はなぜ中島みゆきを“詩人”と呼ぶのか? 角川・谷川が目指す詩とは何か?

朗読は、声優界の大物・羽佐間道夫が、宮沢賢治『雨ニモマケズ』をこれまでにない新解釈で表現する。世の理不尽さや苦しい暮らし。農民の苦境に立ち向かう、怒りの宮沢賢治の姿が描かれる。戸田恵子は工藤直子の『あいたくて』から中島みゆきの『糸』まで、5篇の詩を 5通りの情感で表現。21日の放送では谷川俊太郎自身が新作の詩『おに』を朗読・披露する。
ナレーションと対談の司会は、日本テレビアナウンサーの井田由美。

わたしの図書室スペシャル・にほんの詩集
放送局:ラジオ日本 他2局ネット
放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
※放送局によって日時が異なる場合があります。
出演者:角川春樹、谷川俊太郎、羽佐間道夫、戸田恵子、井田由美
番組ホームページ

※四国放送では4月16日(土)5:00~5:30、西日本放送では4月17日(日)23:15~23:45に放送。

※該当回の聴取期間は終了しました。

村上春樹 AIに小説を脅かされるとは思わない……翻訳家・柴田元幸とAIについて語る

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」。11月3日(火・祝)は、特別番組として『村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~』をオンエア。今回は早稲田大学国際文学館の開館5周年を記念し、10月1日に小野記念講堂で開催された公開録音イベントの模様をお届けしました。

盟友である翻訳家の柴田元幸さんを迎え、進行役の坂本美雨さんとともに「音楽で仮定法を学ぶ」をテーマに白熱の翻訳談議を展開。ビーチ・ボーイズやエディット・ピアフなどの名曲に乗せて英語表現のニュアンスを紐解いたほか、方言・スラングの訳し方やAI時代における翻訳の未来、参加者からのQ&Aまで、言葉と文学の魅力が詰まった贅沢な時間となりました。

この記事では、この記事では中盤のトークパートの模様を紹介します。


(写真左から)坂本美雨さん、村上春樹さん、柴田元幸さん



<ステージに司会役の坂本美雨が登壇>

坂本美雨(以下、美雨)皆さんこんにちは、坂本美雨です。音楽で仮定法を学ぶ非常に勉強になりました。私も英語を話すは話すんですけど、子どもの頃に普通に会話の中で覚えていってしまったので、こういうふうに分解してというか、ifってそういうふうに使うんだ、mightってそうなんだっていう……本当に勉強になりましたけれども。さあ、皆さんからたくさん質問をいただいています。

「(ラジオネーム:ポテポテ)出版翻訳の世界の片隅でひっそり生きているものです。訳語に新しめの言葉を使うことをお二人はどう思われますか。使うとすればその範囲をどう決めていますか」

「(ラジオネーム:キノコマッシュルーム)外国語にも方言ってあると思うのですが、訳するときはどうしていらっしゃるのでしょうか。ほにゃららやでとか何々ばいみたいにすると、なんか変だし。」

というちょっと具体的な質問でしたけれどもいかがでしょうか?

村上)新しめの言葉を使うこと……。

柴田)新しめの言葉を知らないですよ。僕の中で今、翻訳者としてもうマイブームなのは、「すごく疲れた」じゃなくて「すごい疲れた」という言い方。これが僕の中ではすごい新鮮だという、それぐらい古いんです。なので、その心配はいらない。

村上)でも、いかにも新しいことを話しているというケースはありますよね。そういうニュアンスはやっぱり少し出さないといけないわけですね。

柴田)まあ、そうですね。ただ、それを単語レベルでやっていくと、その言葉はもしかしたらすぐ古びるかもしれないという心配はありますよね。

村上)例えばdissって言葉ですよね。動詞のdiss。日本語でもディスるって言いますよね。

柴田)今、言いますね。

村上)それはどうやったらいいかとか時々迷いますよね。ディスるって訳しちゃうと、なんかね……。

柴田)ダメですか?

村上)ディスるって訳すと自分が軽くなってる気がして、なんか抵抗があるんですよね。でも原文でも実際にdissって使ってるわけだから、どうしようかなと困るときはありますね。

柴田)だから、新しい言葉に限らず、自分がこの辺の言葉を使えないなと思ったら、まず自分なりに訳して、そういう言葉に詳しい人に見てもらうってことは結構やりますね。

村上)柴田さん、SNSとかやらないでしょ?

柴田)やるんですよ、それが。「MONKEY」という雑誌もやってるので、そこでちょっとやるんですけど、新しい言葉よりも、例えばファッションの言葉とか全然知らないし、車とかそういうのが詳しい人に「好きな人たちはこういうふうに言うんだよ」っていうのを教えてもらうっていうことはやりますね。

村上)僕はね、翻訳していて人にあんまり聞かないですね。

柴田)だからやっぱり村上さんはそれなりに新しい、それなりになんていったら失礼ですけど、新しい言葉とか仕入れてるんじゃないですか、やっぱり小説家として。

村上)入ってきてるのかもしれない……。

柴田)方言はね、原理的に答えるのはとても簡単というか、論理的に答えられるというか、方言を日本語の方言に置き換えるというのをやめたほうがいいと思うので、自分がそういう方言をよほど使いこなせない限り。それをやめるとすれば、なぜそこに方言が使われているかというのを考えて、それが例えばユーモアを意図しているのか、それともその人が社会的に虐げられているということを伝えているのか、それとも音の方言の美しさ、詩情みたいなポエトリーみたいなものが目指されているのか、それを見極めて、その要素を強調して訳すようにする。言うのは簡単なんですけど……(笑)。

村上)僕が一番困ったのは、フィッツジェラルドの短編で、フィッツジェラルドの奥さんのゼルダはアラバマ出身で、もう純粋な南部弁なんですよね。それを訳すときに、南部方言というのは訳しようがないんですよね。

柴田)日本語の方言で何か代用しようと思ってもそんなのないですよね。

村上)結局どうだったっけな、ニュアンスで訳すしかないですね。なんとかだべとか、そういうのはやっぱり日本の東北とアメリカ南部とは違うからね。だからね、ちょっとしたニュアンスで出せると思うんですけどね。

柴田)結局その方言自体の味わいを100%伝えることはできない。じゃあもう翻訳なんかやっても仕方ないというふうには短絡的にならない方がよくて、他に伝えられることはいくつかあるので、そっちで伝えれば大体は伝わるかぐらいに構えるのがいいのかなと思う。

村上)時々、関西弁とかでやってる人いますけどね。やっぱり読みにくいですね。

柴田)そうですね。短編の、いかにもこれは短い文体実験ですという範囲ならいいんですけどね。長くやられると。

美雨)さあ、会場にいらっしゃる方からも質問をいただいています。

「(ラジオネーム:浜島ヒヨドリ)日本語の報告書などをフランス語に翻訳する実務翻訳をしています。しかし悲しいことに近年の目覚ましいAIの進歩により、ほぼお役御免となりつつあり、私は仕事を失いかけています。AIがこのまま進化していったらお二人はいつの日か文芸翻訳もAIが担うようになると思われますか?」

村上)この間ラジオで言ったんですけど、小説を書くというのは、これまでの情報を分析して組み替えればできるものじゃなくて、新しく自分の中で情報を作っていかないと書けないものなんですよね。例えば、ある種の妄想とかね。ある種の矛盾とかね。そういうものから出てくる新しい情報を小説に入れるわけです。AIには多分それはできないと思うんだよね。だから僕は特にAIを脅威だとは感じてないし、むしろAIが僕を脅威に感じてくれるといいなというふうには思ってます。

柴田)それは創作者としての村上さんじゃないですか。

村上)そうです。

柴田)翻訳者はどうですかね?

村上)翻訳もね、僕は無理だと思います。時々AIで試しに何かやってみることはあるけど、今のところはひどい訳しか出てこない。もっとソフィスティケートされるかもしれないけど、やっぱり文芸翻訳というのは実務翻訳とは別ですよね。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~
放送日時:2026年11月3日(火・祝) 14:00~15:55
出演:村上春樹、柴田元幸、坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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